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2次までは夢がかなう

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第10部 第1章 Dirac の夢と Groenewold–van Hove の定理
目次
  1. 2次以下の多項式は括弧で閉じている
  2. Weyl 順序
  3. 2次以下では写像がただ1つに決まる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第10部 第1章 §10.1.2 ★★★ q,pq,p の2次以下の多項式では要請 (Q1)〜(Q4) が厳密に成り立ち、しかも写像がただ1つに決まる(Weyl 順序)

2次以下の多項式は括弧で閉じている

q,pq,p の2次以下の多項式全体を P≤2\mathcal P_{\le2} と書く。基底は 1,q,p,q2,qp,p21,q,p,q^2,qp,p^2 の6つである。Poisson 括弧は微分を1回ずつ取るので、mm 次と nn 次の多項式の括弧は m+n−2m+n-2 次になる。2次と2次の括弧は2次なので、P≤2\mathcal P_{\le2} は括弧について閉じている。基本の括弧を並べると

{q2,p2}=4qp,{qp,q2}=−2q2,{qp,p2}=2p2,{q,qp}=q,{p,qp}=−p(10.1.2)\{q^2,p^2\}=4qp,\qquad \{qp,q^2\}=-2q^2,\qquad \{qp,p^2\}=2p^2,\qquad \{q,qp\}=q,\qquad \{p,qp\}=-p\tag{10.1.2}

である。2次の多項式 qpqp は相空間の伸縮(q↦eϵqq\mapsto\mathrm{e}^{\epsilon}q, p↦e−ϵpp\mapsto\mathrm{e}^{-\epsilon}p)の生成子で、12(q2+p2)\frac12(q^2+p^2) は回転の生成子である。2次の多項式の括弧の代数は、相空間の面積を保つ線形変換の群(シンプレクティック群 Sp(2,R)\mathrm{Sp}(2,\mathbb{R}))のLie 代数になっている。1次の q,pq,p と定数 11 を加えると、並進も含めた「相空間のアフィンな正準変換」の生成子がそろう。

Weyl 順序

qpqp を演算子に直すとき、q^p^\hat q\hat p はエルミートでない。実際 (q^p^)†=p^q^=q^p^−iℏ(\hat q\hat p)^\dagger=\hat p\hat q=\hat q\hat p-\mathrm{i}\hbar である。エルミートにするには対称化して

D^≔12(q^p^+p^q^)=q^p^−iℏ2=−iℏ(xddx+12)(10.1.3)\hat D\coloneqq\frac12(\hat q\hat p+\hat p\hat q)=\hat q\hat p-\frac{\mathrm{i}\hbar}{2}=-\mathrm{i}\hbar\Bigl(x\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} x}+\frac12\Bigr)\tag{10.1.3}

とすればよい。一般に、単項式 qapbq^ap^b を「q^\hat q と p^\hat p のあらゆる並べ方の平均」で写す規則を Weyl 順序と呼び、QW[qapb]\mathcal Q_{\mathrm W}[q^ap^b] と書く(Weyl 順序の写像は第5部と同じく角括弧で書き、要請を課す一般の写像 Q(f)\mathcal Q(f) と区別する)。aa 個の q^\hat q を p^b\hat p^b の左右に二項分布で振り分けた形

QW[qapb]=12a∑k=0a(ak)q^ k p^ b q^ a−k(10.1.4)\mathcal Q_{\mathrm W}[q^ap^b]=\frac{1}{2^a}\sum_{k=0}^{a}\binom{a}{k}\hat q^{\,k}\,\hat p^{\,b}\,\hat q^{\,a-k}\tag{10.1.4}

に等しいことが知られている(N. H. McCoy の公式。p^\hat p の側を振り分けた形とも一致する。a,b≤3a,b\le3 で検算した)。例えば QW[qp]=D^\mathcal Q_{\mathrm W}[qp]=\hat D、QW[q2p]=12(q^2p^+p^q^2)\mathcal Q_{\mathrm W}[q^2p]=\frac12(\hat q^2\hat p+\hat p\hat q^2) である。Weyl 順序は第5部の Weyl 対応(第5部第2章)を多項式に制限したもので、この巻の補足の表で決めた Weyl 記号 AW(x,p)A_{\mathrm W}(x,p) の逆向きの写像にあたる。

命題 10.1.2(2次以下では括弧が厳密に保たれる ★★★)

f,g∈P≤2f,g\in\mathcal P_{\le2} ならば

1iℏ[QW[f], QW[g]]=QW[{f,g}].(10.1.5)\frac{1}{\mathrm{i}\hbar}\left[\mathcal Q_{\mathrm W}[f],\,\mathcal Q_{\mathrm W}[g]\right]=\mathcal Q_{\mathrm W}[\{f,g\}].\tag{10.1.5}

