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当てる性質:Jensen の不等式と非負性

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第3章 相対エントロピーと相互情報量
目次
  1. Jensen の不等式
  2. Gibbs の不等式
  3. 距離ではないことと、Pinsker の不等式
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第3章 §1.3.2 ★★★ D(p ∥ q)≥0D(p\,\|\,q)\ge0(等号は p=qp=q のときだけ)。この巻のすべての不等式の出発点

Jensen の不等式

関数 ff が区間 JJ で凸(下に凸)であるとは、JJ の任意の2点 x1,x2x_1,x_2 と 0≤λ≤10\le\lambda\le1 についてf(λx1+(1−λ)x2)≤λf(x1)+(1−λ)f(x2)f(\lambda x_1+(1-\lambda)x_2)\le\lambda f(x_1)+(1-\lambda)f(x_2) が成り立つことをいう。2点を結ぶ弦がグラフより上にある、という条件である。x1≠x2x_1\ne x_2、0<λ<10<\lambda<1 でいつも狭義の不等号が成り立つとき、狭義凸という。−f-f が凸のとき ff は凹(上に凸)である。2回微分できる関数なら、f′′≥0f''\ge0 が凸、f′′>0f''>0 が狭義凸の十分条件になる。−ln⁡x-\ln x(x>0x>0)は (−ln⁡x)′′=1/x2>0(-\ln x)''=1/x^2>0 なので狭義凸で、ln⁡x\ln x は狭義凹である。

定理 1.3.2(Jensen の不等式 ★★★)

ff が区間 JJ で凸で、確率変数 XX が JJ に値をとり平均 ⟨X⟩\langle X \rangle を持つなら、

f(⟨X⟩)≤⟨f(X)⟩.(1.3.5)f\bigl(\langle X \rangle \bigr)\le\langle f(X) \rangle .\tag{1.3.5}

ff が狭義凸なら、等号は XX が確率1で定数のときに限る。

証明

有限個の値をとる場合を示す。m≔⟨X⟩m\coloneqq\langle X \rangle は JJ に入る。凸関数のグラフには、点 (m,f(m))(m,f(m)) を通ってグラフの下にある直線(支持直線)ℓ(x)=f(m)+c (x−m)\ell(x)=f(m)+c\,(x-m) がある(ff が微分できるなら c=f′(m)c=f'(m) ととればよい。微分できない点では、左右の微分係数の間の値をとる)。すべての x∈Jx\in J で f(x)≥ℓ(x)f(x)\ge\ell(x) なので、両辺を XX の分布で平均すると

⟨f(X)⟩≥⟨ℓ(X)⟩=f(m)+c (⟨X⟩−m)=f(m).\langle f(X) \rangle \ge\langle \ell(X) \rangle =f(m)+c\,(\langle X \rangle -m)=f(m) .

ff が狭義凸なら、f(x)=ℓ(x)f(x)=\ell(x) となるのは x=mx=m だけである。等号が成り立つには確率が正のすべての値で f(x)=ℓ(x)f(x)=\ell(x) が要るので、X=mX=m が確率1で成り立つ。

図 1.3.2 は、2つの値を確率 1/21/2 ずつでとる XX について、狭義凸な −ln⁡x-\ln x でこの不等式を描いたものである。値の平均での関数の値(グラフの上の点)は、関数の値の平均(弦の中点)より下にある。

図

図 1.3.2 Jensen の不等式。XX が x1=0.5x_1=0.5 と x2=2.5x_2=2.5 を確率 1/21/2 ずつでとるとき、弦の中点 ⟨−ln⁡X⟩≈−0.112\langle -\ln X \rangle \approx-0.112(青)は、グラフの上の点 −ln⁡⟨X⟩=−ln⁡1.5≈−0.405-\ln\langle X \rangle =-\ln1.5\approx-0.405(赤)より上にある。

Gibbs の不等式

序章(定理 1.1.1)では、この不等式を ln⁡x≤x−1\ln x\le x-1 の1行で示した。ここでは Jensen の不等式から示し、その道具を結合凸性(定理 1.3.8)まで使う。

定理 1.3.3(Gibbs の不等式 ★★★)

有限集合上の任意の確率分布 p,qp,q について

D(p ∥ q)≥0(1.3.6)D(p\,\|\,q)\ge0\tag{1.3.6}

が成り立ち、等号は p=qp=q のときに限る。

証明

D(p ∥ q)=+∞D(p\,\|\,q)=+\infty なら明らかなので、pp の台 A≔{x:p(x)>0}A\coloneqq\{x: p(x)>0\} の上で q(x)>0q(x)>0 とする。AA の上で確率 p(x)p(x) をとる確率変数としてY=q(X)/p(X)Y=q(X)/p(X) を考えると、狭義凹な ln⁡\ln に Jensen の不等式(凹関数なので向きが逆になる)を当てはめて

−D(p ∥ q)=∑x∈Ap(x)ln⁡q(x)p(x)≤ln⁡(∑x∈Ap(x)q(x)p(x))=ln⁡(∑x∈Aq(x))≤ln⁡1=0.-D(p\,\|\,q)=\sum_{x\in A}p(x)\ln\frac{q(x)}{p(x)}\le\ln\Bigl(\sum_{x\in A}p(x)\frac{q(x)}{p(x)}\Bigr)=\ln\Bigl(\sum_{x\in A}q(x)\Bigr)\le\ln1=0 .

