解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第12章 §1.12.4 ★★★ 「面積を保つ」を pdq−PdQ が全微分であることに直すと、正準変換は1つの関数 F で書くことができる。4つの型は互いに Legendre 変換
面積を保つことを線積分で書く
正準変換かどうかを判定するには括弧を計算すればよいが、正準変換を新しく作るには別の書き方が要る。1自由度で考える。(q,p) 平面の閉曲線 C に沿った線積分 ∮Cpdq は、Green の定理により C が囲む面積に等しい(C を時計回りに回るときは正、反時計回りでは負)。正準変換は面積と向きを保つので、C の像を C′ とすると ∮Cpdq=∮C′PdQ である。右辺を C の上の積分に書き直すと、どんな閉曲線 C についても
∮C(pdq−PdQ)=0(1.12.10)
が成り立つ。ここで Q, P は C の上で (q,p) の関数として動く。どの閉曲線に沿っても積分が 0 になる1次の微分式は、(穴のない領域では)ある関数 F の全微分 dF に等しい。電磁気で、どの閉曲線に沿っても仕事が 0 になる力がポテンシャルの勾配で書けるのと同じ理由である。逆に、pdq−PdQ が全微分なら式 (1.12.10) が成り立ち、すべての閉曲線で囲む面積が保たれるので、変換は正準である。
f 自由度でも同じことが成り立つ。∮C∑ipidqi は、閉曲線 C を各 (qi,pi) 平面へ射影した曲線が囲む向きつきの面積の和である。辺のベクトル u, v で張る小さな平行四辺形を1周すると、この和は −uTJv になる。写像で辺が Mu, Mv に移るので、すべての小さな平行四辺形でこの和が保たれる条件は (Mu)TJ(Mv)=uTJv、すなわち MTJM=J である。大きな閉曲線は、張った面を小さな平行四辺形に分けて足し合わせれば扱える(隣り合う辺の寄与は向きが逆で打ち消し合う)。したがって
正準変換⟺i=1∑fpidqi−i=1∑fPidQi=dF(F は相空間の関数)(1.12.11)
である。この F を正準変換の母関数と呼ぶ。
4つの型
F は相空間の関数なので、2f 個の変数の組で表せばよい。q と Q が互いに独立に動かせるとき(f 本の式 Qi=Qi(q,p) を p について解けるとき)は (q,Q) を変数に選び、F=F1(q,Q) と書く。dF1=∑i(∂F1/∂qi)dqi+∑i(∂F1/∂Qi)dQi を式 (1.12.11) と比べて
pi=∂qi∂F1,Pi=−∂Qi∂F1.(1.12.12)
逆に、どんな関数 F1(q,Q) を選んでも(∂2F1/∂qi∂Qj を並べた行列が正則なら)、第1式を Q について解き、第2式で P を決めると正準変換が1つできる。括弧を計算しなくても、関数を1つ選ぶだけで正準変換を作ることができる。これが母関数の使い道である。
ほかの変数の組を使いたいときは、F1 を Legendre 変換する(第1部第7章)。d(QiPi)=QidPi+PidQi を使って −PidQi を QidPi に置き換えると、
F2(q,P)F3(p,Q)F4(p,P)=F1+i∑QiPi,=F1−i∑qipi,=F1+i∑QiPi−i∑qipi,piqiqi=∂qi∂F2,=−∂pi∂F3,=−∂pi∂F4,QiPiQi=∂Pi∂F2,=−∂Qi∂F3,=∂Pi∂F4.(1.12.13)(1.12.14)(1.12.15)
符号は Goldstein の教科書と同じである。4つの関係を図 1.12.3 にまとめる。第1部第7章の Legendre 変換が L(q˙)↔H(p) や U(S)↔F(T) で「独立変数を、その共役な量に取り替える」操作だったのと同じで、ここでは母関数の独立変数を Q↔P、q↔p と取り替えている。

図 1.12.3 母関数の4つの型(1自由度で書いた。f 自由度では QP→∑iQiPi などと読む)。矢印は Legendre 変換で、矢印の上の量を足すと独立変数が括弧の中のように取り替わる。
型が4つ要るのは、変換によって独立に動かせる変数の組が違うからである。恒等変換 Q=q, P=p では q と Q が同じものなので F1(q,Q) は作れないが、F2=∑iqiPi とおくと pi=Pi, Qi=qi で恒等変換になる。逆に入れ替え Q=p, P=−q では q と P が独立でないので F2 は作れないが、F1=qQ を使うことができる。点変換 Qi=Qi(q) は F2=∑iQi(q)Pi で書ける(pj=∑iPi∂Qi/∂qj が出る。点変換の運動量の式の逆である)。
無限小変換の母関数
恒等変換の母関数 F2=∑iqiPi を少しだけずらした
F2=i∑qiPi+ϵG(q,P)(1.12.16)
を考える。式 (1.12.13) から pi=Pi+ϵ∂G/∂qi, Qi=qi+ϵ∂G/∂Pi。ϵ の1次までは ∂G/∂Pi の中の P を p に置き換えてよいので
Qi=qi+ϵ∂pi∂G+O(ϵ2),Pi=pi−ϵ∂qi∂G+O(ϵ2)
となり、無限小変換 (1.12.8) に戻る。第1部第9章の生成子 G は、恒等変換からのずれを表す母関数の1次の部分である。時間発展なら G=H、ϵ=dt で、母関数は F2=∑iqiPi+Hdt になる(有限の時間の流れの母関数は、章末の総合問題で調和振動子について求める)。
例題 1.12.4 母関数を探す・母関数から作る ★★
オリジナル
- (1) F1(q,Q)=qQ が作る正準変換を求めよ。
- (2) F2(q,P)=q2P が作る正準変換を求め、1.12.2節の例題の (a) と同じであることを確かめよ。
- (3) F1(q,Q)=q2Q(q>0, Q>0)が作る正準変換を求め、{Q,P}=1 を直接確かめよ。さらに同じ変換の F3(p,Q) を求め、式 (1.12.14) の符号で同じ変換が出ることを確かめよ。
解答
(1) p=∂F1/∂q=Q, P=−∂F1/∂Q=−q。座標と運動量の入れ替え Q=p, P=−q である。
(2) p=∂F2/∂q=2qP, Q=∂F2/∂P=q2。よって Q=q2, P=p/(2q) で、1.12.2節の例題の (a) と同じ点変換である。
(3) p=∂F1/∂q=2qQ から Q=p/(2q)、P=−∂F1/∂Q=−q2。{Q,P}=∂q∂Q∂p∂P−∂p∂Q∂q∂P=(−2q2p)⋅0−2q1⋅(−2q)=1。F3=F1−qp を (p,Q) で書くには q=p/(2Q) を入れて F3=4Q2p2Q−2Qp2=−4Qp2。式 (1.12.14) から q=−∂F3/∂p=2Qp, P=−∂F3/∂Q=−4Q2p2=−q2 となり、同じ変換が出る。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com