解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第2章 §1.2.6 ★★ 極座標の加速度を単位ベクトルの微分で出す書き方と、射影の恒等式で出す書き方は同じ式になる。尺度因子は質量行列の対角成分
極座標の運動方程式
解析力学を使わない力学の教科書では、平面の極座標 (r,θ) の運動方程式を次のように出す。単位ベクトル er=(cosθ,sinθ), eθ=(−sinθ,cosθ) の時間微分 e˙r=θ˙eθ, e˙θ=−θ˙er を使ってr=rer を2回微分し、
r¨=(r¨−rθ˙2)er+(rθ¨+2r˙θ˙)eθ(1.2.23)
を得て、m(r¨−rθ˙2)=Fr, m(rθ¨+2r˙θ˙)=Fθ と書く。−rθ˙2 を向心加速度、2r˙θ˙ を Coriolis の項と呼ぶ。
この章の書き方では、T=2m(r˙2+r2θ˙2) を書くだけで同じ式が出る。∂r/∂r=er, ∂r/∂θ=reθ なので、射影の恒等式 (1.2.21) の左辺はそれぞれ mr¨⋅er と rmr¨⋅eθ で、右辺は
dtd∂r˙∂T−∂r∂T=mr¨−mrθ˙2,dtd∂θ˙∂T−∂θ∂T=dtd(mr2θ˙)=r⋅m(rθ¨+2r˙θ˙)(1.2.24)
である。式 (1.2.23) の2つの成分がそのまま出た。一般化力は Qr=F⋅er=Fr, Qθ=F⋅reθ=rFθ で、Qθ は原点のまわりの力のモーメントである。θ の式 (1.2.22) は dtd(mr2θ˙)=rFθ で、角運動量の z 成分の時間変化が力のモーメントに等しいという式になる。
2つの書き方の違いは、向心加速度と Coriolis の項がどこから出るかにある。教科書の書き方では単位ベクトルが時刻とともに回ることから出て、この章の書き方では T が r を含むこと(∂T/∂r=mrθ˙2)と、∂T/∂θ˙=mr2θ˙ の係数 r2 が時刻とともに変わることから出る。後者の書き方は、どんな座標でも T を書きさえすれば同じ手順で使えて、単位ベクトルの微分を座標ごとに覚える必要が無い。
回る棒の玉(例題 1.2.5)を回る座標系で扱う教科書の書き方では、遠心力 mΩ2q と Coriolis 力 −2mΩ×r˙′(r˙′ は回る座標系から見た速度)を見かけの力として加える。この章の書き方では、遠心力は T0 の q 微分として、Coriolis 力と釣り合う棒の力は拘束力として現れ、見かけの力を別に導入しない。
曲線座標の尺度因子
ベクトル解析の教科書は、直交曲線座標 (u1,u2,u3) の線素を ds2=∑ihi2dui2 と書き、hi を尺度因子と呼ぶ。極座標で (hr,hθ)=(1,r)、球座標で (hr,hθ,hφ)=(1,r,rsinθ) である。1粒子の運動エネルギーは T=2m∑ihi2u˙i2 で、質量行列は M=mdiag(h12,h22,h32) になる。尺度因子は hi=∣∂r/∂ui∣ で、質量行列 (1.2.14) の対角成分を質量で割ったものの平方根である。式 (1.2.16) の「配置の空間の長さ」は、1粒子ではこの線素そのものになる。座標が直交しないとき(二重振り子の (θ1,θ2) のように)は質量行列に非対角成分が現れ、尺度因子だけでは書けない。
例題 1.2.6 球座標の加速度を射影の恒等式で出す ★★
オリジナル質量 m の1粒子を球座標 r=r(sinθcosφ, sinθsinφ, cosθ) で表す(θ は z 軸から測る)。
- (1) 運動エネルギー T を (r,θ,φ) と一般化速度で書け。
- (2) 射影の恒等式 (1.2.21) を使い、加速度の er, eθ, eφ 成分 ar, aθ, aφ を求めよ。ただし eθ=r1∂r/∂θ, eφ=rsinθ1∂r/∂φ で、er=∂r/∂r である。
- (3) z 軸のまわりの力のモーメントが 0 のとき、mr2sin2θφ˙ が保存することを (2) から示せ。
解答
(1) ∂r/∂r, ∂r/∂θ, ∂r/∂φ は互いに直交し、長さは 1, r, rsinθ である(例題 1.2.2 と同じ計算)。よって
T=2m(r˙2+r2θ˙2+r2sin2θφ˙2).
(2) 恒等式の左辺は、q=r で mar、q=θ で rmaθ、q=φ で rsinθmaφ である。右辺を計算すると
araθaφ=m1(dtd∂r˙∂T−∂r∂T)=r¨−rθ˙2−rsin2θφ˙2,=mr1(dtd∂θ˙∂T−∂θ∂T)=r1dtd(r2θ˙)−rsinθcosθφ˙2,=mrsinθ1(dtd∂φ˙∂T−∂φ∂T)=rsinθ1dtd(r2sin2θφ˙).
T は φ を含まないので aφ には ∂T/∂φ の項が無い。単位ベクトルの微分を1つも計算せずに3成分が出た。
(3) φ の一般化力は Qφ=F⋅∂r/∂φ=rsinθFφ で、z 軸のまわりの力のモーメントに等しい。式 (1.2.22) は dtd(mr2sin2θφ˙)=Qφ で、Qφ=0 なら括弧の中(角運動量の z 成分)は保存する。T が φ を含まないことと、力が φ 方向の成分を持たないことの2つから保存則が出ている。この関係を一般の対称性へ広げたものが Noether の定理(第1部第10章)である。
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