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出てくるもの (2):座標とエネルギーの揺らぎ

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第6章 等分配則と調和振動子の集まり
目次
  1. 座標の揺らぎは質量によらない
  2. エネルギーの揺らぎは比熱で決まる
  3. エネルギーを固定しても同じ温度になる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第6章 §3.6.4 ★★ 熱で揺れる座標の2乗平均は kBTk_{\mathrm B} T をばね定数で割ったもの。エネルギーの揺らぎは比熱で決まり、NN 個の振動子で相対的に 1/N1/\sqrt N に縮む

座標の揺らぎは質量によらない

式 (3.6.12) から、基準座標の2乗平均は ⟨Qk2⟩=kBT/ωk2\langle Q_k^2 \rangle = k_{\mathrm B} T/\omega_k^2 である。元の座標に戻すと、カノニカル分布の座標の部分は e−β12qTKq\mathrm{e}^{-\beta\frac12q^{\mathsf T}Kq} で、運動量と分かれている。これは平均 00・共分散行列 kBT K−1k_{\mathrm B} T\,K^{-1} の正規分布なので、

⟨qiqj⟩=kBT (K−1)ij(3.6.17)\langle q_iq_j \rangle = k_{\mathrm B} T\,(K^{-1})_{ij}\tag{3.6.17}

である。質量 mim_i は式に入らない。熱で揺れる座標の分布は位置エネルギーだけで決まり、重いか軽いかは揺れの速さを変えるだけで揺れの大きさを変えない。基準振動の振動数は質量で決まるので、基準座標を使うと途中に質量が出てくるが、最後には消える(例題 3.6.1 の系で ⟨q12⟩\langle q_1^2 \rangle を2通りに計算すると確かめられる。総合問題でも同じことを使う)。

1つの座標だけを見るなら、ばね定数 kk のばねにつながれた物体の変位 qq について

12k⟨q2⟩=12kBT,⟨q2⟩=kBTk(3.6.18)\frac12k\langle q^2 \rangle =\frac12 k_{\mathrm B} T,\qquad \sqrt{\langle q^2 \rangle }=\sqrt{\frac{ k_{\mathrm B} T}{k}}\tag{3.6.18}

である。軟らかいばねほど大きく揺れる。精密な力の測定で、この熱による揺れが測定できる最小の変位の目安になる。

例題 3.6.4 板ばねの熱揺らぎ ★★

オリジナル原子間力顕微鏡などで使う細い板ばねを、先端の変位 zz について1自由度の調和振動子 12ksz2\frac12k_{\mathrm s}z^2 とみなす(ksk_{\mathrm s} は先端のばね定数)。温度 300 K300\,\mathrm K とし、kB=1.380649×10−23 J K−1k_{\mathrm B}=1.380649\times10^{-23}\,\mathrm{J\,K^{-1}} を使う。

  1. (1) ks=0.1 N m−1k_{\mathrm s}=0.1\,\mathrm{N\,m^{-1}} のとき、先端の熱揺らぎ ⟨z2⟩\sqrt{\langle z^2 \rangle } を求めよ。
  2. (2) ks=10 N m−1k_{\mathrm s}=10\,\mathrm{N\,m^{-1}} ではどうか。
  3. (3) 板ばねを同じ形のまま密度の大きい材料で作り直し、ばね定数は変えずに質量だけを4倍にした。(1) の値と、揺れの角振動数はそれぞれどう変わるか。
解答

(1) kBT=1.380649×10−23×300=4.14×10−21 Jk_{\mathrm B} T=1.380649\times10^{-23}\times300=4.14\times10^{-21}\,\mathrm J で、式 (3.6.18) から⟨z2⟩=4.14×10−21/0.1=2.04×10−10 m=0.204 nm\sqrt{\langle z^2 \rangle }=\sqrt{4.14\times10^{-21}/0.1}=2.04\times10^{-10}\,\mathrm m=0.204\,\mathrm{nm}。原子の大きさと同じくらいである。

(2) ばね定数が 100100 倍なので揺れは 1/101/10 倍で、2.04×10−11 m=0.0204 nm2.04\times10^{-11}\,\mathrm m=0.0204\,\mathrm{nm}。

