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出てくるもの2:エンタングルメント・ウェッジの再構成は量子誤り訂正

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第6章 ホログラフィーと量子誤り訂正
目次
  1. 1点が3つの場所にある
  2. 3量子トリット符号
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第6章 §7.6.4 ★★★ 内部の中心の演算子が境界の重ならない3つの領域のどれでも書けるという矛盾を、3量子トリット符号の「どの1つの消失も訂正できる」性質として解く

1点が3つの場所にある

3次元の AdS の時間一定面全体は Poincaré 円板(半径 11 の円板に ds2=4ℓ2(dr2+r2dφ2)/(1−r2)2\mathrm{d} s^2=4\ell^2(\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\varphi^2)/(1-r^2)^2)で、境界は円周である。境界の円周を3等分して弧 A,B,CA,B,C とする(図 7.6.3)。半角 α\alpha の弧の両端を結ぶ測地線は、単位円に直交する円(中心が原点から 1/cos⁡α1/\cos\alpha、半径 tan⁡α\tan\alpha)の一部で、円板の中心からの双曲距離は ℓarcsinh⁡(cot⁡α)\ell\operatorname{arcsinh}(\cot\alpha) である。1つの弧(α=π/3\alpha=\pi/3)では 0.5493 ℓ0.5493\,\ell で、測地線は中心を通らない。したがって円板の中心は弧 CC のエンタングルメント・ウェッジの外、補集合 ABAB のエンタングルメント・ウェッジの中にある。

中心の場の演算子 ϕ^(0)\hat\phi(0) は、定理 7.6.2 により ABAB の上の演算子で書ける。同じ理由で BCBC の上でも CACA の上でも書ける。ところが3つの書き方は、それぞれ CC、AA、BB の上で恒等演算子である。もし ϕ^(0)\hat\phi(0) が境界の1つの演算子なら、それは AA と BB と CC のどこにも作用しないことになり、恒等演算子の定数倍しか残らない。Almheiri–Dong–Harlow はこの矛盾を、3つの書き方が演算子としては異なるが符号部分空間の上では一致するという量子誤り訂正の性質で解いた1A. Almheiri, X. Dong, D. Harlow (2015), JHEP 04, 163。下の脚注へ。

図

図 7.6.3 Poincaré 円板の境界を3等分した弧 A,B,CA,B,C と、それぞれの両端を結ぶ測地線。どの測地線も中心から 0.5493 ℓ0.5493\,\ell 離れているので、中心は1つの弧のエンタングルメント・ウェッジには入らず、2つの弧を合わせた領域のエンタングルメント・ウェッジには入る。

3量子トリット符号

3準位の量子系(量子トリット)を3つ使い、論理的な量子トリット1つを

∣i~⟩=13∑j=02∣j⟩∣j+i⟩∣j+2i⟩(i=0,1,2, 足し算は 3 を法とする)(7.6.12)| \tilde i \rangle =\frac{1}{\sqrt3}\sum_{j=0}^{2}| j \rangle | j+i \rangle | j+2i \rangle \qquad(i=0,1,2,\ \text{足し算は}\ 3\ \text{を法とする})\tag{7.6.12}

と符号化する2R. Cleve, D. Gottesman, H.-K. Lo (1999), Phys. Rev. Lett. 83, 648 の量子秘密分散の符号。下の脚注へ。書き下すと ∣0~⟩=(∣000⟩+∣111⟩+∣222⟩)/3| \tilde0 \rangle =(| 000 \rangle +| 111 \rangle +| 222 \rangle )/\sqrt3、∣1~⟩=(∣012⟩+∣120⟩+∣201⟩)/3| \tilde1 \rangle =(| 012 \rangle +| 120 \rangle +| 201 \rangle )/\sqrt3、∣2~⟩=(∣021⟩+∣102⟩+∣210⟩)/3| \tilde2 \rangle =(| 021 \rangle +| 102 \rangle +| 210 \rangle )/\sqrt3 である。符号部分空間は3つの量子トリットの巡回で変わらない。この符号の性質は2つある。

