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表面符号:トーリック符号を平面に切る

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第5章 誤り耐性としきい値定理
目次
  1. トーリック符号から平面符号へ
  2. 回転した表面符号
  3. シンドロームは誤りの鎖の端点
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第6部 第5章 §6.5.3 ★★★ 生成元が隣り合う4個(端では2個)の量子ビットにだけ当たる符号。距離は格子の一辺で決まり、平面に並べた量子ビットと最近接の結合だけで誤り訂正ができる

トーリック符号から平面符号へ

連結符号は段数を上げるたびに離れた量子ビットどうしのゲートが要り、平面のチップに並べた量子ビットとは相性が悪い。これに対して、Kitaev のトーリック符号1A. Yu. Kitaev (2003), Ann. Phys. 303, 2(プレプリントは 1997)。下の脚注へは、生成元が格子の上で隣り合う量子ビットにしか当たらない。第5部第2章で扱うとおり、L×LL\times L の正方格子を周期境界でトーラスにし、辺に量子ビットを置く(n=2L2n=2L^2)。各頂点 vv には頂点に接する4本の辺の XX の積 AvA_v、各面 pp には面を囲む4本の辺の ZZ の積 BpB_p を生成元として置く(星の演算子と面の演算子。記号は第5部第2章と同じ)。頂点と面は辺を0本か2本共有するので、すべての生成元は可換である。頂点の生成元すべての積は各辺の XX を2回ずつ含むので 1\mathbf 1 になり、面についても同じなので、独立な生成元は 2(L2−1)2(L^2-1) 個で、論理量子ビットの数は k=2L2−2(L2−1)=2k=2L^2-2(L^2-1)=2 である。論理演算子はトーラスを一周する ZZ の鎖と XX の鎖で、一周するので重みは LL 以上、距離は d=Ld=L になる。

トーラスは平面のチップに作ることができないので、格子を切り開いて境界を付ける(Bravyi–Kitaev2S. B. Bravyi and A. Yu. Kitaev (1998), arXiv:quant-ph/9811052。下の脚注へ)。上下の境界では頂点の生成元を3本の辺の XX の積に縮め(滑らかな境界)、左右の境界では面の生成元を3本の辺の ZZ の積に縮める(粗い境界)。こうして作った平面符号は n=L2+(L−1)2n=L^2+(L-1)^2 個の量子ビットに k=1k=1 の論理量子ビットを持ち、論理 ZZ は滑らかな境界から反対側の滑らかな境界までをつなぐ ZZ の鎖、論理 XX は粗い境界どうしをつなぐ XX の鎖で、距離は d=Ld=L である。トーラスの2つの論理量子ビットのうち、切り開いたことで一周する鎖の片方の組が端から端への鎖に変わり、もう片方は境界に吸い込まれて消えた。

回転した表面符号

平面符号を45度回して角を落とすと、同じ距離 dd をより少ない量子ビットで実現することができる。これを回転した表面符号と呼び、現在の実験はこの形を使う。d×dd\times d の正方形に d2d^2 個のデータの量子ビットを並べ、その間の (d−1)2(d-1)^2 個の面に4量子ビットの生成元を市松模様に XX 型と ZZ 型を交互に置く。さらに上下の辺に XX 型、左右の辺に ZZ 型の2量子ビットの生成元を1つおきに置く。生成元は XX 型・ZZ 型とも (d2−1)/2(d^2-1)/2 個で、すべて可換かつ独立なので、k=d2−(d2−1)=1k=d^2-(d^2-1)=1 である。シンドロームを測る補助の量子ビットを生成元1つに1個置くと、全体で d2+(d2−1)=2d2−1d^2+(d^2-1)=2d^2-1 個の量子ビットになる。d=3d=3 の配置を図 6.5.2 に描いた。

図

図 6.5.2 距離 d=3d=3 の回転した表面符号。黒丸がデータの量子ビット(数字は行と列)、青の面と半円が XX 型、橙の面と半円が ZZ 型の生成元で、それぞれ角の4個または端の2個の量子ビットに当たる。上下の端は XX 型、左右の端は ZZ 型の2量子ビットの生成元を持つ。論理 ZZ は1行目の3個の ZZ、論理 XX は1列目の3個の XX で、重みが最小の論理演算子の重み3が距離である。

シンドロームは誤りの鎖の端点

XX の誤りだけを考える(ZZ の誤りは XX 型と ZZ 型の役を入れ替えれば同じ)。XX の誤りは ZZ 型の生成元と反交換するときにだけシンドロームを反転させる。内部の量子ビット1個の XX は、その量子ビットを角に持つ2つの ZZ 型の面を反転させる。隣り合う量子ビットに誤りが並んで鎖を作ると、鎖の途中の面は2回反転して元に戻り、鎖の両端の面だけが反転して残る。つまりシンドロームは誤りの鎖の端点であり、鎖の途中がどこを通ったかは分からない。

これがトーリック符号の系統の符号の中心的な性質である。2つの鎖が同じ端点を持てば、その差は閉じた鎖(または左右の境界どうしをつながない鎖)で、閉じた鎖は XX 型の生成元の積だから、符号空間に何もしない。したがって、端点を正しく組にさえすれば、鎖の通り道を間違えても訂正は成功する。訂正が失敗するのは、推定した鎖と本当の鎖を合わせたものが、左右の境界をつなぐ論理演算子 XLX_{\mathrm L} を作ったときだけである。XLX_{\mathrm L} の重みは dd 以上なので、誤りが (d−1)/2(d-1)/2 個以下なら必ず直り、論理誤りの確率は ε\varepsilon が小さいとき ε(d+1)/2\varepsilon ^{(d+1)/2} に比例する。