(3) ⟨z2⟩\sqrt{\langle z^2 \rangle } は ksk_{\mathrm s} と TT だけで決まるので変わらない。角振動数 ks/m\sqrt{k_{\mathrm s}/m} は 1/21/2 倍になる。揺れの大きさは同じで、ゆっくり揺れるようになる。

エネルギーの揺らぎは比熱で決まる

系の全エネルギー HH もカノニカル分布のもとで揺らぐ。その分散は、第3部第3章の式 (3.3.17) で ln⁡Z\ln Z を β\beta で2回微分して求めた

⟨(ΔH)2⟩=∂2ln⁡Z∂β2=kBT2C(3.6.19)\langle (\Delta H)^2 \rangle =\frac{\partial^2\ln Z}{\partial\beta^2}= k_{\mathrm B} T^2C\tag{3.6.19}

である。比熱が大きい系ほどエネルギーが大きく揺らぐ。

NN 個の古典の調和振動子では、各振動子のエネルギーは独立に、平均 kBTk_{\mathrm B} T の指数分布 βe−βε\beta\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon } に従う(式 (3.6.10) の JJ の分布を ε=ωJ\varepsilon =\omega J に直したもの)。独立な指数分布の和の分布は Gamma 分布で、全エネルギー EE の確率密度は

PN(E)=βNEN−1(N−1)!e−βE(3.6.20)P_N(E)=\frac{\beta^NE^{N-1}}{(N-1)!}\mathrm{e}^{-\beta E}\tag{3.6.20}

である。平均は NkBTN k_{\mathrm B} T、分散は N(kBT)2N( k_{\mathrm B} T)^2 で、C=NkBC=N k_{\mathrm B} を入れた式 (3.6.19) と一致する。相対的な揺らぎ ⟨(ΔH)2⟩/⟨H⟩=1/N\sqrt{\langle (\Delta H)^2 \rangle }/\langle H \rangle =1/\sqrt N は NN が大きいと小さくなり、N=1022N=10^{22} なら 10−1110^{-11} である。図 3.6.1 のとおり、NN を増やすと E/(NkBT)E/(N k_{\mathrm B} T) の分布は 11 のまわりに鋭く集まる。

図

図 3.6.1 NN 個の古典の調和振動子の全エネルギー EE の分布(式 (3.6.20)、横軸は E/(NkBT)E/(N k_{\mathrm B} T))。N=1N=1(灰)は指数分布、N=4N=4(青)、N=16N=16(赤)。平均はどれも 11 で、幅は 1/N1/\sqrt N で縮む。

エネルギーを固定しても同じ温度になる

同じ NN 個の振動子を、エネルギーが EE に固定された孤立系として扱っても、等分配則は同じ形で出る。振動子の角振動数がすべて ω\omega に等しいとき、H≤EH\le E の相空間の体積は、第3部第2章の3.2.7節の総合問題 (1) で求めたとおり

∫H≤EdNq dNp=1N!(2πEω)N(3.6.21)\int_{H\le E}\mathrm{d}^Nq\,\mathrm{d}^Np=\frac1{N!}\Bigl(\frac{2\pi E}{\omega}\Bigr)^N\tag{3.6.21}

で、hNh^N で割ると Φ(E)=1N!(E/ℏω)N\Phi(E)=\frac1{N!}(E/\hbar\omega)^N である。同じ総合問題の (2) で、S=kBln⁡ΦS= k_{\mathrm B}\ln\Phi から E=NkBTE=N k_{\mathrm B} T を得た。ミクロカノニカル分布でも、エネルギー EE の系の温度を E/(NkB)E/(N k_{\mathrm B}) と読むと振動子1つあたり kBTk_{\mathrm B} T になり、カノニカル分布と同じ結論になる。式 (3.6.20) の EN−1E^{N-1} は、この体積を EE で微分したもの(エネルギーが EE と E+dEE+\mathrm{d} E の間にある状態の数)に比例し、それに e−βE\mathrm{e}^{-\beta E} を掛けたものがカノニカル分布でのエネルギーの分布になっている。

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