解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第9章 §1.9.4 ★★★ 並進は p、回転は Lz、時間発展は H が生成する。どれも同じ式 (1.9.14) の G を取り替えただけ
3つの変換の表
前の節の定義 (1.9.14) に、3つの生成子を入れて並べる。粒子1個が平面を動く場合で書く。
| 変換 | 生成子 G | ϵ | 無限小変換 |
| x 方向の並進 | px | 長さ | δx=ϵ、ほかは 0 |
| 原点のまわりの回転 | Lz=xpy−ypx | 角度 | δx=−ϵy, δy=ϵx, δpx=−ϵpy, δpy=ϵpx |
| 時間発展 | H | 時間 dt | δqi=dt∂H/∂pi, δpi=−dt∂H/∂qi |
3つの行は、生成子の欄だけが違う。並進の生成子が px になるのは、点変換 K=(1,0) の生成子 (1.9.17) が pxKx+pyKy=px だからである。逆に、ある量を生成子にとると何が動くかを読むこともできる。G=x とすると δx=0, δpx=−ϵ で、これは運動量を一斉にずらす変換(運動量の空間の並進)である。
生成子とパラメータの積 ϵG は、どの行でも作用(長さ×運動量、角度×角運動量、時間×エネルギー)の次元を持つ。δq=ϵ∂G/∂p の両辺の次元が合うにはそうでなければならない。この事情は、量子力学で ϵG を ℏ で割る理由になる(1.9.5節)。
図 1.9.2 は、自由度1の相空間で3つの生成子の向きを描いたものである。G=p の向きは (1,0) で、全部の点を q 方向に同じだけ動かす。G=q の向きは (0,−1) で、全部の点を p 方向に同じだけ動かす。調和振動子 H=2mp2+2mω2q2 の向きは (p/m, −mω2q) で、m=ω=1 では原点のまわりを時計回りに回る。どの場合も、向きは生成子の等高線に沿っている。

図 1.9.2 自由度1の相空間での3つの生成子の向き (∂G/∂p, −∂G/∂q)。右の G=H=21(p2+q2)(m=ω=1)では、矢印は等エネルギー面の円(点線)に接し、q˙=p, p˙=−q の向き、つまり時計回りに進む。矢印は向きだけを表し、長さは揃えていない
時間発展は生成子 H の流れ
時間発展を生成子 H の1径数変換群 Φt とみると、1.9.2節の結果がそのまま使える。Φt は Hamilton 方程式の解を初期値の関数として書いたもので、関数 A(q,p) の時間変化は式 (1.9.15) で G=H, ϵ=dt とおいて
dtdA={A,H}(1.9.19)
となる(A があらわに時間を含まない場合)。時間発展が面積を保つ変換の連続であることは、第1部第12章で「時間発展は正準変換の連続」という形で、第3部第1章で Liouville の定理として使う。
動かしても H が変わらない生成子(Noether の定理の予告)
生成子 G の無限小変換で Hamiltonian H がどう変わるかは、式 (1.9.15) で A=H とおいて δH=ϵ{H,G} である。一方、G の時間変化は式 (1.9.19) で A=G とおいて dG/dt={G,H} である。Poisson 括弧の反対称性から
δGH=ϵ{H,G}=−ϵ{G,H}=−ϵdtdG(1.9.20)
が成り立つ(δG は「G が生成する変換による変化」の意)。左辺が 0 であることと右辺が 0 であることは同じなので、次のことが成り立つ。
生成子と保存量
あらわに時間を含まない G について、「G が生成する変換で H が変わらない」ことと「G が運動の間保存する」ことは同値である。
この同値は、G と H の役割を入れ替えても成り立つ。G の流れで H が変わらないなら、H の流れ(時間発展)で G が変わらない。対称性(変換で H が変わらないこと)から保存量が出る、というのが Noether の定理の内容で、相空間の言葉ではそれが式 (1.9.20) の1行になる。L の言葉での Noether の定理(L が全微分だけ変わる場合や、時刻もずらす変換を含めたもの)は 第1部第10章で扱う。
例題 1.9.4 一様な重力場で保存する生成子を選ぶ ★★★
オリジナル質量 m の粒子が一様な重力場の中を3次元で運動する。z 軸を鉛直上向きにとると H=2m1(px2+py2+pz2)+mgz である。
- (1) 自由度1に制限した H=2mpz2+mgz について、生成子 H の流れ Φt(z,pz) を書き、Jacobi 行列式が 1 であることを確かめよ。g=9.8ms−2 で、初期値 z=0, pz/m=9.8ms−1 から t=1s 後の高さを求めよ。
- (2) 3次元に戻り、生成子 px, pz, Lz=xpy−ypx, Lx=ypz−zpy のそれぞれについて δH を計算し、どれが保存量かを答えよ。
- (3) 保存しないものについて、dG/dt を式 (1.9.20) から求め、Newton 力学の言葉(力・トルク)で読め。
解答
(1) Hamilton 方程式は z˙=pz/m, p˙z=−mg で、解は
Φt(z,pz)=(z+mpzt−2gt2, pz−mgt).
Jacobi 行列は (10t/m1) で、行列式は 1。初期値の長方形は、同じ面積の平行四辺形に移る。z=0, pz/m=9.8ms−1, t=1s では z=9.8−4.9=4.9m、pz=0(最高点)。
(2) 各生成子の無限小変換を H に入れる。G=px:δx=ϵ だけで、H は x を含まないので δH=0。G=pz:δz=ϵ で δH=mgϵ。G=Lz:δx=−ϵy, δy=ϵx, δpx=−ϵpy, δpy=ϵpx で、δH=m1(pxδpx+pyδpy)=mϵ(−pxpy+pypx)=0(z は動かない)。G=Lx:δy=ϵ∂Lx/∂py=−ϵz, δz=ϵ∂Lx/∂pz=ϵy, δpy=−ϵ∂Lx/∂y=−ϵpz, δpz=−ϵ∂Lx/∂z=ϵpy で、δH=m1(pyδpy+pzδpz)+mgδz=mϵ(−pypz+pzpy)+mgϵy=mgϵy。保存するのは δH=0 の px と Lz で、pz と Lx は保存しない。
(3) 式 (1.9.20) から dG/dt=−δGH/ϵ。dpz/dt=−mg は重力そのもの、dLx/dt=−mgy は重力 F=(0,0,−mg) のトルク (r×F)x=yFz−zFy=−mgy である。水平方向の並進と鉛直軸まわりの回転では H が変わらないので、対応する運動量と角運動量が保存する。
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