第一に、どの1つの量子トリットの縮約状態も、論理状態によらず 1/3\mathbf 1/3 である。例えば1番目の量子トリットを見ると、∣i~⟩| \tilde i \rangle のどれでも jj が 0,1,20,1,2 を等確率で取る。重ね合わせ ∑ici∣i~⟩\sum_ic_i| \tilde i \rangle でも、異なる ii の項は残りの2つの量子トリットの状態 ∣j+i,j+2i⟩| j+i,j+2i \rangle が直交するので干渉せず、縮約状態は 1/3\mathbf 1/3 のままである。第3部第9章の言葉では、論理系と最大にもつれさせた参照系 RR について I(R;1つ)=0I(R;\text{1つ})=0、つまりどの1つの消失も訂正できる。全体は純粋なので I(R;残りの2つ)=2S(R)=2ln⁡3I(R;\text{残りの2つ})=2S(R)=2\ln3 で、論理的な情報はどの2つにもすべて入っている。

第二に、その「すべて入っている」は具体的なユニタリで見える。1・2番目の量子トリットに置換 U^12:∣a⟩∣b⟩↦∣b−a⟩∣2b−a⟩\hat U_{12}:| a \rangle | b \rangle \mapsto| b-a \rangle | 2b-a \rangle を当てると、a=ja=j、b=j+ib=j+i から ∣i⟩∣j+2i⟩| i \rangle | j+2i \rangle になり、

(U^12⊗1)∣i~⟩=∣i⟩1⊗∣χ⟩23,∣χ⟩=13∑k=02∣k⟩∣k⟩(7.6.13)(\hat U_{12}\otimes\mathbf 1)| \tilde i \rangle =| i \rangle _1\otimes| \chi \rangle _{23},\qquad| \chi \rangle =\frac{1}{\sqrt3}\sum_{k=0}^2| k \rangle | k \rangle\tag{7.6.13}

となる。論理状態は1番目の量子トリットに取り出され、2・3番目は論理状態によらない最大にもつれた状態 ∣χ⟩| \chi \rangle になる。

論理演算子 O~\tilde O は、取り出した量子トリットに O^\hat O を当てて戻した O^12=U^12†(O^⊗1)U^12\hat O_{12}=\hat U_{12}^\dagger(\hat O\otimes\mathbf 1)\hat U_{12} で書ける。これは3番目の量子トリットに作用しない。巡回で同じことをすれば、2・3番目だけに作用する O^23\hat O_{23}、3・1番目だけに作用する O^31\hat O_{31} も得られる。3つは演算子として異なるが、符号部分空間の上では O^12P^=O^23P^=O^31P^=O~\hat O_{12}\hat P=\hat O_{23}\hat P=\hat O_{31}\hat P=\tilde O(P^\hat P は符号部分空間への射影子)で一致する。円板の中心の演算子と弧 A,B,CA,B,C の関係はこれと同じ形をしている。内部の深い所の演算子ほど、それを書くのに大きな境界の領域が要り、書き方が多くなる。内部の動径方向は、量子誤り訂正符号の冗長さの深さに対応している。

この符号には RT 公式の形も入っている。(7.6.13) から、論理状態 ρ^L\hat\rho_L を符号化した状態の1・2番目の縮約状態は U^12†(ρ^L⊗1/3)U^12\hat U_{12}^\dagger(\hat\rho_L\otimes\mathbf 1/3)\hat U_{12} で、

S(ρ^12)=S(ρ^L)+ln⁡3,S(ρ^3)=ln⁡3(7.6.14)S(\hat\rho_{12})=S(\hat\rho_L)+\ln3,\qquad S(\hat\rho_3)=\ln3\tag{7.6.14}

である。ln⁡3\ln3 が状態によらない「面積の項」、S(ρ^L)S(\hat\rho_L) が「内部のエントロピー」で、FLM の式 (7.6.4) と同じ形になる(3番目の量子トリットの楔には論理系が入らないので、内部の項は 00)。符号の構造だけから RT 公式と FLM の形が出ることは Harlow が一般に示した3D. Harlow (2017), Commun. Math. Phys. 354, 865。下の脚注へ。

例題 7.6.5 3量子トリット符号で再構成を確かめる ★★★

オリジナル符号 (7.6.12) を使う。

  1. (1) 参照系 RR と論理系を最大にもつれさせた状態で、I(R;1つの量子トリット)I(R;\text{1つの量子トリット}) と I(R;2つの量子トリット)I(R;\text{2つの量子トリット}) を求めよ。
  2. (2) U^12\hat U_{12} が置換であること(逆があること)を示し、(7.6.13) を確かめよ。
  3. (3) 論理的な X~:∣i~⟩↦∣i+1~⟩\tilde X:| \tilde i \rangle \mapsto| \widetilde{i+1} \rangle を 1・2 番目の上に作った X^12\hat X_{12} と、2・3 番目の上に作った X^23\hat X_{23} が、演算子としては異なり符号部分空間の上で一致することを説明せよ。
  4. (4) 量子 Singleton 上界 n−k≥2(d−1)n-k\ge2(d-1)(第3部第9章。kk は論理的な量子トリットの数)がこの符号で等号になることを確かめよ。
解答

