tecktom.com

当てる DD の性質:部分系に制限すると DD が消える

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第2章 位相秩序は量子誤り訂正符号である
目次
  1. 部分トレースもデータ処理である
  2. トーリック符号ではどの小さな領域でも
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第5部 第2章 §5.2.2 ★★★ 縮退した基底状態の部分系の DD が 00 であること・Knill–Laflamme 条件・参照系との相互情報量 00 の3つが同値であることを示し、これを位相秩序の定義として採る

部分トレースもデータ処理である

全体の状態 ρ^\hat\rho から領域 AA の状態 ρ^A=Tr⁡Aˉρ^\hat\rho_A=\operatorname{Tr}_{\bar A}\hat\rho を取る操作は、量子チャネルの1つである(第3部第1章)。A⊂A′A\subset A' なら ρ^A\hat\rho_A は ρ^A′\hat\rho_{A'} をさらに部分トレースしたものなので、量子データ処理不等式(第3部第3章)から

D(ρ^A ∥ σ^A)≤D(ρ^A′ ∥ σ^A′)≤D(ρ^ ∥ σ^)(A⊂A′)(5.2.7)D(\hat\rho_A\,\|\,\hat\sigma_A)\le D(\hat\rho_{A'}\,\|\,\hat\sigma_{A'})\le D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)\qquad(A\subset A')\tag{5.2.7}

が成り立つ。見る範囲を狭めると、2つの状態の見分けやすさは減ることはあっても増えることはない。この章の関心は、この不等式がどれだけ弱くなるかである。トーリック符号の ∣ψ++⟩| \psi_{++} \rangle と ∣ψ−+⟩| \psi_{-+} \rangle は直交するので右端は +∞+\infty だが、左端は次の定理によって 00 になる。

定理 5.2.1(局所的に区別できないことの3つの言い方 ★★★)

符号空間 C\mathcal C(dim⁡C=K\dim\mathcal C=K、射影子 P^\hat P)と領域 AA について、次の3つは同値である。

  1. (i) AA に台を持つすべての演算子 O^A\hat O_A について、P^O^AP^=c(O^A) P^\hat P\hat O_A\hat P=c(\hat O_A)\,\hat P(cc は数)。
  2. (ii) C\mathcal C に台を持つ任意の2つの状態 ρ^,σ^\hat\rho,\hat\sigma について、ρ^A=σ^A\hat\rho_A=\hat\sigma_A。すなわち D(ρ^A ∥ σ^A)=0D(\hat\rho_A\,\|\,\hat\sigma_A)=0。
  3. (iii) C\mathcal C を参照系 RR と最大にもつれさせた純粋状態で、I(R;A)=D(ρ^RA ∥ ρ^R⊗ρ^A)=0I(R;A)=D(\hat\rho_{RA}\,\|\,\hat\rho_R\otimes\hat\rho_A)=0。
証明

(i)⇒\Rightarrow(ii):ρ^=P^ρ^P^\hat\rho=\hat P\hat\rho\hat P なので Tr⁡(ρ^AO^A)=Tr⁡(ρ^O^A)=Tr⁡(ρ^P^O^AP^)=c(O^A)Tr⁡ρ^=c(O^A)\operatorname{Tr}(\hat\rho_A\hat O_A)=\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat O_A)=\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat P\hat O_A\hat P)=c(\hat O_A)\operatorname{Tr}\hat\rho=c(\hat O_A)。右辺は ρ^\hat\rho によらないので、すべての O^A\hat O_A の期待値が ρ^A\hat\rho_A と σ^A\hat\sigma_A で等しく、ρ^A=σ^A\hat\rho_A=\hat\sigma_A である。

(ii)⇒\Rightarrow(i):C\mathcal C の任意の単位ベクトル ∣ψ⟩| \psi \rangle について ⟨ψ∣O^A∣ψ⟩\langle \psi | \hat O_A | \psi \rangle が同じ値 cc を取る。2次形式 ∣ψ⟩↦⟨ψ∣O^A−c∣ψ⟩| \psi \rangle \mapsto\langle \psi | \hat O_A-c | \psi \rangle が C\mathcal C 全体で 00 なので、M^=O^A−c\hat M=\hat O_A-c について、偏極恒等式 ⟨ψ∣M^∣ϕ⟩=14∑k=03i−k⟨χk∣M^∣χk⟩\langle \psi | \hat M | \phi \rangle =\frac14\sum_{k=0}^{3}\mathrm{i}^{-k}\langle \chi_k | \hat M | \chi_k \rangle(∣χk⟩=∣ψ⟩+ik∣ϕ⟩| \chi_k \rangle =| \psi \rangle +\mathrm{i}^k| \phi \rangle)の右辺の各項が 00 になる(∣χk⟩| \chi_k \rangle も C\mathcal C に入るので)。したがって C\mathcal C の任意の2つのベクトルの間の M^\hat M の行列要素が 00 で、P^(O^A−c)P^=0\hat P(\hat O_A-c)\hat P=0 を得る。

