の値は3通りに読める
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第8章 §7.8.3 ★★★ は、くり返しの確率の指数・ を掛けた仕事・2次の係数としての推定の精度の3通りに読め、3つは同じ数を指す
指数・仕事・曲がり
表 7.8.1 の「出てきたもの」の欄の量は、どれも の値の読み方の違いである。読み方は3つに分かれる。
第一は確率の指数としての読み方である。 から独立に 個取った列が のように見える確率は で減る(Sanov の定理)。符号化定理(第1部第5・6章)の典型集合の大きさ、Stein の補題の第2種の誤りの指数(第1部第8章・第3部第8章)、Bell の不等式の破れで局所的な模型を棄却するのに要る試行の数(第3部第5章)が、この読み方に当たる。通信路容量 も、受け手の側で独立とみなした分布から見て、送った符号語の出力がどれだけ見分けやすいかの指数である。
第二は仕事としての読み方である。熱浴の温度 のもとで、分布 の系から取り出せる仕事の上限は である(式 (7.8.2))。測定で得た相互情報量 から取り出せる仕事 (第4部第4章)、消去のコスト(第4部第5章)、Crooks の関係の散逸仕事 (第4部第2章)がこの読み方に当たる。
第三は曲がりとしての読み方である。パラメータを だけずらした2つの分布の は で、Fisher 情報 は推定の誤差の下限 を決める(第1部第7章)。量子 Fisher 情報と Heisenberg 限界(第3部第8章・第6部第2章)、熱力学的不確定性関係(第4部第6章)がこの読み方に当たる。
3つの読み方が同じ数を指すことには理由がある。第一と第二は、Gibbs 分布の重み が「エネルギーを使って確率を数える」指数であることでつながり、熱浴にとって の仕事は、確率の比の対数を の単位で測ったものである。第三は第一の局所版で、近い2つの分布を見分ける指数 が、誤差 の推定に要る回数 を決める。
例題 7.8.3 光ピンセットの粒子で3つの読み方を確かめる ★★★
オリジナルばね定数 の光の罠に捕まえた粒子が、温度 300 K で熱平衡にある(過減衰の Langevin 方程式。第4部第1章)。罠の中心が のときの位置の分布を 、罠の中心が nm にずれていたときの分布を とする。
- (1) 位置の標準偏差 と を求め、Fisher 情報 による と比べよ。
- (2) 罠の中心が に戻った直後、粒子の分布はまだ である。取り出せる仕事の上限 を求め、ばねのエネルギー と比べよ。
- (3) 緩和時間より長い間隔で位置を測って独立な値を得る。罠がずれていないのに「ずれている」と判断する確率を固定し、ずれを見逃す確率を にするには何回測ればよいか(Stein の補題の主要項)。同じ回数の平均で中心を推定したときの標準偏差はいくらか。
解答
(1) 熱平衡の分布は正規分布で、、 nm である。分散が等しい2つの正規分布の は nat。 なので、正規分布の位置のずれでは2次の展開が厳密に成り立つ。
(2) J で、両者は一致する。実際、2つの分布はエントロピーが等しいので、自由エネルギーの差は平均のエネルギーの差 だけになる。取り出すには、罠の中心を一瞬で へ動かし(仕事は粒子の分布の平均で )、そこから準静的に へ戻せばよい。
(3) 、つまり約23回である。23回の平均の標準偏差は nm で、ずれ nm の約 になる。指数 と推定の精度 は、同じ を別の形で表している。
同じ数 が、確率の指数・ 単位の仕事・Fisher 情報の2次の係数の3つに現れた。
ブラックホールでの3つの読み方
第7部でも、同じ3つの読み方が現れる。Bekenstein 上限は、領域に制限した状態と真空の を式 (7.8.3) の形で書いた であり1H. Casini (2008), Class. Quantum Grav. 25, 205021。下の脚注へ、平坦な時空の Rindler の楔では がエネルギーに比例する( と境界からの距離を掛けたもの)ので、エネルギー ・大きさ の物体のエントロピーが で押さえられる2J. D. Bekenstein (1981), Phys. Rev. D 23, 287 の上限 。下の脚注へ。これは第二の読み方( をエネルギーで測る)の重力版である。一般化第二法則(式 (7.8.4))では、 は面積の単位 で測った「まだ地平面に吸い込まれていない分」として現れる。JLMS の等式(境界の2状態の と内部の2状態の が等しい。第7部第6章の定理 7.6.1)は、単調性の等号が両向きに成り立つ場合で、等号条件の読み方の延長にある。
1 H. Casini (2008), Class. Quantum Grav. 25, 205021。
2 J. D. Bekenstein (1981), Phys. Rev. D 23, 287 の上限 。
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