等号の条件を調べる。最初の不等号が等号になるのは、Jensen の不等式の等号条件から、q(x)/p(x)q(x)/p(x) が AA の上で定数 cc のときである。2つ目の不等号が等号になるのは、∑x∈Aq(x)=1\sum_{x\in A}q(x)=1、つまり qq の台も AA に収まるときである。2つを合わせると c=∑x∈Aq(x)=1c=\sum_{x\in A}q(x)=1 で、p=qp=q となる。逆に p=qp=q なら各項の ln⁡1=0\ln1=0 なので D=0D=0 である。

証明が2段に分かれていることに意味がある。1段目は「pp の台の中で qq の形が pp と違う」ことの罰、2段目は「qq が pp の台の外に確率を漏らしている」ことの罰である。どちらか一方でもあると D>0D>0 になる。

連続な分布でも、同じ議論で D≥0D\ge0 が成り立つ(和を積分に、有限個の値をとる場合の Jensen の不等式を一般の確率変数の場合に置き換える)。式 (1.3.4) で確かめると、μ1=μ2\mu_1=\mu_2 のとき r=σ12/σ22r=\sigma_1^2/\sigma_2^2 とおいて D=12(r−1−ln⁡r)D=\frac12(r-1-\ln r) で、ln⁡r≤r−1\ln r\le r-1 より D≥0D\ge0、等号は r=1r=1 のときだけである。

Gibbs の不等式から、和の形のまま使える不等式が1つ出てくる。

系 1.3.4(対数和不等式 ★★)

非負の数 a1,…,ana_1,\dots,a_n と正の数 b1,…,bnb_1,\dots,b_n について、a≔∑iai>0a\coloneqq\sum_ia_i>0、b≔∑ibib\coloneqq\sum_ib_i とおくと

∑i=1nailn⁡aibi≥aln⁡ab.(1.3.7)\sum_{i=1}^na_i\ln\frac{a_i}{b_i}\ge a\ln\frac{a}{b} .\tag{1.3.7}

等号は ai/bia_i/b_i が ii によらないときに限る。

証明

pi≔ai/ap_i\coloneqq a_i/a、qi≔bi/bq_i\coloneqq b_i/b は確率分布である。ailn⁡(ai/bi)=a pi(ln⁡(pi/qi)+ln⁡(a/b))a_i\ln(a_i/b_i)=a\,p_i\bigl(\ln(p_i/q_i)+\ln(a/b)\bigr) を ii で足すと、左辺 =a D(p ∥ q)+aln⁡(a/b)=a\,D(p\,\|\,q)+a\ln(a/b) となる。Gibbs の不等式から D(p ∥ q)≥0D(p\,\|\,q)\ge0 で、等号は p=qp=q、つまり ai/bi=a/ba_i/b_i=a/b のときである。

序章はこの不等式でデータ処理不等式を示した(定理 1.1.2)。この章では、1.3.5 節で DD の凸性を示すときに使う(次の章はデータ処理不等式を連鎖律から示し直す)。

距離ではないことと、Pinsker の不等式

DD は非負で、00 になるのは p=qp=q のときだけなので、2つの分布の「隔たり」を測る量として使える。しかし距離の公理のうち、対称性と三角不等式は満たさない。対称性が成り立たないことは 1.3.1 節で見た。三角不等式も成り立たない。コイン pa=(a,1−a)p_a=(a,1-a) で a=1/2, 1/4, 1/10a=1/2,\ 1/4,\ 1/10 の3つをとると

D(p1/2 ∥ p1/10)≈0.511,D(p1/2 ∥ p1/4)+D(p1/4 ∥ p1/10)≈0.144+0.092=0.236D(p_{1/2}\,\|\,p_{1/10})\approx0.511,\qquad D(p_{1/2}\,\|\,p_{1/4})+D(p_{1/4}\,\|\,p_{1/10})\approx0.144+0.092=0.236

で、遠回りしたほうが小さい。DD は、分布のずれが小さいときに差の2乗のように振る舞う量なので(図 1.3.1)、2乗した距離が三角不等式を満たさないのと同じ理由で、三角不等式が成り立たない。

