解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第18章 §2.18.6 ★★ 電磁気の Lorenz ゲージの波動方程式と双極子放射・Newton のポテンシャルが、この章の式のどこに当たるかを並べる
波動方程式とゲージ
解析力学を使わない電磁気の授業では、ポテンシャルに Lorenz 条件を課して
(c21∂t2∂2−∇2)ϕ=ε0ρ,(c21∂t2∂2−∇2)A=μ0J,c21∂t∂ϕ+∇⋅A=0
と書く。共変形では □Aμ=μ0Jμ、∂μAμ=0 である。この章の (2.18.14) と (2.18.13) は
□hˉμν=−c416πGTμν,∂μhˉμν=0
で、1本の添字が2本に、4元電流 Jμ がエネルギー運動量テンソル Tμν に替わった形をしている。右辺の符号が電磁気と逆なのは、2.18.1節で第2部第15章の式 (2.15.21) から見たとおり、静的な場の項 −(∇Φ)2/(8πG) の符号が静電場と逆であることと同じで、同じ符号の源が引き合うことに対応する。電磁気の遅延ポテンシャル ϕ=4πε01∫∣x−x′∣ρ(tr)d3x′ が (2.18.23) に当たる。
双極子放射が無い理由
授業の電磁波の放射では、電気双極子モーメント p=∑qx の2階微分で放射の仕事率が決まる(Larmor の式 P=6πcμ0∣p¨∣2。第2部第9章)。重力で同じことをすると、質量の双極子モーメント ∑mx の2階微分は全運動量の時間微分で、運動量の保存によって 0 になる。磁気双極子に当たる ∑mx×x˙ は全角運動量で、これも保存する。重力で最初に残る放射が四重極になるのは、源の運動量と角運動量の保存(第1部第10章の Noether の定理)による。四重極放射の仕事率は双極子より (v/c)2 だけ小さく、c−5 が付くのはそのためである。
Newton のポテンシャル
授業の Newton の重力は ∇2Φ=4πGρ と x¨=−∇Φ で書かれる。この章の式では、静的な (2.18.14) の 00 成分が Poisson 方程式で、解 hˉ00=4Φ/c2 が Newton のポテンシャルにあたる(2.18.2節)。運動方程式の側は、第2部第12章で示したとおり測地線方程式の Γi00=∂iΦ/c2 から出る。Newton の重力では、ポテンシャルは瞬時に遠くへ伝わる。□ の時間微分の項を落として −∇2 だけにしたものが Newton の理論で、時間微分の項を戻すと重力の変化は速さ c の波として伝わる。
例題 2.18.8 hˉ00 だけから計量全体を出し、光の曲がり方を読む ★★
オリジナル静的な源のまわりで、調和ゲージの解が hˉ00=4Φ/c2、他の成分 0 だったとする。
- (1) (2.18.10) を逆に解いて hμν を求め、g00 と gij が記法の正本 §4 の弱い場の形になることを確かめよ。
- (2) 光の進む道 ds=0 から光の座標の速さを Φ/c2 の1次まで求め、光にとっての実効的な屈折率 n を求めよ。gij の補正を落として g00 だけを使うと n はどう変わるか。
解答
(1) hˉ=η00hˉ00=4Φ/c2、h=−hˉ なので hμν=hˉμν−21ημνhˉ。h00=4Φ/c2−2Φ/c2=2Φ/c2、hij=0−21(−δij)(4Φ/c2)=2Φδij/c2 である。したがって g00=1+2Φ/c2、gij=−(1−2Φ/c2)δij で、正本の形になる。gij にも補正が入ることが、g00 だけを見る Newton の極限には現れない部分である。
(2) ds2=(1+2Φ/c2)c2dt2−(1−2Φ/c2)∣dx∣2=0 から ∣dx/dt∣=c(1+2Φ/c2)/(1−2Φ/c2)=c(1+2Φ/c2)+O(Φ2/c4)。Φ<0 なので座標の速さは c より遅く、屈折率は n=1−2Φ/c2(>1)である。gij の補正を落とすと n=1−Φ/c2 で、屈折率のずれが半分になる。第2部第10章の Fermat の原理で光の曲がる角を計算すると曲がり角は n−1 に比例するので、gij を入れた一般相対論の曲がり角は g00 だけの計算の2倍になる。これが第2部第16章の太陽による光の曲がり 1.75″ の「2倍」の由来である。gij の補正の係数が g00 と同じ Φ になること(Φ=Ψ)は第2部第15章の例題 2.15.6、屈折率 n=1−2Φ/c2 は第2部第12章の式 (2.12.19) と一致する。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com