解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第3章 §1.3.6 ★★ 「δq の1次まで展開する」教科書の書き方は第1変分と同じもの。違いは何を定義とし何を導くかにある
1次まで展開する書き方
学部の解析力学の教科書の多くは、変分を次のように書く。経路を q→q+δq と少しずらし、L を δq と δq˙ について1次まで Taylor 展開して
δS=S[q+δq]−S[q]=∫t1t2(∂q∂Lδq+∂q˙∂Lδq˙)dt(2次以上を捨てる)(1.3.20)
とし、「δ と dtd は交換する」として δq˙=dtdδq と置き換える。
この章の第1変分 (1.3.9) で同じ量を計算すると、dϵdL(q+ϵη,q˙+ϵη˙,t)ϵ=0 を連鎖律で計算して
δS=ϵ∫t1t2(∂q∂Lη+∂q˙∂Lη˙)dt=∫t1t2(∂q∂Lδq+∂q˙∂Ldtdδq)dt
となり、式 (1.3.20) と同じ式が出る。違いは2つある。1つ目は「2次以上を捨てる」の扱いで、教科書の書き方では δq がどれだけ小さければよいかを決めないまま展開を打ち切っているが、第1変分は ϵ についての微分として定義されているので、打ち切りの近似を含まない。2つ目は δq˙=dtdδq で、教科書では規則として与えられることが多いが、この章では「δ は t を止めた ϵ 微分」から混合偏微分の等しさとして導いた(式 (1.3.10))。導いたので、時刻をずらす変分(第1部の後の章で Noether の定理を時間の並進に当てるときに出る)ではこの規則をそのまま使えないことも分かる。
式 (1.3.20) の ∂L/∂q は「q˙ を止めて q だけ動かす」偏微分である。経路の上では q を動かすと q˙ も動くが、その分は第2項 (∂L/∂q˙)δq˙ に入っている。「q と q˙ は独立か」という疑問は、L の偏微分では独立(L は3変数の普通の関数)、経路の変分では独立でない(δq˙ は δq で決まる)と答えられる。
多変数の微分との対応表
この章で作った道具と、多変数の微分積分の道具の対応をまとめる。左の列の添字 i についての和が、右の列では t についての積分になる。
| 多変数関数 f(x1,…,xN) | 汎関数 F[q] |
| 変数 | 添字つきの数 xi | 時刻ごとの値 q(t) |
| 動かす向き | h=(h1,…,hN) | 許される向き η(t) |
| 1次の変化 | df=∑i∂xi∂fdxi | δF=∫δq(t)δFδq(t)dt |
| 変数自身の微分 | ∂xi∂xj=δij | δq(t)δq(t′)=δ(t−t′) |
| 停留 | ∂xi∂f=0(N 本の式) | δq(t)δF=0(t ごとの式=微分方程式) |
| 最小かどうか | Hesse 行列が正定値 | 2次の変分 δ2F>0 |
停留の条件が、多変数では N 本の代数方程式だったのに対して、汎関数では t ごとに1本ずつの方程式、すなわち微分方程式になる。変分問題の答えが微分方程式の解として求まるのはこのためで、次の章ではその微分方程式の一般形を出す。
場の理論の教科書では、時刻 t の代わりに空間の点 x や時空の点を変数にして δϕ(x)/δϕ(y)=δ(3)(x−y) のように書く。これは式 (1.3.13) の t を x に置き換えただけで、この章の定義がそのまま使える(第2部第5章)。
例題 1.3.6 有限次元の連鎖律と汎関数の連鎖律 ★★
オリジナル
- (1) N 変数の関数 g(x)=(∑jxj2)2 の偏微分 ∂g/∂xi を求めよ。
- (2) [0,1] 上の汎関数 G[q]=(∫01q(t)2dt)2 の汎関数微分を、(1) と対応づけて求めよ。
- (3) q(t)=t, η(t)=sinπt で dϵdG[q+ϵη]ϵ=0 を直接計算し、(2) の結果と一致することを確かめよ。
解答
(1) 連鎖律で ∂g/∂xi=2(∑jxj2)⋅2xi=4(∑jxj2)xi。
(2) F1[q]=∫q2dt とおくと G=Φ(F1), Φ(u)=u2 で、合成の規則と例 (b) から
δq(t)δG=Φ′(F1)δq(t)δF1=2F1[q]⋅2q(t)=4(∫01q2dt′)q(t).
(1) の ∑j を ∫dt′ に、xi を q(t) に置き換えた形になっている。積分の中の変数は t′ と書き、外の t と区別した。
(3) u(ϵ)=∫01(t+ϵsinπt)2dt とおくと G=u2, dϵdG=2udϵdu。u(0)=31, dϵdu0=2∫01tsinπtdt=2⋅π1 なので dϵdG0=2⋅31⋅π2=3π4。(2) からは ∫014⋅31⋅tsinπtdt=34⋅π1=3π4 となり、一致する。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com