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テンソルと計量

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第13章 多様体とテンソル
目次
  1. テンソルの変換則
  2. 計量
  3. 体積要素と、各点で計量を標準形にすること
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第13章 §2.13.3 ★★★ 接ベクトルと余接ベクトルを何個か組み合わせた変換則を持つ量がテンソルで、計量は下付き2つの対称テンソル。長さ・角度・体積・添字の上げ下げはすべて計量から作る

テンソルの変換則

定義 2.13.2(テンソル)

上付き添字を kk 個、下付き添字を ll 個持つ nk+ln^{k+l} 個の数の組 Tμ1⋯μkν1⋯νlT^{\mu_1\cdots\mu_k}{}_{\nu_1\cdots\nu_l} が、座標の取り替えで

T′μ1⋯μkν1⋯νl=∂x′μ1∂xα1⋯∂x′μk∂xαk ∂xβ1∂x′ν1⋯∂xβl∂x′νl Tα1⋯αkβ1⋯βl(2.13.7)T'^{\mu_1\cdots\mu_k}{}_{\nu_1\cdots\nu_l} =\frac{\partial x'^{\mu_1}}{\partial x^{\alpha_1}}\cdots\frac{\partial x'^{\mu_k}}{\partial x^{\alpha_k}}\, \frac{\partial x^{\beta_1}}{\partial x'^{\nu_1}}\cdots\frac{\partial x^{\beta_l}}{\partial x'^{\nu_l}}\, T^{\alpha_1\cdots\alpha_k}{}_{\beta_1\cdots\beta_l}\tag{2.13.7}

と変わるとき、(k,l)(k,l) 型のテンソルと呼ぶ。上付きの添字1つにつき式 (2.13.3) の行列、下付きの添字1つにつき式 (2.13.5) の行列が1つずつ掛かる。

スカラー(関数)は (0,0)(0,0) 型、接ベクトルは (1,0)(1,0) 型、余接ベクトルは (0,1)(0,1) 型である。テンソルの積はテンソルで、上と下の添字を1組縮約すると、式 (2.13.6) と同じ打ち消しが起きて型が (k−1,l−1)(k-1,l-1) のテンソルになる。Kronecker のデルタ δμν\delta^\mu{}_\nu は (1,1)(1,1) 型のテンソルで、どの座標でも同じ成分を持つ(∂x′μ∂xα∂xβ∂x′νδαβ=δμν\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\alpha}\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\nu}\delta^\alpha{}_\beta=\delta^\mu{}_\nu)。その縮約は次元 δμμ=n\delta^\mu{}_\mu=n である。

テンソルが物理で大事なのは、「ある座標で成分がすべて0なら、どの座標でもすべて0」になるからである。式 (2.13.7) の右辺は TT の成分の線形結合なので、T=0T=0 なら T′=0T'=0 である。したがって、テンソルどうしの等式 A=BA=B は1つの座標で示せばすべての座標で成り立つ。物理法則をテンソルの等式で書けば、座標の選び方によらない法則になる。逆に言えば、テンソルでない量(2.13.4節の Γ\Gamma)は、ある座標で0でも別の座標で0とは限らない。

計量

定義 2.13.3(計量)

各点で対称(gμν=gνμg_{\mu\nu}=g_{\nu\mu})かつ正則(det⁡gμν≠0\det g_{\mu\nu}\neq0)な (0,2)(0,2) 型のテンソル gμνg_{\mu\nu} を計量と呼ぶ。近い2点の間の距離の2乗(時空では世界間隔)を

ds2=gμν dxμdxν(2.13.8)\mathrm{d} s^2=g_{\mu\nu}\,\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu\tag{2.13.8}

で定める。計量がどの点でも正定値なら Riemann 計量、時空のように各点で固有値の符号が (+,−,−,−)(+,-,-,-) なら Lorentz 計量と呼ぶ。

ds2\mathrm{d} s^2 が座標によらないためには、gμνg_{\mu\nu} が式 (2.13.7) の (0,2)(0,2) 型で変わればよい。行列で書くと、J=∂x/∂x′J=\partial x/\partial x' を古い座標を新しい座標で微分した Jacobi 行列として

gμν′=∂xα∂x′μ∂xβ∂x′ν gαβ,g′=JTg J(2.13.9)g'_{\mu\nu}=\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\nu}\,g_{\alpha\beta},\qquad g'=J^{\mathsf T}g\,J\tag{2.13.9}

