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出てくるもの1:Ryu–Takayanagi 公式

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第6章 ホログラフィーと量子誤り訂正
目次
  1. 公式
  2. AdS の区間
  3. RT 公式が満たす不等式
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第6章 §7.6.3 ★★★ 境界の領域のエンタングルメント・エントロピーは内部の極小曲面の面積を 4ℓPd−14\ell_{\mathrm P}^{d-1} で割ったもので、AdS3_3 では測地線の長さから (c/3)ln⁡(L/ε)(c/3)\ln(L/\varepsilon) が出る

公式

定理 7.6.3(Ryu–Takayanagi 公式 ★★★)

時間に依存しない古典解の上で、境界の領域 AA のエンタングルメント・エントロピーは、ℓP/ℓ→0\ell_{\mathrm P}/\ell\to0 の主要項で

S(ρ^A)=Area⁡(γA)4ℓPd−1(7.6.8)S(\hat\rho_A)=\frac{\operatorname{Area}(\gamma_A)}{4\ell_{\mathrm P}^{d-1}}\tag{7.6.8}

である。γA\gamma_A は、時間一定面の中で AA の端 ∂A\partial A に端を持ち、AA と合わせて内部の領域 aa の境界になる(AA にホモロガスな)曲面のうち、面積が最小のものである。

Ryu と高柳はこの公式を予想として出し、AdS3_3 で CFT の既知の結果と一致することを確かめた1S. Ryu, T. Takayanagi (2006), Phys. Rev. Lett. 96, 181602。時間に依存する場合は極値曲面に置き換わる:V. E. Hubeny, M. Rangamani, T. Takayanagi (2007), JHEP 07, 062。下の脚注へ。重力の経路積分で Tr⁡ρ^An\operatorname{Tr}\hat\rho_A^n を計算する方法(レプリカトリック)による導出は Lewkowycz–Maldacena が与えた2A. Lewkowycz, J. Maldacena (2013), JHEP 08, 090。下の脚注へ。係数の 1/41/4 は Bekenstein–Hawking エントロピー(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第12章)と同じもので、領域 AA を境界全体に取ると、ブラックホールがあるときの γA\gamma_A は地平面になり (7.6.8) は SBH/kBS_{\mathrm{BH}}/ k_{\mathrm B} になる。RT 公式は「どの境界の領域のエントロピーも、内部のどこかの面の面積で数えられる」と言っており、Bekenstein–Hawking の公式はその1つの場合である。

この節の「領域 aa」が前の節で使った内部の領域で、AA と γA\gamma_A が囲む部分(その依存領域をエンタングルメント・ウェッジと呼ぶ)である。定理 7.6.2 の再構成はこの aa の中の演算子について成り立つ。

AdS3_3 の区間

d=2d=2 で、境界の長さ LL の区間 A=[−R,R]A=[-R,R](L=2RL=2R)を取る。Poincaré 上半平面の測地線は境界に直交する半円で、AA の端を結ぶものは x=Rcos⁡θx=R\cos\theta、z=Rsin⁡θz=R\sin\theta である。この曲線に沿った線素は ds=ℓdx2+dz2/z=ℓ dθ/sin⁡θ\mathrm{d} s=\ell\sqrt{\mathrm{d} x^2+\mathrm{d} z^2}/z=\ell\,\mathrm{d}\theta/\sin\theta なので、切断 z≥εz\ge\varepsilon の部分の長さは

Length⁡(γA)=2ℓ∫θεπ/2dθsin⁡θ=2ℓarccosh⁡Rε=2ℓln⁡Lε+O(ε2L2)(7.6.9)\operatorname{Length}(\gamma_A)=2\ell\int_{\theta_\varepsilon}^{\pi/2}\frac{\mathrm{d}\theta}{\sin\theta}=2\ell\operatorname{arccosh}\frac{R}{\varepsilon}=2\ell\ln\frac{L}{\varepsilon}+\mathcal{O}\Bigl(\frac{\varepsilon^2}{L^2}\Bigr)\tag{7.6.9}

である(sin⁡θε=ε/R\sin\theta_\varepsilon=\varepsilon/R、∫dθ/sin⁡θ=ln⁡tan⁡(θ/2)\int\mathrm{d}\theta/\sin\theta=\ln\tan(\theta/2))。3次元では「面積」は長さで、ℓPd−1=ℓP\ell_{\mathrm P}^{d-1}=\ell_{\mathrm P} なので、RT 公式と Brown–Henneaux の関係 (7.6.2) から

S(ρ^A)=2ℓ4ℓPln⁡Lε=c3ln⁡Lε(7.6.10)S(\hat\rho_A)=\frac{2\ell}{4\ell_{\mathrm P}}\ln\frac{L}{\varepsilon}=\frac{c}{3}\ln\frac{L}{\varepsilon}\tag{7.6.10}

