解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第7章 §5.7.3 ★★★ DF=∫(2π)4d4kk2−m2+iϵie−ik⋅x は第5部第2章の D(x) を時刻の順に並べ替えたもの。iϵ が極の避け方を決める
2点関数
式 (5.7.9) を式 (5.7.4) に入れて2回微分すると、e−21JDFJ の2回微分は −DF で、(−i)2=−1 を掛けて
⟨0∣Tϕ(x)ϕ(y)∣0⟩λ=0=DF(x−y)(5.7.10)
を得る。自由な場の時間順序積の真空期待値は、2次の作用の逆そのものである。これを Feynman 伝播関数と呼ぶ。
式 (5.7.8) を Fourier 変換で解く。∂2e−ik⋅x=−k2e−ik⋅x なので
DF(x)=∫(2π)4d4kk2−m2+iϵie−ik⋅x(5.7.11)
である((−k2+m2−iϵ)⋅i/(k2−m2+iϵ)=−i)。k2=(k0)2−∣k∣2 なので、被積分関数は k0 の関数としてk0=±ωk2−iϵ≈±(ωk−iϵ′)(ωk=∣k∣2+m2、ϵ′=ϵ/(2ωk))に極を持つ。正の極は実軸のわずかに下、負の極はわずかに上にある(図 5.7.1)。iϵ が無ければ極が積分路の上に乗り、積分が定まらない。

図 5.7.1 DF の k0 積分の複素平面。iϵ によって正の振動数の極 ωk−iϵ′ は実軸の下に、負の振動数の極 −ωk+iϵ′ は上に移る。x0>0 では e−ik0x0 が下半面で小さくなるので下に閉じ(破線)、正の振動数の極だけを拾う。x0<0 では上に閉じ(点線)、負の振動数の極だけを拾う
k0 の積分と時間順序
x0>0 のとき、e−ik0x0 は Imk0<0 で小さくなるので、実軸の積分に下半面の大きな半円を足して閉じてよい。閉じた経路は時計回りなので、極 k0=ωk の留数に −2πi を掛ける。
∫2πdk0(k0−ωk)(k0+ωk)ie−ik0x0=2π−2πi⋅2ωkie−iωkx0=2ωke−iωkx0.
残りの k の積分と合わせると、第5部第2章の真空の相関 D(x)=∫(2π)3d3k2ωk1e−ik⋅x そのものになる(k0=ωk とおいた k⋅x)。x0<0 では上に閉じて極 k0=−ωk を拾い、k→−k と積分変数を替えると D(−x) になる。まとめて
DF(x)=θ(x0)D(x)+θ(−x0)D(−x)=⟨0∣Tϕ(x)ϕ(0)∣0⟩(5.7.12)
を得る。第5部第2章では D(x)=⟨0∣ϕ(x)ϕ(0)∣0⟩ だったので、右辺はまさに時刻の遅い方を左に置いた積の期待値である。経路積分から出した式 (5.7.10) と、演算子から出した式 (5.7.12) が一致した。
この式の読み方は Feynman による。x0>0 では、正の振動数 e−iωt の波が時刻 0 から x0 へ未来向きに進む。x0<0 では、負の振動数の部分が時刻 x0 から 0 へ、やはり未来向きに進む。正の振動数を未来へ、負の振動数を過去へ運ぶという規則が、iϵ による極の避け方に入っている1R. P. Feynman (1949), Phys. Rev. 76, 749 と 769。複素スカラー場では負の振動数の部分が反粒子を表す(第5部第4章)。。式 (5.7.8) の右辺の δ(4) は、x0=0 で θ 関数が切り替わるところの跳びから出る。
虚時間の伝播関数
第5部第1章と同じく時間を虚数にする(x0=−iτ)。それに合わせて k0=ik4 と積分路を 90∘ 回すと、回す向きは図 5.7.1 の2つの極を横切らない向き(第1象限と第3象限を通る向き)で、これが iϵ の指定と同じ情報を持つ。dk0i/(k2−m2)=idk4⋅i/(−k42−∣k∣2−m2)=dk4/(kE2+m2) なので
DE(xE)=∫(2π)4d4kEkE2+m2eikE⋅xE,kE2=k42+∣k∣2(5.7.13)
となる。分母は正で極が無く、iϵ は要らない。虚時間の重み e−SE は正なので、場は本物の確率分布に従う確率変数になり、DE はその共分散である。5.7.6節の非調和振動子と、総合問題の静的な源の計算では、この形が便利である。
例題 5.7.3 0+1次元の伝播関数=調和振動子 ★★
オリジナル時空を時間の1次元だけにすると、場 ϕ(t) は1つの粒子の座標 x(t) になり、式 (5.7.1) の自由な部分は質量 M、角振動数 ω の調和振動子L0=2Mx˙2−2Mω2x2 になる。
- (1) 式 (5.7.8) にあたる式を書き、虚時間の伝播関数 DE(τ)=∫2πdkM(k2+ω2)eikτ を計算せよ。
- (2) 実時間の DF(t)=∫2πdk0M((k0)2−ω2+iϵ)ie−ik0t を計算せよ。
- (3) 第4部第4章の x(t)=(ae−iωt+a†eiωt)/2Mω を使って ⟨0∣Tx(t)x(0)∣0⟩ を計算し、(2) と比べよ。
解答
(1) 2次の作用は ∫dt2Mx(−∂t2−ω2)x なので、M(∂t2+ω2−iϵ)DF(t)=−iδ(t)。虚時間では τ>0 のとき上半面で閉じて極 k=iω を拾い、2πi⋅2πM⋅2iωe−ωτ=2Mωe−ωτ。τ<0 も同様で
DE(τ)=2Mωe−ω∣τ∣.
(2) 図 5.7.1 と同じく、t>0 では下に閉じて 2Mωe−iωt、t<0 では上に閉じて 2Mωeiωt。まとめてDF(t)=2Mωe−iω∣t∣ で、t=−iτ(τ>0)を入れると (1) に戻る。
(3) t>0 では ⟨0∣x(t)x(0)∣0⟩=2Mω1⟨0∣ae−iωta†∣0⟩=2Mωe−iωt。t<0 では順序を入れ替えた ⟨0∣x(0)x(t)∣0⟩=2Mωeiωt。どちらも (2) と一致する。t=0 では基底状態の揺らぎ ⟨x2⟩=2Mω1 で、伝播関数の t=0 の値は零点振動の大きさに等しい。数値例 M=1.3、ω=0.7 で (1) の積分と (2) の iϵ=10−3 の積分を数値で計算し、閉じた式と一致することを確かめた(検算 scripts/verify_ch5-07.py)。
1 R. P. Feynman (1949), Phys. Rev. 76, 749 と 769。複素スカラー場では負の振動数の部分が反粒子を表す(第5部第4章)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com