解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第2章 §1.2.5 ★★★ 仮想仕事から一般化力を定義し、加速度の射影が T だけで書けることを示す。拘束力は仮想仕事をしないので式から消える
一般化力
粒子 a に働く力のうち、拘束力以外のもの(重力・ばねの力・電場の力など)を Fa と書く。仮想変位 (1.2.12) に対してこの力がする仮想仕事は
a∑Fa⋅δra=i=1∑fQiδqi,Qi=a∑Fa⋅∂qi∂ra(1.2.18)
と書ける。Qi を一般化力と呼ぶ。Qiδqi がエネルギーの単位を持つので、qi が長さなら Qi は力、qi が角度なら Qi は力のモーメント(トルク)の単位を持つ。
力が位置エネルギー V(r1,…,rN,t) から Fa=−∂V/∂ra で出るなら、V を一般化座標で書いた V(q,t):=V(r1(q,t),…,rN(q,t),t) について、連鎖律から
Qi=−a∑∂ra∂V⋅∂qi∂ra=−∂qi∂V(q,t)(1.2.19)
となる。振り子 (1.2.4) では重力 F=(0,−mg,0) から Qθ=F⋅∂r/∂θ=−mgℓsinθ で、これは V=−mgℓcosθ の −∂V/∂θ に等しく、支点のまわりの重力のトルクである。
理想的な拘束
棒や針金が粒子に及ぼす拘束力を Fa(c) と書く。摩擦の無い針金の力は針金に垂直で、変形しない棒の張力は棒の向きに沿い、棒の両端の粒子に逆向きに働く。どちらの場合も、時刻を止めて拘束を満たすように動かした仮想変位に対しては
a∑Fa(c)⋅δra=0(すべての δq)(1.2.20)
が成り立つ。針金の力は針金に沿う δr に垂直で、棒の張力は両端の仮想変位の差が棒に垂直なので打ち消し合う。式 (1.2.20) を満たす拘束を理想的な拘束と呼ぶ。この本では、摩擦の無い拘束はすべて理想的であるとする。その仮定を拘束の式 (1.2.1) の勾配で言い直すこと(Lagrange の未定乗数)は 第1部第6章で扱う。
式 (1.2.20) が言うのは仮想変位に対する仕事が 0 ということで、実際の運動で拘束力が仕事をしないとは限らない。時間による拘束では実際の変位が仮想変位からずれるので、拘束力は実際の運動に仕事をする(例題 1.2.5)。
加速度の射影
定理 1.2.4(加速度の射影は T だけで書ける ★★★)
一般化座標の写像 (1.2.3) が2回連続微分可能なら、任意の運動 q(t) について
a∑mar¨a⋅∂qi∂ra=dtd∂q˙i∂T−∂qi∂T(i=1,…,f)(1.2.21)
が成り立つ。右辺の T は (q,q˙,t) の関数としての運動エネルギーである。
証明
左辺の各項を、積の微分で
mar¨a⋅∂qi∂ra=dtd(mar˙a⋅∂qi∂ra)−mar˙a⋅dtd∂qi∂ra
と分ける。第1項の括弧の中は恒等式 (1.2.9) で mar˙a⋅∂r˙a/∂q˙i=∂(21ma∣r˙a∣2)/∂q˙i になる。第2項は恒等式 (1.2.10) で mar˙a⋅∂r˙a/∂qi=∂(21ma∣r˙a∣2)/∂qi になる。a について足すと式 (1.2.21) を得る。
式 (1.2.21) は運動学の恒等式で、運動方程式をまだ使っていない。左辺は、全粒子の加速度(に質量を掛けたもの)を、qi を少し動かしたときに配置が動く向き (∂r1/∂qi,…,∂rN/∂qi) へ射影したものである。右辺は、その射影が速度の2乗の量 T を2回微分するだけで求まることを言っている。単位ベクトルの時間微分を計算せずに加速度の成分が求まる理由はここにある(1.2.6節)。
Newton の方程式を一般化座標で書く
