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食い違いは ℏ2\hbar^2 の大きさ:Moyal 括弧と順序の差

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第10部 第1章 Dirac の夢と Groenewold–van Hove の定理
目次
  1. Weyl 順序が厳密に写す括弧
  2. 順序の選び方の差も の大きさ
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第10部 第1章 §10.1.5 ★★ Weyl 順序の交換子は Poisson 括弧でなく Moyal 括弧を写す。Groenewold の ℏ2/3\hbar^2/3 も、順序の選び方の差も、ℏ2\hbar^2 の項として読める

Weyl 順序が厳密に写す括弧

Weyl 順序 QW\mathcal Q_{\mathrm W} はすべての多項式を写せて、(Q1)・(Q2)・(Q4) を満たす。破れるのは (Q3) だけである。破れ方には正確な形があり、Poisson 括弧の代わりに Moyal 括弧

{ ⁣{f,g} ⁣}=f⋆g−g⋆fiℏ,f⋆g=fexp⁡[iℏ2(∂q←∂p→−∂p←∂q→)]g(10.1.12)\{\!\{f,g\}\!\}=\frac{f\star g-g\star f}{\mathrm{i}\hbar},\qquad f\star g=f\exp\Bigl[\frac{\mathrm{i}\hbar}{2}\bigl(\overleftarrow{\partial_q}\overrightarrow{\partial_p}-\overleftarrow{\partial_p}\overrightarrow{\partial_q}\bigr)\Bigr]g\tag{10.1.12}

を使えば厳密に

1iℏ[QW[f], QW[g]]=QW[{ ⁣{f,g} ⁣}](10.1.13)\frac{1}{\mathrm{i}\hbar}\left[\mathcal Q_{\mathrm W}[f],\,\mathcal Q_{\mathrm W}[g]\right]=\mathcal Q_{\mathrm W}\bigl[\{\!\{f,g\}\!\}\bigr]\tag{10.1.13}

が成り立つ(J. E. Moyal1J. E. Moyal (1949), Proc. Cambridge Philos. Soc. 45, 99–124.下の脚注へ。⋆\star 積と Moyal 括弧の導出は 第5部第3章)。指数関数を展開すると、ℏ\hbar の奇数冪の項は f⋆g−g⋆ff\star g-g\star f で倍になり、偶数冪の項は打ち消し合うので

{ ⁣{f,g} ⁣}={f,g}−ℏ224(fqqq gppp−3fqqp gqpp+3fqpp gqqp−fppp gqqq)+O(ℏ4)(10.1.14)\{\!\{f,g\}\!\}=\{f,g\}-\frac{\hbar^2}{24}\Bigl(f_{qqq}\,g_{ppp}-3f_{qqp}\,g_{qpp}+3f_{qpp}\,g_{qqp}-f_{ppp}\,g_{qqq}\Bigr)+\mathcal{O}(\hbar^4)\tag{10.1.14}

となる(添字は偏微分)。ℏ2\hbar^2 の項は ff と gg を3階ずつ微分するので、どちらかが2次以下なら消え、命題 10.1.2 が再び出てくる。10.1.2節で「入れ替えが3回以上起きると ℏ2\hbar^2 が残る」と述べたことの正確な形が、この3階微分である。多項式どうしなら展開は有限項で終わり、4次以下の単項式どうしでは ℏ4\hbar^4 の項が出ないことを検算で確かめた。

