解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第6章 §3.6.3 ★★★ H に現れる独立な2次の項1つごとに平均 21kBT。気体・分子・固体の比熱がこの数え上げで出る
等分配則
H が基準座標で式 (3.6.6) の形に書けるとき、定理 3.6.1 を za=zb=Pk と za=zb=Qk に当てると
⟨2Pk2⟩=21kBT,⟨2ωk2Qk2⟩=21kBT(3.6.12)
を得る。ωk=0 のモードは位置エネルギーの項を持たないので、運動量の 21kBT だけが入る。一般に、H が
H=r=1∑νarxr2+(x1,…,xν を含まない部分)(ar>0)(3.6.13)
と書けるなら、各 arxr2 の平均は 21kBT で、⟨H⟩ のうち2次の項の部分は 2νkBT になる。これが等分配則である。ここで ν は H に現れる独立な2次の項の数で、自由度 f とは別の数である。調和振動子1つは f=1 だが ν=2 を持つ。等分配則によれば、エネルギーは「自由度1つあたり」でなく「2次の項1つあたり」21kBT ずつ分けられる。温度は相空間のどの2次の方向にも同じ重みでエネルギーを配るので、振動子の硬さ ωk や質量にはよらない。
比熱は ⟨H⟩ を T で微分して C=2νkB で、温度によらない定数になる。古典統計力学で2次の H を選ぶと、比熱は2次の項を数えるだけで決まる。
気体・分子・固体の比熱
単原子の理想気体では、N 個の粒子の H は運動量の2次の項 3N 個と壁のポテンシャルだけからなる。ν=3N で、⟨H⟩=23NkBT、定積比熱は CV=23NkB、1mol あたり 23R である。
分子の気体では、1分子の中の na 個の原子核の 3na 自由度を、重心の並進3・回転・振動に分ける。直線分子の回転は2自由度、折れ線の分子では3自由度で、回転は運動量の2次の項(角運動量の2乗を慣性モーメントで割ったもの)だけを持つ。残りの 3na−5(直線)または 3na−6(折れ線)が振動の基準モードで、1つあたり2次の項が2つある。二原子分子なら並進 3、回転 2、振動 1×2 で ν=7、1分子あたり 27kBT である。ところが室温の窒素や酸素の定積モル比熱は 25R に近く、振動の分が入っていないように見える。古典論の範囲ではこの食い違いを説明することができない。理由は 3.6.5節で分かる。
固体では、N 個の原子が格子点のまわりで振動し、平衡の近くで H は式 (3.6.3) の形になる。3N 自由度のうち結晶全体の並進と回転の6つを除いた 3N−6≈3N 個が振動の基準モードで、ν=6N、⟨H⟩=3NkBT、C=3NkB である。1mol あたり 3R=24.9Jmol−1K−1 で、物質によらない。これが Dulong–Petit の法則である。多くの金属は室温でこの値に近いが、ダイヤモンドのように軽い原子が硬く結合した固体では室温でも 3R よりずっと小さく、低温ではどの固体でも比熱は 0 へ下がる。この食い違いも古典論では説明することができない。
空洞の放射:モードが無限にある
空洞の中の電磁場も、第2部第6章 の Lagrangian 密度から出発すると、各波数 k と偏光の向きのモードごとに独立な調和振動子 21(Pk2+ωk2Qk2)、ωk=c∣k∣ の集まりになる(第5部第3章 で場を量子化するときに同じ分け方を使う)。1辺 a の立方体(体積 V=a3)に周期境界条件を置くと、許される波数は k=(2π/a)(nx,ny,nz) で、波数空間の体積 (2π)3/V に1つずつ並ぶ。∣k∣<ω/c の球の中の点の数に偏光の2を掛けると、角振動数が ω より小さいモードの数は
N(ω)=2⋅34π(cω)3(2π)3V=3π2c3Vω3,dωdN=π2c3Vω2(3.6.14)
である。各モードに等分配則で kBT を入れると、単位体積・単位角振動数あたりのエネルギー密度は
u(ω)=π2c3ω2kBT(3.6.15)
になる。これを Rayleigh–Jeans の式と呼ぶ。低い振動数では実験と合うが、u(ω) は ω2 で増え続けるので、全エネルギー ∫0∞u(ω)dω は発散する。固体では原子の数で決まる 3N 個でモードの数が止まるが、場には上限が無い。等分配則をそのまま場に当てると、有限の温度の空洞が無限のエネルギーを持つことになる。
壁のある気体の圧力
定理 3.6.1 は座標にも使える。容器に閉じ込めた N 個の粒子の理想気体で、壁のポテンシャル Uw(r) が容器の中で 0、壁の外で無限大になるとする。∑a⟨ra⋅∇aH⟩=3NkBT で、理想気体では ∇aH=∇aUw は壁が粒子を押し返す力 Fa の符号を変えたものである。壁が気体に及ぼす力は、面積要素 dS(外向き)あたり −PdS なので、∑a⟨ra⋅Fa⟩=−P∮r⋅dS=−P∫∇⋅rd3r=−3PV である。これを入れると
3PV=3NkBT,PV=NkBT(3.6.16)
を得る。壁を急に立ち上がる滑らかなポテンシャル λ(x/a)n(n が大きい)とみなせば、端の項が消える条件は満たされる。粒子の間に力があれば、その分 ∑⟨ra⋅∇aU⟩ の項が加わり、状態方程式の補正(ビリアル展開)になる。
例題 3.6.3 2次の項を数える ★★
オリジナル古典の等分配則が成り立つとして、次の分子1つの平均エネルギー(重心の並進を含む)を kBT を単位に求めよ。
- (1) 二原子分子。
- (2) 直線3原子分子(CO2 型)と折れ線3原子分子(H2O 型)。
- (3) 原子 na 個の直線分子と折れ線分子の一般式。
- (4) 振動をまったく考えない(原子どうしの距離を固定した)ときの (1)・(2) の値。
解答
並進は運動量の2次の項3つで 23、回転は直線で2つ・折れ線で3つの運動量の2次の項で 1 と 23、振動は1モードあたり2次の項2つで 1 である。
(1) 23+1+1×(3⋅2−5)=27。
(2) 直線:23+1+(9−5)=213。折れ線:23+23+(9−6)=6。
(3) 直線:23+1+(3na−5)=3na−25。折れ線:23+23+(3na−6)=3na−3。振動のモードは1つあたり2次の項を2つ持ち、並進と回転は1自由度あたり1つしか持たないので、原子1つで 3 ずつ増え、3na から一定の数を引いた形になる。
(4) 振動の項を除くと、二原子分子は 25、直線3原子は 25、折れ線3原子は 3。室温の二原子分子の気体の比熱が 25R に近いことは、振動の項だけが働いていないとすれば説明することができる。なぜ振動だけが外れるのかは古典論の外の問題である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com