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選ぶもの:曲がった時空の質量のないスカラー場

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第12章 曲がった時空の場の量子論:Unruh 効果と Hawking 放射
目次
  1. 作用
  2. 2次元の共形不変性
  3. この章で使う3つの計量
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第12章 §5.12.1 ★★★ 作用の ημν\eta_{\mu\nu} を gμνg_{\mu\nu} に替える。2次元では共形平坦な座標を取ると場の方程式は平坦な波動方程式になり、解は F(u)+G(v)F(u)+G(v) に分かれる

第5部第2章では、平坦な時空のスカラー場を正準量子化し、場を振動子の集まりとして数えた。そこで最後に、質量を変えた2つの真空が Bogoliubov 変換で結ばれ、一方の真空が他方の粒子をたくさん含むことを見た。平坦な時空では Lorentz 変換で移りあう慣性系がすべて同じ真空を選ぶので、この「真空が1つに決まらない」という性質は表に出ない。曲がった時空や加速する観測者を持ち込むと、事情が変わる。時間の向きの取り方が1通りでなくなり、取り方ごとに「正の振動数」が変わり、それに応じて「粒子」と「真空」も変わる。この章では、その帰結を3つ導く。

この章で選ぶものは、曲がった時空 gμνg_{\mu\nu} の上の質量のないスカラー場の作用で、平坦な時空の作用の ημν\eta_{\mu\nu} を gμνg_{\mu\nu} に替えたものである。これは第2部第12章で粒子の作用の ημν\eta_{\mu\nu} を gμνg_{\mu\nu} に替えたのと同じ操作である。計算を見通しよくするため、時間と動径の2次元に話を限る。2次元では質量のない場の作用が計量の局所的な伸び縮み(共形変換)で変わらないので、Rindler の楔も Schwarzschild の外側も、場にとっては平坦な時空と同じに見える。違いは、どの時間座標で「正の振動数」を測るかだけに残る。当てる道具は Bogoliubov 変換と、その規格化を決める Klein–Gordon 内積である。Klein–Gordon 内積は場の相空間のシンプレクティック形式で、第1部第12章の正準変換で保たれる量そのものである。

出てくるものは3つある。第一に、一様に加速する観測者には Minkowski 真空が温度 TU=ℏa/(2πckB)T_{\mathrm U}=\hbar a/(2\pi c k_{\mathrm B}) の熱浴に見える(Unruh 効果)。第二に、星が崩壊してできたブラックホールは、遠方へ温度 TH=ℏκ/(2πckB)=ℏc3/(8πGMkB)T_{\mathrm H}=\hbar\kappa/(2\pi c k_{\mathrm B})=\hbar c^3/(8\pi GM k_{\mathrm B}) の熱放射を出す(Hawking 放射)。第一と第二は同じ計算で、加速度 aa を表面重力 κ\kappa に置き換えただけのものになる。第三に、Schwarzschild 計量の時刻を虚数にすると、地平面のまわりがなめらかであるための条件から虚時間の周期が ℏ/(kBTH)\hbar/( k_{\mathrm B} T_{\mathrm H}) に決まり、第5部第1章の「e−βH^\mathrm{e}^{-\beta\hat H} は虚時間の時間発展」と組み合わせると Bekenstein–Hawking エントロピーSBH=kBc3A/(4Gℏ)S_{\mathrm{BH}}= k_{\mathrm B} c^3A/(4G\hbar) と蒸発の寿命が出る。最後に、授業で習う Planck 分布・Doppler 効果・Stefan–Boltzmann の法則と、この章の式を並べる。

単位は SI で、ℏ\hbar・cc・kBk_{\mathrm B}・GG を式に残す(この章は場の量子論の章だが、重力を扱うので記法の正本の一般相対論の流儀に従う)。計量は (+,−,−,−)(+,-,-,-)、x0=ctx^0=ct とする。量子の演算子には帽子を付ける。この章には作用とエントロピーが同時に出るので、実時間の作用を S[ϕ]S[\phi]、虚時間(Euclid)の作用を IEI_{\mathrm E}、エントロピーを SBHS_{\mathrm{BH}} と添字つきで書く。固有時を τ\tau、虚時間を τE\tau_{\mathrm E} と書き分け、温度 TT が出るので時間の長さに TT を使わない。