距離そのものとの関係は、次の不等式で押さえられる。2つの分布の差の絶対値の和を ∥p−q∥1≔∑x∣p(x)−q(x)∣\lVert p-q\rVert _1\coloneqq\sum_x\lvert p(x)-q(x)\rvert と書く。これは、どんな事象 AA についても確率の差 ∣p(A)−q(A)∣\lvert p(A)-q(A)\rvert が 12∥p−q∥1\frac12\lVert p-q\rVert _1 を超えないという意味で、2つの分布を1回の観測で見分ける能力を測る距離である。

命題 1.3.5(Pinsker の不等式 ★★)

有限集合上の任意の確率分布 p,qp,q について

D(p ∥ q)≥12∥p−q∥12.(1.3.8)D(p\,\|\,q)\ge\frac12\lVert p-q\rVert _1^2 .\tag{1.3.8}

値が2つの場合(コイン)の証明を例題 1.3.2 で行う。一般の場合は、事象 A={x:p(x)≥q(x)}A=\{x: p(x)\ge q(x)\} に入るか入らないかだけを見る粗い観測に移ると DD が増えないこと(次の章のデータ処理不等式)を使って、コインの場合に帰着できる。この帰着は 第1部第4章 で行う。Pinsker の不等式は「DD が小さければ、2つの分布はどんな事象についても確率がほとんど同じである」ことを保証する。

例題 1.3.2 コインの Pinsker の不等式 ★★

オリジナル0<a<10<a<1、0<b<10<b<1 とし、p=(a,1−a)p=(a,1-a)、q=(b,1−b)q=(b,1-b) とする。

  1. (1) ∥p−q∥1=2∣a−b∣\lVert p-q\rVert _1=2\lvert a-b\rvert を確かめ、示すべき不等式が g(b)≔aln⁡ab+(1−a)ln⁡1−a1−b−2(a−b)2≥0g(b)\coloneqq a\ln\dfrac ab+(1-a)\ln\dfrac{1-a}{1-b}-2(a-b)^2\ge0 であることを述べよ。
  2. (2) aa を止めて gg を bb で微分し、g′(b)=(b−a)(1b(1−b)−4)g'(b)=(b-a)\Bigl(\dfrac{1}{b(1-b)}-4\Bigr) を示せ。
  3. (3) g(b)≥0g(b)\ge0 を示せ。
解答

(1) ∣p(1)−q(1)∣+∣p(2)−q(2)∣=∣a−b∣+∣(1−a)−(1−b)∣=2∣a−b∣\lvert p(1)-q(1)\rvert +\lvert p(2)-q(2)\rvert =\lvert a-b\rvert +\lvert (1-a)-(1-b)\rvert =2\lvert a-b\rvert なので、12∥p−q∥12=2(a−b)2\frac12\lVert p-q\rVert _1^2=2(a-b)^2 である。示すべき式 (1.3.8) は D(p ∥ q)−2(a−b)2≥0D(p\,\|\,q)-2(a-b)^2\ge0、つまり g(b)≥0g(b)\ge0 になる。

(2) ddb(aln⁡ab)=−ab\dfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} b}\Bigl(a\ln\dfrac ab\Bigr)=-\dfrac ab、ddb((1−a)ln⁡1−a1−b)=1−a1−b\dfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} b}\Bigl((1-a)\ln\dfrac{1-a}{1-b}\Bigr)=\dfrac{1-a}{1-b}、ddb(−2(a−b)2)=4(a−b)\dfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} b}\bigl(-2(a-b)^2\bigr)=4(a-b) なので、

g′(b)=−ab+1−a1−b+4(a−b)=−a(1−b)+b(1−a)b(1−b)−4(b−a)=b−ab(1−b)−4(b−a)=(b−a)(1b(1−b)−4).\begin{aligned}g'(b)&=-\frac ab+\frac{1-a}{1-b}+4(a-b)=\frac{-a(1-b)+b(1-a)}{b(1-b)}-4(b-a)\\ &=\frac{b-a}{b(1-b)}-4(b-a)=(b-a)\Bigl(\frac{1}{b(1-b)}-4\Bigr).\end{aligned}

(3) 0<b<10<b<1 では b(1−b)≤1/4b(1-b)\le1/4 なので、括弧の中は 00 以上である。したがって g′(b)g'(b) は b<ab<a で 00 以下、b>ab>a で 00 以上になり、gg は b=ab=a で最小になる。最小値は g(a)=0g(a)=0 なので、すべての bb で g(b)≥0g(b)\ge0 である。図 1.3.1 の実線 2(a−1/2)22(a-1/2)^2 は、b=1/2b=1/2 のときのこの下界を表していて、点線の D(pa ∥ p1/2)D(p_a\,\|\,p_{1/2}) はいつもその上にある。

木下の勉強ステータス

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