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出てくるもの2:エンタングルメント・エントロピーの −γ-\gamma

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第2章 位相秩序は量子誤り訂正符号である
目次
  1. 安定化状態のエントロピーは数えるだけで出る
  2. 境界の項を消して定数だけ取り出す
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第5部 第2章 §5.2.4 ★★★ 基底状態の部分系のエントロピーは境界の長さに比例する項から定数 γ=ln⁡2\gamma=\ln2 を引いたもので、γ\gamma は3つの領域の条件付き相互情報量の組み合わせで取り出せる

安定化状態のエントロピーは数えるだけで出る

nn 量子ビットの純粋な安定化状態は、2n2^n 個の元を持つ安定化群 S\mathcal S を使って ρ^=2−n∑g∈Sg\hat\rho=2^{-n}\sum_{g\in\mathcal S}g と書ける(S\mathcal S の射影子の式で k=0k=0 にしたもの)。領域 AA の外を部分トレースすると、AA の外で恒等でない因子を持つ gg はトレースが 00 なので消え、AA の中だけに台を持つ元の集合 SA\mathcal S_A だけが残る:

ρ^A=12∣A∣∑g∈SAg=∣SA∣2∣A∣⋅1∣SA∣∑g∈SAg.(5.2.9)\hat\rho_A=\frac{1}{2^{\lvert A\rvert }}\sum_{g\in\mathcal S_A}g=\frac{\lvert \mathcal S_A\rvert }{2^{\lvert A\rvert }}\cdot\frac{1}{\lvert \mathcal S_A\rvert }\sum_{g\in\mathcal S_A}g .\tag{5.2.9}

右の因子は SA\mathcal S_A の符号空間への射影子で、階数は 2∣A∣/∣SA∣2^{\lvert A\rvert }/\lvert \mathcal S_A\rvert である。ρ^A\hat\rho_A はこの射影子に比例するので、固有値はすべて等しく

S(ρ^A)=(∣A∣−log⁡2∣SA∣)ln⁡2(5.2.10)S(\hat\rho_A)=\Bigl(\lvert A\rvert -\log_2\lvert \mathcal S_A\rvert \Bigr)\ln2\tag{5.2.10}

となる。エントロピーを求めるには、AA の中に収まる独立な生成元の数を数えればよい。

トーリック符号の基底状態(Zˉ1=Zˉ2=+1\bar Z_1=\bar Z_2=+1 に固定した純粋状態)で、w×ww\times w 個の頂点の正方形を取り、両端がその中にある辺の全体を AA とする。AA の辺の数は 2w(w−1)2w(w-1)。AA に収まる生成元は、正方形の中の面 (w−1)2(w-1)^2 個と、4辺がすべて AA に入る内部の頂点の星 (w−2)2(w-2)^2 個で、論理演算子は収まらない。よって

S(ρ^A)=[2w(w−1)−(w−1)2−(w−2)2]ln⁡2=(4(w−1)−1)ln⁡2=(∣∂A∣−1)ln⁡2(5.2.11)S(\hat\rho_A)=\bigl[2w(w-1)-(w-1)^2-(w-2)^2\bigr]\ln2=\bigl(4(w-1)-1\bigr)\ln2=\bigl(\lvert \partial A\rvert -1\bigr)\ln2\tag{5.2.11}

を得る。ここで ∣∂A∣=4(w−1)\lvert \partial A\rvert =4(w-1) は正方形の周の上の頂点の数、すなわち AA と外の両方に辺を持つ星の数である。第1項は境界の長さに比例し、第5部第1章の面積則の形をしている。注目したいのは −1-1 で、これは境界の星の制限に1本の制約がかかっていることの表れである。周の上の 4(w−1)4(w-1) 個の星をそれぞれ AA に制限した演算子を掛け合わせると、正方形の中の辺はどれも2回ずつ現れて消えるので、内部の星の積 ∏v∈内部Av\prod_{v\in\text{内部}}A_v(AA の中の元)に等しくなる。境界で独立に決まる自由度が ∣∂A∣\lvert \partial A\rvert 個でなく ∣∂A∣−1\lvert \partial A\rvert -1 個しかない。図を描いて言えば、基底状態は ZZ の基底で双対格子の上の閉じた輪の重ね合わせで、閉じた輪は AA の境界を必ず偶数回横切る。この偶奇の拘束が −ln⁡2-\ln2 になる1トーリック符号のエンタングルメント・エントロピーのこの形は A. Hamma, R. Ionicioiu and P. Zanardi (2005), Phys. Rev. A 71, 022315 が求めた。下の脚注へ。

