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当てる D の性質:連鎖律と単調性

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第4章 データ処理不等式と十分統計量
目次
  1. 前の章の連鎖律
  2. 単調性(データ処理不等式)
  3. Pinsker の不等式の一般の場合
  4. 近い2つの分布ではどれだけ縮むか
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第4章 §1.4.2 ★★★ 連鎖律と非負性の2つだけから D(Wp ∥ Wq)≤D(p ∥ q)D(Wp\,\|\,Wq)\le D(p\,\|\,q) を示す。この章の結果はすべてこの不等式から出る

前の章の連鎖律

前の章(第1部第3章)では、xx ごとの条件付き分布の相対エントロピーを pXp_X で平均した条件付き相対エントロピー

D(pY∣X ∥ qY∣X ∣ pX)=∑xpX(x) D(p(⋅ ∣ x) ∥ q(⋅ ∣ x))(1.4.6)D\bigl(p_{Y|X}\,\|\,q_{Y|X}\,\big|\,p_X\bigr)=\sum_xp_X(x)\,D\bigl(p(\cdot\,|\,x)\,\|\,q(\cdot\,|\,x)\bigr)\tag{1.4.6}

を定義し、同時分布の相対エントロピーがこれと周辺分布の相対エントロピーの和に分かれること(相対エントロピーの連鎖律)

D(pXY ∥ qXY)=D(pX ∥ qX)+D(pY∣X ∥ qY∣X ∣ pX)(1.4.7)D(p_{XY}\,\|\,q_{XY})=D(p_X\,\|\,q_X)+D\bigl(p_{Y|X}\,\|\,q_{Y|X}\,\big|\,p_X\bigr)\tag{1.4.7}

を示した。この章ではこの2つの式を結果として使う。必要な事実を3つ確認しておく。

第一に、式 (1.4.6) の各項は非負なので条件付き相対エントロピーは非負で、00 になるのは pX(x)>0p_X(x)>0 のすべての xx で p(⋅ ∣ x)=q(⋅ ∣ x)p(\cdot\,|\,x)=q(\cdot\,|\,x) のときに限る。重みが pXp_X であって qXq_X でないのは、実際に xx が出る頻度が pXp_X にしたがうからである。第二に、連鎖律は XX と YY のどちらを先に分けても成り立つ。pXY=pY pX∣Yp_{XY}=p_Y\,p_{X|Y} と分けて同じ計算をすると

D(pXY ∥ qXY)=D(pY ∥ qY)+D(pX∣Y ∥ qX∣Y ∣ pY)(1.4.8)D(p_{XY}\,\|\,q_{XY})=D(p_Y\,\|\,q_Y)+D\bigl(p_{X|Y}\,\|\,q_{X|Y}\,\big|\,p_Y\bigr)\tag{1.4.8}

である。次の定理の証明は、この2通りの分け方を見比べるだけで済む。第三に、前の章はこの式から周辺分布に移ると DD が増えないこと D(pX ∥ qX)≤D(pXY ∥ qXY)D(p_X\,\|\,q_X)\le D(p_{XY}\,\|\,q_{XY}) を出した。この節はそれを一般の通信路に広げる。

単調性(データ処理不等式)

序章(定理 1.1.2)では、この不等式を対数和不等式から示した。ここでは連鎖律を2通りに当てて示し、失う量が逆向きの条件付き分布の DD だと分かる形にする。

定理 1.4.1(相対エントロピーのデータ処理不等式 ★★★)

確率行列 WW と分布 p,qp,q について

D(Wp ∥ Wq)≤D(p ∥ q).(1.4.9)D(Wp\,\|\,Wq)\le D(p\,\|\,q).\tag{1.4.9}

D(p ∥ q)<∞D(p\,\|\,q)<\infty のとき、等号が成り立つのは、出力 yy から入力 xx を推定する逆向きの条件付き分布

p(x ∣ y)=W(y ∣ x)p(x)(Wp)(y),q(x ∣ y)=W(y ∣ x)q(x)(Wq)(y)(1.4.10)p(x\,|\,y)=\frac{W(y\,|\,x)p(x)}{(Wp)(y)},\qquad q(x\,|\,y)=\frac{W(y\,|\,x)q(x)}{(Wq)(y)}\tag{1.4.10}

