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停留:基本補題と、停留が最小とは限らないこと

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第3章 汎関数と変分(数学だけ)
目次
  1. 停留の定義
  2. 変分法の基本補題
  3. 2次の変分
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第3章 §1.3.5 ★★★ 「すべての向きで δF=0\delta F=0」と「汎関数微分 =0=0」が同じ条件であることを示し、停留を最小と取り違えない

停留の定義

定義 1.3.4(停留)

経路 qq が汎関数 FF の停留点であるとは、すべての許される向き η\eta について第1変分が 00、すなわち ddϵF[q+ϵη]∣ϵ=0=0\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} \epsilon}F[q+\epsilon\eta]\big|_{\epsilon=0}=0 が成り立つことをいう。これを δF=0\delta F=0 と書く。

汎関数微分が存在すれば、δF=ϵ∫(δF/δq)η dt\delta F=\epsilon\int(\delta F/\delta q)\eta\,\mathrm{d} t である。δF/δq≡0\delta F/\delta q\equiv0 なら停留は明らかに成り立つ。逆向き(停留なら汎関数微分が 00)を言うには、「すべての η\eta との積分が 00 になる関数は 00 しかない」ことを示す必要がある。これが次の補題である。

変分法の基本補題

定理 1.3.5(変分法の基本補題 ★★★)

g(t)g(t) を [t1,t2][t_1,t_2] 上の連続関数とする。端で 00 になるすべての滑らかな関数 η\eta について ∫t1t2g(t)η(t) dt=0\int_{t_1}^{t_2}g(t)\eta(t)\,\mathrm{d} t=0 が成り立つなら、[t1,t2][t_1,t_2] 上で g≡0g\equiv0 である。

証明

ある内点 ss で g(s)≠0g(s)\neq0 と仮定し、g(s)>0g(s)>0 とする(負なら gg を −g-g に替える)。gg は連続なので、ある r>0r>0 があって区間 (s−r,s+r)⊂(t1,t2)(s-r,s+r)\subset(t_1,t_2) の上で g>0g>0 である。この区間の中だけで正、外では 00 になる滑らかな関数 η\eta を1つ選ぶ。たとえば

η(t)={exp⁡(−1r2−(t−s)2)(∣t−s∣<r)0(∣t−s∣≥r)\eta(t)=\begin{cases}\exp\Bigl(-\dfrac{1}{r^2-(t-s)^2}\Bigr)&(\lvert t-s\rvert <r)\\[4pt] 0&(\lvert t-s\rvert \ge r)\end{cases}

は何回でも微分でき、端で 00 になる。このとき gηg\eta は区間 (s−r,s+r)(s-r,s+r) で正、外で 00 なので ∫gη dt>0\int g\eta\,\mathrm{d} t>0 となり、仮定に反する。よってすべての内点で g=0g=0 で、連続性から端点でも g=0g=0 である。

この補題から、汎関数微分を持つ汎関数について

δF=0  (すべての許される η)⟺δFδq(t)=0  (t1<t<t2)(1.3.15)\delta F=0\ \ (\text{すべての許される }\eta)\quad\Longleftrightarrow\quad\frac{\delta F}{\delta q(t)}=0\ \ (t_1<t<t_2)\tag{1.3.15}

が従う。多変数関数で「すべての向きの方向微分が 00」と「すべての偏微分が 00」が同じだったことに対応する。多変数では座標軸の向きを NN 本選べば済んだが、関数の空間には座標軸の代わりに無数の向きがあり、証明では「1点の近くだけで正になる向き」を選んで1点ずつ調べている。変分問題で η\eta をすべての許される関数にわたって動かすのはこのためである。同じ論法で、1.3.4節で述べた汎関数微分の一意性も出る(∫(g1−g2)η dt=0\int(g_1-g_2)\eta\,\mathrm{d} t=0 がすべての η\eta で成り立てば g1=g2g_1=g_2)。

2次の変分

停留は、多変数の場合と同じく最小の必要条件にすぎない。停留点 qq のまわりで

F[q+ϵη]=F[q]+δ2F+O(ϵ3),δ2F≔ϵ22 d2dϵ2F[q+ϵη]∣ϵ=0(1.3.16)F[q+\epsilon\eta]=F[q]+\delta^2F+\mathcal{O}(\epsilon^3),\qquad \delta^2F\coloneqq\frac{\epsilon^2}{2}\,\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}\epsilon^2}F[q+\epsilon\eta]\Big|_{\epsilon=0}\tag{1.3.16}

