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出てくるもの1:交換関係を満たす演算子の組

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第1章 Poisson 括弧から交換子へ
目次
  1. 位置表示と運動量表示
  2. 有限次元では満たせない
  3. 表示は本質的に1通り:Stone–von Neumann の定理
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第1章 §4.1.3 ★★★ [q^, p^]=iℏ\left[\hat q,\,\hat p\right]=\mathrm{i}\hbar は有限次元の行列では満たせず、q^,p^\hat q,\hat p の少なくとも一方は有界でない。満たす組は本質的に位置表示の1通りだけである

位置表示と運動量表示

正準交換関係 (4.1.3) を満たす演算子の組を1つ作る。H=L2(R)\mathcal{H}=L^2(\mathbb{R})(2乗可積分な関数 ψ(x)\psi(x) の空間)を取り、

(q^ψ)(x)=x ψ(x),(p^ψ)(x)=−iℏ dψdx(4.1.11)(\hat q\psi)(x)=x\,\psi(x),\qquad (\hat p\psi)(x)=-\mathrm{i}\hbar\,\frac{\mathrm{d} \psi}{\mathrm{d} x}\tag{4.1.11}

とおくと、[q^, p^]ψ=−iℏ(xψ′−(xψ)′)=iℏψ\left[\hat q,\,\hat p\right]\psi=-\mathrm{i}\hbar\bigl(x\psi'-(x\psi)'\bigr)=\mathrm{i}\hbar\psi となる。これを位置表示(Schrödinger 表示)と呼ぶ。p^\hat p の形は、前節の並進 U^(a)ψ(x)=ψ(x−a)\hat U(a)\psi(x)=\psi(x-a) を aa で微分すれば −ip^/ℏ=−d/dx-\mathrm{i}\hat p/\hbar=-\mathrm{d}/\mathrm{d} x として出てくるので、天下りに与えたものではない。役割を入れ替えて、運動量の関数 ϕ(p)\phi(p) の空間で p^ϕ=pϕ\hat p\phi=p\phi、q^ϕ=iℏ dϕ/dp\hat q\phi=\mathrm{i}\hbar\,\mathrm{d}\phi/\mathrm{d} p としても交換関係は満たされる(運動量表示)。2つの表示は Fourier 変換 ϕ(p)=∫dx e−ipx/ℏψ(x)/2πℏ\phi(p)=\int\mathrm{d} x\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i} px/\hbar}\psi(x)/\sqrt{2\pi\hbar} で結ばれる。

有限次元では満たせない

交換関係 (4.1.3) を n×nn\times n 行列で満たすことはできない。両辺のトレースを取ると、左辺は Tr⁡(q^p^)−Tr⁡(p^q^)=0\operatorname{Tr}(\hat q\hat p)-\operatorname{Tr}(\hat p\hat q)=0(トレースの巡回性)、右辺は iℏTr⁡1^=iℏn≠0\mathrm{i}\hbar\operatorname{Tr}\hat 1=\mathrm{i}\hbar n\ne0 となり、矛盾する。古典の {q,p}=1\{q,p\}=1 を量子化した時点で、状態空間は無限次元でなければならない。

これを具体的に見るため、調和振動子の消滅演算子 a^\hat a を N×NN\times N 行列に打ち切る(a^∣n⟩=n∣n−1⟩\hat a| n \rangle =\sqrt n| n-1 \rangle を n=0,…,N−1n=0,\dots,N-1 だけ残す)。長さと運動量を ℏ/(mω)\sqrt{\hbar/(m\omega)} と ℏmω\sqrt{\hbar m\omega} を単位に測り、X=(a^+a^†)/2X=(\hat a+\hat a^\dagger)/\sqrt2、P=i(a^†−a^)/2P=\mathrm{i}(\hat a^\dagger-\hat a)/\sqrt2 とおくと、

1i[X, P]=diag(1,1,…,1,−(N−1))(4.1.12)\frac{1}{\mathrm{i}}\left[X,\,P\right]=\mathrm{diag}(1,1,\dots,1,-(N-1))\tag{4.1.12}

