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時間発展は正準変換である

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第12章 正準変換:時間発展から入って母関数へ
目次
  1. 無限小変換は1次まで正準
  2. 積み重ねると厳密に正準
  3. 時刻を刻むと正準でなくなることがある
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第12章 §1.12.3 ★★★ 無限小変換は1次まで正準で、その積み重ねである流れは厳密に正準になる。系として相空間の体積が保たれる(Liouville の定理)

無限小変換は1次まで正準

生成子 G(q,p)G(q,p) による無限小変換(第1部第9章)は

Qi=qi+ϵ∂G∂pi,Pi=pi−ϵ∂G∂qi(1.12.8)Q_i=q_i+\epsilon\frac{\partial G}{\partial p_i},\qquad P_i=p_i-\epsilon\frac{\partial G}{\partial q_i}\tag{1.12.8}

である。1自由度で {Q,P}\{Q,P\} を計算すると、GG の2階偏微分を GqpG_{qp} などと書いて

{Q,P}=(1+ϵGpq)(1−ϵGqp)−(ϵGpp)(−ϵGqq)=1+ϵ2(GppGqq−Gqp2).\{Q,P\}=(1+\epsilon G_{pq})(1-\epsilon G_{qp})-(\epsilon G_{pp})(-\epsilon G_{qq})=1+\epsilon^2\bigl(G_{pp}G_{qq}-G_{qp}^2\bigr).

2階偏微分の順序が入れ替えられるので ϵ\epsilon の1次の項は ϵGpq−ϵGqp=0\epsilon G_{pq}-\epsilon G_{qp}=0 と打ち消し合い、括弧は ϵ\epsilon の1次まで 11 に等しい。ff 自由度でも同じで、式 (1.12.8) は Z=z+ϵJ∇zGZ=z+\epsilon\mathsf J\nabla_zG と書けるので、GG の Hesse 行列を S\mathsf S(対称行列)として M=1+ϵJSM=1+\epsilon\mathsf J\mathsf S。JTJ=1\mathsf J^{\mathsf T}\mathsf J=1, JJ=−1\mathsf J\mathsf J=-1 を使うと

MTJM=J+ϵ(SJTJ+JJS)+O(ϵ2)=J+ϵ(S−S)+O(ϵ2)=J+O(ϵ2).M^{\mathsf T}\mathsf JM=\mathsf J+\epsilon\bigl(\mathsf S\mathsf J^{\mathsf T}\mathsf J+\mathsf J\mathsf J\mathsf S\bigr)+\mathcal{O}(\epsilon^2)=\mathsf J+\epsilon(\mathsf S-\mathsf S)+\mathcal{O}(\epsilon^2)=\mathsf J+\mathcal{O}(\epsilon^2).

無限小変換の第1部第9章での書き方 δqi=ϵ{qi,G}\delta q_i=\epsilon\{q_i,G\}, δpi=ϵ{pi,G}\delta p_i=\epsilon\{p_i,G\} は、ちょうどこの「1次まで正準」になる組み合わせだった。∂G/∂pi\partial G/\partial p_i と −∂G/∂qi-\partial G/\partial q_i の符号の組を崩すと、1次の項が残って正準でなくなる。

積み重ねると厳密に正準

時間発展は G=HG=H, ϵ=dt\epsilon=\mathrm{d} t の無限小変換の積み重ねである。1歩ごとの O(ϵ2)\mathcal{O}(\epsilon^2) の誤差を N=t/ϵN=t/\epsilon 歩ぶん足しても O(ϵ)\mathcal{O}(\epsilon) にしかならないので、ϵ→0\epsilon\to0 の極限では誤差が消えると期待できる。この期待を、極限をとらずに直接示す。

定理 1.12.4(流れは正準変換 ★★★)

Hamiltonian H(q,p,t)H(q,p,t)(時刻を陽に含んでもよい)の時刻 00 から tt までの流れ φt\varphi_t は、すべての tt で正準変換である。

証明

出発点 zz を少しずらしたときの行き先のずれを考える。Hamilton 方程式は Z˙=J∇ZH(Z,t)\dot Z=\mathsf J\nabla_ZH(Z,t) と書けるので、これを出発点 zbz_b で微分すると、Jacobi 行列 M(t)=(∂Za/∂zb)M(t)=(\partial Z_a/\partial z_b) は

dMdt=J S(t) M,M(0)=1(1.12.9)\frac{\mathrm{d} M}{\mathrm{d} t}=\mathsf J\,\mathsf S(t)\,M,\qquad M(0)=1\tag{1.12.9}

に従う。ここで S(t)\mathsf S(t) は軌道上で計算した HH の Hesse 行列で、対称である。すると

ddt(MTJM)=MTSTJTJM+MTJJSM=MTSM−MTSM=0\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\bigl(M^{\mathsf T}\mathsf JM\bigr)=M^{\mathsf T}\mathsf S^{\mathsf T}\mathsf J^{\mathsf T}\mathsf JM+M^{\mathsf T}\mathsf J\mathsf J\mathsf SM=M^{\mathsf T}\mathsf SM-M^{\mathsf T}\mathsf SM=0