と展開し、δ2F\delta^2F を2次の変分と呼ぶ。すべての許される η≠0\eta\neq0 で δ2F>0\delta^2F>0 なら、どの向きにも少し動かせば FF は増える。1つでも δ2F<0\delta^2F<0 となる向きがあれば、その向きに動かすと FF が減るので、qq は最小点ではない。

例として、[0,T][0,T] 上の汎関数

S[q]=∫0T(12q˙2−12ω2q2)dt,q(0)=q(T)=0(1.3.17)S[q]=\int_0^T\Bigl(\frac12\dot q^2-\frac12\omega^2q^2\Bigr)\mathrm{d} t,\qquad q(0)=q(T)=0\tag{1.3.17}

を考える。(b) と (d) から δS/δq(t)=−q¨−ω2q\delta S/\delta q(t)=-\ddot q-\omega^2q で、q≡0q\equiv0 は停留点である。SS は qq の2次式なので、q≡0q\equiv0 のまわりの展開は2次で終わりS[ϵη]=ϵ22∫0T(η˙2−ω2η2) dtS[\epsilon\eta]=\frac{\epsilon^2}{2}\int_0^T(\dot\eta^2-\omega^2\eta^2)\,\mathrm{d} t となる。向きとして ηn(t)=sin⁡(nπt/T)\eta_n(t)=\sin(n\pi t/T)(n=1,2,…n=1,2,\dots)を入れると、∫0Tsin⁡2(nπt/T) dt=∫0Tcos⁡2(nπt/T) dt=T/2\int_0^T\sin^2(n\pi t/T)\,\mathrm{d} t=\int_0^T\cos^2(n\pi t/T)\,\mathrm{d} t=T/2 から

S[ϵηn]=ϵ2T4[(nπT)2−ω2](1.3.18)S[\epsilon\eta_n]=\frac{\epsilon^2T}{4}\Bigl[\Bigl(\frac{n\pi}{T}\Bigr)^2-\omega^2\Bigr]\tag{1.3.18}

を得る。T<π/ωT<\pi/\omega なら n=1n=1 でも括弧の中は正で、T>π/ωT>\pi/\omega なら n=1n=1 の向きで負になる(図 1.3.3)。つまり q≡0q\equiv0 は、区間が短いあいだは最小点だが、区間の長さが π/ω\pi/\omega を超えると停留点のまま最小点でなくなる。T<π/ωT<\pi/\omega のとき、ηn\eta_n 以外の向きも含めて本当に最小であることは、次の不等式で確かめられる。

命題 1.3.6(Wirtinger の不等式 ★★)

η(0)=η(T)=0\eta(0)=\eta(T)=0 を満たす滑らかな関数について

∫0Tη˙2 dt ≥ (πT)2∫0Tη2 dt(1.3.19)\int_0^T\dot\eta^2\,\mathrm{d} t\ \ge\ \Bigl(\frac{\pi}{T}\Bigr)^2\int_0^T\eta^2\,\mathrm{d} t\tag{1.3.19}

が成り立ち、等号は η=csin⁡(πt/T)\eta=c\sin(\pi t/T) のときに限る。

証明

η\eta を [0,T][0,T] の正弦級数 η=∑n≥1bnsin⁡(nπt/T)\eta=\sum_{n\ge1}b_n\sin(n\pi t/T) に展開する(端で 00 の関数は奇関数に延長して Fourier 展開できる)。sin⁡(nπt/T)\sin(n\pi t/T) どうし、cos⁡(nπt/T)\cos(n\pi t/T) どうしは [0,T][0,T] で直交し、2乗の積分はどれも T/2T/2 なので

∫0Tη2 dt=T2∑nbn2,∫0Tη˙2 dt=T2∑n(nπT)2bn2 ≥ (πT)2T2∑nbn2.\int_0^T\eta^2\,\mathrm{d} t=\frac T2\sum_nb_n^2,\qquad\int_0^T\dot\eta^2\,\mathrm{d} t=\frac T2\sum_n\Bigl(\frac{n\pi}{T}\Bigr)^2b_n^2\ \ge\ \Bigl(\frac{\pi}{T}\Bigr)^2\frac T2\sum_nb_n^2 .