になる(図 4.1.1)。N−1N-1 個の対角成分は正しく 11 だが、最後の成分に −(N−1)-(N-1) が押し付けられ、トレースが 00 に保たれる。NN を大きくしても、食い違いは消えずに一番上の準位へ移るだけである。

図

図 4.1.1 調和振動子の演算子を N=6N=6 次元に打ち切ったときの [X, P]/i\left[X,\,P\right]/\mathrm{i} の対角成分(ℏ=m=ω=1\hbar=m=\omega=1)。正しい値 11 からのずれが最後の成分 −(N−1)=−5-(N-1)=-5 にまとまり、トレースが 00 に保たれる。

さらに、q^\hat q と p^\hat p の両方が有界(どの状態に当てても長さを高々定数倍にしか伸ばさない)であることもできない。両方が有界でエルミートだと仮定し、作用素ノルムを ∥⋅∥\lVert \cdot\rVert と書く。例題 4.1.2 (1) の [q^, p^n]=iℏnp^n−1\left[\hat q,\,\hat p^n\right]=\mathrm{i}\hbar n\hat p^{n-1} のノルムを取ると

nℏ∥p^n−1∥=∥q^p^n−p^nq^∥≤2∥q^∥∥p^∥∥p^n−1∥n\hbar\lVert \hat p^{n-1}\rVert =\lVert \hat q\hat p^n-\hat p^n\hat q\rVert \le2\lVert \hat q\rVert \lVert \hat p\rVert \lVert \hat p^{n-1}\rVert

で、エルミートな p^\hat p では ∥p^n−1∥=∥p^∥n−1>0\lVert \hat p^{n-1}\rVert =\lVert \hat p\rVert ^{n-1}>0 だから nℏ≤2∥q^∥∥p^∥n\hbar\le2\lVert \hat q\rVert \lVert \hat p\rVert がすべての nn で成り立つことになり、矛盾する。したがって q^,p^\hat q,\hat p の少なくとも一方は有界でなく、全空間では定義できない。式 (4.1.11) の p^\hat p も、微分できない関数には当てられない。こうした定義域の扱いと、エルミートと自己共役の違いは 近似の数理 第3章 で扱っている。

表示は本質的に1通り:Stone–von Neumann の定理

交換関係を満たす組は、位置表示のほかにもある。たとえば実関数 F(x)F(x) を1つ選び、p^′=p^+F′(q^)\hat p'=\hat p+F'(\hat q) とおいても [q^, p^′]=iℏ\left[\hat q,\,\hat p'\right]=\mathrm{i}\hbar は成り立つ。しかし下の例題で見るように、この p^′\hat p' はユニタリ変換 eiF(q^)/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} F(\hat q)/\hbar} で p^\hat p に戻せるので、物理としては同じものである。一般に次が成り立つ。

定理 4.1.2(Stone–von Neumann の定理 ★★)

自由度 ff の有限な系で、ユニタリ演算子の族 U^(a)=e−ia⋅p^/ℏ\hat U(\bm{a})=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{a}\cdot\hat{\bm{p}}/\hbar}, V^(b)=eib⋅q^/ℏ\hat V(\bm{b})=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{b}\cdot\hat{\bm{q}}/\hbar} がU^(a)V^(b)=e−ia⋅b/ℏV^(b)U^(a)\hat U(\bm{a})\hat V(\bm{b})=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{a}\cdot\bm{b}/\hbar}\hat V(\bm{b})\hat U(\bm{a})(交換関係の指数の形、Weyl の関係)を満たし、既約であるとする。このとき、ある Hilbert 空間の間のユニタリ写像があって、q^,p^\hat{\bm{q}},\hat{\bm{p}} は位置表示 (4.1.11) に写る1M. H. Stone (1930), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 16, 172–175;J. von Neumann (1931), Math. Ann. 104, 570–578.下の脚注へ。

この定理によって、量子力学の授業で p^=−iℏ∇\hat p=-\mathrm{i}\hbar\nabla から始めても、一般性は失われていないことが保証される。仮定が交換関係そのものでなく指数の形(Weyl の関係)になっているのは、有界でない演算子の交換関係は定義域の取り方に依存し、[q^, p^]=iℏ\left[\hat q,\,\hat p\right]=\mathrm{i}\hbar をある定義域で満たすだけでは一意性が言えない例があるためである。また、定理は自由度が有限の場合に限られる。場のように自由度が無限にある系では、互いにユニタリ同値でない表示が無数にあり、どの表示を選ぶかが物理の内容になる。この問題は第5部の場の量子化で扱う。