である。第2部第12章で予告した計量の成分の変わり方はこの式である。平面の直交座標の計量 g=diag(1,1)g=\mathrm{diag}(1,1) に式 (2.13.2) の左の行列を当てると g′=diag(1,r2)g'=\mathrm{diag}(1,r^2)、つまり ds2=dr2+r2dθ2\mathrm{d} s^2=\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\theta^2 を得る。球面の計量は、3次元空間の点 (asin⁡θcos⁡φ,asin⁡θsin⁡φ,acos⁡θ)(a\sin\theta\cos\varphi,a\sin\theta\sin\varphi,a\cos\theta) の dX2+dY2+dZ2\mathrm{d} X^2+\mathrm{d} Y^2+\mathrm{d} Z^2 を計算すれば

ds2=a2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)(2.13.10)\mathrm{d} s^2=a^2\bigl(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2\bigr)\tag{2.13.10}

である。この計算は外の空間を使ったが、出てきた gμνg_{\mu\nu} はそれ以後 (θ,φ)(\theta,\varphi) だけで使うことができる。

計量は次のものをすべて決める。接ベクトルの内積 gμνVμWνg_{\mu\nu}V^\mu W^\nu と長さ gμνVμVν\sqrt{g_{\mu\nu}V^\mu V^\nu}、曲線の長さ ∫gμνx˙μx˙ν dλ\int\sqrt{g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu}\,\mathrm{d}\lambda、そして接ベクトルと余接ベクトルの対応である。逆行列を gμνg^{\mu\nu}(gμλgλν=δμνg^{\mu\lambda}g_{\lambda\nu}=\delta^\mu{}_\nu)と書くと、gμνg^{\mu\nu} は (2,0)(2,0) 型のテンソルで、

Vμ=gμνVν,ωμ=gμνων(2.13.11)V_\mu=g_{\mu\nu}V^\nu,\qquad \omega^\mu=g^{\mu\nu}\omega_\nu\tag{2.13.11}

で添字を下げ・上げる。計量が与えられると、TpMT_pM と Tp∗MT^*_pM が1対1に対応し、同じ量の上付きの成分と下付きの成分として扱えるようになる。特殊相対論の Aμ=(ϕ/c,A)A^\mu=(\phi/c,\bm{A}) と Aμ=(ϕ/c,−A)A_\mu=(\phi/c,-\bm{A})、uμuμ=c2u_\mu u^\mu=c^2 は、g=η=diag(1,−1,−1,−1)g=\eta=\mathrm{diag}(1,-1,-1,-1) の場合のこの操作である(第2部第3章)。

体積要素と、各点で計量を標準形にすること

dnx\mathrm{d}^nx は座標の取り替えで Jacobi 行列式倍になる。一方、式 (2.13.9) の行列式をとると det⁡g′=(det⁡J)2det⁡g\det g'=(\det J)^2\det g なので、∣g∣=∣det⁡gμν∣\lvert g\rvert =\lvert \det g_{\mu\nu}\rvert として

∣g′∣ dnx′=∣det⁡J∣∣g∣  ∣det⁡J∣−1dnx=∣g∣ dnx(2.13.12)\sqrt{\lvert g'\rvert }\,\mathrm{d}^nx'=\lvert \det J\rvert \sqrt{\lvert g\rvert }\;\lvert \det J\rvert ^{-1}\mathrm{d}^nx=\sqrt{\lvert g\rvert }\,\mathrm{d}^nx\tag{2.13.12}

は座標によらない。これが積分に使う体積要素で、極座標では g=r\sqrt{g}=r から r dr dθr\,\mathrm{d} r\,\mathrm{d}\theta、時空では −g d4x\sqrt{-g}\,\mathrm{d}^4x になる。

1点 pp だけに注目すると、計量 gμν(p)g_{\mu\nu}(p) は数の対称行列である。線形代数の Sylvester の慣性法則により、座標の1次の取り替え x′μ=Aμνxνx'^\mu=A^\mu{}_\nu x^\nu を選べば、g′(p)=A−Tg(p)A−1g'(p)=A^{-\mathsf T}g(p)A^{-1} を diag(±1,…,±1)\mathrm{diag}(\pm1,\dots,\pm1) にでき、+1+1 と −1-1 の個数は取り替えによらない。したがって Lorentz 計量なら、どの点でも gμν′(p)=ημνg'_{\mu\nu}(p)=\eta_{\mu\nu} となる座標がある。これは点 pp だけの話で、まわりの点まで η\eta にできるかどうかは計量の微分が決める。1階微分までは消せることを 2.13.4節で示す。