(ii)⇔\Leftrightarrow(iii):C\mathcal C の正規直交基底 ∣iL⟩| i_{\mathrm L} \rangle(i=1,…,Ki=1,\dots,K)で ∣Φ⟩=K−1/2∑i∣i⟩R∣iL⟩| \Phi \rangle =K^{-1/2}\sum_i| i \rangle _R| i_{\mathrm L} \rangle と書くと

ρ^RA=1K∑i,j∣i⟩⟨j∣R⊗Tr⁡Aˉ(∣iL⟩⟨jL∣).\hat\rho_{RA}=\frac1K\sum_{i,j}| i \rangle \langle j |_R\otimes\operatorname{Tr}_{\bar A}\bigl(| i_{\mathrm L} \rangle \langle j_{\mathrm L} |\bigr).

I(R;A)=0I(R;A)=0 は ρ^RA=ρ^R⊗ρ^A=1RK⊗ρ^A\hat\rho_{RA}=\hat\rho_R\otimes\hat\rho_A=\frac{\mathbf 1_R}{K}\otimes\hat\rho_A(DD が 00 になるのは2つの状態が等しいときだけ)と同値で、成分で書くとTr⁡Aˉ(∣iL⟩⟨jL∣)=δijρ^A\operatorname{Tr}_{\bar A}(| i_{\mathrm L} \rangle \langle j_{\mathrm L} |)=\delta_{ij}\hat\rho_A。これを O^A\hat O_A との内積で書けば ⟨jL∣O^A∣iL⟩=δijTr⁡(ρ^AO^A)\langle j_{\mathrm L} | \hat O_A | i_{\mathrm L} \rangle =\delta_{ij}\operatorname{Tr}(\hat\rho_A\hat O_A) で、(i) の行列成分の形そのものである。

(i) は 第3部第9章の Knill–Laflamme 条件で、誤りの集合を「AA に台を持つすべての演算子」に取ったものである。これは「AA の量子ビットがすべて消失しても(どの量子ビットが失われたかは分かっている)論理状態を回復できる」という条件にあたる。(iii) は同じ章で示した「環境に情報が漏れていなければ回復できる」の言い方で、ここでは AA を環境とみなしている。

トーリック符号ではどの小さな領域でも D=0D=0

トーリック符号で (i) を確かめる。O^A\hat O_A を Pauli 演算子の線形結合に展開すれば、Pauli 演算子 EE ごとに確かめれば足りる。EE がどれかの生成元と反交換するなら、第3部第9章の議論どおり P^EP^=0\hat PE\hat P=0 である。すべての生成元と交換するなら EE は S\mathcal S の元か論理演算子で、論理演算子なら重みは LL 以上で、しかもトーラスを一周する輪に沿った台を持つ。したがって AA がトーラスを一周する輪を含まないなら(とくに ∣A∣<L\lvert A\rvert <L なら)、交換する EE は S\mathcal S の元に限られ、P^EP^=±P^\hat PE\hat P=\pm\hat P となる。どちらにしても P^\hat P の定数倍である。

こうして、トーラスを一周しない領域 AA については、4つの基底状態のどれを取っても、それらのどんな重ね合わせや混合を取っても、AA の縮約状態は同じになる。AA をだんだん広げていくと、D(ρ^A ∥ σ^A)D(\hat\rho_A\,\|\,\hat\sigma_A) は 00 のまま増えず、AA が論理演算子の台(一周する輪)を含んだところで初めて正になる。式 (5.2.7) の単調性は保たれているが、増え方は連続でなく、一度に跳ぶ(例題 5.2.2)。

定義 5.2.2(位相秩序)

系の大きさ LL とともに縮退した基底状態の空間 CL\mathcal C_L の族を考える。直径が ℓ(L)\ell(L) 未満のすべての領域 AA で定理 5.2.1 の条件が成り立ち、ℓ(L)→∞\ell(L)\to\infty(L→∞L\to\infty)となるとき、この族は位相秩序を持つという。言い換えると、基底状態の空間は距離が LL とともに増える量子誤り訂正符号で、2つの基底状態の DD は大きさ ℓ(L)\ell(L) 未満のどの部分系に制限しても 00 になる。

これは Bravyi–Hastings–Michalakis が摂動に対する安定性を証明するときに課した条件1S. Bravyi, M. B. Hastings and S. Michalakis (2010), J. Math. Phys. 51, 093512。この論文では、領域の大きさが LL に比例する範囲で (i) が成り立つことと、局所的な射影の整合性をあわせて課している。下の脚注への中心部分で、Wen の「局所的な観測では区別できない縮退」をそのまま式にしたものになっている。トーリック符号は ℓ(L)=L\ell(L)=L でこの定義を満たす。

