解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第9章 §1.9.5 ★★ 同じ形が量子力学では U^=e−iϵG^/ℏ、δA^=ϵ[A^,G^]/(iℏ) になる
ユニタリ演算子と生成子
量子力学の状態はベクトル ∣ψ⟩ で、変換は状態に演算子 U^ を掛けることで表す。確率(ノルム)を変えない変換はユニタリ(U^†U^=1)である。パラメータ α の1径数変換群 U^(α)(U^(0)=1, U^(α)U^(β)=U^(α+β))を考え、1.9.1節と同じく1次で展開して
U^(ϵ)=1−ℏiϵG^+O(ϵ2)(1.9.21)
と書く。この G^ を量子力学の生成子と呼ぶ。ユニタリ性 U^†U^=1−ℏiϵ(G^−G^†)+O(ϵ2)=1 から G^†=G^ で、生成子はエルミート、つまり観測量である。係数に i を付けたのは G^ をエルミートにするためで、ℏ で割ったのは、前の節で見たとおり ϵG が作用の次元を持ち、ϵG^/ℏ を無次元にするためである。有限の変換は、1.9.2節の式 (1.9.6) と同じく指数関数
U^(α)=e−iαG^/ℏ=N→∞lim(1−NℏiαG^)N(1.9.22)
になる。
観測量 A^ の期待値は ⟨ψ∣A^∣ψ⟩ なので、状態を U^ で動かすことは、観測量を U^†A^U^ に取り替えることと同じである。式 (1.9.21) を入れると
δA^:=U^†A^U^−A^=ℏiϵ(G^A^−A^G^)+O(ϵ2)=ϵiℏ[A^,G^]+O(ϵ2)(1.9.23)
を得る。古典の式 (1.9.15) の δA=ϵ{A,G} と並べると、Poisson 括弧 {⋅,⋅} が [⋅,⋅]/(iℏ) に置き換わっている。正準量子化の規則 [q^,p^]=iℏ は、古典の {q,p}=1 がこの置き換えでそのまま移ったものである。
並進・回転・時間発展
3つの変換を量子力学で並べる。並進の生成子を p^ とすると、式 (1.9.23) で δx^=ϵ[x^,p^]/(iℏ)=ϵ となり、位置の期待値が ϵ だけずれる。波動関数で見ると、位置表示 p^=−iℏd/dx を式 (1.9.22) に入れて
(e−iap^/ℏψ)(x)=e−ad/dxψ(x)=ψ(x−a)(1.9.24)
で、これは1.9.2節の Taylor 展開の読み直し (1.9.9) で α=−a としたものである。ψ(x−a) のグラフは ψ(x) のグラフを右へ a だけずらしたものなので(図 1.9.3)、波束は +a の向きに動き、δx^=+ϵ と合う。
回転の生成子は L^z=x^p^y−y^p^x=−iℏ(x∂y∂−y∂x∂) で、極座標 (r,φ) では x∂y−y∂x=∂φ なので L^z=−iℏ∂φ になる。並進と同じ計算で (e−iαL^z/ℏψ)(r,φ)=ψ(r,φ−α) で、波動関数が角 α だけ反時計回りに回る。交換子は [x^,L^z]=−y^[x^,p^x]=−iℏy^ なので δx^=ϵ[x^,L^z]/(iℏ)=−ϵy^ で、古典の式 (1.9.18) と同じ形になる。
時間発展の生成子は H^ で、U^(t)=e−iH^t/ℏ を微分すれば Schrödinger 方程式 iℏ∂t∣ψ⟩=H^∣ψ⟩ が出る。式 (1.9.23) で ϵ=dt とおいたものは Heisenberg 描像の運動方程式 dA^/dt=[A^,H^]/(iℏ) で、古典の式 (1.9.19) の置き換えになっている。量子力学の側からこの対応を組み立て直すことは 第4部第1章(Poisson 括弧から交換子へ)、角運動量については 第4部第5章で扱う。

図 1.9.3 並進の演算子 e−iap^/ℏ を ψ(x)=e−x2(点線)に掛けると ψ(x−a)(実線)になり、波束が +a の向きに動く(図は a=1.5)。指数の肩の負号は、波動関数の引数 x−a の負号にあたる
例題 1.9.5 回転すると位相だけが変わる波動関数 ★★
オリジナルb>0 を定数とし、平面上の波動関数 ψ(x,y)=(x+iy)e−(x2+y2)/(2b2) を考える。
- (1) L^z=−iℏ(x∂y∂−y∂x∂) を当てて L^zψ=ℏψ を示せ。
- (2) (1) を使って e−iαL^z/ℏψ を求めよ。
- (3) 座標を直接回した ψ(xcosα+ysinα, −xsinα+ycosα) を計算し、(2) と一致することを確かめよ。
解答
(1) g(x,y)=e−(x2+y2)/(2b2) とおくと、g は x2+y2 だけの関数なので x∂yg−y∂xg=g⋅(−b2xy+b2yx)=0。よって
(x∂y∂−y∂x∂)ψ=g(x∂y∂−y∂x∂)(x+iy)=g(ix−y)=i(x+iy)g=iψ
で、L^zψ=−iℏ⋅iψ=ℏψ。
(2) L^znψ=ℏnψ なので、指数関数の級数で e−iαL^z/ℏψ=∑nn!(−iα)nψ=e−iαψ。
(3) ψ(R−αr) の最初の因子は
(xcosα+ysinα)+i(−xsinα+ycosα)=x(cosα−isinα)+iy(cosα−isinα)=e−iα(x+iy)
で、g は回転で変わらないので ψ(R−αr)=e−iαψ(r)。(2) と一致する。確率密度 ∣ψ∣2 は回しても変わらず、変わるのは全体の位相 e−iα だけである。L^z の固有状態は、生成子 L^z の変換に対して位相しか変えない状態である。
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