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例題:空間一様 BGK と Knudsen 数の見積もり

2026年10月9日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8章 Boltzmann 方程式から流体方程式へ

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第8章 §8.10 ★★ H 定理を目で見る数値例と、流体近似が使える長さの見積もり

例題 8.11 空間一様 BGK の緩和と H の減少 ★★

オリジナル空間的に一様な BGK 方程式 ∂tf=(Mf−f)/τ\partial_tf=(M_f-f)/\tau を考える。

  1. MfM_f は時間によらないことを示し、解を f(t)=M+(f0−M)e−t/τf(t)=M+(f_0-M)\mathrm{e}^{-t/\tau}(M=Mf0M=M_{f_0})と求めよ。
  2. H(t)=∫fln⁡f dvH(t)=\int f\ln f\,\mathrm{d}\bm{v} が単調に減少することを、HH の凸性から示せ。
  3. 長時間で H(t)−H(M)H(t)-H(M) が e−2t/τ\mathrm{e}^{-2t/\tau} に比例して減ることを示せ。
解答

(1) ∫(Mf−f)ϕ=0\int(M_f-f)\phi=0(ϕ=1,v,∣v∣2\phi=1,\bm{v},\lvert \bm{v}\rvert ^2)なので、ff の n,u,Tn,\bm{u},T は時間によらず、Mf=MM_f=M は定数である。すると方程式は ∂t(f−M)=−(f−M)/τ\partial_t(f-M)=-(f-M)/\tau という線型の常微分方程式になり、f−M=(f0−M)e−t/τf-M=(f_0-M)\mathrm{e}^{-t/\tau}。

(2) θ=e−t/τ∈(0,1]\theta=\mathrm{e}^{-t/\tau}\in(0,1] と置くと f=θf0+(1−θ)Mf=\theta f_0+(1-\theta)M。Φ(θ)=H(θf0+(1−θ)M)\Phi(\theta)=H(\theta f_0+(1-\theta)M) は、s↦sln⁡ss\mapsto s\ln s が凸なので θ\theta について凸である。f0f_0 と MM は同じモーメントを持つので、例題 8.3 から Φ(θ)≥Φ(0)\Phi(\theta)\ge\Phi(0)。凸関数が θ=0\theta=0 で最小値を取るので Φ\Phi は [0,1][0,1] で非減少であり、θ\theta は tt について減少するから H(t)H(t) は tt について非増加である(f0≠Mf_0\neq M なら狭義凸性から狭義減少)。

(3) f=M(1+θh)f=M(1+\theta h)、h=(f0−M)/Mh=(f_0-M)/M と書く。∫Mhϕ=0\int Mh\phi=0(ϕ=1,v,∣v∣2\phi=1,\bm{v},\lvert \bm{v}\rvert ^2)であり、ln⁡M\ln M はこれらの線型結合なので

H(t)−H(M)=∫M(1+θh)ln⁡(1+θh) dv=∫M(θh+θ2h22+O(θ3))dv=θ22∫Mh2 dv+O(θ3).\begin{aligned}H(t)-H(M)&=\int M(1+\theta h)\ln(1+\theta h)\,\mathrm{d}\bm{v}=\int M\Bigl(\theta h+\frac{\theta^2h^2}{2}+\mathcal{O}(\theta^3)\Bigr)\mathrm{d}\bm{v}\\ &=\frac{\theta^2}{2}\int Mh^2\,\mathrm{d}\bm{v}+\mathcal{O}(\theta^3).\end{aligned}

1 次の項は ∫Mh=0\int Mh=0 で消える。θ2=e−2t/τ\theta^2=\mathrm{e}^{-2t/\tau} なので、HH は分布そのもの(e−t/τ\mathrm{e}^{-t/\tau})の 2 倍の速さで平衡値へ近づく。

図 8.2 は、1 次元速度で、±2\pm2 を中心とする幅 0.50.5 の 2 つの Gauss 分布を重ねた初期値(温度は 0.52+22=4.250.5^2+2^2=4.25)の緩和である。数値解(Runge–Kutta 法)が厳密解と一致し、HH が単調に減り、t=τt=\tau から 2τ2\tau で H−H(M)H-H(M) がおよそ e2\mathrm{e}^{2} 分の 1 になることを確かめた(検算スクリプト、データ scripts/gen_ch08.py)。