境界の項を消して定数だけ取り出す

一般の位相秩序のある系では、エントロピーは

S(ρ^A)=α∣∂A∣−γ+⋯(5.2.12)S(\hat\rho_A)=\alpha\lvert \partial A\rvert -\gamma+\cdots\tag{5.2.12}

の形をとると考えられている(⋯\cdots は境界が長くなると 00 に行く項)。係数 α\alpha は格子の細部や領域の角の形で変わるが、γ\gamma は相によって決まる普遍的な数で、位相的エンタングルメント・エントロピーと呼ばれる。Kitaev と Preskill は、円板を3つの扇形 A,B,CA,B,C に分け(図 5.2.3)、

Stopo≔SA+SB+SC−SAB−SBC−SCA+SABC(5.2.13)S_{\mathrm{topo}}\coloneqq S_A+S_B+S_C-S_{AB}-S_{BC}-S_{CA}+S_{ABC}\tag{5.2.13}

を作ると、境界の項と角の項がすべて打ち消し合って Stopo=−γS_{\mathrm{topo}}=-\gamma になることを示した2A. Kitaev and J. Preskill (2006), Phys. Rev. Lett. 96, 110404。同時に M. Levin and X.-G. Wen (2006), Phys. Rev. Lett. 96, 110405 が円環を使う別の組み合わせで −2γ-2\gamma を取り出した。下の脚注へ。各境界の部分は、和のなかで足される回数と引かれる回数が等しいように並んでいる。たとえば AA と BB の境目は SAS_A、SBS_B で2回足され、SCAS_{CA}、SBCS_{BC} で2回引かれ、SABS_{AB} と SABCS_{ABC} には現れない。エニオンの量子次元を dad_a とすると γ=ln⁡∑ada2\gamma=\ln\sqrt{\sum_ad_a^2} で、トーリック符号の4種のエニオンはどれも da=1d_a=1 なので γ=ln⁡4=ln⁡2\gamma=\ln\sqrt4=\ln2 である。

この組み合わせは背骨の量で書くことができる。条件付き相互情報量 I(A;B ∣ C)=SAC+SBC−SC−SABCI(A;B\,|\,C)=S_{AC}+S_{BC}-S_C-S_{ABC} を使うと

Stopo=I(A;B)−I(A;B ∣ C)(5.2.14)S_{\mathrm{topo}}=I(A;B)-I(A;B\,|\,C)\tag{5.2.14}

と並べ替えられる。I(A;B)=D(ρ^AB ∥ ρ^A⊗ρ^B)I(A;B)=D(\hat\rho_{AB}\,\|\,\hat\rho_A\otimes\hat\rho_B) で、I(A;B ∣ C)=I(A;BC)−I(A;C)I(A;B\,|\,C)=I(A;BC)-I(A;C) も2つの DD の差である。I(A;B ∣ C)≥0I(A;B\,|\,C)\ge0 は強劣加法性(第3部第3章)である。γ>0\gamma>0 は、CC も合わせて見たときの AA と BB の相関が、AA と BB だけで見た相関より γ\gamma だけ多いことを意味する。その余分は、円板 ABCABC の境界を横切る輪の偶奇という、3つを合わせないと見えない1ビットである。

図

図 5.2.3 Kitaev–Preskill の組み合わせ (5.2.13) に使う領域。円板を3つの扇形 A,B,CA,B,C に分け、残りを DD とする。3つの扇形が出会う中心と、円周の上の3点が角になる。どの境界の部分と角も、組み合わせの中で足す回数と引く回数が等しい。

トーリック符号で確かめる。L=14L=14 のトーラスで、中心からの距離が 4.24.2 未満の点に中点がある辺を円板とし、中点の方位角で3つの 120∘120^\circ の扇形に分ける。式 (5.2.10) で数えると(ln⁡2\ln2 を単位として)

