解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第16章 §2.16.6 ★★ 学部の一般相対論入門の「3つの検証」の公式と、Newton の Binet の式・光の粒子の曲がり・PPN の係数を、この章の式と並べる
学部の一般相対論の入門では、Schwarzschild 計量を与えたうえで、太陽系の検証を次の3つの公式として覚えることが多い。
Δφ1周=c2a(1−e2)6πGM,ϑ=c2b4GM,Δt=c32GMlnb24r1r2.
この章では、この3つを1つの筋で出した。計量は Rμν=0 の解として決まり(2.16.1 節)、粒子の運動は L=21gμνx˙μx˙ν のEuler–Lagrange 方程式で、Noether の定理で2つの保存量を取り出すと有効ポテンシャル (2.16.14) の1次元運動になる(2.16.2 節)。3つの公式の違いは、どの近似でどの量を取り出すかだけである。
Newton の Binet の式との対応
Newton の力学で中心力 F(r) を受ける粒子の軌道は、u=1/r について Binet の式
dφ2d2u+u=−mℓ2u2F(1/u)
に従う。万有引力 F=−GMm/r2 では右辺は定数 GM/ℓ2 になる。一般相対論の (2.16.16) は、ここに 3GMu2/c2 を足したもので、Newton の言葉に直せば、引力 −GMm/r2 に −3GMmℓ2/(c2r4) を足したことに当たる。この力は角運動量 ℓ に比例し、Newton の重力の法則のように物体の位置だけでは決まらない。ポテンシャルで書けば (2.16.14) の −GMℓ2/(c2r3) である。
第2部第1章では、ポテンシャルに 1/r2 に比例する小さな項を足すと近日点が1周に 2π(1/ν−1) 進むことを示した。そこでの 1/r2 の項は遠心力の項と同じ形なので、軌道の式の u の係数を変えるだけである。一般相対論の項は 1/r3 で、軌道の式では u2 の項になる。円に近い軌道では、どちらの場合も「動径方向の振動の振動数 κ と公転の振動数がずれる」ことが近日点の進みの正体である(総合問題の (3))。
光を Newton の粒子として曲げると半分になる
例題 2.16.7 光速で飛ぶ Newton の粒子の曲がり ★★
オリジナルNewton の重力のもとで、無限遠から速さ v で入ってきて、衝突径数 b で質量 M の横を通り過ぎる粒子を考える。
- (1) 軌道は双曲線 u=(1+ecosφ)/p(e>1)である。曲がり角 ϑN が tan(ϑN/2)=GM/(v2b) を満たすことを示せ。
- (2) v=c として、太陽の縁をかすめる場合の ϑN を求め、(2.16.23) と比べよ。
解答
(1) 角運動量は ℓ=vb、半直弦は p=ℓ2/GM=v2b2/GM。無限遠のエネルギーは 21v2 で、Kepler 軌道では 21v2=2pGM(e2−1) なのでe2−1=pv2/GM=(v2b/GM)2。漸近線は u=0、すなわち cosφ∞=−1/e で決まる。入る向きと出る向きの間の角は 2φ∞ で、曲がり角は ϑN=2φ∞−π である。cosφ∞=−1/e から sin(ϑN/2)=−cosφ∞=1/e、よって
tan2ϑN=e2−11=v2bGM.
(2) 角度が小さければ ϑN≈2GM/(c2b) で、太陽の縁では 0.876′′、ちょうど (2.16.23) の半分である。A. Einstein も 1911 年、空間の曲がりを入れる前の理論で、この半分の値(0.83′′)を出していた1A. Einstein (1911), Annalen der Physik 35, 898–908。論文は偏角を 4×10−6 rad =0.83′′ と書く(太陽の質量と半径を今の値にすると 0.875′′)。。2.16.4 節の Fermat の原理の言葉では、Newton の粒子の曲がりに当たるのは g00 の部分だけで、残りの半分は gij の空間の曲がりによる。
PPN の係数との対応
観測の論文では、一般相対論以外の重力理論とまとめて比べるために、弱い場の計量をg00≈1+2Φ/c2+2βPPNΦ2/c4、gij≈−(1−2γΦ/c2)δij と2つの係数で書く(パラメータ化ポスト Newton〔PPN〕形式)。一般相対論は γ=βPPN=1 である(βPPN はレンズの角 β と別のものなので添字を付けた)。屈折率は n=1−(1+γ)Φ/c2 になるので、光の曲がりと Shapiro 遅延は一般相対論の値の (1+γ)/2 倍、近日点移動は (2+2γ−βPPN)/3 倍になる。光の曲がりが γ だけを、近日点移動が γ と βPPN を測ることになる。2.16.4 節・2.16.5 節で引いた γ の値はこの係数である。
例題 2.16.8 Cassini の結果から光の曲がりの幅を決める ★
オリジナルCassini の測定 γ−1=(2.1±2.3)×10−5 を使い、太陽の縁での光の曲がり 21+γ⋅c2R⊙4GM⊙ が一般相対論の値 1.7512′′ からどれだけずれうるかを求めよ。
解答
21+γ=1+2γ−1=1+(1.05±1.15)×10−5。曲がりのずれは 1.7512′′×(1.05±1.15)×10−5=(1.8±2.0)×10−5′′、つまり 20 マイクロ秒角ほどの幅で一般相対論と一致している。1919 年の日食観測の 1.98′′ と 1.61′′ のばらつき(約 0.4′′)と比べると、精度は4桁以上上がった。
1 A. Einstein (1911), Annalen der Physik 35, 898–908。論文は偏角を 4×10−6 rad =0.83′′ と書く(太陽の質量と半径を今の値にすると 0.875′′)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com