したがって QW\mathcal Q_{\mathrm W} を P≤2\mathcal P_{\le2} に制限したものは (Q1)〜(Q4) をすべて満たす。

証明

両辺とも f,gf,g について双線形なので、基底 1,q,p,q2,qp,p21,q,p,q^2,qp,p^2 の組について確かめればよい。11 を含む組は両辺とも 00 である。1次と1次は [q^, p^]/(iℏ)=1^=QW[{q,p}]\left[\hat q,\,\hat p\right]/(\mathrm{i}\hbar)=\hat 1=\mathcal Q_{\mathrm W}[\{q,p\}]。1次と2次は、[q^, p^2]=2iℏp^\left[\hat q,\,\hat p^2\right]=2\mathrm{i}\hbar\hat p、[p^, q^2]=−2iℏq^\left[\hat p,\,\hat q^2\right]=-2\mathrm{i}\hbar\hat q、[q^, D^]=iℏq^\left[\hat q,\,\hat D\right]=\mathrm{i}\hbar\hat q、[p^, D^]=−iℏp^\left[\hat p,\,\hat D\right]=-\mathrm{i}\hbar\hat p から古典の {q,p2}=2p\{q,p^2\}=2p, {p,q2}=−2q\{p,q^2\}=-2q, {q,qp}=q\{q,qp\}=q, {p,qp}=−p\{p,qp\}=-p と一致する。2次と2次は、[q^2, p^2]=q^[q^, p^2]+[q^, p^2]q^=2iℏ(q^p^+p^q^)=4iℏD^\left[\hat q^2,\,\hat p^2\right]=\hat q\left[\hat q,\,\hat p^2\right]+\left[\hat q,\,\hat p^2\right]\hat q=2\mathrm{i}\hbar(\hat q\hat p+\hat p\hat q)=4\mathrm{i}\hbar\hat D が{q2,p2}=4qp\{q^2,p^2\}=4qp に対応し、[D^, q^2]=q^[D^, q^]+[D^, q^]q^=−2iℏq^2\left[\hat D,\,\hat q^2\right]=\hat q\left[\hat D,\,\hat q\right]+\left[\hat D,\,\hat q\right]\hat q=-2\mathrm{i}\hbar\hat q^2 が {qp,q2}=−2q2\{qp,q^2\}=-2q^2 に、同様に [D^, p^2]=2iℏp^2\left[\hat D,\,\hat p^2\right]=2\mathrm{i}\hbar\hat p^2 が {qp,p2}=2p2\{qp,p^2\}=2p^2 に対応する。残りの組は反対称性から従う。(Q2) は Weyl 順序が並べ方の平均なのでエルミート共役で不変であることから、(Q4) は QW[q]=q^\mathcal Q_{\mathrm W}[q]=\hat q, QW[p]=p^\mathcal Q_{\mathrm W}[p]=\hat p から従う。

2次で破れが出ない理由は、交換子の計算で q^\hat q と p^\hat p を入れ替えるたびに出る iℏ\mathrm{i}\hbar の項が、2次以下では1回しか出ないことにある。交換子 [q^2, p^2]\left[\hat q^2,\,\hat p^2\right] では入れ替えが2回起きるが、そのうち1回分は交換子そのものになって左辺の iℏ\mathrm{i}\hbar で割られ、残りの1回分は対称化 D^\hat D の中に吸収される。ℏ2\hbar^2 の項が残るには、入れ替えが3回以上起きる必要がある。10.1.5節で、この数え方が Moyal 括弧の ℏ2\hbar^2 の項として正確に書けることを見る。

2次以下では写像がただ1つに決まる

命題 10.1.2 は「Weyl 順序なら要請を満たす」と言っている。逆に、要請を満たす写像は Weyl 順序しかない。

補題 10.1.3(2次以下での一意性 ★★★)

Q\mathcal Q が P≤2\mathcal P_{\le2} の上で (Q1)〜(Q4) を満たすなら、Q=QW\mathcal Q=\mathcal Q_{\mathrm W} である。すなわち

Q(q2)=q^2,Q(p2)=p^2,Q(qp)=D^.(10.1.6)\mathcal Q(q^2)=\hat q^2,\qquad \mathcal Q(p^2)=\hat p^2,\qquad \mathcal Q(qp)=\hat D.\tag{10.1.6}