Groenewold の矛盾をこの式で読み直す。{ ⁣{q3,p3} ⁣}=9q2p2−ℏ224⋅6⋅6=9q2p2−32ℏ2\{\!\{q^3,p^3\}\!\}=9q^2p^2-\frac{\hbar^2}{24}\cdot6\cdot6=9q^2p^2-\frac32\hbar^2、{ ⁣{q2p,qp2} ⁣}=3q2p2−ℏ224⋅(−3⋅2⋅2)=3q2p2+12ℏ2\{\!\{q^2p,qp^2\}\!\}=3q^2p^2-\frac{\hbar^2}{24}\cdot(-3\cdot2\cdot2)=3q^2p^2+\frac12\hbar^2 である。したがって [q^3, p^3]/(9iℏ)=QW[q2p2]−ℏ2/6\left[\hat q^3,\,\hat p^3\right]/(9\mathrm{i}\hbar)=\mathcal Q_{\mathrm W}[q^2p^2]-\hbar^2/6、[Q(q2p), Q(qp2)]/(3iℏ)=QW[q2p2]+ℏ2/6\left[\mathcal Q(q^2p),\,\mathcal Q(qp^2)\right]/(3\mathrm{i}\hbar)=\mathcal Q_{\mathrm W}[q^2p^2]+\hbar^2/6 となり、10.1.3節の2本の道の結果が再現される。2本の道が食い違うのは、Poisson 括弧では同じ q2p2q^2p^2 の倍だったものが、Moyal 括弧では ℏ2\hbar^2 の定数項が違うからである。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ→0\hbar\to0(作用の典型的な大きさに比べて ℏ\hbar が小さい)で Moyal 括弧を Poisson 括弧で置き換える | 証明 条件付き〔q,pq,p の多項式では展開が有限項で終わり各次数が厳密。一般の関数では級数が積分の式の漸近展開になることを R. Estrada, J. M. Gracia-Bondía and J. C. Várilly (1989), J. Math. Phys. 30, 2789 が示した(各点か超関数の意味かは因子の性質による)〕 | 行き先 近似の数理 第7章

順序の選び方の差も ℏ2\hbar^2 の大きさ

Groenewold の矛盾とは別に、同じ古典の関数に対して順序の選び方が違えば、演算子は ℏ2\hbar^2 の大きさだけ違う。実用で問題になる例が、位置によって有効質量が変わる半導体のヘテロ構造である。古典の運動エネルギーは p2/(2m(q))p^2/(2m(q)) と1通りに書けるが、量子化には次の2つがよく使われる。D. J. BenDaniel と C. B. Duke の順序2D. J. BenDaniel, C. B. Duke (1966), Phys. Rev. 152, 683–692.下の脚注へ p^ 12m(q^) p^\hat p\,\frac{1}{2m(\hat q)}\,\hat p は、確率の流れが境界で連続になるように選んだもので、Weyl 順序とは一致しない。f(q)=1/(2m(q))f(q)=1/(2m(q)) と書くと、Weyl 順序は

QW[f(q)p2]=14(fp^2+2p^fp^+p^2f)=p^fp^−ℏ24f′′(q^)(10.1.15)\mathcal Q_{\mathrm W}\bigl[f(q)p^2\bigr]=\frac14\bigl(f\hat p^2+2\hat p f\hat p+\hat p^2f\bigr)=\hat p f\hat p-\frac{\hbar^2}{4}f''(\hat q)\tag{10.1.15}

となる(2つ目の等号は fp^2+p^2f−2p^fp^=[[f, p^], p^]=−[p^, [p^, f]]f\hat p^2+\hat p^2f-2\hat pf\hat p=\left[\left[f,\,\hat p\right],\,\hat p\right]=-\left[\hat p,\,\left[\hat p,\,f\right]\right] と [p^, f]=−iℏf′\left[\hat p,\,f\right]=-\mathrm{i}\hbar f' から)。2つの順序の差は、位置だけによる有効ポテンシャル ΔV(q)=−ℏ24f′′(q)\Delta V(q)=-\frac{\hbar^2}{4}f''(q) である。古典では存在しない、ℏ2\hbar^2 に比例する項である。

例題 10.1.5 有効質量が変わる井戸での順序の差 ★★

オリジナル有効質量が m(x)=me(1+(x/a)2)m(x)=m_{\mathrm e}\bigl(1+(x/a)^2\bigr) と変わる1次元の構造を考える(mem_{\mathrm e} は電子の質量、a=1 nma=1\ \mathrm{nm})。