(1) どの1つの量子トリットも縮約状態が論理状態によらず 1/3\mathbf 1/3 なので、RR と1つの量子トリットの状態は積 13⊗13\frac{\mathbf 1}{3}\otimes\frac{\mathbf 1}{3} になり、I=0I=0。全体の RR と3つの量子トリットは純粋状態なので、2つの量子トリット QQ について S(RQ)=S(残りの1つ)=ln⁡3S(RQ)=S(\text{残りの1つ})=\ln3、S(Q)=S(R と残りの1つ)=2ln⁡3S(Q)=S(R\,\text{と残りの1つ})=2\ln3。よって I(R;Q)=ln⁡3+2ln⁡3−ln⁡3=2ln⁡3=2S(R)I(R;Q)=\ln3+2\ln3-\ln3=2\ln3=2S(R)。

(2) 写像 (a,b)↦(b−a,2b−a)(a,b)\mapsto(b-a,2b-a) は3を法とする行列 (−11−12)\left(\begin{smallmatrix}-1&1\\-1&2\end{smallmatrix}\right) で、行列式は −1≢0-1\not\equiv0 なので可逆である。9個の基底を9個の基底に1対1に送るので置換行列、したがってユニタリである。∣i~⟩| \tilde i \rangle の各項 ∣j⟩∣j+i⟩∣j+2i⟩| j \rangle | j+i \rangle | j+2i \rangle の1・2番目は (a,b)=(j,j+i)(a,b)=(j,j+i) で、(b−a,2b−a)=(i,j+2i)(b-a,2b-a)=(i,j+2i)。よって (U^12⊗1)∣i~⟩=∣i⟩⊗13∑j∣j+2i⟩∣j+2i⟩=∣i⟩⊗∣χ⟩(\hat U_{12}\otimes\mathbf 1)| \tilde i \rangle =| i \rangle \otimes\frac{1}{\sqrt3}\sum_j| j+2i \rangle | j+2i \rangle =| i \rangle \otimes| \chi \rangle(j+2ij+2i を kk と置き直した)。

(3) X^12=U^12†(X^⊗1)U^12⊗13\hat X_{12}=\hat U_{12}^\dagger(\hat X\otimes\mathbf 1)\hat U_{12}\otimes\mathbf 1_3 は3番目に恒等で作用し、X^12∣i~⟩=U^12†∣i+1⟩∣χ⟩=∣i+1~⟩\hat X_{12}| \tilde i \rangle =\hat U_{12}^\dagger| i+1 \rangle | \chi \rangle =| \widetilde{i+1} \rangle。X^23\hat X_{23} は量子トリットを巡回させて同じ構成をしたもので、1番目に恒等で作用し、同じく ∣i~⟩↦∣i+1~⟩| \tilde i \rangle \mapsto| \widetilde{i+1} \rangle となる。符号部分空間の上では両方とも X~\tilde X なので一致する。一方、X^12\hat X_{12} は1・2番目に、X^23\hat X_{23} は2・3番目に作用するので、符号部分空間の外の状態(例えば ∣000⟩| 000 \rangle でない一般の積状態)に当てると異なる結果を返す。verify で X^12≠X^23\hat X_{12}\ne\hat X_{23} と X^12P^=X^23P^\hat X_{12}\hat P=\hat X_{23}\hat P を確かめた。

(4) n=3n=3、k=1k=1、どの1つの消失も直せるが2つは直せないので距離 d=2d=2。n−k=2=2(d−1)n-k=2=2(d-1) で等号である。どの1つの量子トリットも論理情報を持たず、どの2つもすべてを持つという「ぎりぎり」の符号で、7.6.5節の完全テンソルも同じ性質を持つ。

1 A. Almheiri, X. Dong, D. Harlow (2015), JHEP 04, 163。

2 R. Cleve, D. Gottesman, H.-K. Lo (1999), Phys. Rev. Lett. 83, 648 の量子秘密分散の符号。

3 D. Harlow (2017), Commun. Math. Phys. 354, 865。

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