が、(Wp)(y)>0(Wp)(y)>0 のすべての yy で一致するときに限る。

証明

入力と出力の組 (X,Y)(X,Y) の同時分布を、入力が pp のときと qq のときで作る。

pXY(x,y)=p(x)W(y ∣ x),qXY(x,y)=q(x)W(y ∣ x).p_{XY}(x,y)=p(x)W(y\,|\,x),\qquad q_{XY}(x,y)=q(x)W(y\,|\,x).

連鎖律 (1.4.7) と (1.4.8) を使う。XX を先に分けると、条件付き分布はどちらも同じ W(⋅ ∣ x)W(\cdot\,|\,x) なので条件付きの項は 00 になり、

D(pXY ∥ qXY)=D(p ∥ q)+0.D(p_{XY}\,\|\,q_{XY})=D(p\,\|\,q)+0 .

式 (1.4.8) のように YY を先に分けると、YY の周辺分布は WpWp と WqWq、条件付き分布は式 (1.4.10) なので

D(pXY ∥ qXY)=D(Wp ∥ Wq)+D(pX∣Y ∥ qX∣Y ∣ Wp) ≥ D(Wp ∥ Wq).D(p_{XY}\,\|\,q_{XY})=D(Wp\,\|\,Wq)+D\bigl(p_{X|Y}\,\|\,q_{X|Y}\,\big|\,Wp\bigr)\ \ge\ D(Wp\,\|\,Wq).

2つを合わせて式 (1.4.9) を得る。差は D(pX∣Y ∥ qX∣Y ∣ Wp)D(p_{X|Y}\,\|\,q_{X|Y}\,|\,Wp) で、条件付き相対エントロピーが 00 になる条件から等号条件が出る。

証明の要点は、処理の前と後で「同じ WW を使った」ことが、XX を先に分けたときの条件付きの項を 00 にした所にある。pp には WW、qq には別の W′W' を当てると、この項は 00 にならず、不等式は一般に成り立たない(W′W' を WqWq が WpWp から遠ざかるように選べば DD は増やすことができる)。

系 1.4.2(周辺化と関数)

(i) D(pX ∥ qX)≤D(pXY ∥ qXY)D(p_X\,\|\,q_X)\le D(p_{XY}\,\|\,q_{XY})(一部を忘れると違いは減る)。(ii) 関数 ff について D(pf(X) ∥ qf(X))≤D(pX ∥ qX)D(p_{f(X)}\,\|\,q_{f(X)})\le D(p_X\,\|\,q_X)。ここで pf(X)(t)=∑x: f(x)=tp(x)p_{f(X)}(t)=\sum_{x:\,f(x)=t}p(x) である。

証明

どちらも1.4.1節で見たとおり確率行列で書ける処理なので、定理 1.4.1 に入る。(i) は連鎖律 (1.4.7) の条件付きの項が非負であることからも直接に出る。

Pinsker の不等式の一般の場合

系 1.4.2(ii) の使い方の例として、前の章で値が2つの場合(コイン)だけ示した Pinsker の不等式

D(p ∥ q)≥12∥p−q∥12,∥p−q∥1=∑x∣p(x)−q(x)∣(1.4.11)D(p\,\|\,q)\ge\frac12\lVert p-q\rVert _1^2,\qquad \lVert p-q\rVert _1=\sum_x\lvert p(x)-q(x)\rvert\tag{1.4.11}

を、一般の有限集合の場合に示す。事象 A={x: p(x)≥q(x)}A=\{x:\,p(x)\ge q(x)\} をとり、xx が AA に入るかどうかだけを記録する関数 f(x)=1[x∈A]f(x)=\mathbf 1[x\in A] を考える。ff で移した分布は2値の分布 (p(A), 1−p(A))(p(A),\,1-p(A)) と (q(A), 1−q(A))(q(A),\,1-q(A)) で、AA の外では p<qp<q なので

