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当てる道具:Wilson の粗視化

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第11章 くりこみ群
目次
  1. 一部の変数を積分して消す
  2. 尺度を戻す
  3. 固定点と固有値
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第11章 §5.11.2 ★★★ 短い波長の揺らぎを積分して消し、長さの尺度を戻す。この2段の操作で作用の係数が流れ、固定点とそのまわりの固有値が長距離の振る舞いを決める

一部の変数を積分して消す

第3部第3章のカノニカル分布で、変数を2組 (X,Y)(X,Y) に分けて YY だけについて積分すると、XX の分布は

e−βHeff(X)≔∫dY e−βH(X,Y)\mathrm{e}^{-\beta H_{\mathrm{eff}}(X)}\coloneqq\int\mathrm{d} Y\,\mathrm{e}^{-\beta H(X,Y)}

で定めた HeffH_{\mathrm{eff}} の形のカノニカル分布になる。Z=∫dX e−βHeff(X)Z=\int\mathrm{d} X\,\mathrm{e}^{-\beta H_{\mathrm{eff}}(X)} は元の ZZ と同じである。XX についての期待値は、HH で計算しても HeffH_{\mathrm{eff}} で計算しても同じ値になる。

Wilson は、この操作を場の Fourier 成分に当てた1K. G. Wilson (1971), Phys. Rev. B 4, 3174; 3184。ブロックスピンの考え方は L. P. Kadanoff (1966), Physics 2, 263。下の脚注へ。場を ϕ(x)=∫∣k∣<Λddk(2π)dϕ~(k)eik⋅x\phi(x)=\int_{\lvert k\rvert <\Lambda}\frac{\mathrm{d}^dk}{(2\pi)^d}\tilde\phi(k)\mathrm{e}^{\mathrm{i} k\cdot x} と書き、波数の殻 Λe−Δℓ<∣k∣<Λ\Lambda\mathrm{e}^{-\Delta\ell}<\lvert k\rvert <\Lambda にある成分を ϕ>\phi_>、それより内側を ϕ<\phi_< とする。ϕ=ϕ<+ϕ>\phi=\phi_<+\phi_> として

e−SE′[ϕ<]≔∫Dϕ> e−SE[ϕ<+ϕ>](5.11.6)\mathrm{e}^{-S'_{\mathrm E}[\phi_<]}\coloneqq\int\mathcal D\phi_>\,\mathrm{e}^{-S_{\mathrm E}[\phi_<+\phi_>]}\tag{5.11.6}

と定める。ϕ<\phi_< は切断が Λe−Δℓ\Lambda\mathrm{e}^{-\Delta\ell} の場なので、SE′S'_{\mathrm E} は切断が少し小さい理論の作用である。長い波長の相関関数は SE′S'_{\mathrm E} で計算しても変わらない。

尺度を戻す

SE′S'_{\mathrm E} と元の SES_{\mathrm E} を比べるには、切断を元の Λ\Lambda に揃える必要がある。そこで長さを eℓ\mathrm{e}^{\ell} 分の1に縮め(Δℓ\Delta\ell だけ進めたならx′=e−Δℓxx'=\mathrm{e}^{-\Delta\ell}x、k′=eΔℓkk'=\mathrm{e}^{\Delta\ell}k)、場の規格化を ϕ′(x′)=ζ ϕ<(x)\phi'(x')=\zeta\,\phi_<(x) と取り替えて、勾配の項の係数を 12\frac12 に戻す。この3段(分ける・積分する・尺度を戻す)をまとめてくりこみ群の変換と呼ぶ。1回の変換で、係数 (r,λ,g6,… )(r,\lambda,g_6,\dots) は新しい係数(r′,λ′,g6′,… )(r',\lambda',g_6',\dots) に写る。

