解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第7章 §5.7.6 ★★ 量子力学の Rayleigh–Schrödinger の摂動論と、場の量子論の相互作用描像の Dyson 級数を、経路積分の図と項ごとに並べる
非調和振動子の基底エネルギー
量子力学の授業では、H=H0+V の基底エネルギーを
E0=E0(0)+⟨0∣V∣0⟩−n=0∑En(0)−E0(0)∣⟨n∣V∣0⟩∣2+⋯(5.7.18)
と展開する(Rayleigh–Schrödinger の摂動論)。非調和振動子 H=2Mp2+2Mω2x2+4!λx4 では、x=(a+a†)/2Mω を使って行列要素を計算する。
経路積分では、同じ量を虚時間の分配関数から出す。第5部第1章のとおり、長さ TE の虚時間の経路積分は TE→∞ で e−E0TE に近づくので
E0=−TE→∞limTE1lnZE,ZE=∫Dxe−SE[x],SE=∫[2Mx˙2+2Mω2x2+4!λx4]dτ(5.7.19)
である。lnZE は連結な真空の図の和で、虚時間では頂点が −4!λ∫dτ、線が例題 5.7.3 の DE(τ)=e−ω∣τ∣/(2Mω) になる。1次は8の字で、−8λ∫dτDE(0)2=−8λ(2Mω)2TE から
E0(1)=32M2ω2λ
となる。Rayleigh–Schrödinger の1次 4!λ⟨0∣x4∣0⟩=24λ⋅(2Mω)23 と同じ値で、⟨0∣x4∣0⟩=3⟨x2⟩2 の 3 が8の字の組み方の数 3 に当たる。2次は例題 5.7.6 で比べる。
相互作用描像と Dyson 級数
場の量子論の授業の多くは、経路積分を使わずに演算子で摂動論を組み立てる。H=H0+Hint と分け、H0 で時間発展させた場 ϕI(x)(相互作用描像)を使うと、相互作用を含む真空 ∣Ω⟩ での時間順序積が
⟨Ω∣Tϕ(x)ϕ(y)∣Ω⟩=⟨0∣Texp[−i∫dtHint(t)]∣0⟩⟨0∣TϕI(x)ϕI(y)exp[−i∫dtHint(t)]∣0⟩(5.7.20)
と書ける(Gell-Mann–Low の公式)。指数の時間順序積が Dyson 級数である。演算子の Wick の定理 TϕI(x)ϕI(y)=:ϕI(x)ϕI(y):+DF(x−y)(:: は生成演算子を左に寄せる正規順序で、真空期待値が 0)を繰り返し使うと、分子の各項は DF の積の和になる1G. C. Wick (1950), Phys. Rev. 80, 268。。
この章の経路積分の式と並べると、対応は次のとおりである。
| 相互作用描像(演算子) | 経路積分(この章) |
| Texp[−i∫Hintdt](Dyson 級数) | exp[i∫Lintd4x] の展開(ϕ4 のように微分を含まない相互作用では Hint=−∫Lintd3x) |
| 時間順序の記号 T を明示して付ける | 時間を刻んだ積分の中で自動的に時刻の順に並ぶ |
| 演算子の Wick の定理(正規順序+縮約) | Gauss 積分の Wick の定理(定理 5.7.1) |
| 縮約 ⟨0∣TϕIϕI∣0⟩ | 2次の作用の逆 DF(式 (5.7.8)) |
| ∣0⟩→∣Ω⟩ のための T(1−iϵ) | 同じ T(1−iϵ) が m2−iϵ になる |
| 分母 ⟨0∣Te−i∫Hint∣0⟩ | Z[0](真空の泡) |
2つのやり方は同じ図と同じ規則になる。経路積分では、演算子の順序を気にする必要が無く、ℏ の数え方(5.7.5節)や虚時間への移行がそのまま見える。演算子で組み立てると、状態とユニタリ性が見えやすい。授業の Fermi の黄金律(第4部第12章)は、Dyson 級数の1次の項を長い時間で評価したものである。
例題 5.7.6 非調和振動子の2次のエネルギーを2通りに計算する ★★★
オリジナルM=ω=1 とし、g=λ/24 とおいて H=2p2+2x2+gx4 とする(ℏ=1)。
- (1) 式 (5.7.18) の2次の項を計算せよ。⟨2∣x4∣0⟩ と ⟨4∣x4∣0⟩ が要る。
- (2) 虚時間の経路積分で、2頂点の連結な真空の図(スイカと亜鈴)から E0(2) を計算せよ。DE(τ)=21e−∣τ∣ を使う。
- (3) (1)(2) が一致することを確かめ、λ=0.24(g=0.01)で数値の対角化の結果 E0=0.50725620 と比べよ。
解答
(1) x=(a+a†)/2 から x4∣0⟩ を計算すると x4∣0⟩=41(3∣0⟩+62∣2⟩+26∣4⟩) なので⟨2∣x4∣0⟩=232、⟨4∣x4∣0⟩=26。エネルギーの差は 2 と 4 なので
E0(2)=−g2(29/2+43/2)=−g2(49+83)=−821g2.
(2) lnZE の2次は 2!1(24λ)2∫dτ1dτ2⟨x(τ1)4x(τ2)4⟩連結 である((−1)2=1)。例題 5.7.4 の (1) の組み方の数を使うと、連結な部分は 24DE(τ12)4+72DE(0)2DE(τ12)2。∫−∞∞DE(τ)4dτ=161⋅42=321、∫DE(τ)2dτ=41、DE(0)=21 なので、τ2 で積分すると TE が掛かって
E0(2)=−21(24λ)2(3224+4⋅472)=−421⋅2g2=−821g2.
スイカの寄与が −43⋅2g2、亜鈴の寄与が −29⋅2g2 である。一般の M,ω では E0(2)=−1536M4ω57λ2 になる。
(3) (1)(2) は一致する。g=0.01 では E0≈21+43g−821g2=0.50723750 で、対角化の 0.50725620 との差 1.87×10−5 は3次の項 16333g3=2.08×10−5 とほぼ同じ大きさである。Rayleigh–Schrödinger では中間状態 ∣2⟩、∣4⟩ への和が、経路積分では2つの図の虚時間の積分が、同じ数を別の仕方で分けて数えている。
1 G. C. Wick (1950), Phys. Rev. 80, 268。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com