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出てくるもの(3):連星の公転周期の減少とチャープ

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第18章 重力波
目次
  1. エネルギーの収支と軌道の縮み
  2. Hulse–Taylor の連星パルサー
  3. チャープとチャープ質量
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第18章 §2.18.5 ★★★ 放射の仕事率と軌道のエネルギーの収支から、Hulse–Taylor の周期の減少と GW150914 のチャープ質量が同じ式で出る

エネルギーの収支と軌道の縮み

軌道の1周期のあいだに失うエネルギーが軌道のエネルギーに比べて十分小さいとき、軌道は各時刻で円軌道のまま、半径 aa がゆっくり縮むとみなせる。軌道のエネルギー E=−GMmr/(2a)E=-GMm_{\mathrm r}/(2a) の減る速さを放射の仕事率 (2.18.28) に等しいと置くと、dE/dt=GMmr2a2a˙=−P\mathrm{d} E/\mathrm{d} t=\frac{GMm_{\mathrm r}}{2a^2}\dot a=-P から

dadt=−645G3mrM2c5a3(2.18.29)\frac{\mathrm{d} a}{\mathrm{d} t}=-\frac{64}{5}\frac{G^3m_{\mathrm r}M^2}{c^5a^3}\tag{2.18.29}

を得る。a3da=−β dta^3\mathrm{d} a=-\beta\,\mathrm{d} t(β=645G3mrM2/c5\beta=\frac{64}{5}G^3m_{\mathrm r}M^2/c^5)を積分すると、半径 a0a_0 から合体(a=0a=0)までの時間は

τ=a044β=5256c5a04G3mrM2(2.18.30)\tau=\frac{a_0^4}{4\beta}=\frac{5}{256}\frac{c^5a_0^4}{G^3m_{\mathrm r}M^2}\tag{2.18.30}

である。

公転周期 Pb=2π/ΩP_{\mathrm b}=2\pi/\Omega は Kepler の法則で Pb∝a3/2P_{\mathrm b}\propto a^{3/2} なので P˙b/Pb=32a˙/a\dot P_{\mathrm b}/P_{\mathrm b}=\frac32\dot a/a で、(2.18.29) を PbP_{\mathrm b} で書き直すと

dPbdt=−192π5G5/3c5(Pb2π)−5/3m1m2M1/3 f(e),f(e)=1+7324e2+3796e4(1−e2)7/2(2.18.31)\frac{\mathrm{d} P_{\mathrm b}}{\mathrm{d} t}=-\frac{192\pi}{5}\frac{G^{5/3}}{c^5}\Bigl(\frac{P_{\mathrm b}}{2\pi}\Bigr)^{-5/3}\frac{m_1m_2}{M^{1/3}}\,f(e),\qquad f(e)=\frac{1+\frac{73}{24}e^2+\frac{37}{96}e^4}{(1-e^2)^{7/2}}\tag{2.18.31}

になる。f(e)f(e) は離心率 ee の楕円軌道に対する補正因子で、円軌道では f(0)=1f(0)=1 である(楕円軌道の放射を1周期で平均した Peters と Mathews の結果。P. C. Peters and J. Mathews(1963)、Phys. Rev. 131、435)。近い点で速く動くと Q...\dddot Q が大きくなるので、離心率が大きいほど放射は強い。

Hulse–Taylor の連星パルサー

1974 年に Hulse と Taylor は、中性子星どうしの連星の片方がパルサー(自転に合わせて電波のパルスを出す中性子星)である系 PSR B1913+16 を見つけた(R. A. Hulse and J. H. Taylor(1975)、Astrophys. J. 195、L51)。パルスの到着時刻を数十年追うと、公転周期・離心率・2つの星の質量が精密に決まり、公転周期の減少も測れる。30 年余りの観測をまとめた Weisberg・Nice・Taylor の値は、Pb=0.322997448911 P_{\mathrm b}=0.322997448911\,日(約 7.75 時間)、e=0.6171334e=0.6171334、m1=1.4398 M⊙m_1=1.4398\,M_\odot、m2=1.3886 M⊙m_2=1.3886\,M_\odot で、銀河の中での加速度による見かけの変化を補正した周期の変化率は P˙b=(−2.396±0.005)×10−12\dot P_{\mathrm b}=(-2.396\pm0.005)\times10^{-12} である(J. M. Weisberg, D. J. Nice and J. H. Taylor(2010)、Astrophys. J. 722、1030)。

例題 2.18.6 Hulse–Taylor の周期の減少を四重極公式で出す ★★★

オリジナル上の値と GM⊙/c3=4.925×10−6 sGM_\odot/c^3=4.925\times10^{-6}\,\mathrm s を使う。

  1. (1) 離心率の補正因子 f(e)f(e) を求めよ。
  2. (2) (2.18.31) で P˙b\dot P_{\mathrm b} を計算し、観測値と比べよ。
  3. (3) 公転周期が一定だった場合に比べた近星点を通る時刻の累積のずれが、時間 tt のあいだに P˙b2Pbt2\frac{\dot P_{\mathrm b}}{2P_{\mathrm b}}t^2 になることを示し、30 年でのずれを求めよ。
解答

