解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第18章 §2.18.2 ★★★ 調和ゲージで方程式は波動方程式になり、拘束4本とゲージ4つを引くと10成分のうち動く自由度は2つ
跡を反転した場と調和ゲージ
式 (2.18.4) は項が多いので、跡を反転した場
hˉμν:=hμν−21ημνh(hˉ:=ημνhˉμν=−h)(2.18.10)
を使う。Dν:=∂μhˉμν と書くと、(2.18.4) は
Gμν(1)=−21□hˉμν+21(∂μDν+∂νDμ)−21ημν∂ρDρ(2.18.11)
と書き直せる。ゲージ変換 (2.18.8) で Dν は
Dν ⟶ Dν−□ξν(2.18.12)
と変わる。したがって □ξν=Dν を解いて ξν を選べば、いつでも
∂μhˉμν=0(2.18.13)
にできる。これを調和ゲージ(de Donder ゲージ、または Lorenz ゲージ)と呼ぶ。電磁気の Lorenz ゲージ ∂μAμ=0 が □Λ=∂μAμ を解いて実現できたのと同じ手順である。調和ゲージでは (2.18.11) の後ろの2項が消え、線形化した Einstein 方程式は
□hˉμν=−c416πGTμν(2.18.14)
という、成分ごとに独立な10本の波動方程式になる(この本の流儀。(−,+,+,+) では □ と hˉ の符号がそろって変わり、同じ式になる)。右辺の符号は静的な場合で確かめられる。□→−∇2、T00=ρc2 で ∇2hˉ00=16πGρ/c2 となり、hˉ00=4Φ/c2 と置けば Poisson 方程式 ∇2Φ=4πGρ になる。真空では □hˉμν=0 で、重力の擾乱は光の速さ c で伝わる。
自由度を数える
hμν は対称なので成分は10個ある。そのうち波として伝わるのがいくつかを、第2部第8章で Aμ に対して行ったのと同じ手順で数える。
第一に、方程式 (2.18.7) のうち μ=0 の4本 G0ν(1)=c48πGT0ν は、どの hμν の時間の2階微分も含まない(検算 verify で確かめた)。2次の作用を部分積分で整理すると h0μ の時間微分は作用から除けて、h0μ は電磁気の ϕ と同じく未定乗数の役をする(第1部第6章)。この4本は「初期値が満たすべき条件」すなわち拘束で、電磁気の Gauss の法則に当たる。第二に、ゲージ変換 (2.18.8) は任意関数を4つ含む。調和ゲージ (2.18.13) を課した後にも、□ξν=0 を満たす ξν の分だけ変換の自由が残る。
電磁気では 4−1(拘束)−1(ゲージ)=2 だった。ここでは
10−4 (拘束)−4 (ゲージ)=2(2.18.15)
が各波数ごとに動く自由度の数になる。この2つが次の節の h+ と h× である。
例題 2.18.2 座標の揺れだけでできた「見かけの波」 ★★
オリジナル定数 ϵμ と波数 k>0 を使って ξμ=ϵμsin(k(x0−z)) とし、平坦な時空 hμν=0 からゲージ変換 (2.18.8) でhμν=−∂μξν−∂νξμ を作る。
- (1) h00 と h33 を求め、これが z 方向に光速で進む波の形をしていることを確かめよ。
- (2) この hμν の1次の Riemann テンソルが恒等的に 0 であることを示し、自由落下する質点の相対運動に何も起こらないことを説明せよ。
解答
(1) ∂0sin(k(x0−z))=kcos(⋅)、∂3sin(⋅)=−kcos(⋅) である。h00=−2∂0ξ0=−2kϵ0cos(k(x0−z))、h33=−2∂3ξ3=2kϵ3cos(k(x0−z))。どちらも x0−z=ct−z だけの関数なので、+z 方向に速さ c で進む波の形をしている。
(2) 1次の Riemann テンソルはゲージ変換 (2.18.8) で変わらない(2.18.1節)。hμν=0 の Riemann テンソルは 0 なので、そのゲージ変換であるこの hμν の Riemann テンソルも 0 である(verify で成分を直接計算して確かめた)。自由落下する2つの質点の間隔の加速度は測地線偏差の方程式で Riemann テンソルに比例するので(第2部第14章)、質点の相対運動には何も起こらない。この「波」は座標の目盛りを時刻と場所で揺らしただけのもので、hμν の成分が 0 でないことだけでは重力波があるとは言えない。2.18.2節の数え方で落とした4つのゲージの自由度が、まさにこの種類の見かけの波である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com