なので MTJMM^{\mathsf T}\mathsf JM は時刻によらず、t=0t=0 の値 J\mathsf J に等しい。式 (1.12.7) から φt\varphi_t は正準変換である。

証明は HH の形を何も使っていない。S\mathsf S が対称であること、つまり右辺が1つの関数 HH の勾配に J\mathsf J を掛けた形であることだけを使った。同じ証明は HH を任意の生成子 GG に置き換えても通るので、どの生成子で動かした1径数の変換(並進・回転など)も正準変換である。さらに、正準変換を2つ続けた変換も (M1M2)TJ(M1M2)=M2T(M1TJM1)M2=J(M_1M_2)^{\mathsf T}\mathsf J(M_1M_2)=M_2^{\mathsf T}(M_1^{\mathsf T}\mathsf JM_1)M_2=\mathsf J で正準変換であり、逆変換も正準変換である。

系 1.12.5(Liouville の定理 ★★★)

流れの Jacobi 行列は det⁡M=1\det M=1 を満たす。したがって相空間の領域を流れで動かしても、その 2f2f 次元の体積は変わらない。

証明

MTJM=JM^{\mathsf T}\mathsf JM=\mathsf J の行列式をとると (det⁡M)2det⁡J=det⁡J(\det M)^2\det\mathsf J=\det\mathsf J、det⁡J=1\det\mathsf J=1 なので det⁡M=±1\det M=\pm1。M(0)=1M(0)=1 から連続に変わるので det⁡M=1\det M=1。体積は ∫∣det⁡M∣ d2fz\int\lvert \det M\rvert \,\mathrm{d}^{2f}z で変わるので保たれる。

図 1.12.1 で円板の面積が保たれていたのはこの系の例である。f≥2f\ge2 では正準であることは体積を保つことより強い。det⁡M=1\det M=1 は条件1つだが、MTJM=JM^{\mathsf T}\mathsf JM=\mathsf J は f(2f−1)f(2f-1) 個の条件で、(qi,pi)(q_i,p_i) の各平面への射影の面積の和まで保つことを要求する(1.12.4節)。相空間の体積が保たれることは統計力学の等重率の土台で、第3部第1章 で使う。

時刻を刻むと正準でなくなることがある

計算機で Hamilton 方程式を解くとき、時刻を幅 Δt\Delta t で刻んで1歩ずつ進める。その1歩も相空間の写像なので、正準変換かどうかを問うことができる。定理 1.12.4 は厳密な流れについての主張で、刻んだ写像が正準である保証はない。調和振動子の前進 Euler 法 (1.8.17) とシンプレクティック Euler 法 (1.8.18) は第1部第8章の例題 1.8.5 で比べた。結果だけ引くと、前進 Euler 法の1歩は行列式が 1+ω2Δt21+\omega^2\Delta t^2 で正準でなく、エネルギーが1歩ごとに 1+ω2Δt21+\omega^2\Delta t^2 倍に増える。シンプレクティック Euler 法の1歩は行列式が 11 で正準であり、エネルギーの代わりに少しずれた2次式 E~=12p2+12ω2q2−12ω2Δt qp\tilde E=\frac12p^2+\frac12\omega^2q^2-\frac12\omega^2\Delta t\,qp を厳密に保つ(図 1.12.2)。刻み方によって正準になるものとならないものがあり、その差は長い時間の計算で目に見える違いになる。分子動力学で広く使われる Störmer–Verlet 法(leapfrog 法)も、1歩が正準変換になる刻み方である。次の例題でその1歩を調べる。

例題 1.12.3 Störmer–Verlet 法の1歩 ★★

オリジナルm=ω=1m=\omega=1 の調和振動子 H=12(p2+q2)H=\frac12(p^2+q^2) を幅 Δt\Delta t で刻む Störmer–Verlet 法は、運動量を半歩・座標を1歩・運動量を半歩の順に進める。

pn+1/2=pn−Δt2qn,qn+1=qn+Δt pn+1/2,pn+1=pn+1/2−Δt2qn+1.p_{n+1/2}=p_n-\frac{\Delta t}{2}q_n,\qquad q_{n+1}=q_n+\Delta t\,p_{n+1/2},\qquad p_{n+1}=p_{n+1/2}-\frac{\Delta t}{2}q_{n+1}.