積分する前の段階で、相互作用が無い(λ=0\lambda=0)場合を見ておく。このとき ϕ<\phi_< と ϕ>\phi_> は独立で、積分は定数を出すだけである。尺度の取り替えで ∫ddx (∇ϕ<)2=e(d−2)Δℓ∫ddx′ (∇′ϕ<)2\int\mathrm{d}^dx\,(\nabla\phi_<)^2=\mathrm{e}^{(d-2)\Delta\ell}\int\mathrm{d}^dx'\,(\nabla'\phi_<)^2 になるので、ζ=e(d−2)Δℓ/2\zeta=\mathrm{e}^{(d-2)\Delta\ell/2} と取れば勾配の項は元に戻る。同じ取り替えで ϕn\phi^n の項は edΔℓζ−n\mathrm{e}^{d\Delta\ell}\zeta^{-n} 倍され、

gn′=eynΔℓgn,yn=d−n d−22(5.11.7)g_n'=\mathrm{e}^{y_n\Delta\ell}g_n,\qquad y_n=d-n\,\frac{d-2}{2}\tag{5.11.7}

になる。指数 yny_n は式 (5.11.4) の係数の次元そのものである。yn>0y_n>0 の係数は変換を繰り返すと大きくなり(relevant)、yn<0y_n<0 の係数は小さくなる(irrelevant)。yn=0y_n=0 の係数(d=4d=4 の λ\lambda など)を marginal と呼ぶ。変換を連続的に繰り返したときの係数の変化を

dgidℓ=Bi(g)(5.11.8)\frac{\mathrm{d} g_i}{\mathrm{d} \ell}=B_i(g)\tag{5.11.8}

と書き、ℓ\ell をくりこみ群の時間、右辺をくりこみ群の流れと呼ぶ。ℓ\ell が増えるほど、理論は長い距離の振る舞いだけを見るようになる。

固定点と固有値

Bi(g∗)=0B_i(g^*)=0 となる点 g∗g^* を固定点と呼ぶ。固定点では、変換しても作用が変わらないので、長さの尺度を変えても同じ姿の理論である。一方、相関長は長さなので、1回の変換で ξ′=e−Δℓξ\xi'=\mathrm{e}^{-\Delta\ell}\xi と縮む。固定点では ξ′=ξ\xi'=\xi でなければならないから、ξ\xi は 00 か ∞\infty である。ξ=∞\xi=\infty の固定点が臨界点を表す。

固定点のまわりで g=g∗+Δgg=g^*+\Delta g と置き、式 (5.11.8) を1次まで展開すると dΔgidℓ=∑jMijΔgj\frac{\mathrm{d} \Delta g_i}{\mathrm{d} \ell}=\sum_jM_{ij}\Delta g_j、Mij=∂Bi/∂gj∣g∗M_{ij}=\partial B_i/\partial g_j|_{g^*} になる。MM の固有値を y1,y2,…y_1,y_2,\dots とすると、固有ベクトルの方向の成分は eyiℓ\mathrm{e}^{y_i\ell} で変わる。正の固有値の方向は固定点から離れていき、負の固有値の方向は固定点に近づいていく。温度を動かすと正の固有値 yty_t の方向の成分が tt に比例して変わるとする。ξ(t)=eℓξ(eytℓt)\xi(t)=\mathrm{e}^{\ell}\xi(\mathrm{e}^{y_t\ell}t) を eytℓ∣t∣=1\mathrm{e}^{y_t\ell}\lvert t\rvert =1 まで進めると

ξ∝∣t∣−1/yt,ν=1yt(5.11.9)\xi\propto\lvert t\rvert ^{-1/y_t},\qquad \nu=\frac{1}{y_t}\tag{5.11.9}

を得る。臨界指数は、固定点のまわりでの流れの固有値で決まる。

Hamilton の流れとの違い

式 (5.11.8) は、第1部第9章の生成子が作る流れと同じく、ベクトル場で決まる1径数の写像である。ただし、Hamilton の流れは時間を逆向きにたどることができ、第3部第1章の Liouville の定理のとおり相空間の体積を保つ。くりこみ群の変換は、積分して消した ϕ>\phi_> の情報を捨てるので逆にたどることができない。数学の言葉では群でなく半群である。固定点に近づく方向があること、すなわち多くの異なる出発点が同じ長距離の振る舞いに行き着くことは、この不可逆性による。

例題 5.11.2 1次元 Ising 模型の間引き ★★★

オリジナル1次元の Ising 模型 βH=−K∑isisi+1\beta H=-K\sum_is_is_{i+1}(si=±1s_i=\pm1、K=βJK=\beta J)で、偶数番目のスピンについて和を取って消す。

