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当てる D の性質:フィードバックつきの経路の確率

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第4章 Szilard エンジンと測定・フィードバック
目次
  1. 測定の無い過程の復習
  2. 測定とフィードバックを入れる
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第4章 §4.4.3 ★★★ 測定を含む経路の確率と、結果ごとに操作を逆回しにした経路の確率の比の対数は β(W−ΔF)+I(x;y)\beta(W-\Delta F)+I(x;y)

前の2節は、準静的な操作と平均の仕事に限っていた。この節では、有限の速さの操作も含め、1本1本の経路について同じことを言う。道具は前の章で示した経路の確率の比である。

測定の無い過程の復習

系の状態の時間列(経路)を Γ=(x0,x1,…,xN)\Gamma=(x_0,x_1,\dots,x_N) と書く。Hamiltonian Eλ(x)E_\lambda(x) のパラメータ λ\lambda を、決めておいた手順 Λ=(λ0,λ1,…,λN)\Lambda=(\lambda_0,\lambda_1,\dots,\lambda_N) で動かし、各段で系は温度 TT の熱浴に接して遷移する。1段の遷移は、そのときの λ\lambda の Gibbs 分布に対して詳細つり合いを満たすとする(局所詳細つり合い)。系が受け取る仕事は、パラメータを変えた瞬間のエネルギーの変化の和 W[Γ]=∑n=0N−1[Eλn+1(xn)−Eλn(xn)]W[\Gamma]=\sum_{n=0}^{N-1}\bigl[E_{\lambda_{n+1}}(x_n)-E_{\lambda_n}(x_n)\bigr] である。

初めの分布を λ0\lambda_0 の Gibbs 分布とした前向きの経路の確率を P[Γ ∣ Λ]P[\Gamma\,|\,\Lambda]、初めの分布を終わりのパラメータ λN\lambda_N の Gibbs 分布とし、手順を逆に並べた Λ†=(λN,…,λ0)\Lambda^\dagger=(\lambda_N,\dots,\lambda_0) で動かしたときに、逆回しの経路 Γ~=(xN,…,x0)\tilde\Gamma=(x_N,\dots,x_0) をたどる確率を P~[Γ~ ∣ Λ†]\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,\Lambda^\dagger] と書く。前の章で示した Crooks の関係は

P[Γ ∣ Λ]P~[Γ~ ∣ Λ†]=eβ(W[Γ]−ΔF),ΔF=FλN−Fλ0(4.4.10)\frac{P[\Gamma\,|\,\Lambda]}{\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,\Lambda^\dagger]}=\mathrm{e}^{\beta(W[\Gamma]-\Delta F)},\qquad \Delta F=F_{\lambda_N}-F_{\lambda_0}\tag{4.4.10}

である(第4部第2章)。両辺を PP で平均すると、左辺の対数の平均は経路の相対エントロピー D(P ∥ P~)D(P\,\|\,\tilde P) で、

D(P ∥ P~)=β(⟨W⟩−ΔF)≥0(4.4.11)D(P\,\|\,\tilde P)=\beta\bigl(\langle W \rangle -\Delta F\bigr)\ge0\tag{4.4.11}

が出る。これが前の章(第4部第3章)の「第二法則は経路の DD の非負性」の、初めに平衡にある場合の形である。

測定とフィードバックを入れる

時刻 00 で系の状態 x0x_0 を測り、結果 yy を確率 p(y ∣ x0)p(y\,|\,x_0) で得る。その後のパラメータの手順を結果に合わせて Λy\Lambda_y と選ぶ。手順の終わりのパラメータも yy によってよく、自由エネルギーの差を ΔFy\Delta F_y と書く。初めの分布 peq(x0)p_{\mathrm{eq}}(x_0) は λ0\lambda_0 の Gibbs 分布で、すべての yy に共通である。経路と結果の同時確率は

P[Γ,y]=p(y ∣ x0) P[Γ ∣ Λy](4.4.12)P[\Gamma,y]=p(y\,|\,x_0)\,P[\Gamma\,|\,\Lambda_y]\tag{4.4.12}

である。P[Γ ∣ Λy]P[\Gamma\,|\,\Lambda_y] には初めの分布 peq(x0)p_{\mathrm{eq}}(x_0) が含まれている。

比べる相手として、次の「逆回しの過程」を考える。まず結果 yy を、前向きの過程と同じ確率 p(y)p(y) でくじ引きで決める。次に、終わりのパラメータの Gibbs 分布から出発して、手順 Λy\Lambda_y を逆に並べた Λy†\Lambda_y^\dagger で系を動かす。測定はしない。この過程で (Γ~,y)(\tilde\Gamma,y) が出る確率は

P~[Γ~,y]=p(y) P~[Γ~ ∣ Λy†](4.4.13)\tilde P[\tilde\Gamma,y]=p(y)\,\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,\Lambda_y^\dagger]\tag{4.4.13}

で、∑y∑Γ~P~[Γ~,y]=∑yp(y)=1\sum_y\sum_{\tilde\Gamma}\tilde P[\tilde\Gamma,y]=\sum_yp(y)=1 と規格化されている。

定理 4.4.3(フィードバックつきの経路の比 ★★★)

式 (4.4.12)・(4.4.13) の2つの経路の確率について

ln⁡P[Γ,y]P~[Γ~,y]=β(W[Γ]−ΔFy)+I(x0;y),I(x0;y)=ln⁡p(y ∣ x0)p(y).(4.4.14)\ln\frac{P[\Gamma,y]}{\tilde P[\tilde\Gamma,y]}=\beta\bigl(W[\Gamma]-\Delta F_y\bigr)+I(x_0;y),\qquad I(x_0;y)=\ln\frac{p(y\,|\,x_0)}{p(y)}.\tag{4.4.14}

