解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第9章 §1.9.6 ★★ 微小回転 δr=δϕ×r・トルクと角運動量・p^=−iℏ∇ は、生成子の式の別の書き方である
微小回転のベクトルの式
学部の力学の授業では、軸 n(単位ベクトル)のまわりの角 δϕ の微小回転を
δr=δϕn×r(1.9.25)
と書く。この章の言葉では、これは生成子 G=n⋅L(L=r×p)、ϵ=δϕ の無限小変換である。実際、スカラー三重積の巡回で n⋅(r×p)=p⋅(n×r)=r⋅(p×n) と書き直せるので
δr=ϵ∂p∂(n⋅L)=ϵn×r,δp=−ϵ∂r∂(n⋅L)=−ϵp×n=ϵn×p(1.9.26)
となる(∂/∂p は成分ごとの偏微分を並べたベクトル)。n=ez とすると ez×r=(−y,x,0) で、式 (1.9.18) に戻る。授業の式 (1.9.25) は位置の変化だけを書いているが、生成子の式からは、運動量も同じ形 δp=ϵn×p で回ることが同時に出る。
保存則の導き方
授業では、角運動量の保存を運動方程式 dL/dt=r×F(トルク)から出し、中心力ならトルクが 0 なので L が保存する、と説明する。運動量の保存は、2粒子の間の力が作用・反作用の法則で打ち消し合うことから出す。この章では、どちらも式 (1.9.20) の1行で出る。中心力 V(∣r∣) は回転で変わらないので δLzH=0 で Lz が保存し、2粒子の相互作用 V(∣r1−r2∣) は2粒子を一緒に並進させても変わらないので全運動量 p1+p2 が保存する。変わらない並進の向きが違えば保存する組み合わせも変わる(例題 1.9.6)。授業の導き方は「力がこうだから保存する」、この章の導き方は「H がこの変換で変わらないから保存する」で、後者は力という言葉を使わないので、場や量子力学にもそのまま使うことができる。
量子力学の運動量演算子
量子力学の授業では、運動量の演算子を p^=−iℏd/dx と定義し、それが [x^,p^]=iℏ を満たすことを確かめる、という順に進むことが多い。この章の順序では逆で、「運動量は並進の生成子」を出発点にし、並進の演算子 e−iap^/ℏ が ψ(x)↦ψ(x−a) になることを要求すると、式 (1.9.24) から −ip^/ℏ=−d/dx、すなわち p^=−iℏd/dx が決まる。角運動量 L^z=−iℏ∂φ も同じく「回転の生成子」として決まる。
| 授業での書き方 | この章の書き方 | 生成子 |
| δr=δϕn×r | δqi=ϵ∂G/∂pi | n⋅L |
| dL/dt=r×F=0 で保存 | δGH=−ϵdG/dt=0 | L |
| 作用・反作用で全運動量が保存 | 一斉の並進で H が不変 | p1+p2 |
| q˙=∂H/∂p, p˙=−∂H/∂q | ϵ=dt の無限小変換 | H |
| p^=−iℏd/dx を定義 | e−iap^/ℏψ(x)=ψ(x−a) から決まる | p^ |
例題 1.9.6 逆向きの並進と保存量:作用・反作用が成り立たない2粒子 ★★
オリジナル直線上の2粒子が H=2m1p12+2m2p22+V(x1+x2) で運動する(V は滑らかな関数)。相互作用は位置の差でなく和で決まる。
- (1) 生成子 G=p1−p2 の無限小変換を書き、{H,G}=0 を示せ。p1−p2 が保存することを、式 (1.9.20) と Hamilton 方程式の両方で確かめよ。
- (2) 粒子1と粒子2が受ける力を求めよ。作用・反作用の法則は成り立つか。{H,p1+p2} を計算し、全運動量が保存するかを答えよ。作用・反作用の代わりに何が成り立つか。
- (3) m1=m2=m のとき、重心 X=(x1+x2)/2 と相対座標 r=x1−x2 で H を書き直し、保存量 p1−p2 が何の運動量かを述べよ。
解答
(1) δx1=ϵ∂G/∂p1=ϵ, δx2=ϵ∂G/∂p2=−ϵ, δp1=δp2=0。2粒子が逆向きに同じだけ動くので和 x1+x2 は変わらず、運動量も変わらないので δH=0 である。括弧で書くと {H,G}=∂x1∂H⋅1+∂x2∂H⋅(−1)=V′(x1+x2)−V′(x1+x2)=0。式 (1.9.20) から d(p1−p2)/dt=0。Hamilton 方程式では p˙1=−∂H/∂x1=−V′(x1+x2), p˙2=−∂H/∂x2=−V′(x1+x2) で、差は 0 である。質量の値はどこにも入らない。
(2) 粒子1が受ける力は F1=−V′(x1+x2)、粒子2が受ける力は F2=−V′(x1+x2) で、同じ大きさで同じ向きである。F1+F2=−2V′=0 なので作用・反作用の法則は成り立たない。{H,p1+p2}=V′+V′=2V′(x1+x2) で、d(p1+p2)/dt=−2V′ だから全運動量は保存しない。H が一斉の並進で変わるからである。作用・反作用 F1+F2=0 の代わりに成り立つのは F1−F2=0 で、これが逆向きの並進で H が変わらないことの言い換えになっている。どの組み合わせの運動量が保存するかは、力の向きでなく H を変えない並進の向きで決まる。
(3) x1=X+r/2, x2=X−r/2 で、p1+p2=2mX˙, p1−p2=mr˙。H=4m(p1+p2)2+4m(p1−p2)2+V(2X) と書ける。V は重心だけにかかる外場で、相対運動には力が働かない。保存量 p1−p2=mr˙=2⋅2mr˙ は、換算質量 m/2 の相対運動量の2倍で、相対運動が等速であることを表す。質量が違うと p1−p2 は保存するが相対運動量には比例しない(相対運動量は (m2p1−m1p2)/(m1+m2))ので、この読み方は等しい質量のときに限る。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com