解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第15章 §2.15.6 ★★ Newton の重力の Lagrangian 密度が Einstein–Hilbert 作用の弱い場での2次の項であることを確かめ、教科書ごとの符号の違いを並べる
Newton の重力を場の理論として書く
授業の Newton の重力は、ポテンシャル Φ と Poisson 方程式(重力の Gauss の法則)で書く。
∇2Φ=4πGρ,g=−∇Φ,∮g⋅dA=−4πGM内.(2.15.19)
これは場 Φ の Lagrangian 密度(時間あたり・体積あたり)
LN=−8πG1(∇Φ)2−ρΦ(2.15.20)
の Euler–Lagrange 方程式である(∂Φ∂LN−∂i∂(∂iΦ)∂LN=−ρ+4πG1∇2Φ=0)。電磁気学の静電場の L=2ϵ0(∇ϕ)2−ρeϕ と比べると、場の項の符号が逆である。静電場では同符号の電荷が反発し、重力では同符号の質量(どれも正)が引き合う。この違いが場の項の符号に表れている。
Einstein–Hilbert 作用の2次の項
弱い静的な場を、g00=1+c22Φ、gij=−(1−c22Ψ)δij と2つのポテンシャルで書く。Sg の密度 −16πGc4−gR(時間あたり・体積あたり。d4x=cdtd3x)を Φ,Ψ の2次まで展開すると、1次の項は全発散 8πG1∇2Φ で、2次の項は全発散を除いて
Lg(2)=8πG1[(∇Ψ)2−2∇Φ⋅∇Ψ](2.15.21)
になる(verify で sympy により確かめた)。物質(静止した塵)の作用 −∑mc∫ds の密度は −ρc2g00≈−ρc2−ρΦ で、Φ だけに結合する。Ψ で変分すると 4πG1∇2(Φ−Ψ)=0 なので、無限遠で 0 になる解では Ψ=Φ。Φ で変分すると 4πG1∇2Ψ−ρ=0 で、合わせて Poisson 方程式 (2.15.19) になる。Ψ=Φ を代入すると Lg(2)=−8πG1(∇Φ)2 で、式 (2.15.20) の場の項そのものである。
この計算は2つのことを示している。第一に、g00 だけをずらした計量(Ψ=0)では2次の項は全発散だけになり、Newton の重力は出ない。空間の計量も Ψ=Φ だけ曲がっていることが要る。第二に、物質がゆっくり動くかぎり Ψ は粒子の運動に現れないが、光は g00 と gij の両方を感じる。光の曲がる角が Newton の計算の2倍になるのは Ψ の分で、第2部第16章で回収する。
授業の式との対応表と、教科書による符号の違い
表 2.15.1 Newton の重力と Einstein 方程式の対応 | 授業の形(Newton の重力) | この章の形 |
| 重力場 | ポテンシャル Φ(1本) | 計量 gμν(10本、うち4本は座標の自由度) |
| 源 | 質量密度 ρ | Tμν=−g2cδgμνδSm(T00≈ρc2) |
| 場の作用 | ∫[−8πG(∇Φ)2−ρΦ]dtd3x | −16πGc3∫(R+2Λ)−gd4x+Sm |
| 場の方程式 | ∇2Φ=4πGρ | Gμν−Λgμν=c48πGTμν |
| 源の保存 | 質量の連続の式 ∂tρ+∇⋅(ρv)=0 | ∇μTμν=0(物質の運動方程式から) |
一般相対論の教科書の多くは (−,+,+,+) で書かれている。そこでは S=16πGc3∫(R−2Λ)−gd4x、Tμν=−−g2cδgμνδSm、方程式は Gμν+Λgμν=c48πGTμν である(Carroll は c=1 で書く)。計量の成分をすべて −1 倍すると Rμν と Gμν は変わらず、R と gμν の符号だけが反転する(記法の正本 §4 で確かめた)。したがって Gμν と Tμν の関係は2つの流儀で同じ形になり、作用の前の符号・Λ の項の符号・T の定義の符号の3つだけが入れ替わる。教科書を読み比べるときは、この3か所を確かめればよい。
例題 2.15.6 Φ と Ψ の場の方程式 ★★
オリジナル式 (2.15.21) に物質の項 −ρΦ を加えた L=8πG1[(∇Ψ)2−2∇Φ⋅∇Ψ]−ρΦ を考える。
- (1) Φ と Ψ のそれぞれについての Euler–Lagrange 方程式を書け。
- (2) 半径 r0 の一様な球(質量 M)の外で Φ と Ψ を求めよ。
- (3) Ψ=0 に固定して Φ だけで変分するとどうなるか。
解答
(1) Φ について:∂Φ∂L=−ρ、∂(∂iΦ)∂L=−4πG1∂iΨ なので −ρ+4πG1∇2Ψ=0。Ψ について:∂(∂iΨ)∂L=4πG1(∂iΨ−∂iΦ) なので −4πG1∇2(Ψ−Φ)=0。
(2) 1つめは ∇2Ψ=4πGρ で、球の外では Gauss の法則から Ψ=−GM/r。2つめから Φ−Ψ は至る所で調和関数で、無限遠で 0 なので Φ−Ψ=0。したがって Φ=Ψ=−GM/r で、Newton のポテンシャルが出る。
(3) Ψ=0 では L=−ρΦ だけが残り、Φ の方程式は ρ=0 になって物質を置けない。g00 の曲がりだけでは重力の場の方程式は作れず、空間の計量の曲がり Ψ と組になって初めて Poisson 方程式が出る。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの ∣Φ∣/c2,∣Ψ∣/c2→0(作用を2次で打ち切る) | 証明 要確認(線形化した方程式の解が非線形の解を近似するための前提は原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第2章
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