出てくるもの1:誤りはエニオンの対である
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第5部 第2章 §5.2.3 ★★★ トーリック符号の誤りは格子の上の弦で、その端に現れる励起(エニオン)を互いの周りに回すと符号 が付く。論理演算子はエニオンをトーラスに一周させる操作である
弦と端点
基底状態のある辺 に を当てる。 は の両端の頂点の と反交換し、ほかのすべての生成元と交換するので、両端の2つの の固有値が に変わる。エネルギーは 上がる。続けて、隣の辺に を当てていくと、 の付いた辺の列(弦)の途中の頂点には の付いた辺が2本集まるので に戻り、弦の両端だけに が残る。弦をどれだけ伸ばしてもエネルギーは のままで、励起は弦の端に局在した2つの粒子のようにふるまう。 の頂点に居るこの励起を と書く。同じように、双対格子の上の弦に沿って を当てると、その両端の面に が現れる。この励起を と書く(図 5.2.2)。
誤り訂正の言葉では、 の誤りが起きた辺の集合が弦で、シンドローム( の測定値)は弦の端点、すなわち の位置だけを教える。訂正の操作は、観測された を2つずつ組にして、それぞれを弦で結んで消すことである。実際の誤りの弦 と訂正の弦 は同じ端点を持つので、(両方の を掛けたもの)は閉じた輪になる。輪がトーラスを一周しなければそれは面の演算子の積で、基底状態に何もしない。一周すれば論理演算子 か が残り、訂正は失敗する。誤りの弦が長くなって を超えると、端点だけからはどちら回りで結べばよいかが分からなくなる。これが距離 の意味である。量子ビットごとに独立な誤りが起きるときに、符号を大きくすれば論理誤りがいくらでも減る誤り率のしきい値が存在することは、Dennis–Kitaev–Landahl–Preskill が乱れた Ising 模型の相転移に対応させて示した1E. Dennis, A. Kitaev, A. Landahl and J. Preskill (2002), J. Math. Phys. 43, 4452。下の脚注へ。しきい値の値と、平面に切った表面符号は 第6部第5章で扱う。
図 5.2.2 エニオン。緑の の弦は両端の頂点に ()を作り、橙の の弦(太線の辺に )は双対格子の両端の面に ()を作る。弦の途中では生成元の固有値は のまま。紫の輪は を上の の周りに1周させる経路で、その の積は囲んだ面の に等しく、 のある面では固有値 を持つ。
回すと付く符号
を閉じた経路 に沿って一周させる操作は、 に沿った の積 である。 がトーラスを一周しなければ、 は が囲む面の の積に等しい。したがって
で、 は の内側にある の数である。 を の周りに回すと、2つがどれだけ離れていても、経路の形によらず状態に が掛かる。 を の周りに回しても、 どうしは交換するので何も起きない。2つの粒子を入れ替えると波動関数に か が付くのがボソンとフェルミオンだが、 と はどちらもそれ自身はボソンでありながら、互いの周りを回ると を拾う。このような準粒子をエニオンと呼ぶ。 と を重ねた複合粒子 はフェルミオンとしてふるまうことも示せる(Kitaev 2003)。
この は電磁気学の Aharonov–Bohm 効果と同じ形をしている。電荷 の粒子が磁束 を囲む経路を回ると、波動関数に位相 が付く。 を電荷、 を磁束と読めば、トーリック符号は位相 の場合にあたる(5.2.6節)。
論理演算子はエニオンの一周
論理演算子 は、基底状態から の対を作り、その片方をトーラスに沿って横に一周させ、元の場所で対消滅させる操作として読むことができる。端点がすべて消えるので最後の状態は再び基底状態だが、別の基底状態に移っている。 は を縦に一周させる操作である。 と の反交換は、 の一周の経路と の一周の経路がトーラスの上で1回交わることの表れで、式 (5.2.8) の と同じものである。エニオンの種類は (励起なし)・・・ の4つで、トーラスの基底状態の縮退 と一致する。種数 の面(穴が 個)では縮退は になる(Kitaev 2003)。
例題 5.2.3 弦の端と回したときの符号 ★★
オリジナル のトーリック符号の基底状態から出発する。
- (1) 辺 と に を当てた。 になる頂点と、エネルギーの増加を求めよ。
- (2) さらに辺 に を当てた。 になる面を求めよ(面は左下の頂点で呼ぶ)。
- (3) (1) の の1つを面 を囲む4辺に沿って一周させると、状態に何が掛かるか。面 を囲む4辺に沿って一周させた場合はどうか。
解答
(1) は頂点 と を、 は と を結ぶ。頂点 には の付いた辺が2本集まるので と交換し、端の と だけで と反交換する。 が頂点 と に1個ずつでき、エネルギーは 上がる。
(2) を辺に持つ面は、その上側の面 と下側の面 である。 はこの2つの と反交換するので、 が面 と にできる。
(3) 面 を囲む4辺の の積は そのもので、(2) の後の状態では固有値 を持つ。よって状態に が掛かる。これは が の周りを1周した符号である。 を一周させても の位置は元に戻るので、(1) の はそのまま残る。面 には が無いので で、何も掛からない。( を2つとも囲む輪では になる。scripts/verify_ch5-02.py で交換関係から確かめた。)
ほかの巻では
- 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第6章:エニオンの一周の位相 と同じ形の、磁束のまわりを回る荷電粒子の Aharonov–Bohm 位相が読める
1 E. Dennis, A. Kitaev, A. Landahl and J. Preskill (2002), J. Math. Phys. 43, 4452。
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