(1) e2=0.38086e^2=0.38086 なので分子は 1+7324(0.38086)+3796(0.38086)2=2.21431+\frac{73}{24}(0.38086)+\frac{37}{96}(0.38086)^2=2.2143、分母は (1−0.38086)7/2=0.18675(1-0.38086)^{7/2}=0.18675、f(e)=11.86f(e)=11.86 である。離心率のため、同じ周期の円軌道より約 12 倍強く放射している。

(2) (2.18.31) は GG と質量を GM⊙/c3GM_\odot/c^3 の組で書くと P˙b=−192π5(2πPbGM⊙c3)5/3(m1/M⊙)(m2/M⊙)(M/M⊙)1/3f(e)\dot P_{\mathrm b}=-\frac{192\pi}{5}\bigl(\frac{2\pi}{P_{\mathrm b}}\frac{GM_\odot}{c^3}\bigr)^{5/3}\frac{(m_1/M_\odot)(m_2/M_\odot)}{(M/M_\odot)^{1/3}}f(e) となる(c5c^5 がちょうど (GM⊙/c3)5/3(GM_\odot/c^3)^{5/3} にまとまる)。Pb=2.7907×104 sP_{\mathrm b}=2.7907\times10^4\,\mathrm s を入れると P˙b=−2.40×10−12\dot P_{\mathrm b}=-2.40\times10^{-12} で、観測値との比は 0.9970.997 である。論文の誤差(比で ±0.002\pm0.002)の範囲で一致する。

(3) 第 nn 周の周期は Pb+nP˙bPbP_{\mathrm b}+n\dot P_{\mathrm b}P_{\mathrm b} なので、NN 周の時刻の和は一定周期の場合より ∑n<NnP˙bPb≈12N2P˙bPb\sum_{n<N}n\dot P_{\mathrm b}P_{\mathrm b}\approx\frac12N^2\dot P_{\mathrm b}P_{\mathrm b} だけずれる。N=t/PbN=t/P_{\mathrm b} を入れると P˙b2Pbt2\frac{\dot P_{\mathrm b}}{2P_{\mathrm b}}t^2 である。t=30t=30 年 =9.47×108 s=9.47\times10^8\,\mathrm s で −2.40×10−122×2.7907×104 s×(9.47×108 s)2=−38.6 s\frac{-2.40\times10^{-12}}{2\times2.7907\times10^4\,\mathrm s}\times(9.47\times10^8\,\mathrm s)^2=-38.6\,\mathrm s になる(図 2.18.2)。周期の変化率は 10−1210^{-12} と小さくても、ずれは時間の2乗で積み上がるので、数十年で数十秒という測れる大きさになる。

図

図 2.18.2 PSR B1913+16 で、公転周期が四重極公式 (2.18.31) の速さで減るときの近星点を通る時刻の累積のずれ(例題 2.18.6)。曲線は計算した予言で、観測の点は描いていない。Weisberg ら(2010)は観測された到着時刻がこの放物線に 0.3% の精度で乗ることを報告している

チャープとチャープ質量

(2.18.29) を重力波の周波数 f=Ω/πf=\Omega/\pi で書き直す。Ω2=GM/a3\Omega^2=GM/a^3 から a=(GM/(πf)2)1/3a=(GM/(\pi f)^2)^{1/3} を入れると、質量は

M≔(m1m2)3/5M1/5=mr3/5M2/5(2.18.32)\mathcal M\coloneqq\frac{(m_1m_2)^{3/5}}{M^{1/5}}=m_{\mathrm r}^{3/5}M^{2/5}\tag{2.18.32}

という1つの組み合わせでしか現れず、

dfdt=965π8/3(GMc3)5/3f11/3,τ(f)=5256(GMc3)−5/3(πf)−8/3=38ff˙(2.18.33)\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d} t}=\frac{96}{5}\pi^{8/3}\Bigl(\frac{G\mathcal M}{c^3}\Bigr)^{5/3}f^{11/3},\qquad \tau(f)=\frac{5}{256}\Bigl(\frac{G\mathcal M}{c^3}\Bigr)^{-5/3}(\pi f)^{-8/3}=\frac38\frac{f}{\dot f}\tag{2.18.33}

になる。τ(f)\tau(f) は周波数 ff から合体までの時間である。M\mathcal M をチャープ質量と呼ぶ。周波数とその変化率を測れば、距離も軌道の傾きも知らずに M\mathcal M が決まる。f˙∝f11/3\dot f\propto f^{11/3} なので、合体が近づくほど周波数も振幅も急に上がる(図 2.18.3)。この「さえずり」に似た信号をチャープと呼ぶ。振幅は軸上で

h0=4c4r(GM)5/3(πf)2/3(2.18.34)h_0=\frac{4}{c^4r}(G\mathcal M)^{5/3}(\pi f)^{2/3}\tag{2.18.34}

