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Shapiro 遅延と重力レンズ

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第16章 Schwarzschild 解と太陽系の検証
目次
  1. 光の到着の遅れ
  2. 重力レンズ
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第16章 §2.16.5 ★★ 同じ屈折率 n=1+2GM/(c2r)n=1+2GM/(c^2r) から、光の到着の遅れ(Shapiro 遅延)と、像の位置と増光(重力レンズ)を出す

光の到着の遅れ

(2.16.24) の屈折率は、光の進路を曲げるだけでなく、光が届くまでの時間も延ばす。直線の経路(曲がりの効果は時間に対して2次)に沿ってdt=n dz/c\mathrm{d} t=n\,\mathrm{d} z/c を積分すると、平坦な時空より余計にかかる座標時は

Δt=∫−z1z2n−1c dz=2GMc3∫−z1z2dzb2+z2=2GMc3ln⁡(z1+z12+b2)(z2+z22+b2)b2(2.16.26)\Delta t=\int_{-z_1}^{z_2}\frac{n-1}{c}\,\mathrm{d} z=\frac{2GM}{c^3}\int_{-z_1}^{z_2}\frac{\mathrm{d} z}{\sqrt{b^2+z^2}} =\frac{2GM}{c^3}\ln\frac{\bigl(z_1+\sqrt{z_1^2+b^2}\bigr)\bigl(z_2+\sqrt{z_2^2+b^2}\bigr)}{b^2}\tag{2.16.26}

である(z1z_1, z2z_2 は最接近点から発信点・受信点までの距離)。両端が太陽から十分遠く z1,2≈r1,2≫bz_{1,2}\approx r_{1,2}\gg b なら

Δt≈2GMc3ln⁡4r1r2b2=rscln⁡4r1r2b2(2.16.27)\Delta t\approx\frac{2GM}{c^3}\ln\frac{4r_1r_2}{b^2}=\frac{r_{\mathrm s}}{c}\ln\frac{4r_1r_2}{b^2}\tag{2.16.27}

となる。対数の中の量は座標の取り方で O(1)\mathcal{O}(1) だけ変わるが、bb を変えたときの Δt\Delta t の変化、つまり惑星が太陽の向こう側を通る前後の時間変化は座標によらない。I. I. Shapiro はこれを「一般相対論の第4の検証」として、金星や水星にレーダー波を当てて往復時間を測ることを提案した1I. I. Shapiro (1964), Physical Review Letters 13, 789–791.下の脚注へ。最も精密な測定は、土星へ向かう探査機 Cassini との電波の往復で、γ−1=(2.1±2.3)×10−5\gamma-1=(2.1\pm2.3)\times10^{-5} を得ている2B. Bertotti, L. Iess, P. Tortora (2003), Nature 425, 374–376.下の脚注へ。

例題 2.16.5 金星のレーダーの往復の遅れ ★★

オリジナル地球(太陽から 1 au1\,\mathrm{au})から金星(0.723332 au0.723332\,\mathrm{au})へレーダー波を送り、反射波を受ける。金星は太陽のほぼ真裏にあり(外合)、電波は太陽の縁 b=R⊙=6.957×108 mb=R_\odot=6.957\times10^8\,\mathrm m をかすめる。往復で余計にかかる時間を (2.16.27) で求めよ。

解答

片道の遅れは rscln⁡4r⊕rVb2\frac{r_{\mathrm s}}{c}\ln\frac{4r_\oplus r_{\mathrm V}}{b^2}。rs/c=2953/2.998×108=9.85×10−6 sr_{\mathrm s}/c=2953/2.998\times10^8=9.85\times10^{-6}\,\mathrm s、4r⊕rV/b2=4×1.496×1011×1.0821×1011/(6.957×108)2=1.338×1054r_\oplus r_{\mathrm V}/b^2=4\times1.496\times10^{11}\times1.0821\times10^{11}/(6.957\times10^8)^2=1.338\times10^5 で、その対数は 11.8011.80。片道 1.16×10−4 s1.16\times10^{-4}\,\mathrm s、往復でその2倍の 2.33×10−4 s2.33\times10^{-4}\,\mathrm s、つまり約 233 μs233\,\mu\mathrm s である。

往復の時間そのもの(約 1.7×103 s1.7\times10^3\,\mathrm s)に比べると 10−710^{-7} の大きさだが、レーダーの時間の分解能(μs\mu\mathrm{s} 以下)で十分に測ることができる。外合をはさんで bb が変わると遅れが対数的に増えて減るので、往復時間の変化の形として取り出すことができる。