作用

曲がった時空のスカラー場の作用は、平坦な時空の作用の計量を gμνg_{\mu\nu} に、体積要素 d4x\mathrm{d}^4x を −g d4x\sqrt{-g}\,\mathrm{d}^4x に替えて作る。この章では時間と動径の2次元 (x0,x1)=(ct,x)(x^0,x^1)=(ct,x) に話を限り、質量のない実スカラー場 ϕ\phi の作用を

S[ϕ]=12∫−g gμν ∂μϕ ∂νϕ  d2x,d2x=dx0 dx1(5.12.1)S[\phi]=\frac12\int\sqrt{-g}\,g^{\mu\nu}\,\partial_\mu\phi\,\partial_\nu\phi\;\mathrm{d}^2x,\qquad \mathrm{d}^2x=\mathrm{d} x^0\,\mathrm{d} x^1\tag{5.12.1}

と選ぶ。平坦な時空 gμν=ημν=diag(1,−1)g_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(1,-1) では

S[ϕ]=12∫[1c(∂tϕ)2−c (∂xϕ)2]dt dx(5.12.2)S[\phi]=\frac12\int\Bigl[\frac1c(\partial_t\phi)^2-c\,(\partial_x\phi)^2\Bigr]\mathrm{d} t\,\mathrm{d} x\tag{5.12.2}

で、ϕ2\phi^2 が作用の次元(J s\mathrm{J\,s})を持つように前の係数を選んである。係数の選び方は、この章の結論(粒子数と温度)に現れない。第2部第5章の場の Euler–Lagrange 方程式を当てると、作用 (5.12.1) から

1−g ∂μ(−g gμν∂νϕ)=0(5.12.3)\frac{1}{\sqrt{-g}}\,\partial_\mu\bigl(\sqrt{-g}\,g^{\mu\nu}\partial_\nu\phi\bigr)=0\tag{5.12.3}

が出る。これは平坦な時空の □ϕ=0\Box\phi=0 の ∂μ\partial_\mu を共変微分 ∇μ\nabla_\mu に替えた ∇μ∇μϕ=0\nabla_\mu\nabla^\mu\phi=0 と同じ式である。

場の正準運動量は平坦な時空の座標で π=∂L/∂(∂tϕ)=∂tϕ/c\pi=\partial\mathcal L/\partial(\partial_t\phi)=\partial_t\phi/c で、第5部第2章と同じ規則で

[ϕ^(t,x), π^(t,y)]=iℏ δ(x−y)(5.12.4)\left[\hat\phi(t,x),\,\hat\pi(t,y)\right]=\mathrm{i}\hbar\,\delta(x-y)\tag{5.12.4}

と量子化する。ここまでは平坦な時空と何も変わらない。

2次元の共形不変性

2次元の作用 (5.12.1) には、4次元には無い性質がある。計量を各点で正の関数 Ω(x)2\Omega(x)^2 倍に伸び縮みさせる変換gμν→Ω2gμνg_{\mu\nu}\to\Omega^2g_{\mu\nu}(共形変換)で、−g→Ω2−g\sqrt{-g}\to\Omega^2\sqrt{-g}、gμν→Ω−2gμνg^{\mu\nu}\to\Omega^{-2}g^{\mu\nu} となるので、積 −g gμν\sqrt{-g}\,g^{\mu\nu} が変わらない。したがって作用も場の方程式も変わらない。dd 次元では −g gμν\sqrt{-g}\,g^{\mu\nu} が Ωd−2\Omega^{d-2} 倍になるので、この不変性は d=2d=2 に特有である。

2次元の計量は、適当な座標 (t′,x′)(t',x') を選ぶといつでも

ds2=Ω(t′,x′)2 (c2dt′2−dx′2)(5.12.5)\mathrm{d} s^2=\Omega(t',x')^2\,\bigl(c^2\mathrm{d} t'^2-\mathrm{d} x'^2\bigr)\tag{5.12.5}

