解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第7章 §5.7.2 ★★★ ∫e−21xTAx+JTx∝e21JTA−1J を源で微分すると、Gauss 分布の多項式の平均は「2つずつ組にする組み方の和」になる(Wick の定理)
有限次元の Gauss 積分
n 個の実数 x=(x1,…,xn) と、正定値の実対称行列 A を考える。源の項をつけた Gauss 積分は、平方完成で計算することができる。x=A−1J+y とずらすと −21xTAx+JTx=−21yTAy+21JTA−1J となり、y の積分は J によらないので
∫dnxe−21xTAx+JTx=detA(2π)n/2e21JTGJ,G=A−1(5.7.6)
を得る。ずらした先の点 xcl=GJ は、指数の肩 −21xTAx+JTx を停留させる点である。指数の肩は x の2次式なので、停留点のまわりの展開は2次で終わり、第4部第7章(第4部第7章)の停留位相の評価がここでは近似でなく等号になる。指数に残った 21JTGJ は、指数の肩の停留点での値そのものである。
規格化した平均 ⟨f⟩0=∫dnxe−21xTAxf(x)/∫dnxe−21xTAx で書くと⟨eJTx⟩0=e21JTGJ である。左辺を Ji で微分して J=0 とおくと xi の多項式の平均が出る。
Wick の定理
e21JTGJ を Ji, Jj で1回ずつ微分して J=0 とおくと ⟨xixj⟩0=Gij である。G は2点の相関で、これを伝播関数と呼ぶ。4回微分すると、21JTGJ の2乗の項からだけ 0 でない寄与が出て
⟨xixjxkxl⟩0=GijGkl+GikGjl+GilGjk(5.7.7)
になる。一般に次が成り立つ。
定理 5.7.1(Wick の定理 ★★★)
平均 0 の Gauss 分布で、2n 個の変数(重複してもよい)の積の平均は、それらを2つずつ組にする組み方すべてにわたる、組ごとの G の積の和に等しい。組み方は (2n−1)!!=(2n−1)(2n−3)⋯3⋅1 通りある。奇数個の積の平均は 0 である。
証明
e21JTGJ=∑mm!1(21∑a,bJaGabJb)m を Ji1,…,Ji2n で微分して J=0 とおくと、J の次数がちょうど 2n の項 m=n だけが残る。(21∑JaGabJb)n の中の 2n 個の J に、2n 個の微分を1つずつ割り当てる仕方は (2n)! 通りあり、どの割り当ても「どの2つの添字が同じ G に入るか」という組み方を1つ決める。1つの組み方を与える割り当ては、n 個の G の並べ替え(n! 通り)と、各 G の中で2つの J を入れ替えること(2n 通り)の分だけある。n!1⋅2n1 がちょうどこの重複を打ち消すので、各組み方は係数 1 で1回ずつ現れる。組み方の数は、最初の変数の相手の選び方 2n−1 通り、残りの最初の変数の相手 2n−3 通り、と続けて (2n−1)!! である。
組み方の数 (2n−1)!! は、例題 5.7.1 の ⟨ϕ2n⟩0 と同じ数である。1変数では G=1 なので、組み方の数がそのまま平均になる。
場への持ち上げと iϵ
場の場合は、添字 i が時空の点 x に、和が積分に替わる。自由な部分の作用を部分積分してS0[ϕ]=∫d4x21ϕ(−∂2−m2)ϕ と書くと、重みの肩は
iS0[ϕ]+i∫d4xJϕ=−21∫d4xϕ[i(∂2+m2−iϵ)]ϕ+∫d4x(iJ)ϕ
となる。−iϵ は5.7.1節で時間を T(1−iϵ) と傾けたことから出る項で、m2 を m2−iϵ に置き換えることと同じである。この項によって肩に −2ϵ∫ϕ2 という実部が加わり、振動するだけの積分が収束する Gauss 積分になる。式 (5.7.6) でA→i(∂2+m2−iϵ)、J→iJ と読み替えると、G=A−1 は
(∂2+m2−iϵ)DF(x−y)=−iδ(4)(x−y)(5.7.8)
を満たす関数 DF になり、
Z0[J]=Z0[0]exp[−21∫d4xd4yJ(x)DF(x−y)J(y)](5.7.9)
を得る(21(iJ)DF(iJ)=−21JDFJ)。Z0 は λ=0 の生成汎関数である。行列式 detA にあたる因子は Z0[0] に入り、n 点関数 (5.7.4) ではZ[0] で割るので消える。有限次元の場合と同じく、指数の肩は停留点 ϕcl(自由な場の方程式 (∂2+m2)ϕcl=J の解)でのi(S0[ϕcl]+∫Jϕcl) に等しい。
例題 5.7.2 2変数の Gauss 分布で Wick の定理を確かめる ★★
オリジナルA=(2112) とし、重み e−21xTAx の下での平均を考える。
- (1) G=A−1 を求めよ。
- (2) Wick の定理で ⟨x12x22⟩0、⟨x14⟩0、⟨x13x2⟩0 を求めよ。
- (3) (2) の ⟨x12x22⟩0 で、3通りの組み方がそれぞれどの G の積を与えるかを書き、G12<0 の意味を述べよ。
解答
(1) detA=3 なので G=31(2−1−12)、すなわち G11=G22=32、G12=−31。
(2) x1x1x2x2 の組み方は (x1x1)(x2x2) が1通り、(x1x2)(x1x2) が2通り(1つ目の x1 の相手をどちらの x2 にするか)で、
⟨x12x22⟩0=G11G22+2G122=94+92=32.
同じく ⟨x14⟩0=3G112=34、⟨x13x2⟩0=3G11G12=−32(x2 の相手は3つの x1 のどれでもよく、残り2つの x1 が組になる)。3つとも2重積分を数値で計算した値と一致する(検算 scripts/verify_ch5-07.py)。
(3) 組み方は {(1,2),(3,4)}→G11G22、{(1,3),(2,4)}→G122、{(1,4),(2,3)}→G122(変数を x1x1x2x2 の順に1〜4と番号づけた)。A の非対角成分 +1 は x1x2 が正のときに重みを下げるので、x1 と x2 は逆符号になりやすく、相関 G12=⟨x1x2⟩0 が負になる。場の言葉では、2次の作用の中の隣どうしの結合が伝播関数を決めることに当たる。
ほかの巻では
- 光学と量子エレクトロニクス 第32章:Gauss 型の熱的な光で g(2)=1+∣g(1)∣2(Siegert の関係)が出る。4点を2点の組で書く同じ計算
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com