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出てくるもの3:緩和時間近似と電気伝導

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第8章 Liouville に衝突を足すと Boltzmann 方程式
目次
  1. 衝突の項を緩和で置き換える
  2. 電気伝導度
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第8章 §3.8.5 ★★★ 衝突の項を −(f−f0)/τ-(f-f_0)/\tau に置き換えると Boltzmann 方程式は線形になり、電気伝導度 σij=e2τn⟨(m∗−1)ij⟩\sigma_{ij}=e^2\tau n\langle (m^{*-1})_{ij} \rangle が出る

衝突の項を緩和で置き換える

衝突の項 (3.8.13) は ff について2次の積分で、そのまま解くのは難しい。そこで「衝突は ff を平衡の分布 f0f_0 へ、時間 τ\tau で引き戻す」とだけ考え、

C[f]≈−f−f0τ(3.8.20)C[f]\approx-\frac{f-f_0}{\tau}\tag{3.8.20}

と置き換える。これを緩和時間近似と呼び、τ\tau を緩和時間と呼ぶ。外力が無く一様なら ∂f/∂t=−(f−f0)/τ\partial f/\partial t=-(f-f_0)/\tau で、f−f0f-f_0 は e−t/τ\mathrm{e}^{-t/\tau} で減る。

何を f0f_0 に選ぶかが要点で、衝突で何が保存するかに合わせて決める。気体の分子どうしの衝突は粒子数・運動量・エネルギーを保存するので、f0f_0 はその場の ff と同じ nn, u\bm{u}, TT を持つ局所 Maxwell 分布に選ぶ。これを BGK 模型と呼ぶ(Bhatnagar, Gross, Krook(1954)、Physical Review 94、511)。BGK 模型は保存則と H 定理を満たす(例題 3.8.6)。一方、金属の伝導電子が不純物に当たって散乱される場合は、不純物は動かないので電子の運動量は保存しない(不純物が運動量を受け取る)。エネルギーは弾性散乱なら保存する。このとき f0f_0 は静止した(u=0\bm{u}=0 の)平衡の分布で、電子は Fermi 粒子なので Fermi 分布

f0(p)=2h3 1eβ(ε(p)−μ)+1(3.8.21)f_0(\bm{p})=\frac{2}{h^3}\,\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon (\bm{p})-\mu)}+1}\tag{3.8.21}

である(22 はスピンの向き、1/h31/h^3 は相空間の升目)。運動量を保存しない f0f_0 を選ぶことで、電子の集団が持つ運動量が時間 τ\tau で失われ、抵抗が生じる。

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 衝突の項を −(f−f0)/τ-(f-f_0)/\tau で置き換える(小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第8章

図

図 3.8.2 BGK 模型で、速度 ±3\pm3(単位は各ビームの速度の幅)の2本のビームが Maxwell 分布へ緩和するときの1粒子分布のエントロピー(1次元の速度分布、例題 3.8.6)。実線が緩和時間近似の厳密な解の数値積分、点線が行き着く先の Maxwell 分布の値。エントロピーは単調に増える。

電気伝導度

一様な電場 E\bm{E} の中の伝導電子(電荷 −e-e)を考える。1粒子の Hamiltonian はバンド ε(p)\varepsilon (\bm{p}) と eϕ(r)e\phi(\bm{r}) の和で、力は F=−eE\bm{F}=-e\bm{E}、速度は v=∇pε\bm{v}=\nabla_{\bm{p}}\varepsilon である。定常で一様な場合、Boltzmann 方程式 (3.8.13) に式 (3.8.20) を入れると

−eE⋅∇pf=−f−f0τ(3.8.22)-e\bm{E}\cdot\nabla_{\bm{p}}f=-\frac{f-f_0}{\tau}\tag{3.8.22}

となる。電場が弱いとき、左辺の ff を f0f_0 で置き換えて1次まで取ると

f=f0+δf,δf=eτ E⋅∇pf0=eτ (E⋅v) ∂f0∂ε(3.8.23)f=f_0+\delta f,\qquad \delta f=e\tau\,\bm{E}\cdot\nabla_{\bm{p}}f_0=e\tau\,(\bm{E}\cdot\bm{v})\,\frac{\partial f_0}{\partial \varepsilon }\tag{3.8.23}

を得る。f0f_0 は ε\varepsilon だけの関数なので ∇pf0=v ∂f0/∂ε\nabla_{\bm{p}}f_0=\bm{v}\,\partial f_0/\partial\varepsilon を使った。δf\delta f は、f0f_0 を運動量の空間で −eEτ-e\bm{E}\tau だけずらしたときの1次の変化にあたる(図 3.8.3)。電流密度 J=−e∫vf d3p\bm{J}=-e\int\bm{v} f\,\mathrm{d}^3p に入れると、f0f_0 の寄与は v\bm{v} が奇関数なので消え、