の形(共形平坦)に書ける。この座標では場の方程式 (5.12.3) が平坦な時空の波動方程式∂t′2ϕ−c2∂x′2ϕ=0\partial_{t'}^2\phi-c^2\partial_{x'}^2\phi=0 そのものになり、一般の解は

ϕ=F(u′)+G(v′),u′=t′−x′c,v′=t′+x′c(5.12.6)\phi=F(u')+G(v'),\qquad u'=t'-\frac{x'}{c},\quad v'=t'+\frac{x'}{c}\tag{5.12.6}

と、右へ進む部分 FF と左へ進む部分 GG の和に分かれる。u′u'・v′v' を光的座標と呼ぶ。この章では右へ進む部分(外向きの放射)だけを扱う。

この章で使う3つの計量

この章で使う計量は3つある。1つ目は平坦な Minkowski 時空で、光的座標を U=t−x/cU=t-x/c、V=t+x/cV=t+x/c と大文字で書くと

ds2=c2dt2−dx2=c2 dU dV.(5.12.7)\mathrm{d} s^2=c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} x^2=c^2\,\mathrm{d} U\,\mathrm{d} V .\tag{5.12.7}

2つ目は、同じ平坦な時空を一様に加速する観測者の座標で書いた Rindler 計量である。x>∣ct∣x>\lvert ct\rvert の領域(右の楔)で

x=c2a eaξ/c2cosh⁡atRc,ct=c2a eaξ/c2sinh⁡atRc(5.12.8)x=\frac{c^2}{a}\,\mathrm{e}^{a\xi/c^2}\cosh\frac{at_{\mathrm R}}{c},\qquad ct=\frac{c^2}{a}\,\mathrm{e}^{a\xi/c^2}\sinh\frac{at_{\mathrm R}}{c}\tag{5.12.8}

とおくと、U=−cae−au/cU=-\frac ca\mathrm{e}^{-au/c}、V=caeav/cV=\frac ca\mathrm{e}^{av/c}(u=tR−ξ/cu=t_{\mathrm R}-\xi/c、v=tR+ξ/cv=t_{\mathrm R}+\xi/c)となり、

ds2=e2aξ/c2(c2dtR2−dξ2)=e2aξ/c2c2 du dv.(5.12.9)\mathrm{d} s^2=\mathrm{e}^{2a\xi/c^2}\bigl(c^2\mathrm{d} t_{\mathrm R}^2-\mathrm{d}\xi^2\bigr)=\mathrm{e}^{2a\xi/c^2}c^2\,\mathrm{d} u\,\mathrm{d} v .\tag{5.12.9}

ξ=0\xi=0 に止まる観測者の世界線は双曲線 x2−c2t2=c4/a2x^2-c^2t^2=c^4/a^2 で、固有加速度は aa、固有時は tRt_{\mathrm R} そのものである(第2部第3章の双曲運動)。第2部第11章の Rindler 座標の空間座標 ξ′\xi' とは1+aξ′/c2=eaξ/c21+a\xi'/c^2=\mathrm{e}^{a\xi/c^2} で結ばれ、同じ楔を別の目盛りで覆っている。計量が共形平坦の形 (5.12.5) になるように、指数の目盛りを選んだ。

3つ目は Schwarzschild 計量の時間と動径の部分である。第2部第16章の計量の角度の部分を落とし、

r∗=r+rsln⁡(rrs−1),rs=2GMc2(5.12.10)r_*=r+r_{\mathrm s}\ln\Bigl(\frac{r}{r_{\mathrm s}}-1\Bigr),\qquad r_{\mathrm s}=\frac{2GM}{c^2}\tag{5.12.10}

で定義する亀の座標 r∗r_* を使うと、dr∗/dr=(1−rs/r)−1\mathrm{d} r_*/\mathrm{d} r=(1-r_{\mathrm s}/r)^{-1} から

ds2=(1−rsr)c2dt2−dr21−rs/r=(1−rsr)(c2dt2−dr∗2)(5.12.11)\mathrm{d} s^2=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\mathrm{d} t^2-\frac{\mathrm{d} r^2}{1-r_{\mathrm s}/r}=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)\bigl(c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} r_*^2\bigr)\tag{5.12.11}

