解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第5章 §1.5.3 ★★★ T+V では力の向きが逆になる。cL と L+dtdΛ の運動方程式は同じで、選び方の自由度はこの2つだけではない
T+V では力の向きが逆になる
V の前の符号を変えた L+=T+V を考えると、1つの質点では Euler–Lagrange 方程式は mr¨=+∇V になる。力が位置エネルギーの高い方へ向くので、重力の中の質点は上へ加速し、調和振動子のばねは伸びるほど強く押し出す。物体が位置エネルギーの低い方へ動くことは静力学(つり合いの位置は V の極小)でも確かめられる事実なので、V の前の符号は − に決まる。この符号は Newton の運動方程式から逆にたどって決めたもので、対称性から出たものではない。
エネルギーの保存則 T+V=一定 と比べると、保存するのは和で、作用に入るのは差である。和と差の関係は1.5.6節で Legendre 変換の形として説明する。
運動方程式が同じになる L は1つではない
同じ運動方程式を出す L は、少なくとも次の2通りに変えられる。
命題 1.5.3(運動方程式が同じになる Lagrangian ★★★)
c=0 を定数、Λ(q,t) を座標と時刻の滑らかな関数とする。
L′=cL+dtdΛ(q,t),dtdΛ=i∑∂qi∂Λq˙i+∂t∂Λ(1.5.6)
とすると、L′ の Euler–Lagrange 方程式は L の Euler–Lagrange 方程式の c 倍で、解は同じである。
証明
全微分 dtdΛ を足しても Euler–Lagrange 方程式が変わらないことは、第1部第4章の命題 1.4.3 で示した。残るのは定数倍 c の部分で、cL の作用は cS[q] だから δ(cS)=cδS であり、汎関数微分も c 倍になる。c=0 なので停留の条件は変わらない。
定数倍の自由度は単位の選び方にあたる。ただし c は全体に1つで、粒子ごとに違う定数を掛けると相互作用の項との釣り合いが崩れて運動が変わる。互いに離れて相互作用しない2つの系では L=LA+LB と足し合わせるので、2つの系の L の比(質量の比)には意味があり、全体の定数倍だけが自由に残る。全微分を足す自由度は、1.5.4節で Galilei 変換を扱うときに使い、第1部第10章では Noether の保存量に −Λ の項として現れる。量子力学では作用が位相 eiS/ℏ に入るので、c は自由に選べず、全微分 dtdΛ を足すと波動関数の位相が eiΛ/ℏ だけ変わる(第2部第2章のゲージ変換)。
命題 1.5.3 の2通り以外にも、同じ運動方程式を出す L はある。自由粒子 q¨=0 は κq˙4 を停留させても出る(次の例題)。ところが、これに −V を足すと Newton の運動方程式にならない。21mq˙2 が選ばれる理由は、自由粒子の運動を出すことだけでなく、ポテンシャルを足したときに Newton の運動方程式を出すことにある。運動エネルギーの形そのものは、次の節で対称性から決める。
例題 1.5.3 同じ運動を出す L、違う運動を出す L ★★
オリジナル1次元の一般化座標 q について次に答えよ。
- (1) L+=21mq˙2+21mω2q2 の Euler–Lagrange 方程式を書き、q(0)=0、q˙(0)=v0 の解を求めよ。L=21mq˙2−21mω2q2 の解と比べよ。
- (2) Λ=21mλq2t(λ は定数)として、L+dtdΛ の Euler–Lagrange 方程式が L のものと同じになることを、偏微分を直接計算して確かめよ。
- (3) κ>0 を定数として、L4=κq˙4 と L4−mgq の Euler–Lagrange 方程式を求めよ。前者の解は自由粒子と同じ運動だが、後者の解は一様な重力の中の運動にならないことを示せ。
解答
(1) ∂L+/∂q=mω2q、∂L+/∂q˙=mq˙ から q¨=+ω2q。一般解は q=aeωt+be−ωt で、初期条件から
q(t)=ωv0sinhωt.
L では q=(v0/ω)sinωt で、振幅 v0/ω の振動である。L+ では原点から離れるほど強く押し出され、q は指数関数的に大きくなる。
(2) dtdΛ=mλqq˙t+21mλq2 なので、足した分の寄与は
∂q∂(dtdΛ)=mλq˙t+mλq,dtd∂q˙∂(dtdΛ)=dtd(mλqt)=mλq˙t+mλq.
差は 0 で、Euler–Lagrange 方程式に何も足されない。
(3) ∂L4/∂q˙=4κq˙3、dtd(4κq˙3)=12κq˙2q¨ なので、L4 の方程式は 12κq˙2q¨=0。q˙=0 なら q¨=0 で、等速直線運動になる(q˙=0 の静止も解である)。L4−mgq では 12κq˙2q¨=−mg で、加速度 q¨=−mg/(12κq˙2) は速度によって変わる。一様な重力の中の運動 q¨=−g にはならない。自由粒子の運動だけでは 21mq˙2 と κq˙4 を区別できず、ポテンシャルを足したときに区別がつく。
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