が出る。これは2次元の CFT の区間のエンタングルメント・エントロピーの一般の式(Holzhey–Larsen–Wilczek、Calabrese–Cardy3C. Holzhey, F. Larsen, F. Wilczek (1994), Nucl. Phys. B 424, 443。P. Calabrese, J. Cardy (2004), J. Stat. Mech. P06002。下の脚注へ)と一致する。第5部第1章では同じ式を臨界のスピン鎖の数値計算で c=1c=1 として確かめた。RT 公式は、その係数 cc を内部の曲率半径と Planck 長の比として読み、対数を測地線が境界の近くで費やす長さとして読む。境界の近くの1つの層(例題 7.6.1)が ℓln⁡2\ell\ln2 の長さを持ち、区間の両端で層が数えられるので、切断を半分にするたびに SS は 2ℓln⁡2/(4ℓP)=(c/3)ln⁡22\ell\ln2/(4\ell_{\mathrm P})=(c/3)\ln2 増える。

有限温度の場合も同じ方法で計算でき、内部が BTZ ブラックホール4M. Bañados, C. Teitelboim, J. Zanelli (1992), Phys. Rev. Lett. 69, 1849。下の脚注へになると測地線の長さからS=(c/3)ln⁡(βπεsinh⁡πLβ)S=(c/3)\ln\bigl(\frac{\beta}{\pi\varepsilon}\sinh\frac{\pi L}{\beta}\bigr) が出る(β\beta は長さで測った逆温度)。L≪βL\ll\beta で (7.6.10) に戻り、L≫βL\gg\beta で S≈(πc/3)(L/β)S\approx(\pi c/3)(L/\beta) と長さに比例する。後者は熱状態の体積則で、測地線が地平面に沿って伸び、地平面の面積の一部を数えている。

RT 公式が満たす不等式

RT 公式で決まるエントロピーは、量子状態のエントロピーが満たすべき不等式を幾何の性質として満たす。劣加法性 S(A)+S(B)≥S(AB)S(A)+S(B)\ge S(AB) は、γA∪γB\gamma_A\cup\gamma_B が ABAB にホモロガスな曲面の1つで、極小の γAB\gamma_{AB} はそれより短いことから出る。強劣加法性(第3部第3章)も、γAB∪γBC\gamma_{AB}\cup\gamma_{BC} を切って貼り直すと BB と ABCABC にホモロガスな曲面の組になることから示される5M. Headrick, T. Takayanagi (2007), Phys. Rev. D 76, 106013。下の脚注へ。

2つの離れた区間 A,BA,B の相互情報量 I(A;B)=S(A)+S(B)−S(AB)I(A;B)=S(A)+S(B)-S(AB) には、RT 公式に特有の振る舞いがある(図 7.6.2)。ABAB の曲面には、γA∪γB\gamma_A\cup\gamma_B(つながらない組)と、外側を結ぶ測地線と間を結ぶ測地線の組(つながった組)の2つの候補があり、短い方が選ばれる。間隔が広いとつながらない組が選ばれて I(A;B)=0I(A;B)=0(主要項)、間隔が狭いとつながった組が選ばれて I(A;B)I(A;B) は cc に比例する大きさになる。長さ a,ba,b の区間が間隔 xx で並ぶとき、(7.6.10) の形を使って

I(A;B)=max⁡(0, c3ln⁡abx(a+b+x))(7.6.11)I(A;B)=\max\Bigl(0,\ \frac{c}{3}\ln\frac{ab}{x(a+b+x)}\Bigr)\tag{7.6.11}

である(ε\varepsilon は打ち消し合う)。

図

図 7.6.2 RT 公式による2区間の相互情報量 (7.6.11)(a=b=1a=b=1)。間隔が x∗=2−1x^*=\sqrt2-1 を超えると極小の曲面がつながらない組に入れ替わり、主要項の相互情報量は 00 になる。座標は verify で計算した。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℓP/ℓ=3/(2c)→0\ell_{\mathrm P}/\ell=3/(2c)\to0 | 証明 条件付き(重力の経路積分がレプリカ対称な古典解で支配されると仮定。Lewkowycz–Maldacena 2013。O(c0)\mathcal{O}(c^0) は FLM) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 7.6.3 区間のエントロピーの大きさ ★★

オリジナル3次元の AdS で ℓ/ℓP=100\ell/\ell_{\mathrm P}=100 とする。

  1. (1) 境界の CFT の中心電荷 cc を求め、長さ LL の区間で L/ε=106L/\varepsilon=10^6 のときのエントロピーを求めよ。
  2. (2) 切断を ε→ε/2\varepsilon\to\varepsilon/2 にすると SS はいくら増えるか。どこの長さが増えたのかを内部の言葉で述べよ。
  3. (3) 測地線の長さを、両端の点 (±R,ε)(\pm R,\varepsilon) を結ぶ測地距離で置き換えると 2ℓarcsinh⁡(R/ε)2\ell\operatorname{arcsinh}(R/\varepsilon) になる(7.6.6節)。(7.6.9) との差が L≫εL\gg\varepsilon で無視できることを確かめよ。
解答