と共形平坦になる。光的座標は u=t−r∗/cu=t-r_*/c(外向き)、v=t+r∗/cv=t+r_*/c(内向き)である。地平面 r→rsr\to r_{\mathrm s} は r∗→−∞r_*\to-\infty に送られる。

3つの計量はどれも共形平坦なので、場の方程式の解は3つとも F(u)+G(v)F(u)+G(v) の形をしている。場の方程式は同じで、違いは「どの時間座標の振動数を正とするか」にしか残らない。この違いから何が出てくるかを、5.12.3節から5.12.5節で調べる。

例題 5.12.1 亀の座標で地平面がどこへ行くか ★★

オリジナルSchwarzschild 計量の亀の座標 (5.12.10) について、次に答えよ。

  1. dr∗/dr=(1−rs/r)−1\mathrm{d} r_*/\mathrm{d} r=(1-r_{\mathrm s}/r)^{-1} を確かめ、式 (5.12.11) を導け。
  2. r=2rsr=2r_{\mathrm s}、1.1rs1.1r_{\mathrm s}、1.001rs1.001r_{\mathrm s} での r∗/rsr_*/r_{\mathrm s} を求めよ。
  3. 遠方から地平面へ向かう光が r∗r_* を進む速さ ∣dr∗/dt∣\lvert \mathrm{d} r_*/\mathrm{d} t\rvert と、rr を進む速さ ∣dr/dt∣\lvert \mathrm{d} r/\mathrm{d} t\rvert を比べ、遠方の時計で地平面に届かない理由を述べよ。
解答

(1) r∗=r+rsln⁡(r/rs−1)r_*=r+r_{\mathrm s}\ln(r/r_{\mathrm s}-1) を微分すると dr∗/dr=1+rs/(r−rs)=r/(r−rs)=(1−rs/r)−1\mathrm{d} r_*/\mathrm{d} r=1+r_{\mathrm s}/(r-r_{\mathrm s})=r/(r-r_{\mathrm s})=(1-r_{\mathrm s}/r)^{-1}。したがって dr2/(1−rs/r)=(1−rs/r) dr∗2\mathrm{d} r^2/(1-r_{\mathrm s}/r)=(1-r_{\mathrm s}/r)\,\mathrm{d} r_*^2 で、これを計量に入れると式 (5.12.11) になる。

(2) r=2rsr=2r_{\mathrm s} では ln⁡1=0\ln1=0 なので r∗=2rsr_*=2r_{\mathrm s}。r=1.1rsr=1.1r_{\mathrm s} では r∗=(1.1+ln⁡0.1)rs=−1.203 rsr_*=(1.1+\ln0.1)r_{\mathrm s}=-1.203\,r_{\mathrm s}。r=1.001rsr=1.001r_{\mathrm s} では r∗=(1.001+ln⁡0.001)rs=−5.907 rsr_*=(1.001+\ln0.001)r_{\mathrm s}=-5.907\,r_{\mathrm s}。地平面に近づくと r∗r_* は対数的に −∞-\infty へ向かう。

(3) 動径方向の光は ds=0\mathrm{d} s=0 なので、式 (5.12.11) の右辺から ∣dr∗/dt∣=c\lvert \mathrm{d} r_*/\mathrm{d} t\rvert =c で、r∗r_* の上ではいつも光速で進む。rr で見ると ∣dr/dt∣=c(1−rs/r)\lvert \mathrm{d} r/\mathrm{d} t\rvert =c(1-r_{\mathrm s}/r) で、地平面に近づくほど遅くなる。地平面 r∗=−∞r_*=-\infty までの r∗r_* の距離は無限大なので、遠方の時計 tt では有限の時間で届かない。後で使う指数関数の赤方偏移は、地平面が r∗=−∞r_*=-\infty にあることによる。

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