Ji=∑jσijEj,σij=e2τ∫vivj(−∂f0∂ε)d3p(3.8.24)J_i=\sum_j\sigma_{ij}E_j,\qquad \sigma_{ij}=e^2\tau\int v_iv_j\Bigl(-\frac{\partial f_0}{\partial \varepsilon }\Bigr)\mathrm{d}^3p\tag{3.8.24}

となる。−∂f0/∂ε-\partial f_0/\partial\varepsilon は Fermi 面の近く(∣ε−μ∣≲kBT\lvert \varepsilon -\mu\rvert \lesssim k_{\mathrm B} T)だけで大きいので、金属の伝導は Fermi 面の上の電子だけで決まる。

式 (3.8.24) はもう1つの形に書き直すことができる。vj ∂f0/∂ε=∂f0/∂pjv_j\,\partial f_0/\partial\varepsilon =\partial f_0/\partial p_j を使って部分積分すると(Brillouin 域の端の項は周期性で消える)

σij=e2τ∫f0 ∂vi∂pj d3p=e2τ n ⟨(m∗−1)ij⟩f0,(m∗−1)ij=∂2ε∂pi∂pj(3.8.25)\sigma_{ij}=e^2\tau\int f_0\,\frac{\partial v_i}{\partial p_j}\,\mathrm{d}^3p=e^2\tau\,n\,\langle (m^{*-1})_{ij} \rangle _{f_0},\qquad (m^{*-1})_{ij}=\frac{\partial^2\varepsilon }{\partial p_i\partial p_j}\tag{3.8.25}

で、⟨⋅⟩f0\langle \cdot \rangle _{f_0} は f0f_0 による平均である。自由電子 ε=∣p∣2/(2m)\varepsilon =\lvert \bm{p}\rvert ^2/(2m) なら (m∗−1)ij=δij/m(m^{*-1})_{ij}=\delta_{ij}/m で、統計(Fermi 分布か Maxwell 分布か)によらず

σij=ne2τm δij(3.8.26)\sigma_{ij}=\frac{ne^2\tau}{m}\,\delta_{ij}\tag{3.8.26}

となる。これが Drude の伝導度である。式 (3.8.24) では Fermi 面の電子だけが寄与するのに、式 (3.8.26) には全電子の密度 nn が現れる。2つは部分積分で移り合う同じ量で、「Fermi 面の電子が速く動く」ことと「全電子が少しずつずれる」ことは、同じ電流の2通りの数え方である。

図

図 3.8.3 緩和時間近似の1次の解 (3.8.23)。点線が平衡の Maxwell 分布 f0f_0、実線が f0+δff_0+\delta f で、ずれの大きさ e∣E∣τ/mkBT=0.3e\lvert \bm{E}\rvert \tau/\sqrt{m k_{\mathrm B} T}=0.3 の場合(電子は電場と逆向きに押されるので、E\bm{E} を −x-x 向きにとった)。1次の範囲では、分布は +px+p_x の側へずれる。

例題 3.8.5 銅の緩和時間と平均自由行程 ★★

オリジナル銅の伝導電子を自由電子とみなし、電子密度を n=8.47×1028 m−3n=8.47\times10^{28}\,\mathrm{m^{-3}}、室温の抵抗率を 1.68×10−8 Ω m1.68\times10^{-8}\,\Omega\,\mathrm m として与える。

  1. (1) 式 (3.8.26) から緩和時間 τ\tau を求めよ。
  2. (2) Fermi 波数 kF=(3π2n)1/3k_{\mathrm F}=(3\pi^2n)^{1/3} と Fermi 速度 vF=ℏkF/mv_{\mathrm F}=\hbar k_{\mathrm F}/m を求め、平均自由行程 vFτv_{\mathrm F}\tau を求めよ。
  3. (3) 平均自由行程を、Maxwell 分布の平均の速さ 8kBT/(πm)\sqrt{8 k_{\mathrm B} T/(\pi m)}(T=300 KT=300\,\mathrm K)で見積もった場合と比べ、どちらが正しいかを式 (3.8.24) から述べよ。
解答

(1) 抵抗率 1/σ1/\sigma から τ=m/(ne2⋅1.68×10−8)=9.109×10−31/(8.47×1028×(1.602×10−19)2×1.68×10−8)=2.49×10−14 s\tau=m/(ne^2\cdot1.68\times10^{-8})=9.109\times10^{-31}/(8.47\times10^{28}\times(1.602\times10^{-19})^2\times1.68\times10^{-8})=2.49\times10^{-14}\,\mathrm s。