(1) c=3ℓ/(2ℓP)=150c=3\ell/(2\ell_{\mathrm P})=150。S=(c/3)ln⁡106=50×13.816=690.8S=(c/3)\ln10^6=50\times13.816=690.8。

(2) (c/3)ln⁡2=50×0.6931=34.66(c/3)\ln2=50\times0.6931=34.66 増える。内部では、測地線の両端がそれぞれ1層ずつ境界に近づき、各端で ℓln⁡2\ell\ln2、合わせて 2ℓln⁡22\ell\ln2 だけ長くなった。2ℓln⁡2/(4ℓP)=(ℓ/2ℓP)ln⁡2=(c/3)ln⁡22\ell\ln2/(4\ell_{\mathrm P})=(\ell/2\ell_{\mathrm P})\ln2=(c/3)\ln2 である。

(3) arcsinh⁡u=ln⁡(u+u2+1)\operatorname{arcsinh}u=\ln(u+\sqrt{u^2+1})、arccosh⁡u=ln⁡(u+u2−1)\operatorname{arccosh}u=\ln(u+\sqrt{u^2-1}) なので、どちらも u→∞u\to\infty で ln⁡(2u)+O(u−2)\ln(2u)+\mathcal{O}(u^{-2}) である。差は 2ℓ⋅12u22\ell\cdot\frac{1}{2u^2} の大きさで、u=R/ε=5×105u=R/\varepsilon=5\times10^5 では 4×10−12 ℓ4\times10^{-12}\,\ell にすぎない。エントロピーの主要項 (c/3)ln⁡(L/ε)(c/3)\ln(L/\varepsilon) は切断の取り方の細部によらない。

例題 7.6.4 2区間の相互情報量と強劣加法性 ★★

オリジナルd=2d=2、中心電荷 cc の境界で、(7.6.10) を区間のエントロピーとして使う。

  1. (1) 長さ 11 の区間2つが間隔 xx で並ぶ。相互情報量 (7.6.11) が 00 になる間隔 x∗x^* を求め、x=0.2x=0.2 のときの I(A;B)I(A;B) を c=150c=150 で求めよ。
  2. (2) 隣り合う3区間 A,B,CA,B,C(長さ a,b,c3a,b,c_3)について S(AB)+S(BC)−S(B)−S(ABC)S(AB)+S(BC)-S(B)-S(ABC) を求め、非負であることを示せ。a=b=c3=1a=b=c_3=1、c=150c=150 での値を求めよ。
解答

(1) つながった組の長さの和 ∝ln⁡[x(2+x)]\propto\ln[x(2+x)] と、つながらない組 ∝ln⁡(1⋅1)\propto\ln(1\cdot1) が等しくなるのは x(2+x)=1x(2+x)=1、x∗=2−1=0.4142x^*=\sqrt2-1=0.4142。x=0.2x=0.2 では I=(c/3)ln⁡(1/(0.2×2.2))=(c/3)×0.8210=41.05I=(c/3)\ln\bigl(1/(0.2\times2.2)\bigr)=(c/3)\times0.8210=41.05(c=150c=150)。間隔 x>x∗x>x^* では主要項が 00 で、c0c^0 の大きさの補正(内部の場の相互情報量)だけが残る。

(2) 隣り合う区間なので ABAB、BCBC、BB、ABCABC はどれも1つの区間で、

S(AB)+S(BC)−S(B)−S(ABC)=c3ln⁡(a+b)(b+c3)b(a+b+c3).S(AB)+S(BC)-S(B)-S(ABC)=\frac c3\ln\frac{(a+b)(b+c_3)}{b(a+b+c_3)} .

(a+b)(b+c3)−b(a+b+c3)=ac3>0(a+b)(b+c_3)-b(a+b+c_3)=ac_3>0 なので対数の中は 11 より大きく、値は正である。a=b=c3=1a=b=c_3=1 では (c/3)ln⁡(4/3)=50×0.2877=14.38(c/3)\ln(4/3)=50\times0.2877=14.38。これは条件付き相互情報量 I(A;C ∣ B)I(A;C\,|\,B) で、強劣加法性 I(A;C∣B)≥0I(A;C|B)\ge0 が対数の中の不等式として成り立っている。

ほかの巻では

1 S. Ryu, T. Takayanagi (2006), Phys. Rev. Lett. 96, 181602。時間に依存する場合は極値曲面に置き換わる:V. E. Hubeny, M. Rangamani, T. Takayanagi (2007), JHEP 07, 062。

2 A. Lewkowycz, J. Maldacena (2013), JHEP 08, 090。

3 C. Holzhey, F. Larsen, F. Wilczek (1994), Nucl. Phys. B 424, 443。P. Calabrese, J. Cardy (2004), J. Stat. Mech. P06002。

4 M. Bañados, C. Teitelboim, J. Zanelli (1992), Phys. Rev. Lett. 69, 1849。

5 M. Headrick, T. Takayanagi (2007), Phys. Rev. D 76, 106013。

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