解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第11章 §5.11.6 ★★ 統計力学の授業の Kadanoff のブロックスピンとスケーリング則、場の量子論の授業の有効電荷と真空偏極は、この章の流れの方程式の2つの読み方である
統計力学:ブロックスピンとスケーリング則
統計力学の授業では、臨界現象のくりこみ群を Kadanoff のブロックスピンで説明することが多い。格子を一辺 eℓ 個のスピンからなるブロックに分け、ブロックの中のスピンの平均を新しいスピンとみなして、新しいスピンの間の結合 K′ を求める。5.11.2の例題の間引きはその最も簡単な例である。授業の式は次の形で書かれる。
K′=R(K),ξ(K′)=e−ℓξ(K),ν=ln(dR/dK)K∗ℓ.
最後の式は、この章の式 (5.11.9) で yt=ln(dR/dK)K∗/ℓ と置いたものである。授業で実空間のブロックを使うところを、この章では波数の殻を使った。実空間のブロックは格子の上で直観的だが、ブロックの平均を取ると ϕ4 以外の結合が多数現れて近似の制御が難しい。波数の殻は、殻の幅を小さくして λ と ϵ で展開できるので、近似の大きさを数えることができる。
スケーリング則は、授業では実験で見つかった関係として次の4つで与えられることが多い。
α+2βexp+γ=2 (Rushbrooke),γ=ν(2−η) (Fisher),γ=βexp(δ−1) (Widom),2−α=dν (Josephson)(5.11.23)
式 (5.11.21) を入れると、4つとも yt,yh によらない恒等式になる。例えば Rushbrooke は2−ytd+yt2(d−yh)+yt2yh−d=2 である。6つの指数のうち独立なのは2つだけで、それが固定点のまわりの2つの relevant な固有値 yt,yh である。最後の Josephson の関係は次元 d を含み、ハイパースケーリングと呼ばれる。平均場の指数は d=4 でだけこれを満たす。d>4 では u が irrelevant で、固定点での値は 0 である。ところが低温側の磁化 m02=−a/b のように u(b)で割った形の量は u→0 で発散するので、u を 0 に置いて式 (5.11.20) を使うことができない。このような変数を危険な irrelevant 変数と呼ぶ。
場の量子論:有効電荷と真空偏極
場の量子論の授業では、QED の真空偏極を計算し、運動量移行 Q で測った有効電荷を
αeff(Q2)=1−3παlnme2Q2α(Q≫me)
の形で書く。ln(Q2/me2)=2ln(Q/me) なので、これは5.11.4の例題 (1) の 1/α(μ)=1/α−3π2ln(μ/me) で μ=Q と置いたものと同じである。授業ではこれを「ループの和(幾何級数)を取ったもの」として導くが、この章の見方では β 関数の微分方程式の解である。微分方程式で書くと、1ループの β 関数から ln の全部の冪(αnlnn)が足し上がる理由が見える。
表 5.11.3 授業の形とこの章の形| 授業の形 | この章の形 |
| ブロックスピン K′=R(K) | 殻の積分+尺度の取り替え、式 (5.11.8) |
| ν=ℓ/lnR′(K∗) | 固定点の固有値 ν=1/yt |
| スケーリング則(実験則) | fs の同次性 (5.11.20) からの恒等式 |
| 普遍性(経験則) | irrelevant な方向が消える |
| 有効電荷 αeff(Q2) | β(e) の解 (5.11.18) |
| くりこみ定数 Z の発散 | λ0 が μ によらないという条件 |
例題 5.11.6 2次元 Ising と平均場でスケーリング則を確かめる ★★
オリジナル2次元 Ising 模型の厳密な指数は α=0、βexp=81、γ=47、δ=15、ν=1、η=41 である(ν と α は Onsager(1944)、βexp は C. N. Yang (1952), Phys. Rev. 85, 808)。
- (1) 式 (5.11.23) の4つの関係が d=2 ですべて成り立つことを確かめよ。
- (2) yt=1、yh=15/8、d=2 を式 (5.11.21) に入れて、6つの指数を出し直せ。
- (3) 平均場の指数 (α,βexp,γ,δ,ν,η)=(0,21,1,3,21,0) で、4つの関係のうちどれが d によらず成り立ち、どれが特定の d でだけ成り立つか。
解答
(1) Rushbrooke:0+41+47=2。Widom:81×14=47。Fisher:1×(2−41)=47。Josephson:2−0=2=2×1。4つとも成り立つ。
(2) ν=1/1=1、α=2−2=0、βexp=2−815=81、γ=415−2=47、δ=1/815/8=15、η=4−415=41。6つの数が2つの数 yt,yh から出る。
(3) Rushbrooke 0+1+1=2、Widom 1=21×2、Fisher 1=21×2 は d によらず成り立つ。Josephson 2−0=d×21 は d=4 でだけ成り立つ。平均場の指数が次元によらないことと、ハイパースケーリングが次元を含むことの食い違いが、d=4 を特別な次元にしている。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com