解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第5章 §1.5.6 ★★ 教科書の「d'Alembert の原理から Lagrange 方程式」は、Newton の運動方程式を一般化座標の向きへ射影したもので、この章の式と同じものになる。和 T+V と差 T−V は Legendre 変換でつながる
d'Alembert の原理からの導出
学部の力学では、Lagrange 方程式を作用から出さず、Newton の運動方程式から出すことが多い。その道筋をこの章の記号で書く。質点の位置が一般化座標で ra=ra(q,t) と表されるとする。Newton の運動方程式 mar¨a=Fa の両辺と、一般化座標を qj だけ動かしたときの位置の変化の向き ∂ra/∂qj との内積を取って足すと
a∑mar¨a⋅∂qj∂ra=a∑Fa⋅∂qj∂ra=:Qj(1.5.9)
となる。右辺の Qj を一般化力と呼ぶ。これが d'Alembert の原理(仮想変位 δra=∑j(∂ra/∂qj)δqj に対して ∑a(Fa−mar¨a)⋅δra=0)を一般化座標で書いたものである。
左辺を運動エネルギーで書き直す計算は、第1部第2章の定理 1.2.4(加速度の射影は T だけで書ける)と式 (1.2.22) と同じ計算で、左辺は dtd∂q˙j∂T−∂qj∂T になる。したがって
dtd∂q˙j∂T−∂qj∂T=Qj.(1.5.10)
力がポテンシャルから出るとき Qj=−∑a∇aV⋅∂ra/∂qj=−∂V/∂qj で、V は q˙j を含まないので、右辺を左辺へ移すとdtd∂q˙j∂(T−V)−∂qj∂(T−V)=0、すなわち L=T−V の Euler–Lagrange 方程式になる。この道筋では、V の前の負号は「力 =−∇V」の負号を左辺へ移したものとして現れる。
2つの導出の違いは、出発点にある。式 (1.5.10) は Newton の運動方程式を前提にして、それを一般化座標の向きへ射影したものである。この章の1.5.1節〜1.5.4節では作用を出発点にし、T の形を対称性から、−V を Newton の運動方程式との一致から決めた。d'Alembert の道筋の利点は、ポテンシャルから出ない力(摩擦など)を Qj としてそのまま右辺に残せることで、作用の形式ではdtd∂q˙j∂L−∂qj∂L=Qjnc(nc はポテンシャルから出ない力の分)と書く。
和 T+V と差 T−V
授業では、力学的エネルギー E=T+V の保存を先に学ぶ。L=T−V との関係は、第1部第4章の式 (1.4.9) で定義したエネルギー関数h=∑jq˙j∂L/∂q˙j−L で書ける。T が速度の2次の同次式(T=21∑jkMjk(q)q˙jq˙k)なら Euler の同次関数の定理で ∑jq˙j∂T/∂q˙j=2T となり、h=2T−(T−V)=T+V である。h の形は Legendre 変換(第1部第7章)で、h を運動量で書き直したものが Hamiltonian(第1部第8章)になる。エネルギーと Lagrangian で V の符号が違うのは、h を作るときに T が2倍されて現れるためである。
| 授業の形(Newton の運動方程式から) | この章の形(作用から) |
| 出発点 | mar¨a=Fa | δS=0、L=T−V |
| 一般化座標へ | 射影 ∑a(⋅)⋅∂ra/∂qj | L を新しい座標で書くだけ |
| −V の符号 | 力 =−∇V の負号 | Newton の運動方程式との一致で選ぶ |
| T の形 | 定義として 21mv2 | Galilei 変換から決まる |
| 摩擦 | Qj に入る | Qjnc として外から足す |
| エネルギー | E=T+V | h=∑jq˙j∂L/∂q˙j−L |
例題 1.5.6 極座標の一般化力と、摩擦で減る角運動量 ★★
オリジナル平面上の質量 m の質点に力 F=Frer+Fφeφ がはたらく(er, eφ は動径・接線方向の単位ベクトル)。
- (1) 極座標 (r,φ) の一般化力 Qr, Qφ を求め、Qφ が原点のまわりの力のモーメントであることを示せ。
- (2) φ について式 (1.5.10) を書き、角運動量 ℓ=mr2φ˙ の時間変化を表せ。
- (3) 力が速度に比例する抵抗 F=−br˙(b>0)だけのとき、ℓ(t) を求めよ(ℓ(0)=ℓ0)。
解答
(1) r=rer なので ∂r/∂r=er、∂r/∂φ=reφ。よって
Qr=F⋅er=Fr,Qφ=F⋅reφ=rFφ.
rFφ は原点のまわりの力のモーメント(z 成分)である。一般化座標が角度なら一般化力はモーメントになり、Qφδφ が仮想変位での仕事になる。
(2) T=21m(r˙2+r2φ˙2) で ∂T/∂φ˙=mr2φ˙、∂T/∂φ=0 なので
dtdℓ=rFφ.
角運動量の時間変化は力のモーメントに等しい。中心力では Fφ=0 で ℓ が保存し、例題 1.5.2 の結果に戻る。
(3) r˙=r˙er+rφ˙eφ なので Fφ=−brφ˙、Qφ=−br2φ˙=−(b/m)ℓ。(2) から dtdℓ=−mbℓ で、
ℓ(t)=ℓ0e−bt/m.
この抵抗は V から出ないので L に入れられず、Qφnc として右辺に残る。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com