図

図 8.2 空間一様 BGK 方程式の緩和。左:速度分布が双峰の初期値から Maxwell 分布へ近づく。右:H(t)−H(M)H(t)-H(M)(対数目盛)。単調に減少し、長時間では e−2t/τ\mathrm{e}^{-2t/\tau}(破線)に従う。

例題 8.12 空気の Knudsen 数と流体近似の適用範囲 ★★

オリジナル空気を、20 ∘C20\,{}^\circ\mathrm{C}、11 気圧(101325 Pa101325\,\mathrm{Pa})、有効直径 d=0.37 nmd=0.37\,\mathrm{nm}、分子量 28.9728.97 の剛体球気体とみなす。平均自由行程は λ=1/(2 nπd2)\lambda=1/(\sqrt2\,n\pi d^2) である(2\sqrt2 は Maxwell 分布での平均相対速さが平均の速さの 2\sqrt2 倍であることに由来する)。

  1. 数密度 nn と平均自由行程 λ\lambda を求めよ。
  2. 管の径 L=1 mmL=1\,\mathrm{mm} と L=1 μmL=1\,\mu\mathrm{m} での Knudsen 数を求めよ。
  3. 同じ温度で圧力を 1 Pa1\,\mathrm{Pa} に下げた真空容器では λ\lambda はいくらか。
  4. 目安として、Kn<0.01\mathrm{Kn}<0.01 なら Navier–Stokes 方程式、0.01<Kn<0.10.01<\mathrm{Kn}<0.1 なら壁での滑りの境界条件を付けた Navier–Stokes 方程式、それより大きければ Boltzmann 方程式に基づく扱いが要るとされる。(2)(3) の状況はそれぞれどれに当たるか。
解答

(1) n=p/(kBT)=101325/(1.381×10−23×293.15)≈2.50×1025 m−3n=p/( k_{\mathrm B} T)=101325/(1.381\times10^{-23}\times293.15)\approx2.50\times10^{25}\,\mathrm{m^{-3}}。πd2=π×(0.37×10−9)2≈4.30×10−19 m2\pi d^2=\pi\times(0.37\times10^{-9})^2\approx4.30\times10^{-19}\,\mathrm{m^2} なので

λ=11.414×2.50×1025×4.30×10−19≈6.6×10−8 m=66 nm.\lambda=\frac{1}{1.414\times2.50\times10^{25}\times4.30\times10^{-19}}\approx6.6\times10^{-8}\,\mathrm{m}=66\,\mathrm{nm}.

粘性率の実測値 μ=1.81×10−5 Pa s\mu=1.81\times10^{-5}\,\mathrm{Pa\,s} から λ=(μ/p)πkBT/(2m)\lambda=(\mu/p)\sqrt{\pi k_{\mathrm B} T/(2m)} で逆算しても約 65 nm65\,\mathrm{nm} となり、同じ桁である(検算スクリプト)。分子の平均の速さは cˉ=8kBT/(πm)≈463 m/s\bar c=\sqrt{8 k_{\mathrm B} T/(\pi m)}\approx463\,\mathrm{m/s} なので、平均自由時間は λ/cˉ≈0.14 ns\lambda/\bar c\approx0.14\,\mathrm{ns} である。

(2) L=1 mmL=1\,\mathrm{mm} で Kn≈6.6×10−5\mathrm{Kn}\approx6.6\times10^{-5}、L=1 μmL=1\,\mu\mathrm{m} で Kn≈0.066\mathrm{Kn}\approx0.066。

(3) λ∝1/n∝1/p\lambda\propto1/n\propto1/p なので λ≈66 nm×101325≈6.7 mm\lambda\approx66\,\mathrm{nm}\times101325\approx6.7\,\mathrm{mm}。

(4) 1 mm の管の大気圧の流れは Navier–Stokes 方程式の範囲に十分入る。1 μm の流路(微小機械の内部など)は滑りの境界条件が要る領域に入る。1 Pa の真空容器では、径が数 cm の容器でも Kn∼0.1\mathrm{Kn}\sim0.1 以上になり、流体方程式でなく Boltzmann 方程式(あるいは粒子法)で扱う必要がある。地上の日常の流れで流体近似が非常によく成り立つのは、λ\lambda が 0.1 μm0.1\,\mu\mathrm{m} 程度と極めて短いからである。

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