解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第11章 §5.11.5 ★★★ 固定点のまわりで自由エネルギーは fs(t,h)=e−dℓfs(eytℓt,eyhℓh) を満たす。そこから6つの指数がすべて yt,yh の2つで決まり、4つのスケーリング則が出る
特異部分の同次性
臨界点の近くの自由エネルギー密度(kBT で割ったもの)を、解析的な部分と特異な部分 fs に分ける。くりこみ群の変換は Z を変えないので、ℓ だけ進めると体積が e−dℓ 倍になる分、1体積あたりの自由エネルギーは edℓ 倍になる。固定点のまわりで、温度と外場の方向の成分はt→eytℓt、h→eyhℓh と変わるので
fs(t,h)=e−dℓfs(eytℓt,eyhℓh)(5.11.20)
が成り立つ。eytℓ∣t∣=1 と選ぶと fs(t,h)=∣t∣d/ytΦ(h/∣t∣yh/yt) となり、関数 Φ は1変数の関数である。
外場 h は ϕ に結合する(作用に −h∫ϕ を足す)ので、yh は ϕ の次元で決まる。[ϕ]=(d−2+η)/2 と書くと yh=d−[ϕ]=(d+2−η)/2 で、1ループでは η=0、yh=(d+2)/2=3−ϵ/2 である。
6つの指数
式 (5.11.20) を微分すると、指数がすべて決まる。比熱は ∂2fs/∂t2∝∣t∣d/yt−2、磁化は ∂fs/∂h∝∣t∣(d−yh)/yt、磁化率は ∂2fs/∂h2∝∣t∣(d−2yh)/yt、t=0 では fs∝hd/yh から m∝h(d−yh)/yh である。第3部第10章の定義と並べて
α=2−ytd,βexp=ytd−yh,γ=yt2yh−d,δ=d−yhyh,ν=yt1,η=d+2−2yh(5.11.21)
を得る。ここに 1 ループの yt=2−ϵ/3、yh=3−ϵ/2 を入れて ϵ の1次まで展開すると
α=6ϵ,βexp=21−6ϵ,γ=1+6ϵ,δ=3+ϵ,ν=21+12ϵ,η=0(5.11.22)
になる。ϵ=0(d=4)では Gauss 固定点の yt=2、yh=3 から平均場の値 (0,21,1,3,21,0) が出る。表 5.11.2 に3つを並べる。
表 5.11.2 臨界指数。平均場は第3部第10章の Landau 理論、ϵ の1次は式 (5.11.22) に ϵ=1 を入れた値、3次元 Ising は第3部第10章の表と同じく Kos ら(2016)のスケーリング次元から計算した値| 指数 | 平均場 | ϵ の1次(ϵ=1) | 3次元 Ising |
| α | 0 | 0.167 | 0.110 |
| βexp | 0.5 | 0.333 | 0.326 |
| γ | 1 | 1.167 | 1.237 |
| δ | 3 | 4 | 4.79 |
| ν | 0.5 | 0.583 | 0.630 |
| η | 0 | 0 | 0.036 |
ϵ=1 は小さいパラメータとは言いがたいが、1次の項だけで、η を除く5つの指数が平均場の値から3次元 Ising の値の向きへ動き、α 以外では差の半分以上に達する(α は行き過ぎる)。図 5.11.3 に ν を次元 d の関数として示す。

図 5.11.3 相関長の指数 ν と次元 d。実線は ϵ の1次の展開、破線は 1/yt を展開せずに使ったもの(どちらも近似)。黒丸は d=4 の平均場、d=3 の Ising(Kos ら 2016 から計算)、d=2 の Ising(Onsager の厳密解)。d=4 から離れるほど1次の展開との差は大きくなる
2次元 Ising の値は L. Onsager (1944), Phys. Rev. 65, 117 の厳密解による(ν=1、α=0 は比熱の対数発散)。
普遍性
式 (5.11.21) の指数は、固定点での yt,yh だけで決まり、出発点の作用の細部(Λ、u の値、ϕ6 の係数、格子の形)によらない。細部の違いは irrelevant な方向の成分で、変換を繰り返すと eyℓ(y<0)で消えていくからである。同じ固定点に流れ込む系は同じ指数を持ち、これを普遍性クラスと呼ぶ。何が普遍性クラスを決めるかは、固定点の位置と relevant な方向の数を決めるもの、すなわち空間の次元 d と秩序変数の成分の数・対称性である。一軸の磁性体と液体・気体の臨界点は、どちらも1成分で ϕ→−ϕ の対称性(液体・気体では臨界点の近くでだけ現れる近似的な対称性)を持つので、3次元 Ising の普遍性クラスに属する。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの ϵ=4−d→0(ϵ=1 まで外挿する) | 証明 要確認(ϵ 展開は収束せず漸近級数にとどまると考えられている。ϵ=1 での値は打ち切りの次数と総和の方法による。収束と Borel 総和の可否は原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第1章
例題 5.11.5 ϵ=1 の指数を2通りに出す ★★
オリジナル
- (1) yt=5/3、yh=5/2、d=3 を式 (5.11.21) にそのまま入れて、α,βexp,γ,δ,ν を求めよ。
- (2) (1) の値と、式 (5.11.22) に ϵ=1 を入れた値の、どちらが3次元 Ising に近いか。指数ごとに比べよ。
- (3) (1) の値が α+2βexp+γ=2 と 2−α=dν を満たすことを確かめよ。式 (5.11.22) の値は ϵ の何次まで満たすか。
解答
(1) ν=3/5=0.6、α=2−3⋅53=0.2、βexp=(3−25)⋅53=0.3、γ=(5−3)⋅53=1.2、δ=1/25/2=5。
(2) 3次元 Ising(α=0.110、βexp=0.326、γ=1.237、δ=4.79、ν=0.630)と比べると、(1) は γ,δ,ν で近く、1次の展開(0.167,0.333,1.167,4,0.583)は α,βexp で近い。どちらかが一様に良いわけではない。どちらも ϵ の1次までしか正しくなく、2次の項の扱いが違うだけなので、この差は5.11.3の例題で見た1ループの不確かさと同じ種類のものである。
(3) (1) では 0.2+0.6+1.2=2、2−0.2=1.8=3×0.6 で、どちらも厳密に満たす。式 (5.11.21) から作った値は、yt,yh が何であっても関係式を満たす(5.11.6節)。式 (5.11.22) では 6ϵ+1−3ϵ+1+6ϵ=2 で Rushbrooke は厳密に、dν=(4−ϵ)(21+12ϵ)=2−6ϵ−12ϵ2 でJosephson は ϵ の1次まで満たす。展開で打ち切った式は、関係式を打ち切った次数までしか満たさない。
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