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出てくるもの (3):スピンと g=2g=2

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第6章 電磁場中の量子力学
目次
  1. Pauli 行列で書いた運動エネルギー
  2. 何を選んだことになるか
  3. スピンつきの Landau 準位
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第6章 §4.6.5 ★★ 運動エネルギーを (σ⋅mv^)2/(2m)(\bm{\sigma}\cdot m\hat{\bm{v}})^2/(2m) と書くと、交換子 (4.6.5) から Zeeman の項 −ℏqσ⋅B/(2m)-\hbar q\bm{\sigma}\cdot\bm{B}/(2m) が出て、電子の g=2g=2 になる

Pauli 行列で書いた運動エネルギー

スピン 12\frac12 の粒子では、波動関数は2成分を持つ。磁場が無ければ、運動エネルギーは p^2/(2m)\hat{\bm{p}}^2/(2m) を2成分のそれぞれに当てればよい。Pauli 行列の性質 σiσj=δij+i∑kϵijkσk\sigma_i\sigma_j=\delta_{ij}+\mathrm{i}\sum_k\epsilon_{ijk}\sigma_k から、成分どうしが交換する任意のベクトル a\bm{a} について(σ⋅a)2=a2(\bm{\sigma}\cdot\bm{a})^2=\bm{a}^2 なので、自由粒子の運動エネルギーは (σ⋅p^)2/(2m)(\bm{\sigma}\cdot\hat{\bm{p}})^2/(2m) と書いても同じである。

磁場の中で p^→mv^=p^−qA\hat{\bm{p}}\to m\hat{\bm{v}}=\hat{\bm{p}}-q\bm{A} と最小結合にするとき、この2つの書き方は違うものを与える。mv^m\hat{\bm{v}} の成分どうしは交換しないので、

(σ⋅mv^)2=∑i,jσiσj m2v^iv^j=m2v^2+i2∑i,j,kϵijkσk[mv^i, mv^j](\bm{\sigma}\cdot m\hat{\bm{v}})^2=\sum_{i,j}\sigma_i\sigma_j\,m^2\hat v_i\hat v_j=m^2\hat{\bm{v}}^2+\frac{\mathrm{i}}{2}\sum_{i,j,k}\epsilon_{ijk}\sigma_k\left[m\hat v_i,\,m\hat v_j\right]

となり、式 (4.6.5) を入れると ∑i,jϵijkϵijl=2δkl\sum_{i,j}\epsilon_{ijk}\epsilon_{ijl}=2\delta_{kl} から

(σ⋅(p^−qA))22m=(p^−qA)22m−ℏq2mσ⋅B(4.6.19)\frac{(\bm{\sigma}\cdot(\hat{\bm{p}}-q\bm{A}))^2}{2m}=\frac{(\hat{\bm{p}}-q\bm{A})^2}{2m}-\frac{\hbar q}{2m}\bm{\sigma}\cdot\bm{B}\tag{4.6.19}

を得る。右辺第2項が、スピンと磁場の相互作用(Zeeman の項)である。左辺を運動エネルギーとして選んだ

H^P=(σ⋅(p^−qA))22m+qϕ(4.6.20)\hat H_{\mathrm P}=\frac{(\bm{\sigma}\cdot(\hat{\bm{p}}-q\bm{A}))^2}{2m}+q\phi\tag{4.6.20}

を Pauli の Hamiltonian と呼ぶ。

電子(q=−eq=-e)では第2項は eℏ2mσ⋅B=μBσ⋅B\frac{e\hbar}{2m}\bm{\sigma}\cdot\bm{B}=\mu_{\mathrm B}\bm{\sigma}\cdot\bm{B}(μB=eℏ/(2m)\mu_{\mathrm B}=e\hbar/(2m) は Bohr 磁子)である。スピン S^=ℏ2σ\hat{\bm{S}}=\frac\hbar2\bm{\sigma} の磁気モーメントを μ=−gμBS^/ℏ\bm{\mu}=-g\mu_{\mathrm B}\hat{\bm{S}}/\hbar と書いて Zeeman のエネルギー −μ⋅B=gμBS^⋅B/ℏ-\bm{\mu}\cdot\bm{B}=g\mu_{\mathrm B}\hat{\bm{S}}\cdot\bm{B}/\hbar と比べると、式 (4.6.19) から g=2g=2 が出る。軌道運動の磁気モーメント(4.6.6節)では係数が 11 なので、スピンは角運動量あたり2倍の磁気モーメントを持つ。

何を選んだことになるか

式 (4.6.19) の左辺と右辺第1項は、磁場が無ければ同じ演算子である。したがって、磁場の無い世界の観測だけからは、どちらを選ぶべきかは決まらない。(σ⋅mv^)2/(2m)(\bm{\sigma}\cdot m\hat{\bm{v}})^2/(2m) を選ぶと g=2g=2、mv^2/2m\hat{\bm{v}}^2/2 に Zeeman の項を別に足すと gg は自由なパラメータになる。古典の LL から出発する限り、スピンは現れないので、この選択は古典力学からは決まらない。g=2g=2 という値は、相対論的な Dirac 方程式(第5部第4章)の速さが光速より十分小さい極限として式 (4.6.20) が出ることから決まる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの v/c→0v/c\to0(Dirac 方程式の 1/c1/c の展開の最低次) | 証明 要確認(Dirac 方程式の非相対論極限が Pauli の Hamiltonian に収束する前提を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章