連結符号との大きな違いは、距離 dd を大きくするのに格子を広げるだけでよく、生成元はいつまでも隣り合う4量子ビットにしか当たらないことである。物理的な量子ビットを平面に並べ、隣どうしだけを結合すれば、どの距離の符号も同じ回路の繰り返しで作ることができる。

例題 6.5.3 距離3の回転した表面符号 ★★

オリジナル図 6.5.2 の符号で、(i,j)(i,j) 行列のデータの量子ビットに当たる XX を X(i,j)X_{(i,j)} と書く。

  1. (1) ZZ 型の生成元を4つ書き出し、論理量子ビットの数が k=1k=1 であることを確かめよ。
  2. (2) 9個の1量子ビットの XX 誤りのシンドローム(4つの ZZ 型の生成元のどれが反転するか)を求めよ。異なるシンドロームは何通りか。
  3. (3) 同じシンドロームを与える誤りの組について、その積が何であるかを調べ、それでも訂正に困らない理由を述べよ。
  4. (4) 1行目の ZZ の積 ZLZ_{\mathrm L} が XX 型の生成元すべてと可換であること、重み2の XX 誤りの中に訂正に失敗するものがあることを確かめよ。
解答

(1) ZZ 型は、左端の Z(1,1)Z(2,1)Z_{(1,1)}Z_{(2,1)}、面の Z(1,2)Z(1,3)Z(2,2)Z(2,3)Z_{(1,2)}Z_{(1,3)}Z_{(2,2)}Z_{(2,3)} と Z(2,1)Z(2,2)Z(3,1)Z(3,2)Z_{(2,1)}Z_{(2,2)}Z_{(3,1)}Z_{(3,2)}、右端の Z(2,3)Z(3,3)Z_{(2,3)}Z_{(3,3)} の4つ。XX 型も同じく4つ(上端の X(1,2)X(1,3)X_{(1,2)}X_{(1,3)}、面の2つ、下端の X(3,1)X(3,2)X_{(3,1)}X_{(3,2)})で、生成元は合わせて8個、独立なので k=9−8=1k=9-8=1。

(2) 4つの ZZ 型を上の順に s1,…,s4s_1,\dots,s_4 とし、反転する生成元を並べる。

列1列2列3行1s1s2s2行2s1,s3s2,s3s2,s4行3s3s3s4\begin{array}{c|ccc} & \text{列1} & \text{列2} & \text{列3}\\\hline \text{行1} & s_1 & s_2 & s_2\\ \text{行2} & s_1,s_3 & s_2,s_3 & s_2,s_4\\ \text{行3} & s_3 & s_3 & s_4 \end{array}

異なるシンドロームは7通りで、どれも 00 ではない。

(3) 重なるのは X(1,2)X_{(1,2)} と X(1,3)X_{(1,3)}(どちらも s2s_2)、X(3,1)X_{(3,1)} と X(3,2)X_{(3,2)}(どちらも s3s_3)の2組である。積 X(1,2)X(1,3)X_{(1,2)}X_{(1,3)} は上端の XX 型の生成元そのもので、X(3,1)X(3,2)X_{(3,1)}X_{(3,2)} は下端の生成元である。シンドローム s2s_2 が出たとき、本当の誤りが X(1,3)X_{(1,3)} なのに X(1,2)X_{(1,2)} で訂正しても、残るのは生成元 X(1,2)X(1,3)X_{(1,2)}X_{(1,3)} で、符号空間の状態は変わらない。見分けられない誤りの差が生成元に入っていれば訂正に困らない、という縮退の性質で、第3部第9章の訂正の条件 Ea†Eb∉N(S)∖SE_a^\dagger E_b\notin\mathsf N(\mathcal S)\setminus\mathcal S の具体例である。

(4) ZL=Z(1,1)Z(1,2)Z(1,3)Z_{\mathrm L}=Z_{(1,1)}Z_{(1,2)}Z_{(1,3)} と共有する量子ビットは、上端の生成元が2個((1,2),(1,3)(1,2),(1,3))、左上の面が2個((1,1),(1,2)(1,1),(1,2))、右下の面と下端は0個で、どれも偶数なので可換。重み2の誤り X(1,1)X(2,1)X_{(1,1)}X_{(2,1)} を考えると、s1s_1 は2回反転して戻り、s3s_3 だけが残る。s3s_3 を与える重み最小の誤りは X(3,1)X_{(3,1)}(または X(3,2)X_{(3,2)})なので、復号は X(3,1)X_{(3,1)} を当てる。残る演算子は X(1,1)X(2,1)X(3,1)=XLX_{(1,1)}X_{(2,1)}X_{(3,1)}=X_{\mathrm L} で、論理誤りになる。距離3の符号は重み1までしか保証しないので、重み2で失敗する組があるのは当然で、その確率が ε2\varepsilon ^2 に比例する。

1 A. Yu. Kitaev (2003), Ann. Phys. 303, 2(プレプリントは 1997)。

2 S. B. Bravyi and A. Yu. Kitaev (1998), arXiv:quant-ph/9811052。

木下の勉強ステータス

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