重力レンズ

光の曲がり (2.16.23) を、遠い光源と観測者の間に置かれた質量(レンズ)に当てる。観測者からレンズまでの距離を DlD_{\mathrm l}、光源までを DsD_{\mathrm s}、レンズから光源までを DlsD_{\mathrm{ls}} とする。角度はすべて小さいとし、曲がりはレンズの位置で一度に起きるとみなす(薄いレンズの近似)。光源の本当の方向を β\beta、像の見える方向を θ\theta(どちらもレンズの方向から測る)とすると、光はレンズの位置で衝突径数 b=Dlθb=D_{\mathrm l}\theta を通って ϑ=4GM/(c2Dlθ)\vartheta=4GM/(c^2D_{\mathrm l}\theta) だけ曲がる。光源の面での位置のずれを比べて

β=θ−θE2θ,θE2≔4GMc2DlsDlDs(2.16.28)\beta=\theta-\frac{\theta_{\mathrm E}^2}{\theta},\qquad \theta_{\mathrm E}^2\coloneqq\frac{4GM}{c^2}\frac{D_{\mathrm{ls}}}{D_{\mathrm l}D_{\mathrm s}}\tag{2.16.28}

を得る。これをレンズ方程式と呼ぶ。θ\theta の2次方程式 θ2−βθ−θE2=0\theta^2-\beta\theta-\theta_{\mathrm E}^2=0 なので、像は

θ±=β±β2+4θE22(2.16.29)\theta_\pm=\frac{\beta\pm\sqrt{\beta^2+4\theta_{\mathrm E}^2}}{2}\tag{2.16.29}

の2つできる。θ+\theta_+ はレンズから見て光源と同じ側、θ−\theta_-(負)は反対側に見える。光源がレンズの真後ろ(β=0\beta=0)にあると、軸のまわりの対称性から像は半径 θE\theta_{\mathrm E} の輪になる(Einstein リング)。1979 年には、約 6′′6'' 離れて並ぶ2つのクエーサーのスペクトルが同じであることから、1つのクエーサーの2つの像であることが見つかった3D. Walsh, R. F. Carswell, R. J. Weymann (1979), Nature 279, 381–384.下の脚注へ。

光の曲がりは光の面積あたりの明るさ(表面輝度)を変えない。これは Liouville の定理から出るエタンデュの保存(第2部第10章)である。したがって像の明るさの比は像の立体角の比に等しく、増光率は μ±=∣θ±βdθ±dβ∣\mu_\pm=\lvert \frac{\theta_\pm}{\beta}\frac{\mathrm{d} \theta_\pm}{\mathrm{d} \beta}\rvert で与えられる。x≔β/θEx\coloneqq\beta/\theta_{\mathrm E} とおいて2つの像の和をとると

μtot=μ++μ−=x2+2xx2+4(2.16.30)\mu_{\mathrm{tot}}=\mu_++\mu_-=\frac{x^2+2}{x\sqrt{x^2+4}}\tag{2.16.30}

となる。銀河系の中の星がレンズになるとき、θE\theta_{\mathrm E} はミリ秒角ほどで2つの像は分けて見えないが、レンズの星が光源の前を横切ると xx が時間とともに変わり、光源が一時的に明るくなる。これが重力マイクロレンズで、B. Paczyński が銀河系の暗い天体を探す方法として提案した4B. Paczyński (1986), The Astrophysical Journal 304, 1–5.下の脚注へ。

図

図 2.16.3 薄いレンズの配置(角度は誇張した)。光源から出た光は衝突径数 b=Dlθb=D_{\mathrm l}\theta でレンズの横を通り、角度 ϑ=4GM/(c2b)\vartheta=4GM/(c^2b) 曲がって観測者に届く。観測者は像を、光源の本当の方向 β\beta でなく θ\theta の方向に見る。点線は、曲がりが無いときの光の延長と、光源の本当の方向。

例題 2.16.6 銀河系の中心方向の星によるマイクロレンズ ★★

オリジナル太陽質量の星(GM⊙=1.32712440018×1020 m3 s−2GM_\odot=1.32712440018\times10^{20}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}})が、地球から Dl=4 kpcD_{\mathrm l}=4\,\mathrm{kpc} の所にあり、その真後ろ付近の Ds=8 kpcD_{\mathrm s}=8\,\mathrm{kpc} に光源の星がある(1 kpc=3.0857×1019 m1\,\mathrm{kpc}=3.0857\times10^{19}\,\mathrm m)。