  1. (1) s1,s3s_1,s_3 を固定して s2s_2 について和を取ると ∑s2eKs2(s1+s3)=A eK′s1s3\sum_{s_2}\mathrm{e}^{Ks_2(s_1+s_3)}=A\,\mathrm{e}^{K's_1s_3} と書けることを示し、K′K' と AA を KK で表せ。
  2. (2) tanh⁡K′=tanh⁡2K\tanh K'=\tanh^2K を示せ。K=1K=1 から始めて3回変換したときの KK の列を求めよ。
  3. (3) 1次元 Ising 模型の相関長(格子間隔を単位にしたもの)は ξ(K)=−1/ln⁡tanh⁡K\xi(K)=-1/\ln\tanh K である。ξ(K′)=ξ(K)/2\xi(K')=\xi(K)/2 を確かめ、K=1K=1 で数値を求めよ。
  4. (4) 固定点をすべて求め、それぞれ安定か不安定かを答えよ。有限の温度で相転移が起きないことを、この流れから説明せよ。
解答

(1) s1=s3s_1=s_3 のとき左辺は 2cosh⁡2K2\cosh2K、s1=−s3s_1=-s_3 のとき 22 である。右辺はそれぞれ AeK′A\mathrm{e}^{K'} と Ae−K′A\mathrm{e}^{-K'} なので、比から e2K′=cosh⁡2K\mathrm{e}^{2K'}=\cosh2K、積から A2=4cosh⁡2KA^2=4\cosh2K。すなわち K′=12ln⁡cosh⁡2KK'=\frac12\ln\cosh2K、A=2cosh⁡2KA=2\sqrt{\cosh2K}。ln⁡A\ln A は自由エネルギーへの定数の寄与で、K=1K=1 では ln⁡2+12ln⁡cosh⁡2=1.3556\ln2+\frac12\ln\cosh2=1.3556 である。

(2) tanh⁡K′=e2K′−1e2K′+1=cosh⁡2K−1cosh⁡2K+1=2sinh⁡2K2cosh⁡2K=tanh⁡2K\tanh K'=\dfrac{\mathrm{e}^{2K'}-1}{\mathrm{e}^{2K'}+1}=\dfrac{\cosh2K-1}{\cosh2K+1}=\dfrac{2\sinh^2K}{2\cosh^2K}=\tanh^2K。K=1K=1 から K′=0.6625K'=0.6625、K′′=0.3501K''=0.3501、K′′′=0.1137K'''=0.1137。結合は変換のたびに急速に弱くなる。

(3) ξ(K′)=−1/ln⁡tanh⁡2K=−1/(2ln⁡tanh⁡K)=ξ(K)/2\xi(K')=-1/\ln\tanh^2K=-1/(2\ln\tanh K)=\xi(K)/2。格子間隔を2倍にしたので、格子間隔を単位にした相関長は半分になる。これは式 (5.11.7) の前で述べた ξ′=e−Δℓξ\xi'=\mathrm{e}^{-\Delta\ell}\xi(eΔℓ=2\mathrm{e}^{\Delta\ell}=2)そのものである。K=1K=1 では tanh⁡1=0.7616\tanh1=0.7616、ξ=3.672\xi=3.672、ξ(K′)=1.836\xi(K')=1.836。

(4) tanh⁡K∗=tanh⁡2K∗\tanh K^*=\tanh^2K^* から tanh⁡K∗=0\tanh K^*=0 か 11、すなわち K∗=0K^*=0(無限に高い温度)と K∗=∞K^*=\infty(絶対零度)。0<tanh⁡K<10<\tanh K<1 では tanh⁡2K<tanh⁡K\tanh^2K<\tanh K なので、どこから始めても KK は減って 00 に向かう。K∗=0K^*=0 は安定、K∗=∞K^*=\infty は不安定である。ξ=∞\xi=\infty の固定点は K=∞K=\infty だけで、有限の KK はすべて ξ<∞\xi<\infty の K=0K=0 へ流れるので、有限の温度で相関長が発散する点(相転移)は無い。第3部第7章で平均場近似が1次元でも相転移を予言したのと対照的である。

1 K. G. Wilson (1971), Phys. Rev. B 4, 3174; 3184。ブロックスピンの考え方は L. P. Kadanoff (1966), Physics 2, 263。

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