SA=15, SB=13, SC=15, SAB=22, SBC=22, SCA=23, SABC=23S_A=15,\ S_B=13,\ S_C=15,\ S_{AB}=22,\ S_{BC}=22,\ S_{CA}=23,\ S_{ABC}=23

で、Stopo=(15+13+15)−(22+22+23)+23=−1S_{\mathrm{topo}}=(15+13+15)-(22+22+23)+23=-1。I(A;B)=6I(A;B)=6、I(A;B ∣ C)=7I(A;B\,|\,C)=7 で、式 (5.2.14) のとおり差は −1-1 である。半径を 3.23.2、5.25.2 に変えると個々の値は変わるが、Stopo=−ln⁡2S_{\mathrm{topo}}=-\ln2 は変わらない(scripts/verify_ch5-02.py)。対照として、すべての量子ビットが ∣0⟩| 0 \rangle の積状態では Stopo=0S_{\mathrm{topo}}=0 である。

例題 5.2.4 正方形の領域のエントロピーを数える ★★

オリジナルトーリック符号の基底状態(LL は十分大きい)で、w×ww\times w 個の頂点の正方形の中の辺を AA とする。

  1. (1) w=2w=2(面1つの4辺)のとき S(ρ^A)S(\hat\rho_A) を求めよ。4量子ビットの最大値 4ln⁡24\ln2 と比べよ。
  2. (2) w=3w=3 のとき、∣A∣\lvert A\rvert、AA に収まる面と星の数を数え、S(ρ^A)S(\hat\rho_A) を求めよ。
  3. (3) S(ρ^A)S(\hat\rho_A) を ∣∂A∣=4(w−1)\lvert \partial A\rvert =4(w-1) の1次関数として書き、切片を読め。積状態の場合と比べよ。
解答

(1) AA は面1つを囲む4辺で、収まる生成元はその面の BpB_p だけ(星は4辺のうち2辺しか AA に入らない)。∣SA∣=2\lvert \mathcal S_A\rvert =2 なので S=(4−1)ln⁡2=3ln⁡2S=(4-1)\ln2=3\ln2。最大値 4ln⁡24\ln2 に届かない分の ln⁡2\ln2 は、4辺の ZZ の積が +1+1 に決まっている(Bp=+1B_p=+1)という1ビットの拘束である。L=3L=3 の状態ベクトルで縮約すると、固有値 1/81/8 が8個並ぶ。

(2) ∣A∣=2⋅3⋅2=12\lvert A\rvert =2\cdot3\cdot2=12。収まる面は 22=42^2=4 個、収まる星は中央の頂点の1個。5個は独立なので ∣SA∣=25\lvert \mathcal S_A\rvert =2^5、S=(12−5)ln⁡2=7ln⁡2S=(12-5)\ln2=7\ln2。

(3) 式 (5.2.11) から S=(4(w−1)−1)ln⁡2=∣∂A∣ln⁡2−ln⁡2S=(4(w-1)-1)\ln2=\lvert \partial A\rvert \ln2-\ln2。w=2w=2 では ∣∂A∣=4\lvert \partial A\rvert =4 で S=3ln⁡2S=3\ln2、w=3w=3 では ∣∂A∣=8\lvert \partial A\rvert =8 で S=7ln⁡2S=7\ln2 となり、(1)(2) と合う。傾きは境界の星1つあたり ln⁡2\ln2、切片は −ln⁡2=−γ-\ln2=-\gamma である。すべてが ∣0⟩| 0 \rangle の積状態ではどの領域でも S=0S=0 で、傾きも切片も 00 になる。

1 トーリック符号のエンタングルメント・エントロピーのこの形は A. Hamma, R. Ionicioiu and P. Zanardi (2005), Phys. Rev. A 71, 022315 が求めた。

2 A. Kitaev and J. Preskill (2006), Phys. Rev. Lett. 96, 110404。同時に M. Levin and X.-G. Wen (2006), Phys. Rev. Lett. 96, 110405 が円環を使う別の組み合わせで −2γ-2\gamma を取り出した。

木下の勉強ステータス

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