  1. (1) Einstein 半径 θE\theta_{\mathrm E} をミリ秒角で求めよ。
  2. (2) 光源がレンズから β=θE/2\beta=\theta_{\mathrm E}/2 だけずれているとき、2つの像の位置を θE\theta_{\mathrm E} を単位に求め、全体の増光率 μtot\mu_{\mathrm{tot}} を求めよ。
  3. (3) (2.16.30) を μ±\mu_\pm の和として導け。
解答

(1) Dls=4 kpcD_{\mathrm{ls}}=4\,\mathrm{kpc} なので θE2=4GMc21Ds=2rs8 kpc=5906 m2.469×1020 m=2.39×10−17\theta_{\mathrm E}^2=\frac{4GM}{c^2}\frac{1}{D_{\mathrm s}}=\frac{2r_{\mathrm s}}{8\,\mathrm{kpc}}=\frac{5906\,\mathrm m}{2.469\times10^{20}\,\mathrm m}=2.39\times10^{-17}。θE=4.89×10−9 rad=1.01\theta_{\mathrm E}=4.89\times10^{-9}\,\mathrm{rad}=1.01 ミリ秒角である。

(2) x=1/2x=1/2 を (2.16.29) に入れると θ±/θE=(0.5±4.25)/2\theta_\pm/\theta_{\mathrm E}=(0.5\pm\sqrt{4.25})/2、つまり θ+=1.28 θE\theta_+=1.28\,\theta_{\mathrm E}、θ−=−0.78 θE\theta_-=-0.78\,\theta_{\mathrm E}。2つの像は 2.06 θE≈22.06\,\theta_{\mathrm E}\approx2 ミリ秒角しか離れていないので、望遠鏡では1つに見える。増光率は μtot=(0.25+2)/(0.54.25)=2.18\mu_{\mathrm{tot}}=(0.25+2)/(0.5\sqrt{4.25})=2.18 で、光源は約2倍明るく見える。

(3) θ±\theta_\pm を θE\theta_{\mathrm E} を単位に y±=(x±x2+4)/2y_\pm=(x\pm\sqrt{x^2+4})/2 と書く。dy±dx=12(1±xx2+4)\frac{\mathrm{d} y_\pm}{\mathrm{d} x}=\frac12\bigl(1\pm\frac{x}{\sqrt{x^2+4}}\bigr) なので

μ±=∣y±xdy±dx∣=(x2+4±x)24xx2+4\mu_\pm=\lvert \frac{y_\pm}{x}\frac{\mathrm{d} y_\pm}{\mathrm{d} x}\rvert =\frac{(\sqrt{x^2+4}\pm x)^2}{4x\sqrt{x^2+4}}

(μ−\mu_- では y−<0y_-<0 なので絶対値をとった)。和をとると分子は (x2+4+x)2+(x2+4−x)2=2(x2+4)+2x2=4(x2+2)(\sqrt{x^2+4}+x)^2+(\sqrt{x^2+4}-x)^2=2(x^2+4)+2x^2=4(x^2+2) で、μtot=x2+2xx2+4\mu_{\mathrm{tot}}=\frac{x^2+2}{x\sqrt{x^2+4}} を得る。x=1x=1(光源が Einstein 半径の所)では μtot=3/5=1.34\mu_{\mathrm{tot}}=3/\sqrt5=1.34 になる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 角度 θ,β≪1\theta,\beta\ll1 と rs/b→0r_{\mathrm s}/b\to0、レンズの厚み/距離 →0\to0(薄いレンズ) | 証明 条件付き(曲がり角を1次の (2.16.23) で置き換え、曲がりをレンズの面に集める。Shapiro 遅延の式も同じ1次の屈折率で、座標によらないのは bb への依存だけ) | 行き先 近似の数理 第7章

1 I. I. Shapiro (1964), Physical Review Letters 13, 789–791.

2 B. Bertotti, L. Iess, P. Tortora (2003), Nature 425, 374–376.

3 D. Walsh, R. F. Carswell, R. J. Weymann (1979), Nature 279, 381–384.

4 B. Paczyński (1986), The Astrophysical Journal 304, 1–5.

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