解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第6章 §3.6.2 ★★★ ⟨za∂H/∂zb⟩=δabkBT は部分積分1回で出る。H が2次式でなくても成り立つ
カノニカル分布と分配関数
温度 T の熱浴に接した系は、カノニカル分布
ρ(z)=Ze−βH(z),Z=∫e−βH(z)hfdfqdfp,β=kBT1(3.6.7)
に従う(第3部第3章)。ρ は dfqdfp/hf に対する確率密度である。振動子は格子点や分子の中の決まった位置に結び付いていて区別できるので、1/N! の因子は付けない。平均エネルギーと比熱は Z から
⟨H⟩=−∂β∂lnZ,C=∂T∂⟨H⟩(3.6.8)
で求まる。第1式は −∂βlnZ=∫He−βH/Z から出る。
1つの調和振動子 H=p2/(2m)+mω2q2/2 の分配関数は、第3部第3章の例題 3.3.1 で q と p の Gauss 積分から求めた
Z=βωh2π=ℏωkBT(3.6.9)
である。⟨H⟩=−∂βlnZ=1/β=kBT で、m にも ω にもよらない。同じ Z は作用角変数でも求まる。第1部第14章のとおり調和振動子は H=ωJ で、(θ,J) は正準変数なので dqdp=dθdJ である(第1部第14章)。H は θ によらないので、
Z=h1∫02πdθ∫0∞dJe−βωJ=hβω2π(3.6.10)
となり、式 (3.6.9) と一致する。作用角変数で書くと、カノニカル分布のもとで J が平均 kBT/ω の指数分布に従い、θ が一様に分布することが直接読める。Z は「H≤kBT の楕円の面積 2πkBT/ω に升目 h がいくつ入るか」の数でもある。
一般化された等分配定理
カノニカル分布の平均について、次の定理が成り立つ。
定理 3.6.1(一般化された等分配定理 ★★★)
相空間の変数 za, zb(座標でも運動量でもよい)について、zb を積分範囲の両端へ送ったとき zae−βH→0 となるなら、
⟨za∂zb∂H⟩=δabkBT.(3.6.11)
証明
∂zb∂He−βH=−kBT∂zb∂e−βH を使い、zb について部分積分する。
∫za∂zb∂He−βHd2fz=−kBT∫za∂zb∂e−βHd2fz=−kBT[zae−βH]zb の両端+kBT∫∂zb∂zae−βHd2fz.
端の項は仮定から 0 で、∂za/∂zb=δab である。両辺を ∫e−βHd2fz で割れば式 (3.6.11) を得る。
証明では、e−βH の微分を H の微分で書く式と、部分積分の端の項が消えることの2つだけを使った。H が2次式であることは使っていない。端の項の条件は、運動量では p→±∞ で H→∞ となることから満たされる。座標では、q→±∞ で V→∞ となるか、容器の壁で V が無限に高くなれば満たされる。壁がある場合については 3.6.3節で圧力を出すときに使う。
a=b のとき、式 (3.6.11) は「za と ∂H/∂za の積の平均は、どの変数についても kBT」という意味になる。運動量 pi では pi∂H/∂pi=pi2/mi なので ⟨pi2/(2mi)⟩=21kBT である。これは V の形によらない。液体の中でも固体の中でも、古典論では1粒子の運動エネルギーの平均は 23kBT である。a=b のときは平均が 0 で、たとえば ⟨q1∂H/∂q2⟩=0 である。
例題 3.6.2 2次でないポテンシャル ★★
オリジナル1自由度の粒子が H=p2/(2m)+λ∣q∣n(λ>0、n>0)に従い、温度 T のカノニカル分布にある。
- (1) 定理 3.6.1 を使って、⟨λ∣q∣n⟩ を求めよ。
- (2) Z の温度依存性 Z∝T1/2+1/n を示し、それから ⟨H⟩ を求めて (1) と合うことを確かめよ。
- (3) n=4 のとき、1粒子あたりの比熱は kB の何倍か。
解答
(1) q∂H/∂q=q⋅nλ∣q∣n−1sgnq=nλ∣q∣n なので、定理から n⟨λ∣q∣n⟩=kBT、すなわち ⟨λ∣q∣n⟩=kBT/n。q→±∞ で λ∣q∣n→∞ なので端の項は消える。n=2 で調和振動子の 21kBT に戻る。
(2) p の積分は 2πmkBT。q の積分は s=(βλ)1/nq と置くと ∫e−βλ∣q∣ndq=(βλ)−1/n∫e−∣s∣nds で、∫e−∣s∣nds=2Γ(1+1/n) は温度によらない定数である。したがって Z∝β−1/2β−1/n=β−(1/2+1/n) で、⟨H⟩=−∂βlnZ=(21+n1)kBT。運動エネルギーの 21kBT と (1) の kBT/n の和になっている。
(3) n=4 では ⟨H⟩=43kBT で、比熱は 43kB。4次のポテンシャルは2次より壁が急なので、同じ温度で入るエネルギーが少ない。
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