証明

式 (4.4.12) を式 (4.4.13) で割ると

P[Γ,y]P~[Γ~,y]=p(y ∣ x0)p(y)⋅P[Γ ∣ Λy]P~[Γ~ ∣ Λy†]\frac{P[\Gamma,y]}{\tilde P[\tilde\Gamma,y]}=\frac{p(y\,|\,x_0)}{p(y)}\cdot\frac{P[\Gamma\,|\,\Lambda_y]}{\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,\Lambda_y^\dagger]}

である。yy を固めると Λy\Lambda_y は決めておいた手順なので、第2の因子に Crooks の関係 (4.4.10) を当てることができ、eβ(W−ΔFy)\mathrm{e}^{\beta(W-\Delta F_y)} になる。対数をとれば式 (4.4.14) である。

式 (4.4.14) の右辺の第2項 I(x0;y)I(x_0;y) が、測定の無い式 (4.4.10) からの違いのすべてである。この項は、測定の結果 yy が系の状態 x0x_0 についてどれだけのことを教えたかを、経路1本ごとに測ったものである。yy が x0x_0 について何も教えないなら(p(y ∣ x0)=p(y)p(y\,|\,x_0)=p(y))、I(x0;y)=0I(x_0;y)=0 で式 (4.4.10) に戻る。

測定の時刻が途中にある場合

測定を途中の時刻 tmt_{\mathrm m} に行い、それまでの手順はすべての yy に共通、それ以降を yy によって変える場合も、同じ式が成り立つ。前向きの確率は P[Γ,y]=p(y ∣ xtm)P[Γ ∣ Λy]P[\Gamma,y]=p(y\,|\,x_{t_{\mathrm m}})P[\Gamma\,|\,\Lambda_y](Λy\Lambda_y は tmt_{\mathrm m} の前で共通の手順と、後で yy によって変わる手順をつないだもの)と書けるので、証明の x0x_0 を xtmx_{t_{\mathrm m}} に替えればよい。式 (4.4.14) の II は、測った時刻の状態と結果の I(xtm;y)I(x_{t_{\mathrm m}};y) になる。測定を何回も行う場合は、結果の列とそれぞれの時刻の状態のあいだの II の和に置き換わる。

例題 4.4.3 測定せずに仕切りを動かす ★★

オリジナルSzilard エンジンで、測定をせずに、いつも仕切りを左の壁から測って体積の割合 0.90.9 の位置まで準静的に動かしてから取り去る。

  1. 分子が左にいた回と右にいた回の仕事 WW を求め、平均 β⟨W⟩\beta\langle W \rangle を計算せよ。
  2. 逆回しの過程(仕切りを割合 0.90.9 の位置に入れ、真ん中まで準静的に動かす)で分子が左右にいる確率を求め、経路の比の対数が βW\beta W に等しいことを確かめよ。
  3. 式 (4.4.11) の D(P ∥ P~)D(P\,\|\,\tilde P) が D((1/2,1/2) ∥ (0.9,0.1))D\bigl((1/2,1/2)\,\|\,(0.9,0.1)\bigr) に等しいことを示せ。
解答

(1) 左にいた回は体積が V/2V/2 から 0.9V0.9V に広がるので βW=−ln⁡1.8\beta W=-\ln1.8、右にいた回は V/2V/2 から 0.1V0.1V に縮むので βW=−ln⁡0.2=ln⁡5\beta W=-\ln0.2=\ln5 である。平均は

β⟨W⟩=−12ln⁡1.8+12ln⁡5=12ln⁡59+12ln⁡5=−0.2939+0.8047=0.5108\beta\langle W \rangle =-\tfrac12\ln1.8+\tfrac12\ln5=\tfrac12\ln\frac{5}{9}+\tfrac12\ln5=-0.2939+0.8047=0.5108

で、正である。1回の操作で系は元に戻るので ΔF=0\Delta F=0 で、平均で仕事を払う。測定が無いので第二法則 ⟨W⟩≥ΔF\langle W \rangle \ge\Delta F が成り立つ。

(2) 逆回しの過程では、全体の一様分布から仕切りを割合 0.90.9 の位置に入れるので、分子は確率 0.90.9 で左、0.10.1 で右にいる。その後は準静的に動かすだけで、分子はその側にとどまる。前向きの過程で分子が左右にいる確率は 1/21/2 ずつなので、経路の比の対数は、左なら ln⁡(0.5/0.9)=−ln⁡1.8\ln(0.5/0.9)=-\ln1.8、右なら ln⁡(0.5/0.1)=ln⁡5\ln(0.5/0.1)=\ln5 で、どちらも (1) の βW\beta W に等しい。

(3) 準静的な部分では、経路は分子のいる側 xx だけで決まり、細かい動きの確率は前向きと逆向きで等しく打ち消し合う。したがってD(P ∥ P~)=∑x12ln⁡1/2vx=D((1/2,1/2) ∥ (0.9,0.1))=0.5108D(P\,\|\,\tilde P)=\sum_x\frac12\ln\frac{1/2}{v_x}=D\bigl((1/2,1/2)\,\|\,(0.9,0.1)\bigr)=0.5108 で、(1) の β⟨W⟩\beta\langle W \rangle に一致する。式 (4.4.9) で I=0I=0、qy=(0.9,0.1)q_y=(0.9,0.1) とおいた場合でもある。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 熱浴の相関時間と系の遷移の時間の比 →0\to0(弱結合の van Hove 極限) | 証明 条件付き(熱浴の相関が速く減衰し、系は有限次元。量子系で Davies 1974)。局所詳細つり合いはこの上の仮定 | 行き先 近似の数理 第14章

木下の勉強ステータス

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