∥p−q∥1=∑x∈A(p(x)−q(x))+∑x∉A(q(x)−p(x))=2(p(A)−q(A))\lVert p-q\rVert _1=\sum_{x\in A}\bigl(p(x)-q(x)\bigr)+\sum_{x\notin A}\bigl(q(x)-p(x)\bigr)=2\bigl(p(A)-q(A)\bigr)

が成り立つ。2値の分布の差の絶対値の和も 2∣p(A)−q(A)∣2\lvert p(A)-q(A)\rvert なので、ff で移しても ∥⋅∥1\lVert \cdot\rVert _1 は変わらない。したがって、系 1.4.2(ii) とコインの場合の Pinsker の不等式を順に使うと

D(p ∥ q) ≥ D(pf(X) ∥ qf(X)) ≥ 12(2(p(A)−q(A)))2=12∥p−q∥12D(p\,\|\,q)\ \ge\ D(p_{f(X)}\,\|\,q_{f(X)})\ \ge\ \frac12\bigl(2(p(A)-q(A))\bigr)^2=\frac12\lVert p-q\rVert _1^2

となる。証明では、∥⋅∥1\lVert \cdot\rVert _1 を変えずに DD を減らす処理を選んで、2値の問題に帰着させた。

近い2つの分布ではどれだけ縮むか

qq のどの成分も正で、pp が qq に近いとき、p=q+Δp=q+\Delta と書いて ln⁡(1+Δ/q)\ln(1+\Delta/q) を2次まで展開すると、∑xΔ(x)=0\sum_x\Delta(x)=0 を使って

D(q+Δ ∥ q)=12∑xΔ(x)2q(x)+O(Δ3)(1.4.12)D(q+\Delta\,\|\,q)=\frac12\sum_x\frac{\Delta(x)^2}{q(x)}+\mathcal{O}(\Delta^3)\tag{1.4.12}

を得る。右辺の和を χ2\chi^2 ダイバージェンスと呼ぶ(Δ→0\Delta\to0 の極限の主要項であり、有限の Δ\Delta では差が残る)。2値対称通信路 WεW_{\varepsilon } で qq が一様分布 (1/2,1/2)(1/2,1/2) なら、Wεq=qW_{\varepsilon } q=q で WεΔ=(1−2ε)ΔW_{\varepsilon }\Delta=(1-2\varepsilon )\Delta となるので、Δ→0\Delta\to0 の極限で比は

D(Wεp ∥ Wεq)D(p ∥ q) ⟶ (1−2ε)2(1.4.13)\frac{D(W_{\varepsilon } p\,\|\,W_{\varepsilon } q)}{D(p\,\|\,q)}\ \longrightarrow\ (1-2\varepsilon )^2\tag{1.4.13}

になる。図 1.4.2 は、p=(0.9,0.1)p=(0.9,0.1) という一様分布から離れた分布でこの比を正確に計算したもので、どの ε\varepsilon でも 11 以下であり、ε=1/2\varepsilon =1/2(出力が入力と無関係)で 00 になる。

図

図 1.4.2 2値対称通信路 WεW_{\varepsilon } に p=(0.9,0.1)p=(0.9,0.1) と q=(0.5,0.5)q=(0.5,0.5) を通したときの相対エントロピーの比。点線は正確な値、実線は pp を qq に近づけた極限の式 (1.4.13)。どちらも 11 以下で、定理 1.4.1 のとおり処理で DD は増えない

例題 1.4.2 通信路を通して失われる相対エントロピー ★★

オリジナルp=(0.9, 0.1)p=(0.9,\,0.1)、q=(0.5, 0.5)q=(0.5,\,0.5) を誤り確率 ε=0.1\varepsilon =0.1 の2値対称通信路 W0.1W_{0.1} に通す。序章の例題 1.1.2 と同じ組で、そこで数値だけ見た減り方の中身を調べる。