実際の電子の gg の大きさは 2.002319304362562.00231930436256(CODATA 2018 の推奨値1E. Tiesinga, P. J. Mohr, D. B. Newell and B. N. Taylor (2021), Reviews of Modern Physics 93, 025010.下の脚注へ)で、2 よりわずかに大きい。この差は電磁場の量子的な揺らぎによるもので、場を量子化して初めて計算できる。

スピンつきの Landau 準位

一様な磁場 B=Bez\bm{B}=B\bm{e}_z の中の電子では、式 (4.6.19) の右辺第1項から Landau 準位が出て、第2項は σz\sigma_z の固有値 ±1\pm1 に応じて ±μBB\pm\mu_{\mathrm B}B をずらす。μBB=eℏB2m=12ℏωc\mu_{\mathrm B}B=\frac{e\hbar B}{2m}=\frac12\hbar\omega_{\mathrm c}(ωc=eB/m\omega_{\mathrm c}=eB/m)なので、エネルギーは

En,σ=ℏωc(n+12+σ2)(n=0,1,2,…, σ=±1)(4.6.21)E_{n,\sigma}=\hbar\omega_{\mathrm c}\Bigl(n+\frac12+\frac{\sigma}{2}\Bigr)\qquad(n=0,1,2,\dots,\ \sigma=\pm1)\tag{4.6.21}

になる。スピンが下向き(σ=−1\sigma=-1)の最低準位はエネルギーがちょうど 00 で、それより上の準位 nℏωcn\hbar\omega_{\mathrm c}(n≥1n\ge1)は、(n,↓)(n,\downarrow) と (n−1,↑)(n-1,\uparrow) の2つが重なる。g=2g=2 のとき、スピンを反転させるエネルギーと軌道の準位の間隔がちょうど等しいことが、この重なりの理由である。

例題 4.6.5 gg が 2 からずれると重なりが解ける ★★

オリジナル電子の Zeeman の項を gg を残して g2μBBσz\frac g2\mu_{\mathrm B}B\sigma_z と書き、一様な磁場 BB の中のエネルギーを En,σ=ℏωc(n+12)+g4ℏωcσE_{n,\sigma}=\hbar\omega_{\mathrm c}(n+\frac12)+\frac g4\hbar\omega_{\mathrm c}\sigma とする。

  1. (1) En,↑−En+1,↓E_{n,\uparrow}-E_{n+1,\downarrow} を gg で表せ。
  2. (2) g=2g=2 のとき、最低の準位のエネルギーと、各準位の縮退度(1つの Landau 準位の縮退度 NN の何倍か)を述べよ。
  3. (3) g=2.00231930436256g=2.00231930436256 として、B=1 TB=1\,\mathrm T での En,↑−En+1,↓E_{n,\uparrow}-E_{n+1,\downarrow} を eV\mathrm{eV} で求めよ(ℏωc=1.158×10−4 eV\hbar\omega_{\mathrm c}=1.158\times10^{-4}\,\mathrm{eV})。
解答

(1) En,↑−En+1,↓=ℏωc(n+12)+g4ℏωc−ℏωc(n+32)+g4ℏωc=g−22ℏωcE_{n,\uparrow}-E_{n+1,\downarrow}=\hbar\omega_{\mathrm c}\bigl(n+\tfrac12\bigr)+\tfrac g4\hbar\omega_{\mathrm c}-\hbar\omega_{\mathrm c}\bigl(n+\tfrac32\bigr)+\tfrac g4\hbar\omega_{\mathrm c}=\dfrac{g-2}{2}\hbar\omega_{\mathrm c}。

(2) g=2g=2 では (1) が 00 なので (n,↑)(n,\uparrow) と (n+1,↓)(n+1,\downarrow) は同じエネルギー (n+1)ℏωc(n+1)\hbar\omega_{\mathrm c} を持つ。最低の準位は (0,↓)(0,\downarrow) でエネルギーは ℏωc(12−12)=0\hbar\omega_{\mathrm c}(\frac12-\frac12)=0、縮退度は NN。それより上の準位 nℏωcn\hbar\omega_{\mathrm c}(n≥1n\ge1)は2つのスピンの状態が重なるので縮退度 2N2N である。

(3) g−22=1.16×10−3\frac{g-2}{2}=1.16\times10^{-3} なので、1.16×10−3×1.158×10−4=1.34×10−7 eV1.16\times10^{-3}\times1.158\times10^{-4}=1.34\times10^{-7}\,\mathrm{eV}。重なっていた2つの準位が、ℏωc\hbar\omega_{\mathrm c} の約 1/8601/860 だけ離れる。1個の電子を磁場の中に閉じ込め、軌道の準位の間隔とスピンを反転させるエネルギーを別々に測ってその差を取れば、g−2g-2 を直接求めることができる。

1 E. Tiesinga, P. J. Mohr, D. B. Newell and B. N. Taylor (2021), Reviews of Modern Physics 93, 025010.

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