Newton の方程式 mar¨a=Fa+Fa(c) の両辺と ∂ra/∂qi との内積をとり、a について足す。左辺は式 (1.2.21)、右辺の第1項は一般化力 (1.2.18)、第2項は理想的な拘束 (1.2.20) で 0 になる(δq に第 i 成分だけ 1 の組を選ぶと ∑aFa(c)⋅∂ra/∂qi=0 が出る)。こうして
dtd∂q˙i∂T−∂qi∂T=Qi(i=1,…,f)(1.2.22)
を得る。3N 本の Newton の方程式と k 本の拘束の式から、未知の拘束力を含まない f 本の式が残った。拘束力は、q(t) を求めたあとで Newton の方程式のうち拘束に垂直な成分から計算すればよい。
力が位置エネルギーから出るときは、式 (1.2.19) を入れて V が q˙ によらないことを使うと、式 (1.2.22) はL=T−V を使って dtd∂L/∂q˙i−∂L/∂qi=0 の形に書ける。これが作用 ∫Ldt の停留の条件(Euler–Lagrange 方程式、第1部第4章)と同じ形であることの意味と、L=T−V という選び方の理由は 第1部第5章で扱う。
例題 1.2.5 回る棒の玉:拘束力は仮想仕事をしないが実際の仕事はする ★★★
オリジナル水平面内で一定の角速度 Ω で回る、摩擦の無い棒に質量 m の玉を通す(重力は棒に垂直な鉛直方向で、棒の支えと釣り合っているので考えない)。一般化座標を原点からの距離 q とし、T は式 (1.2.17) を使う。
- (1) 式 (1.2.22) から q の運動方程式を求め、q(0)=q0, q˙(0)=0 の解を求めよ。
- (2) 棒が玉を押す水平方向の力 F(c)=F(c)eφ を、Newton の方程式の eφ 成分から求めよ。
- (3) 棒の力が玉にする仕事率 F(c)⋅r˙ を求め、dtdT に等しいことを確かめよ。
- (4) Ω=2rads−1, q0=0.1m, m=0.05kg とする。玉が q=1m に達する時刻、そのときの q˙ と F(c)、それまでに棒がした仕事を求めよ。
解答
(1) 一般化力は 0(水平面内の力は棒の力だけで、それは理想的な拘束)なので、∂T/∂q˙=mq˙, ∂T/∂q=mΩ2q から
mq¨−mΩ2q=0.
解は q=AcoshΩt+BsinhΩt で、初期条件から q=q0coshΩt。玉は棒に沿って外へ指数関数的に滑り出す。∂T/∂q=mΩ2q の項は、T0=2mΩ2q2 から出ていて、回る座標系で考えたときの遠心力 mΩ2q にあたる。
(2) 加速度は r˙=q˙eρ+Ωqeφ をもう一度微分して、e˙ρ=Ωeφ, e˙φ=−Ωeρ を使うと
r¨=(q¨−Ω2q)eρ+2Ωq˙eφ.
eρ 成分は (1) の方程式で 0 になる。eφ 成分の Newton の方程式は m⋅2Ωq˙=F(c) なので F(c)=2mΩq˙。回る座標系で考えると、これは Coriolis 力と釣り合う力である。
(3) F(c)⋅r˙=2mΩq˙⋅Ωq=2mΩ2qq˙。一方 dtdT=mq˙q¨+mΩ2qq˙ で、(1) の q¨=Ω2q を入れると 2mΩ2qq˙。両者は等しい。仮想変位 δr=eρδq に対しては F(c)⋅δr=0 だが、実際の速度は eφ 成分 Ωq を持つので、棒は玉に仕事をする。玉の運動エネルギーは、棒を回している外の装置から棒を通して供給されている。
(4) cosh2t=10 から t=21arccosh10≈1.50s。そのとき sinh2t=99≈9.95 なのでq˙=q0ΩsinhΩt≈1.99ms−1、F(c)=2mΩq˙≈0.398N。棒がした仕事は運動エネルギーの増分で、T=2m(q˙2+Ω2q2) は初め 20.05(0+4×0.01)=0.0010J、q=1m で 20.05(3.96+4)=0.1990J なので、仕事は 0.198J である。
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