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出てくるもの(1):LOCC で純粋状態をどこまで変えられるか

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第4章 エンタングルメント
目次
  1. が減るだけでは足りない
  2. が1つの数で足りる場面
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第4章 §3.4.3 ★★ 1組の純粋状態の変換は EE の大小だけでは決まらず、Schmidt 係数の majorization で決まる(Nielsen の定理)

EE が減るだけでは足りない

定理 3.4.5 から、LOCC で ∣Ψ⟩| \Psi \rangle を ∣Φ⟩| \Phi \rangle に確実に変えられるなら E(Φ)≤E(Ψ)E(\Phi)\le E(\Psi) でなければならない。積状態は何からでも作れ(Alice と Bob がそれぞれの系を捨てて用意し直す)、積状態からはもつれた状態を作れない。では E(Φ)≤E(Ψ)E(\Phi)\le E(\Psi) なら必ず変えられるかというと、そうではない。1組だけの変換では、EE という1つの数でなく、Schmidt 係数の分布 λ\lambda 全体の比較が要る。その比較が majorization である。

定義 3.4.8(majorization)

長さ rr の確率分布 λ\lambda、μ\mu を大きい順に並べ(足りない分は 00 で埋める)、部分和を Λk=∑i≤kλi\Lambda_k=\sum_{i\le k}\lambda_i、Mk=∑i≤kμiM_k=\sum_{i\le k}\mu_i と書く。すべての kk で Λk≤Mk\Lambda_k\le M_k のとき、λ\lambda は μ\mu に majorize されるといい、λ≺μ\lambda\prec\mu と書く。

λ≺μ\lambda\prec\mu は「λ\lambda の方が μ\mu より一様に近い」ことの1つの言い方で、一様分布 (1/r,…,1/r)(1/r,\dots,1/r) はすべての分布に majorize され、(1,0,…,0)(1,0,\dots,0) はすべての分布を majorize する。部分和を kk に対して折れ線で描いたものを Lorenz 曲線と呼び(図 3.4.2)、λ≺μ\lambda\prec\mu は λ\lambda の折れ線が μ\mu の折れ線の下に全部収まることを意味する。2つの折れ線が交差すれば、どちら向きにも majorize しない。Hardy–Littlewood–Pólya の定理と Birkhoff の定理を組み合わせると、λ≺μ\lambda\prec\mu なら λ\lambda は μ\mu の成分を並べ替えたものの混合で書ける。Shannon エントロピーは凹で並べ替えで変わらないので、そこから H(λ)≥H(μ)H(\lambda)\ge H(\mu) が従う。逆は成り立たない。

定理 3.4.9(Nielsen の定理 ★★)

Schmidt 係数がそれぞれ λ\lambda、μ\mu の純粋状態 ∣Ψ⟩| \Psi \rangle、∣Φ⟩| \Phi \rangle について、LOCC で ∣Ψ⟩| \Psi \rangle を確率 11 で ∣Φ⟩| \Phi \rangle に変えられるための必要十分条件は λ≺μ\lambda\prec\mu である。

M. A. Nielsen が示した1M. A. Nielsen (1999), Physical Review Letters 83, 436–439。下の脚注へ。十分性の証明は具体的な手順の構成で長いので省き、必要性の筋道だけ書く。H.-K. Lo と S. Popescu は、純粋状態に対する LOCC の操作は、Alice が1回測定して結果を伝え、Bob がそれに応じたユニタリを当てる形に必ず直せることを示した2H.-K. Lo and S. Popescu (2001), Physical Review A 63, 022301。下の脚注へ。Alice の測定の Kraus 演算子を M^j\hat M_j とすると、結果 jj のあとの Alice 側の状態は M^jρ^AΨM^j†/pj\hat M_j\hat\rho_A^\Psi\hat M_j^\dagger/p_j で、これが ρ^AΦ\hat\rho_A^\Phi と同じ固有値を持たなければならない。極分解を使ってこの条件を書き直すと、ρ^AΨ=∑jpjV^jρ^AΦV^j†\hat\rho_A^\Psi=\sum_jp_j\hat V_j\hat\rho_A^\Phi\hat V_j^\dagger(V^j\hat V_j はユニタリ)が出る。大きい方から kk 個の固有値の和は凸関数(Ky Fan の最大値原理)なので、左辺の部分和 Λk\Lambda_k は右辺の各項の部分和 MkM_k の平均以下、つまり Λk≤Mk\Lambda_k\le M_k である。

図

図 3.4.2 例題 3.4.3 の2つの分布の Lorenz 曲線(部分和 Λk\Lambda_k、MkM_k)。k=1k=1 では μ\mu が上、k=2k=2 では λ\lambda が上で、折れ線が交差するのでどちら向きにも majorize しない。灰色の線は一様分布で、すべての分布の折れ線はこれより上にある

