解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第5章 §1.5.2 ★★★ 作用は座標の選び方によらない数なので、Euler–Lagrange 方程式はどの一般化座標でも同じ形をとる。L=T−V を直交座標で書いて代入するだけで済む
Euler–Lagrange 方程式は座標によらない
Newton の運動方程式 (1.5.3) は直交座標で書かれていて、極座標で使うには加速度の成分 r¨−rφ˙2 や rφ¨+2r˙φ˙ を別に計算する必要がある。Euler–Lagrange 方程式にはこの手間が無い。その理由は、作用の値が「経路に沿った L の積分」という1つの数で、経路をどの座標で表したかによらないことにある。
一般化座標 q=(q1,…,qf) から別の一般化座標 Q=(Q1,…,Qf) への取り替え qi=qi(Q,t) を考える。各時刻で Q↦q は滑らかで逆を持つとする(一般化座標の取り方は 第1部第2章)。速度は連鎖律で
q˙i=j∑∂Qj∂qiQ˙j+∂t∂qi
となるので、新しい Lagrangian を L~(Q,Q˙,t):=L(q(Q,t),q˙(Q,Q˙,t),t) と定める。同じ経路を q で表しても Q で表しても、作用は同じ数になる。
命題 1.5.2(座標を取り替えても Euler–Lagrange 方程式の形は変わらない ★★★)
上の取り替えのもとで
δQj(t)δS=i=1∑fδqi(t)δS∂Qj∂qi(j=1,…,f)(1.5.5)
が成り立つ。左辺は L~ で、右辺は L で計算した Euler–Lagrange 方程式の左辺である。行列 (∂qi/∂Qj) は逆を持つので、一方の座標で Euler–Lagrange 方程式が成り立つことと、他方の座標で成り立つことは同じである。
証明
変分 δ は時刻 t を止めた操作(第1部第3章)なので、経路 Q を δQ だけずらしたときの q のずれは、同じ時刻での連鎖律で δqi=∑j(∂qi/∂Qj)δQj になる。δQ が端で 0 なら δq も端で 0 である。作用は同じ数なので
δS=∫i∑δqi(t)δSδqidt=∫j∑[i∑δqi(t)δS∂Qj∂qi]δQjdt
で、汎関数微分の一意性から角括弧が δS/δQj(t) である。
この命題の要点は、Newton の運動方程式のように「ベクトルの成分」を座標ごとに変換し直す必要がなく、スカラー L を新しい座標で書き直すだけでよいことである。運動エネルギーは速度の2乗という座標によらない量なので、極座標なら ∣r˙∣2=r˙2+r2φ˙2 を入れればよい。時刻によって動く座標(回転する座標系など)でも、∂qi/∂t=0 の項が速度に入るだけで、手順は同じである。
直交座標から極座標へ
平面上の質点で x=rcosφ、y=rsinφ とすると、x˙=r˙cosφ−rφ˙sinφ、y˙=r˙sinφ+rφ˙cosφ で、x˙2+y˙2=r˙2+r2φ˙2 となる。∂x/∂r=cosφ、∂x/∂φ=−rsinφ などから、式 (1.5.5) は
δrδS=cosφδxδS+sinφδyδS,δφδS=−rsinφδxδS+rcosφδyδS
となる。1つ目は運動方程式の動径成分、2つ目は接線成分に r を掛けたもの(力のモーメント)である。
例題 1.5.2 中心力の運動方程式を極座標で出す ★★★
オリジナル平面上の質量 m の質点が、原点からの距離だけによるポテンシャル V(r) の中を動く。
- (1) 極座標 (r,φ) で L を書け。
- (2) r と φ の Euler–Lagrange 方程式を書き、Newton の運動方程式の動径成分・接線成分とどう対応するか述べよ。
- (3) V=21kr2 のとき、半径 R0 の等速円運動 r=R0、φ=Ωt が解になる Ω を求めよ。
解答
(1) 上の例から L=21m(r˙2+r2φ˙2)−V(r)。
(2) r について、∂L/∂r˙=mr˙、∂L/∂r=mrφ˙2−V′(r) なので
m(r¨−rφ˙2)=−V′(r).
左辺の r¨−rφ˙2 は加速度の動径成分で、−rφ˙2 が向心加速度の項にあたる。右辺は力の動径成分である。φ について、∂L/∂φ˙=mr2φ˙、∂L/∂φ=0 なので
dtd(mr2φ˙)=0.
dtd(mr2φ˙)=mr(rφ¨+2r˙φ˙) で、rφ¨+2r˙φ˙ は加速度の接線成分である。中心力には接線成分が無いので右辺は 0 で、角運動量 mr2φ˙ が保存する。加速度の極座標成分を別に導かなくても、T を極座標で書くだけで2つの成分が両方とも出てくる。
(3) r=R0 で r¨=0 なので、r の式は −mR0Ω2=−kR0。よって Ω=k/m で、半径 R0 によらない。φ の式は φ˙ が一定なので満たされている。等方的な調和振動子では、どの半径の円軌道も同じ角振動数で回る。
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