  1. (1) 1歩の写像 (qn,pn)↦(qn+1,pn+1)(q_n,p_n)\mapsto(q_{n+1},p_{n+1}) の Jacobi 行列を求め、行列式が 11(正準)であることを示せ。
  2. (2) (qn+1,pn+1)(q_{n+1},p_{n+1}) から刻みを −Δt-\Delta t にして同じ手順で1歩進めると (qn,pn)(q_n,p_n) に戻ること(時間反転対称)を示せ。
  3. (3) H~=12p2+12(1−Δt24)q2\tilde H=\frac12p^2+\frac12\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\bigr)q^2 が1歩で厳密に保たれることを示し、(1,0)(1,0) から出発したとき q2+p2q^2+p^2 が動く範囲を Δt=0.1\Delta t=0.1 で求めよ。
解答

(1) 3つの段を代入してまとめると qn+1=(1−Δt22)qn+Δt pnq_{n+1}=\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{2}\bigr)q_n+\Delta t\,p_n、pn+1=−Δt(1−Δt24)qn+(1−Δt22)pnp_{n+1}=-\Delta t\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\bigr)q_n+\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{2}\bigr)p_n なので、Jacobi 行列は

M(Δt)=(1−Δt22Δt−Δt(1−Δt24)1−Δt22),det⁡M=(1−Δt22)2+Δt2(1−Δt24)=1.M(\Delta t)=\begin{pmatrix}1-\frac{\Delta t^2}{2}&\Delta t\\[2pt]-\Delta t\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\bigr)&1-\frac{\Delta t^2}{2}\end{pmatrix},\qquad \det M=\Bigl(1-\frac{\Delta t^2}{2}\Bigr)^2+\Delta t^2\Bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\Bigr)=1 .

Δt4/4\Delta t^4/4 の項も打ち消し合う。3つの段はそれぞれ片方の変数だけをずらす行列式 11 の写像なので、その積として det⁡M=1\det M=1 と見てもよい。

(2) 行列式が 11 の 2×22\times2 行列の逆行列は、対角成分を入れ替えて非対角成分の符号を変えたものである。M(Δt)M(\Delta t) は対角成分が等しいので

M(Δt)−1=(1−Δt22−ΔtΔt(1−Δt24)1−Δt22)=M(−Δt)M(\Delta t)^{-1}=\begin{pmatrix}1-\frac{\Delta t^2}{2}&-\Delta t\\[2pt]\Delta t\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\bigr)&1-\frac{\Delta t^2}{2}\end{pmatrix}=M(-\Delta t)

となり、刻みを −Δt-\Delta t にした1歩がちょうど逆写像になる。半歩・1歩・半歩と左右対称に並べたことがこの性質を生む。シンプレクティック Euler 法は運動量を先に進める非対称な手順なので、M(−Δt)≠M(Δt)−1M(-\Delta t)\neq M(\Delta t)^{-1} である。

(3) MM の成分を a=1−Δt22a=1-\frac{\Delta t^2}{2}, b=Δtb=\Delta t, c=−Δt(1−Δt24)c=-\Delta t\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\bigr) とおくと a2−bc=1a^2-bc=1 で、q′=aq+bpq'=aq+bp, p′=cq+app'=cq+ap を代入すると

−c q′2+b p′2=(a2−bc)(−c q2+b p2)=−c q2+b p2-c\,q'^2+b\,p'^2=(a^2-bc)(-c\,q^2+b\,p^2)=-c\,q^2+b\,p^2

(qpqp の項は −2abc+2abc=0-2abc+2abc=0 で消える)。−c q2+b p2=2Δt H~-c\,q^2+b\,p^2=2\Delta t\,\tilde H なので H~\tilde H は厳密に保たれる。(1,0)(1,0) では H~=12(1−Δt24)\tilde H=\frac12\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\bigr) で、軌道は楕円 (1−Δt24)q2+p2=1−Δt24\bigl(1-\frac{\Delta t^2}{4}\bigr)q^2+p^2=1-\frac{\Delta t^2}{4} の上にある。q2+p2q^2+p^2 は p=0p=0 で最大の 11、q=0q=0 で最小の 1−Δt241-\frac{\Delta t^2}{4} をとるので、Δt=0.1\Delta t=0.1 では 0.9975≤q2+p2≤10.9975\le q^2+p^2\le1 である。同じ刻みのシンプレクティック Euler 法では E~\tilde E と EE の差が Δt\Delta t の1次の qpqp の項で、q2+p2q^2+p^2 は 0.9520.952 から 1.0531.053 まで動く。Störmer–Verlet 法の H~\tilde H は HH と Δt2\Delta t^2 の項だけ違い、qpqp の項を持たない。時間反転対称な刻み方では Δt\Delta t の奇数次のずれが現れない。

図

図 1.12.2 調和振動子(m=ω=1m=\omega=1)を Δt=0.1\Delta t=0.1 で 100 歩(t=10t=10)進めた軌道。Euler 法(正準でない)は1歩ごとに q2+p2q^2+p^2 が 1.011.01 倍になって渦巻きで外へ出る。シンプレクティック Euler 法(正準)は少し傾いた楕円 q2+p2−0.1 qp=1q^2+p^2-0.1\,qp=1 の上を回り続ける。点線は厳密な円。

正準な刻み方でエネルギーが長時間ずれていかない理由は、上の例題の (3) と同じく、少しずれた H~\tilde H を厳密に保つことにある。

木下の勉強ステータス

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