解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第4章 §1.4.3 ★★★ 端の値を自由にすると端の項が消えずに残り、∂L/∂q˙=0 が境界条件として出てくる
端の項を残す
前の章とこの章のここまでは、端の値 q(t1), q(t2) を決めた問題だけを扱い、向き η を端で 0 になる関数に限ってきた。端の値も含めて最もよいものを探す問題では、端での η の値も自由に選べる。このとき第1変分 (1.4.3) の端の項は消えない。
δS=ϵ(∂q˙∂Lt2η(t2)−∂q˙∂Lt1η(t1))+ϵ∫t1t2δq(t)δSηdt.
停留の条件を2段階で調べる。まず、端で 0 になる向きも、自由な端の問題で許される向きに含まれる。それらだけを使うと端の項は 0 になり、基本補題から内部で Euler–Lagrange 方程式が成り立つ。次に、Euler–Lagrange 方程式が成り立っているので積分の項は 0 である。残った端の項が、端の値が自由な η(t1), η(t2) のどの値についても 0 にならなければならない。
定理 1.4.4(自然境界条件 ★★★)
q(t1)=qa を固定し、q(t2) を自由にした経路の中で q が S の停留点であるための必要十分条件は、内部で Euler–Lagrange 方程式 (1.4.5) が成り立ち、自由な端で
∂q˙∂Lt=t2=0(1.4.11)
が成り立つことである。両端とも自由なら、t1 でも同じ条件が加わる。
式 (1.4.11) を自然境界条件と呼ぶ。「自然」と呼ぶのは、問題の設定として課した条件ではなく、変分の計算から出てくる条件だからである。2階の方程式には条件が2つ要るので、片方の端の値を手放した分を、自然境界条件1つがちょうど埋めている。固定した端では値が条件になり、自由な端では ∂L/∂q˙ が条件になる。どちらの端でもどちらか1つが課されるので、条件の数は端の値を決めたときと同じく2つである。自由度が複数あるときは、自由な成分ごとに ∂L/∂q˙i∣t2=0 が1本ずつ加わる。
端に費用がある場合
端の値が自由でも、端の値に応じて Ψ(q(t2)) という数が汎関数に加わる問題もある。
F[q]=∫t1t2Ldt+Ψ(q(t2))
の第1変分には Ψ′(q(t2))ϵη(t2) が加わるので、自由な端の条件は
∂q˙∂Lt=t2+Ψ′(q(t2))=0(1.4.12)
に変わる。たとえば Ψ=2kq(t2)2(k>0)は「端の値を 0 から離すほど費用がかかる」という項で、k→0 で自由な端、k→∞ で端の値を 0 に固定した問題に近づく(図 1.4.1)。
端の時刻が動く問題
この節では、端の時刻 t2 を決めて端の値だけを動かす変分を扱った。端の時刻そのものも動かす問題(たとえば、ある曲線の上のどこかに着けばよい問題)では、区間の長さが ϵ とともに変わるので、前の章の規則 δ∫=∫δ がそのままでは使えず、端の項に hδt の形の項が加わる。時刻をずらす変分は 第1部第10章 で扱う。

図 1.4.1 汎関数 ∫01(21q˙2+q)dt+2kq(1)2 の停留点(q(0)=0)。どれも厳密解なので点線で描いた。内部ではどれも q¨=1 を満たす放物線で、右端の条件 q˙(1)+kq(1)=0 だけが違う。k=0 では右端で傾きが 0(自然境界条件)になり、k を大きくすると右端の値が 0 に引き寄せられる
例題 1.4.3 端を自由にすると値はどれだけ下がるか ★★★
オリジナル[0,1] 上の汎関数 F[q]=∫01(21q˙2+q)dt を、q(0)=0 を満たす経路の中で考える。右端の値 q(1) は自由とする。
- (1) Euler–Lagrange 方程式と自然境界条件を書き、停留点 q∗ と F[q∗] を求めよ。
- (2) 右端も q(1)=0 に固定した問題の停留点は 21t(t−1) で、F=−241 である(前の章の例題で c=1 とおいたもの)。(1) と比べて、大小関係の理由を述べよ。
- (3) 端の費用 2kq(1)2 を加えた問題の停留点と F の値を k で表し、k→0 と k→∞ の極限を確かめよ。
解答
(1) L=21q˙2+q で ∂q∂L=1, ∂q˙∂L=q˙。Euler–Lagrange 方程式は q¨=1、自然境界条件は q˙(1)=0 である。一般解 q=21t2+At+B に q(0)=0 を入れて B=0、q˙(1)=1+A=0 から A=−1。よって q∗=21t2−t。q˙∗=t−1 なので
F[q∗]=∫01(21(t−1)2+21t2−t)dt=61+(61−21)=−61.
(2) −61<−241 で、自由な端の値のほうが小さい。右端を 0 に固定した経路は、右端が自由な経路の一部である。より広い集まりの中で探す最小値は、狭い集まりの中での最小値より大きくならない。自由な端の答えでは q∗(1)=−21 で、右端を下げることで q の項の積分をさらに小さくしている。
(3) 端の条件 (1.4.12) は q˙(1)+kq(1)=0 である。q=21t2+At を入れると 1+A+k(21+A)=0 から
A=−1+k1+k/2,q∗=21t2+At.
これを F に代入して整理すると
F[q∗]=∫01(21(t+A)2+21t2+At)dt+2k(21+A)2=−24(k+1)k+4.
k→0 で A→−1, F→−61(自由な端)、k→∞ で A→−21, F→−241(固定した端)となる。k=2 では A=−32, F=−121 で、2つの間にある。
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