  1. D(p ∥ q)D(p\,\|\,q) と D(W0.1p ∥ W0.1q)D(W_{0.1}p\,\|\,W_{0.1}q) を求め、比を図 1.4.2 と照らせ。
  2. 出力 y=0y=0 を見たときの逆向きの条件付き分布 p(x ∣ y=0)p(x\,|\,y=0), q(x ∣ y=0)q(x\,|\,y=0) を求め、等号が成り立たない理由を述べよ。
  3. 失われた分 D(p ∥ q)−D(W0.1p ∥ W0.1q)D(p\,\|\,q)-D(W_{0.1}p\,\|\,W_{0.1}q) を、定理 1.4.1 の証明に出た条件付き相対エントロピーとして直接計算し、(1) の差と一致することを確かめよ。
解答
  1. D(p ∥ q)=0.9ln⁡1.8+0.1ln⁡0.2=0.5290−0.1609=0.3681D(p\,\|\,q)=0.9\ln1.8+0.1\ln0.2=0.5290-0.1609=0.3681 nat。出力は W0.1p=(0.9×0.9+0.1×0.1, 0.18)=(0.82, 0.18)W_{0.1}p=(0.9\times0.9+0.1\times0.1,\ 0.18)=(0.82,\,0.18)、W0.1q=(0.5, 0.5)W_{0.1}q=(0.5,\,0.5) なのでD(W0.1p ∥ W0.1q)=0.82ln⁡1.64+0.18ln⁡0.36=0.4057−0.1839=0.2218D(W_{0.1}p\,\|\,W_{0.1}q)=0.82\ln1.64+0.18\ln0.36=0.4057-0.1839=0.2218 nat。比は 0.2218/0.3681=0.6020.2218/0.3681=0.602 で、図 1.4.2 の点線の ε=0.1\varepsilon =0.1 の値に一致し、極限の値 0.640.64 より小さい。
  2. 式 (1.4.10) から p(x=0 ∣ y=0)=0.9×0.9/0.82=0.9878p(x=0\,|\,y=0)=0.9\times0.9/0.82=0.9878、p(x=1 ∣ y=0)=0.0122p(x=1\,|\,y=0)=0.0122。一方 q(x=0 ∣ y=0)=0.9×0.5/0.5=0.9q(x=0\,|\,y=0)=0.9\times0.5/0.5=0.9、q(x=1 ∣ y=0)=0.1q(x=1\,|\,y=0)=0.1。2つが違うので等号は成り立たない。出力 y=0y=0 を見ても、それが入力 00 から来たのか反転した入力 11 から来たのかは pp と qq で確からしさが違い、その違いは出力の分布には残らない。
  3. y=1y=1 では p(x=0 ∣ y=1)=0.9×0.1/0.18=0.5p(x=0\,|\,y=1)=0.9\times0.1/0.18=0.5、q(x=0 ∣ y=1)=0.1q(x=0\,|\,y=1)=0.1 である。重み W0.1p=(0.82,0.18)W_{0.1}p=(0.82,0.18) で平均すると

0.82(0.9878ln⁡0.98780.9+0.0122ln⁡0.01220.1)+0.18(0.5ln⁡0.50.1+0.5ln⁡0.50.9)=0.82×0.0663+0.18×0.5108=0.1463.\begin{aligned}&0.82\Bigl(0.9878\ln\tfrac{0.9878}{0.9}+0.0122\ln\tfrac{0.0122}{0.1}\Bigr)+0.18\Bigl(0.5\ln\tfrac{0.5}{0.1}+0.5\ln\tfrac{0.5}{0.9}\Bigr)\\ &\qquad=0.82\times0.0663+0.18\times0.5108=0.1463 .\end{aligned}

(1) の差 0.3681−0.2218=0.14630.3681-0.2218=0.1463 と一致する。

木下の勉強ステータス

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