EE が1つの数で足りる場面

1組の状態には「大きな λ1\lambda_1 を持つ」のような EE 以外の情報が残っているので、1組の変換では EE だけでは足りない。多数のコピーを同時に扱い、小さな失敗の確率を許すと、事情は変わる。第1部第2章の典型系列(第1部第2章)と同じで、nn 組の ∣Ψ⟩⊗n| \Psi \rangle ^{\otimes n} の Schmidt 係数の分布は、nn が大きいと enE(Ψ)\mathrm{e}^{nE(\Psi)} 個ほどのほぼ等しい係数に集まる。そこでは分布の形の違いが消え、EE だけが残る。これが 3.4.5節の蒸留である。

例題 3.4.3 変えられない2つの状態と、Bell 状態からの変換 ★★

オリジナル3準位どうしの純粋状態 ∣Ψ⟩| \Psi \rangle、∣Φ⟩| \Phi \rangle の Schmidt 係数を λ=(0.5,0.4,0.1)\lambda=(0.5,0.4,0.1)、μ=(0.6,0.2,0.2)\mu=(0.6,0.2,0.2) とする。

  1. E(Ψ)E(\Psi) と E(Φ)E(\Phi) を求めよ。
  2. LOCC で ∣Ψ⟩→∣Φ⟩| \Psi \rangle \to| \Phi \rangle と ∣Φ⟩→∣Ψ⟩| \Phi \rangle \to| \Psi \rangle のどちらも確率 11 ではできないことを示せ。EE の大小だけで判断すると何を誤るか。
  3. 2量子ビットの ∣Φ+⟩| \Phi^+ \rangle を ∣χ⟩=3/4 ∣00⟩+1/4 ∣11⟩| \chi \rangle =\sqrt{3/4}\,| 00 \rangle +\sqrt{1/4}\,| 11 \rangle に確率 11 で変える手順を、Alice の2つの結果の測定と、結果を聞いたあとの局所ユニタリで作れ。
解答

(1) E(Ψ)=−0.5ln⁡0.5−0.4ln⁡0.4−0.1ln⁡0.1=0.9433E(\Psi)=-0.5\ln0.5-0.4\ln0.4-0.1\ln0.1=0.9433 nat、E(Φ)=−0.6ln⁡0.6−2×0.2ln⁡0.2=0.9503E(\Phi)=-0.6\ln0.6-2\times0.2\ln0.2=0.9503 nat。

(2) 部分和は λ\lambda が (0.5, 0.9, 1)(0.5,\ 0.9,\ 1)、μ\mu が (0.6, 0.8, 1)(0.6,\ 0.8,\ 1) である。k=1k=1 では 0.5<0.60.5<0.6、k=2k=2 では 0.9>0.80.9>0.8 なので、λ≺μ\lambda\prec\mu も μ≺λ\mu\prec\lambda も成り立たない(図 3.4.2)。Nielsen の定理からどちら向きも確率 11 ではできない。∣Ψ⟩→∣Φ⟩| \Psi \rangle \to| \Phi \rangle は EE を増やすので単調性だけからも禁じられる。∣Φ⟩→∣Ψ⟩| \Phi \rangle \to| \Psi \rangle は EE を 0.95030.9503 から 0.94330.9433 へ減らすので、EE の大小だけで判断すると「できる」と誤る。

(3) (1/2,1/2)≺(3/4,1/4)(1/2,1/2)\prec(3/4,1/4) なので Nielsen の定理から可能である。a=3/4a=\sqrt{3/4}、b=1/4b=\sqrt{1/4} とし、Alice が Kraus 演算子

M^1=a∣0⟩⟨0∣+b∣1⟩⟨1∣,M^2=b∣0⟩⟨0∣+a∣1⟩⟨1∣\hat M_1=a| 0 \rangle \langle 0 |+b| 1 \rangle \langle 1 |,\qquad \hat M_2=b| 0 \rangle \langle 0 |+a| 1 \rangle \langle 1 |

の測定をする。M^1†M^1+M^2†M^2=(a2+b2)1=1\hat M_1^\dagger\hat M_1+\hat M_2^\dagger\hat M_2=(a^2+b^2)\mathbf 1=\mathbf 1 なので正しい測定である。結果1なら状態は (M^1⊗1)∣Φ+⟩=(a∣00⟩+b∣11⟩)/2(\hat M_1\otimes\mathbf 1)| \Phi^+ \rangle =(a| 00 \rangle +b| 11 \rangle )/\sqrt2 で、確率 1/21/2 で規格化すると ∣χ⟩| \chi \rangle そのものになる。結果2なら b∣00⟩+a∣11⟩b| 00 \rangle +a| 11 \rangle になり、Alice が電話で知らせて2人が XX を当てると (X⊗X)(b∣00⟩+a∣11⟩)=b∣11⟩+a∣00⟩=∣χ⟩(X\otimes X)(b| 00 \rangle +a| 11 \rangle )=b| 11 \rangle +a| 00 \rangle =| \chi \rangle。どちらの結果でも ∣χ⟩| \chi \rangle が得られる。EE は ln⁡2=0.6931\ln2=0.6931 から hb(1/4)=0.5623h_{\mathrm b}(1/4)=0.5623 nat に減っている。

1 M. A. Nielsen (1999), Physical Review Letters 83, 436–439。

2 H.-K. Lo and S. Popescu (2001), Physical Review A 63, 022301。

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