である(総合問題 (2) で導く)。

2015 年 9 月 14 日に LIGO の2台の検出器は、周波数が 35 Hz から 250 Hz まで上がるチャープを観測し、ひずみの最大は 1.0×10−211.0\times10^{-21} だった。信号は質量 36 M⊙36\,M_\odot と 29 M⊙29\,M_\odot のブラックホールの合体で説明され、検出器の座標で読んだチャープ質量は約 30 M⊙30\,M_\odot、距離は 410 Mpc(赤方偏移 z=0.09z=0.09)、重力波として放出されたエネルギーは 3.0 M⊙c23.0\,M_\odot c^2 である(B. P. Abbott et al.(LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration)(2016)、Phys. Rev. Lett. 116、061102)。

図

図 2.18.3 チャープ質量 30 M⊙30\,M_\odot の連星の重力波の周波数を、式 (2.18.33) の τ(f)\tau(f) を逆に解いて描いたもの(実線は四重極公式と円軌道の近似)。35 Hz から合体まで約 0.17 s で、周波数は終わりに近づくほど急に上がる。合体の直前(f≳100 Hzf\gtrsim100\,\mathrm{Hz})では速さが光速に近づき、この近似は成り立たなくなる

例題 2.18.7 周波数とその変化率からチャープ質量を読む ★★★

オリジナル

  1. (1) 質量 36 M⊙36\,M_\odot と 29 M⊙29\,M_\odot の連星のチャープ質量を求めよ。検出器では周波数が (1+z)(1+z) 分の1に下がって届き、時間は (1+z)(1+z) 倍に伸びるので、検出器で読むチャープ質量は (1+z)M(1+z)\mathcal M になる。z=0.09z=0.09 として検出器で読む値を求めよ。
  2. (2) ある信号で、f=100 Hzf=100\,\mathrm{Hz} のときに f˙=3.6×103 Hz s−1\dot f=3.6\times10^3\,\mathrm{Hz\,s^{-1}} が測れたとする。(2.18.33) から M\mathcal M を求めよ。
  3. (3) M=30 M⊙\mathcal M=30\,M_\odot として、35 Hz から合体までの時間 τ\tau を求めよ。
  4. (4) M=28.1 M⊙\mathcal M=28.1\,M_\odot、r=410 Mpcr=410\,\mathrm{Mpc}、f=100 Hzf=100\,\mathrm{Hz} で振幅 (2.18.34) を見積もり、観測の最大のひずみ 1.0×10−211.0\times10^{-21} と比べよ(1 Mpc=3.086×1022 m1\,\mathrm{Mpc}=3.086\times10^{22}\,\mathrm m)。
解答

(1) M=(36×29)3/5/651/5 M⊙=64.74/2.305 M⊙=28.1 M⊙\mathcal M=(36\times29)^{3/5}/65^{1/5}\,M_\odot=64.74/2.305\,M_\odot=28.1\,M_\odot。検出器では 1.09×28.1=30.6 M⊙1.09\times28.1=30.6\,M_\odot で、論文の「約 30 M⊙30\,M_\odot」と合う。

(2) (2.18.33) を解くと GMc3=(596π−8/3f−11/3f˙)3/5\frac{G\mathcal M}{c^3}=\bigl(\frac{5}{96}\pi^{-8/3}f^{-11/3}\dot f\bigr)^{3/5}。数値を入れると 1.474×10−4 s1.474\times10^{-4}\,\mathrm s で、GM⊙/c3=4.925×10−6 sGM_\odot/c^3=4.925\times10^{-6}\,\mathrm s で割って M=29.9 M⊙\mathcal M=29.9\,M_\odot。

(3) GM/c3=30×4.925×10−6 s=1.478×10−4 sG\mathcal M/c^3=30\times4.925\times10^{-6}\,\mathrm s=1.478\times10^{-4}\,\mathrm s、πf=110.0 s−1\pi f=110.0\,\mathrm{s^{-1}} を (2.18.33) の τ\tau に入れて τ=0.17 s\tau=0.17\,\mathrm s。観測された信号の長さ(約 0.2 s)と同じ桁である。

(4) GM=28.1×1.327×1020 m3 s−2G\mathcal M=28.1\times1.327\times10^{20}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}} などを入れると h0≈1.6×10−21h_0\approx1.6\times10^{-21}。観測の最大値 1.0×10−211.0\times10^{-21} と同じ桁になる。(2.18.34) は軌道面に垂直に見たときの値で、実際には軌道の傾きと、検出器の腕の向きに対する波の来る向き(2.18.3節の例題で見た偏極の感度)の分だけ小さく見える。距離 1025 m10^{25}\,\mathrm m の先のブラックホールの合体が、地上の 4 km の腕を 10−18 m10^{-18}\,\mathrm m 程度だけ伸び縮みさせたことになる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ∣P˙b∣→0\lvert \dot P_{\mathrm b}\rvert \to0(1周期あたりの軌道の変化が小さく、各時刻で円軌道とみなせる) | 証明 要確認(軌道の平均化の前提を原論文で確かめていない。合体の直前では成り立たない) | 行き先 近似の数理 第7章

木下の勉強ステータス

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