例題 2.13.3 立体射影の座標で球面の計量と面積を求める ★★

オリジナル例題 2.13.1 の北極からの立体射影の座標 (u,v)(u,v) を使う。

  1. (1) 球面の計量 (2.13.10) を変換則 (2.13.9) で (u,v)(u,v) に写し、ds2=4a4(a2+u2+v2)2(du2+dv2)\mathrm{d} s^2=\dfrac{4a^4}{(a^2+u^2+v^2)^2}(\mathrm{d} u^2+\mathrm{d} v^2) となることを示せ。
  2. (2) 体積要素 (2.13.12) で (u,v)(u,v) 平面全体を積分し、球面の面積 4πa24\pi a^2 を出せ。円板 u2+v2≤a2u^2+v^2\le a^2 の部分の面積も求め、それが球面のどの部分にあたるかを答えよ。
解答

(1) ρ=u2+v2=acot⁡(θ/2)\rho=\sqrt{u^2+v^2}=a\cot(\theta/2) と φ\varphi は (u,v)(u,v) の平面の極座標なので、平面の計量は du2+dv2=dρ2+ρ2dφ2\mathrm{d} u^2+\mathrm{d} v^2=\mathrm{d}\rho^2+\rho^2\mathrm{d}\varphi^2 である。ρ=acot⁡(θ/2)\rho=a\cot(\theta/2) を微分すると dρ=−a2sin⁡2(θ/2)dθ\mathrm{d}\rho=-\dfrac{a}{2\sin^2(\theta/2)}\mathrm{d}\theta、また 1+ρ2/a2=1/sin⁡2(θ/2)1+\rho^2/a^2=1/\sin^2(\theta/2) と sin⁡θ=2sin⁡(θ/2)cos⁡(θ/2)\sin\theta=2\sin(\theta/2)\cos(\theta/2) を使うと

dθ2=4sin⁡4(θ/2)a2dρ2,sin⁡2θ=4sin⁡4(θ/2)cot⁡2(θ/2)=4sin⁡4(θ/2)a2ρ2.\mathrm{d}\theta^2=\frac{4\sin^4(\theta/2)}{a^2}\mathrm{d}\rho^2,\qquad \sin^2\theta=4\sin^4(\theta/2)\cot^2(\theta/2)=\frac{4\sin^4(\theta/2)}{a^2}\rho^2 .

したがって

a2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)=4sin⁡4(θ/2) (dρ2+ρ2dφ2)=4a4(a2+ρ2)2(du2+dv2)a^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2)=4\sin^4(\theta/2)\,(\mathrm{d}\rho^2+\rho^2\mathrm{d}\varphi^2)=\frac{4a^4}{(a^2+\rho^2)^2}(\mathrm{d} u^2+\mathrm{d} v^2)

となる。最後に sin⁡2(θ/2)=a2/(a2+ρ2)\sin^2(\theta/2)=a^2/(a^2+\rho^2) を使った。計量の成分は guu=gvv=4a4/(a2+u2+v2)2g_{uu}=g_{vv}=4a^4/(a^2+u^2+v^2)^2、guv=0g_{uv}=0 で、平面の計量に場所によって変わる正の因子を掛けた形をしている。この形の座標では角度が平面と同じに測れる(立体射影は角度を保つ)。

(2) g=4a4/(a2+ρ2)2\sqrt g=4a^4/(a^2+\rho^2)^2 なので、(u,v)(u,v) の極座標 ρ dρ dφ\rho\,\mathrm{d}\rho\,\mathrm{d}\varphi で

∫g du dv=2π∫0∞4a4ρ(a2+ρ2)2dρ=2π[−2a4a2+ρ2]0∞=4πa2.\int\sqrt g\,\mathrm{d} u\,\mathrm{d} v=2\pi\int_0^\infty\frac{4a^4\rho}{(a^2+\rho^2)^2}\mathrm{d}\rho=2\pi\Bigl[-\frac{2a^4}{a^2+\rho^2}\Bigr]_0^\infty=4\pi a^2 .

ρ\rho の上限を aa にすると 2π (2a2−a2)=2πa22\pi\,(2a^2-a^2)=2\pi a^2 で、球面の半分である。ρ≤a\rho\le a は cot⁡(θ/2)≤1\cot(\theta/2)\le1、つまり θ≥π/2\theta\ge\pi/2 なので、円板は南半球にあたる。北極は ρ→∞\rho\to\infty に送られ、北半球全体が円板の外の無限に広い領域に写っている。それでも面積が 2πa22\pi a^2 に収まるのは、因子 g\sqrt g が遠方で ρ−4\rho^{-4} で小さくなるからである。

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