  1. (1) Weyl 順序と BenDaniel–Duke の順序の差 ΔV(x)=−ℏ24f′′(x)\Delta V(x)=-\frac{\hbar^2}{4}f''(x)(f=1/(2m)f=1/(2m))を、u=x/au=x/a の関数として求めよ。
  2. (2) エネルギーの単位 ℏ2/(8mea2)\hbar^2/(8m_{\mathrm e}a^2) の値を meV で求め、x=0x=0 での ΔV\Delta V を求めよ。
  3. (3) ΔV\Delta V の符号が変わる位置と、∫−∞∞ΔV dx\int_{-\infty}^{\infty}\Delta V\,\mathrm{d} x の値を求めよ。
解答

(1) f=12me11+u2f=\dfrac{1}{2m_{\mathrm e}}\dfrac{1}{1+u^2}、f′′(x)=12mea2d2du211+u2=12mea26u2−2(1+u2)3f''(x)=\dfrac{1}{2m_{\mathrm e}a^2}\dfrac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d} u^2}\dfrac{1}{1+u^2}=\dfrac{1}{2m_{\mathrm e}a^2}\dfrac{6u^2-2}{(1+u^2)^3} なので

ΔV=ℏ28mea2⋅2−6u2(1+u2)3.\Delta V=\frac{\hbar^2}{8m_{\mathrm e}a^2}\cdot\frac{2-6u^2}{(1+u^2)^3}.

(2) ℏ=1.0546×10−34 J s\hbar=1.0546\times10^{-34}\ \mathrm{J\,s}、me=9.109×10−31 kgm_{\mathrm e}=9.109\times10^{-31}\ \mathrm{kg}、a=10−9 ma=10^{-9}\ \mathrm m を入れるとℏ2/(8mea2)=1.526×10−21 J=9.52 meV\hbar^2/(8m_{\mathrm e}a^2)=1.526\times10^{-21}\ \mathrm J=9.52\ \mathrm{meV}。x=0x=0 では u=0u=0 で因子が 22 なので ΔV(0)=19.0 meV\Delta V(0)=19.0\ \mathrm{meV}。

(3) 2−6u2=02-6u^2=0 から u=±1/3u=\pm1/\sqrt3、すなわち x=±0.577 nmx=\pm0.577\ \mathrm{nm} で符号が変わる。積分は ∫ΔV dx=−ℏ24[f′]−∞∞=0\int\Delta V\,\mathrm{d} x=-\frac{\hbar^2}{4}\bigl[f'\bigr]_{-\infty}^{\infty}=0(f′→0f'\to0)。中心付近で正、外側で負になり、全体としては打ち消し合う。井戸の束縛準位の間隔が数十 meV の構造では、この差は無視できない大きさである。順序の選び方は物理の内容を変える選択で、古典の p2/(2m(q))p^2/(2m(q)) だけからは決まらない。どの順序が正しいかは、この有効質量の模型を導いた元の結晶の Hamiltonian に戻って決める問題になる。

図

図 10.1.3 有効質量 m(x)=me(1+x2/a2)m(x)=m_{\mathrm e}(1+x^2/a^2) の運動エネルギーを Weyl 順序と BenDaniel–Duke の順序で量子化したときの差 ΔV=−ℏ24f′′\Delta V=-\frac{\hbar^2}{4}f''(f=1/2mf=1/2m)。縦軸の単位は a=1 nma=1\ \mathrm{nm} で 9.52 meV9.52\ \mathrm{meV}。点線は符号の変わる位置。

1 J. E. Moyal (1949), Proc. Cambridge Philos. Soc. 45, 99–124.

2 D. J. BenDaniel, C. B. Duke (1966), Phys. Rev. 152, 683–692.

木下の勉強ステータス

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