(2) kF=(3π2×8.47×1028)1/3=1.36×1010 m−1k_{\mathrm F}=(3\pi^2\times8.47\times10^{28})^{1/3}=1.36\times10^{10}\,\mathrm{m^{-1}}、vF=1.0546×10−34×1.36×1010/9.109×10−31=1.57×106 m s−1v_{\mathrm F}=1.0546\times10^{-34}\times1.36\times10^{10}/9.109\times10^{-31}=1.57\times10^{6}\,\mathrm{m\,s^{-1}}。平均自由行程は 1.57×106×2.49×10−14=3.9×10−8 m=39 nm1.57\times10^6\times2.49\times10^{-14}=3.9\times10^{-8}\,\mathrm m=39\,\mathrm{nm} で、格子定数(0.36 nm0.36\,\mathrm{nm} 程度)の100倍を超える。

(3) 8kBT/(πm)=1.08×105 m s−1\sqrt{8 k_{\mathrm B} T/(\pi m)}=1.08\times10^5\,\mathrm{m\,s^{-1}} で見積もると 2.7 nm2.7\,\mathrm{nm} となり、約15分の1になる。式 (3.8.24) の −∂f0/∂ε-\partial f_0/\partial\varepsilon は Fermi 面だけで大きいので、伝導に寄与する電子の速さは vFv_{\mathrm F} であり、39 nm39\,\mathrm{nm} のほうが正しい。τ\tau そのものは式 (3.8.26) の形のため統計によらずに決まるが、それを長さに直すときに Fermi 統計が必要になる。(検算 scripts/verify_ch3-08.py)

例題 3.8.6 BGK 模型で2本のビームが緩和する ★★

オリジナル1次元の速度 vv だけを持つ粒子の一様な気体で、BGK 模型 ∂f/∂t=−(f−fM[f])/τ\partial f/\partial t=-(f-f_{\mathrm M}[f])/\tau を考える(fM[f]f_{\mathrm M}[f] は ff と同じ密度・平均速度・温度の Maxwell 分布)。時刻 00 に、幅 ss の正規分布2本を ±u\pm u に置いた f(v,0)=n2[Gs(v−u)+Gs(v+u)]f(v,0)=\frac n2\bigl[G_s(v-u)+G_s(v+u)\bigr](GsG_s は平均 00、分散 s2s^2 の正規分布の密度)を与える。

  1. (1) ff の密度・平均速度・分散が時間によらないことを示し、fM[f]f_{\mathrm M}[f] が分散 s2+u2s^2+u^2 の正規分布で一定であることを示せ。
  2. (2) f(v,t)f(v,t) を求めよ。
  3. (3) u=3su=3s のとき、1粒子あたりのエントロピー −∫(f/n)ln⁡(f/n) dv-\int(f/n)\ln(f/n)\,\mathrm{d} v の初めの値と行き着く値を求め、増えることを確かめよ。
解答

(1) ψ=1,v,v2\psi=1,v,v^2 を掛けて積分すると、右辺は −1τ∫ψ(f−fM[f])dv-\frac1\tau\int\psi(f-f_{\mathrm M}[f])\mathrm{d} v で、fM[f]f_{\mathrm M}[f] は ff と同じ ∫ψf\int\psi f を持つように選んだので 00 である。初めの値は密度 nn、平均速度 00、分散 s2+u2s^2+u^2(各ビームの分散 s2s^2 と、ビームの中心の ±u\pm u のばらつき u2u^2 の和)なので、fM[f]=nGs2+u2(v)f_{\mathrm M}[f]=nG_{\sqrt{s^2+u^2}}(v) は時間によらない。

(2) fMf_{\mathrm M} が定数なので方程式は線形で、f(v,t)=e−t/τf(v,0)+(1−e−t/τ) nGs2+u2(v)f(v,t)=\mathrm{e}^{-t/\tau}f(v,0)+(1-\mathrm{e}^{-t/\tau})\,nG_{\sqrt{s^2+u^2}}(v)。

(3) 行き着く値は分散 10s210s^2 の正規分布のエントロピー 12ln⁡(2πe⋅10s2)\frac12\ln(2\pi\mathrm{e}\cdot10s^2) で、s=1s=1 として 2.5702.570。初めの値は、2本のビームがほぼ重ならないので 12ln⁡(2πes2)+ln⁡2=2.112\frac12\ln(2\pi\mathrm{e} s^2)+\ln2=2.112 に近く、重なりを数値積分で入れると 2.1082.108 である。増えた量は 0.4620.462 で、ビームが重ならない近似では 12ln⁡10−ln⁡2=0.458\frac12\ln10-\ln2=0.458 である。途中の値は図 3.8.2 のように単調に増える。一般に ff と fMf_{\mathrm M} の凸結合のエントロピーは、エントロピーが凹関数であることから tt について単調に増え、BGK 模型でも H 定理が成り立つ。(検算 scripts/verify_ch3-08.py)

ほかの巻では

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