証明

{q2,q}=0\{q^2,q\}=0 と {q2,p}=2q\{q^2,p\}=2q に (Q3) を当てると、[Q(q2), q^]=0\left[\mathcal Q(q^2),\,\hat q\right]=0 と [Q(q2), p^]=2iℏq^\left[\mathcal Q(q^2),\,\hat p\right]=2\mathrm{i}\hbar\hat q を得る。q^2\hat q^2 も同じ2つの関係を満たすので、差 Q(q2)−q^2\mathcal Q(q^2)-\hat q^2 は q^\hat q とも p^\hat p とも交換し、(Q4) から定数 α\alpha の倍になる。同じ議論を {p2,p}=0\{p^2,p\}=0, {p2,q}=−2p\{p^2,q\}=-2p に当てると Q(p2)=p^2+β\mathcal Q(p^2)=\hat p^2+\beta、{qp,q}=−q\{qp,q\}=-q, {qp,p}=p\{qp,p\}=p に当てると Q(qp)=D^+γ\mathcal Q(qp)=\hat D+\gamma を得る。あとは定数 α,β,γ\alpha,\beta,\gamma を決めればよい。

{q2,p2}=4qp\{q^2,p^2\}=4qp に (Q3) を当てると、定数は交換子に入らないので左辺は [q^2, p^2]/(iℏ)=4D^\left[\hat q^2,\,\hat p^2\right]/(\mathrm{i}\hbar)=4\hat D、右辺は 4(D^+γ)4(\hat D+\gamma) となり、γ=0\gamma=0。次に {qp,q2}=−2q2\{qp,q^2\}=-2q^2 に当てると、左辺は [D^, q^2]/(iℏ)=−2q^2\left[\hat D,\,\hat q^2\right]/(\mathrm{i}\hbar)=-2\hat q^2、右辺は −2(q^2+α)-2(\hat q^2+\alpha) で、α=0\alpha=0。同様に {qp,p2}=2p2\{qp,p^2\}=2p^2 から β=0\beta=0 を得る。

定数のずれを伸縮の生成子 qpqp との括弧で消している点に注意する。{qp,q2}=−2q2\{qp,q^2\}=-2q^2 は「q2q^2 は伸縮で2倍の重みを持つ」という意味で、定数は伸縮で重み 00 なので、重みの釣り合いから定数が 00 に決まる。10.1.3節でも同じ論法を使う。

例題 10.1.2 q^p^\hat q\hat p を選ぶとどこで破れるか ★★

オリジナルqpqp の量子化として q^p^\hat q\hat p を選んだ写像 Q′\mathcal Q'(Q′(q2)=q^2\mathcal Q'(q^2)=\hat q^2, Q′(p2)=p^2\mathcal Q'(p^2)=\hat p^2, Q′(qp)=q^p^\mathcal Q'(qp)=\hat q\hat p)を考える。

  1. (1) Q′\mathcal Q' が (Q2) を破ることを示せ。
  2. (2) [Q′(q2), Q′(p2)]/(iℏ)\left[\mathcal Q'(q^2),\,\mathcal Q'(p^2)\right]/(\mathrm{i}\hbar) と Q′({q2,p2})\mathcal Q'(\{q^2,p^2\}) を比べ、(Q3) も破れることを示せ。
  3. (3) Q′(qp)\mathcal Q'(qp) に定数 cc を足して (Q3) を回復できるか。回復できるなら cc を求め、そのとき (Q2) がどうなるか述べよ。
解答

(1) (q^p^)†=p^†q^†=p^q^=q^p^−iℏ≠q^p^(\hat q\hat p)^\dagger=\hat p^\dagger\hat q^\dagger=\hat p\hat q=\hat q\hat p-\mathrm{i}\hbar\ne\hat q\hat p なので、実数値の qpqp がエルミートでない演算子に写る。

(2) 左辺は命題 10.1.2 の計算から 4D^=4q^p^−2iℏ4\hat D=4\hat q\hat p-2\mathrm{i}\hbar。右辺は Q′(4qp)=4q^p^\mathcal Q'(4qp)=4\hat q\hat p。差は −2iℏ 1^-2\mathrm{i}\hbar\,\hat 1 で、(Q3) が破れる。

(3) Q′(qp)=q^p^+c\mathcal Q'(qp)=\hat q\hat p+c とすると、(2) の右辺は 4q^p^+4c4\hat q\hat p+4c になるので c=−iℏ/2c=-\mathrm{i}\hbar/2 で一致する。このとき Q′(qp)=q^p^−iℏ/2=D^\mathcal Q'(qp)=\hat q\hat p-\mathrm{i}\hbar/2=\hat D(式 (10.1.3))となり、エルミートになる。つまり (Q3) を回復させると、自動的に Weyl 順序に戻り (Q2) も回復する。補題 10.1.3 の一意性の具体例である。

木下の勉強ステータス

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