等号は n≥2n\ge2 の係数がすべて 00 のときに限る。

この不等式を使うと、T<π/ωT<\pi/\omega のとき S[ϵη]≥ϵ22[(π/T)2−ω2]∫η2 dt>0S[\epsilon\eta]\ge\frac{\epsilon^2}{2}\bigl[(\pi/T)^2-\omega^2\bigr]\int\eta^2\,\mathrm{d} t>0(η≠0\eta\neq0)で、q≡0q\equiv0 は最小点である。物理の作用はこの SS の形をしていて、運動方程式の解は作用の停留点ではあるが、時間が長いと最小点ではない。「最小作用の原理」という呼び名と実際の中身(停留)の関係は 第1部第5章 で扱う。

図

図 1.3.3 汎関数 (1.3.17)(T=1T=1)を停留点 q≡0q\equiv0 から向き η1=sin⁡πt\eta_1=\sin\pi t に ϵ\epsilon だけ動かしたときの値(式 (1.3.18) の厳密な値なので点線)。どちらの場合も ϵ=0\epsilon=0 で傾きが 00(停留)だが、ωT>π\omega T>\pi では上に凸になり、q≡0q\equiv0 は最小点でない

例題 1.3.5 停留点を求めて最小であることを確かめる ★★★

オリジナルcc を定数とし、[0,1][0,1] 上の汎関数 F[q]=∫01(12q˙2+c q)dtF[q]=\int_0^1\Bigl(\frac12\dot q^2+c\,q\Bigr)\mathrm{d} t を、q(0)=q(1)=0q(0)=q(1)=0 を満たす経路の中で考える。

  1. (1) 汎関数微分 δF/δq(t)\delta F/\delta q(t) を求めよ。
  2. (2) 停留点 q∗q_* を求め、F[q∗]F[q_*] を計算せよ。
  3. (3) 任意の許される η\eta について F[q∗+η]−F[q∗]F[q_*+\eta]-F[q_*] を正確に求め、q∗q_* が最小点であることを示せ。
解答

(1) 例 (a) と (d) を足して δFδq(t)=−q¨(t)+c\dfrac{\delta F}{\delta q(t)}=-\ddot q(t)+c。

(2) 基本補題 1.3.5 により、停留は q¨=c\ddot q=c と同じである。2回積分して q=c2t2+At+Bq=\frac c2t^2+At+B、端の条件から B=0B=0, A=−c2A=-\frac c2。よってq∗(t)=c2t(t−1)q_*(t)=\frac c2t(t-1)。q˙∗=c2(2t−1)\dot q_*=\frac c2(2t-1) なので

F[q∗]=c28∫01(2t−1)2 dt+c22∫01(t2−t) dt=c28⋅13−c22⋅16=−c224.F[q_*]=\frac{c^2}{8}\int_0^1(2t-1)^2\,\mathrm{d} t+\frac{c^2}{2}\int_0^1(t^2-t)\,\mathrm{d} t=\frac{c^2}{8}\cdot\frac13-\frac{c^2}{2}\cdot\frac16=-\frac{c^2}{24}.

(3) 代入して展開すると

F[q∗+η]−F[q∗]=∫01(q˙∗η˙+c η)dt+∫0112η˙2 dt.F[q_*+\eta]-F[q_*]=\int_0^1\bigl(\dot q_*\dot\eta+c\,\eta\bigr)\mathrm{d} t+\int_0^1\frac12\dot\eta^2\,\mathrm{d} t .

第1項は部分積分で ∫01(−q¨∗+c)η dt=0\int_0^1(-\ddot q_*+c)\eta\,\mathrm{d} t=0(端の項は η(0)=η(1)=0\eta(0)=\eta(1)=0 で消える)。よってF[q∗+η]−F[q∗]=12∫01η˙2 dt≥0F[q_*+\eta]-F[q_*]=\frac12\int_0^1\dot\eta^2\,\mathrm{d} t\ge0 で、等号は η˙≡0\dot\eta\equiv0、端の条件と合わせて η≡0\eta\equiv0 のときに限る。q∗q_* は唯一の最小点である。ここでは ϵ\epsilon を使わずに η\eta そのものを足したが、FF が qq の2次式なので展開は2次で正確に終わり、1次の項が第1変分、2次の項が2次の変分になっている。

ほかの巻では

  • 近似の数理 第3章:2次の変分の下限 (π/T)2(\pi/T)^2 を、作用素の最小固有値を Rayleigh 商の最小で与える min-max 原理で読み直せる

木下の勉強ステータス

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