例題 4.1.3 運動量に勾配を足しても同じ表示 ★★

オリジナル位置表示で、実数値の滑らかな関数 F(x)F(x) を用いて p^′=p^+F′(q^)\hat p'=\hat p+F'(\hat q) とおく。

  1. (1) [q^, p^′]=iℏ\left[\hat q,\,\hat p'\right]=\mathrm{i}\hbar を確かめよ。
  2. (2) e−iF(q^)/ℏ p^ eiF(q^)/ℏ=p^′\mathrm{e}^{-\mathrm{i} F(\hat q)/\hbar}\,\hat p\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} F(\hat q)/\hbar}=\hat p' を示し、ψ′=e−iF/ℏψ\psi'=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} F/\hbar}\psi と置き換えれば p^′\hat p' の世界の計算が p^\hat p の世界の計算と同じになることを説明せよ。
  3. (3) 古典力学で、p′=p+F′(q)p'=p+F'(q), q′=qq'=q が正準変換であることを Poisson 括弧で確かめ、その母関数を求めよ。
解答

(1) F′(q^)F'(\hat q) は q^\hat q の関数なので q^\hat q と交換する。よって [q^, p^′]=[q^, p^]=iℏ\left[\hat q,\,\hat p'\right]=\left[\hat q,\,\hat p\right]=\mathrm{i}\hbar。

(2) 関数 ψ\psi に当てるとe−iF/ℏ(−iℏ)ddx(eiF/ℏψ)=e−iF/ℏ(−iℏ)eiF/ℏ(iF′ℏψ+ψ′)=F′ψ−iℏψ′=p^′ψ\mathrm{e}^{-\mathrm{i} F/\hbar}(-\mathrm{i}\hbar)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} x}\bigl(\mathrm{e}^{\mathrm{i} F/\hbar}\psi\bigr)=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} F/\hbar}(-\mathrm{i}\hbar)\mathrm{e}^{\mathrm{i} F/\hbar}\bigl(\tfrac{\mathrm{i} F'}{\hbar}\psi+\psi'\bigr)=F'\psi-\mathrm{i}\hbar\psi'=\hat p'\psi。eiF/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} F/\hbar} は絶対値 11 の関数を掛けるだけのユニタリ演算子なので、状態を ψ′=e−iF/ℏψ\psi'=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} F/\hbar}\psi と取り替え、演算子を A^′=e−iF/ℏA^eiF/ℏ\hat A'=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} F/\hbar}\hat A\mathrm{e}^{\mathrm{i} F/\hbar} と取り替えれば、すべての期待値 ⟨ψ′∣A^′ψ′⟩=⟨ψ∣A^ψ⟩\langle \psi' | \hat A'\psi' \rangle =\langle \psi | \hat A\psi \rangle が変わらない。p^′\hat p' と p^\hat p の違いは、波動関数の位相の付け方の違いにすぎない。

(3) {q′,p′}={q,p+F′(q)}=1+{q,F′(q)}=1\{q',p'\}=\{q,p+F'(q)\}=1+\{q,F'(q)\}=1 なので正準変換である。第1部第12章の母関数 F2(q,P)F_2(q,P) で p=∂F2/∂qp=\partial F_2/\partial q, Q=∂F2/∂PQ=\partial F_2/\partial P を満たすものを探すと、p=P−F′(q)p=P-F'(q) から F2=qP−F(q)F_2=qP-F(q)。量子力学の位相因子 e−iF/ℏ\mathrm{e}^{-\mathrm{i} F/\hbar} の指数に、この母関数の −F(q)-F(q) がそのまま現れている。電磁場中の粒子でゲージ関数を変えたときの波動関数の位相の変化(第4部第6章)は、この例の FF を電荷とゲージ関数の積に取ったものにあたる。

1 M. H. Stone (1930), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 16, 172–175;J. von Neumann (1931), Math. Ann. 104, 570–578.

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