例題 5.2.2 領域を広げると DD が跳ぶ ★★

オリジナルL=3L=3 のトーリック符号で、ρ^=∣ψ++⟩⟨ψ++∣\hat\rho=| \psi_{++} \rangle \langle \psi_{++} |、ρ^′=∣ψ−+⟩⟨ψ−+∣\hat\rho'=| \psi_{-+} \rangle \langle \psi_{-+} |(∣ψ−+⟩=Xˉ1∣ψ++⟩| \psi_{-+} \rangle =\bar X_1| \psi_{++} \rangle)とし、σ^=12(ρ^+ρ^′)\hat\sigma=\frac12(\hat\rho+\hat\rho') とおく。横の行 y=0y=0 の辺を a1=h(0,0)a_1=h(0,0)、a2=h(1,0)a_2=h(1,0)、a3=h(2,0)a_3=h(2,0) として、入れ子の領域 A1={a1}⊂A2={a1,a2}⊂A3={a1,a2,a3}A_1=\{a_1\}\subset A_2=\{a_1,a_2\}\subset A_3=\{a_1,a_2,a_3\} を考える。

  1. (1) 全体の D(ρ^ ∥ σ^)D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma) を求めよ。
  2. (2) D(ρ^A1 ∥ σ^A1)D(\hat\rho_{A_1}\,\|\,\hat\sigma_{A_1}) と D(ρ^A2 ∥ σ^A2)D(\hat\rho_{A_2}\,\|\,\hat\sigma_{A_2}) を求めよ。
  3. (3) D(ρ^A3 ∥ σ^A3)D(\hat\rho_{A_3}\,\|\,\hat\sigma_{A_3}) を求め、式 (5.2.7) と矛盾しないことを確かめよ。
解答

(1) ρ^\hat\rho と ρ^′\hat\rho' は直交する純粋状態なので、σ^\hat\sigma の固有値は 12\frac12(固有ベクトル ∣ψ++⟩| \psi_{++} \rangle)と 12\frac12(∣ψ−+⟩| \psi_{-+} \rangle)である。D(ρ^ ∥ σ^)=Tr⁡ρ^(ln⁡ρ^−ln⁡σ^)=0−ln⁡12=ln⁡2D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)=\operatorname{Tr}\hat\rho(\ln\hat\rho-\ln\hat\sigma)=0-\ln\frac12=\ln2。

(2) A1A_1、A2A_2 はトーラスを一周する輪を含まないので、定理 5.2.1 により ρ^Ai=ρ^Ai′\hat\rho_{A_i}=\hat\rho'_{A_i}、したがって σ^Ai=ρ^Ai\hat\sigma_{A_i}=\hat\rho_{A_i} で、D=0D=0 である。

(3) A3A_3 は Zˉ1=Za1Za2Za3\bar Z_1=Z_{a_1}Z_{a_2}Z_{a_3} の台を含む。ρ^A3\hat\rho_{A_3} は Zˉ1=+1\bar Z_1=+1 の部分空間 Π+\Pi_+ に、ρ^A3′\hat\rho'_{A_3} は Zˉ1=−1\bar Z_1=-1 の部分空間 Π−\Pi_- に台を持つので、2つは直交する。σ^A3=12(ρ^A3+ρ^A3′)\hat\sigma_{A_3}=\frac12(\hat\rho_{A_3}+\hat\rho'_{A_3}) は直交する2つのブロックの和なので ln⁡σ^A3\ln\hat\sigma_{A_3} は各ブロックで ln⁡12+ln⁡ρ^A3\ln\frac12+\ln\hat\rho_{A_3} になり、D(ρ^A3 ∥ σ^A3)=Tr⁡ρ^A3(ln⁡ρ^A3−ln⁡12−ln⁡ρ^A3)=ln⁡2D(\hat\rho_{A_3}\,\|\,\hat\sigma_{A_3})=\operatorname{Tr}\hat\rho_{A_3}\bigl(\ln\hat\rho_{A_3}-\ln\tfrac12-\ln\hat\rho_{A_3}\bigr)=\ln2。入れ子の領域での値は 0,0,ln⁡20,0,\ln2 で単調に増え、全体の値 ln⁡2\ln2 を超えないので式 (5.2.7) と矛盾しない。2辺から3辺に広げた所で、00 から上限の ln⁡2\ln2 まで一度に跳ぶ。σ^\hat\sigma の代わりに ρ^′\hat\rho' と比べると、値は 0,0,+∞0,0,+\infty になる(18 量子ビットの状態ベクトルで直接に確かめた。scripts/verify_ch5-02.py)。

1 S. Bravyi, M. B. Hastings and S. Michalakis (2010), J. Math. Phys. 51, 093512。この論文では、領域の大きさが LL に比例する範囲で (i) が成り立つことと、局所的な射影の整合性をあわせて課している。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