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Bohr–Sommerfeld 条件と Maslov の 12\frac12

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第10部 第5章 半形式補正・Bohr–Sommerfeld・スピンは球面の量子化
目次
  1. 軌道に沿う偏極
  2. 半形式つきの Bohr–Sommerfeld 条件
  3. WKB の接続公式との対応
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第10部 第5章 §10.5.4 ★★★ エネルギーの等高線で作る実偏極の半形式は、軌道を1周すると符号が反転する。前量子化のホロノミーとあわせると ∮p dq=2πℏ(n+12)\oint p\,\mathrm{d} q=2\pi\hbar(n+\frac12) が出て、振動子では厳密、一般には WKB の接続公式と同じ条件になる

軌道に沿う偏極

1自由度の束縛運動で、エネルギーの等高線 H=EH=E を葉とする実偏極 PH=span⁡{XH}P_H=\operatorname{span}\{X_H\} を取る(平衡点では退化するが、そこを除けば偏極である)。第10部第3章で示したとおり、前量子の切断を葉に沿って共変定数にすると、葉を1周したホロノミーは exp⁡(iℏ∮p dq)\exp\bigl(\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\oint p\,\mathrm{d} q\bigr) で、偏極した切断はホロノミーが1になる葉(Bohr–Sommerfeld の葉)の上にだけ載る。振動子ではこれが E=nℏω0E=n\hbar\omega_0 で、12\frac12 が足りなかった。

PHP_H の標準束は dH\mathrm{d} H の倍である(dH(XH)={H,H}=0\mathrm{d} H(X_H)=\{H,H\}=0)。LXHdH=d(XHH)=0L_{X_H}\mathrm{d} H=\mathrm{d}(X_HH)=0 なので、dH\sqrt{\mathrm{d} H} は葉に沿って一定に見える。しかし半形式は符号 ±\pm の選び方を相空間全体で連続に揃えて初めて意味を持ち、その揃え方は平面全体で決まっている(平面では例えば dzs\sqrt{\mathrm{d} z_s} がいたる所で0にならない半形式を与える)。葉の上の dH\sqrt{\mathrm{d} H} を、平面全体の基準 dzs\sqrt{\mathrm{d} z_s} と比べて測ると、比は対 (dzs,dH)(\sqrt{\mathrm{d} z_s},\sqrt{\mathrm{d} H}) で与えられる。

命題 10.5.4(軌道の半形式のホロノミー ★★★)

調和振動子 H=p2/(2m)+mω02q2/2H=p^2/(2m)+m\omega_0^2q^2/2 の等高線 H=E>0H=E>0 と任意の ℓs>0\ell_s>0 について、

(dzs,dH)2=12(iℓs∂H∂p+ℓsℏ∂H∂q)(10.5.8)\bigl(\sqrt{\mathrm{d} z_s},\sqrt{\mathrm{d} H}\bigr)^2=\frac{1}{\sqrt2}\Bigl(\frac{\mathrm{i}}{\ell_s}\frac{\partial H}{\partial p}+\frac{\ell_s}{\hbar}\frac{\partial H}{\partial q}\Bigr)\tag{10.5.8}

は軌道を1周する間に原点のまわりをちょうど1回まわる。したがって dH\sqrt{\mathrm{d} H} を連続に延長すると、1周で符号が −1-1 になる。

証明

dzs‾=12(dq/ℓs+iℓsdp/ℏ)\overline{\mathrm{d} z_s}=\frac{1}{\sqrt2}(\mathrm{d} q/\ell_s+\mathrm{i}\ell_s\mathrm{d} p/\hbar) と dH=Hqdq+Hpdp\mathrm{d} H=H_q\mathrm{d} q+H_p\mathrm{d} p の外積は 12(Hp/ℓs−iℓsHq/ℏ) ω\frac{1}{\sqrt2}(H_p/\ell_s-\mathrm{i}\ell_sH_q/\hbar)\,\omega で、−i-\mathrm{i} で割ると式 (10.5.8) になる。軌道 q=Acos⁡ω0tq=A\cos\omega_0t、p=−mω0Asin⁡ω0tp=-m\omega_0A\sin\omega_0t(時計回り)に沿って、右辺は Aω02(mω0ℓsℏcos⁡ω0t−iℓssin⁡ω0t)\frac{A\omega_0}{\sqrt2}\bigl(\frac{m\omega_0\ell_s}{\hbar}\cos\omega_0t-\frac{\mathrm{i}}{\ell_s}\sin\omega_0t\bigr) となる。これは実軸と虚軸の上に半軸を持つ楕円を時計回りに1周し、原点を内側に含む。複素数が原点のまわりを1回まわると偏角が 2π2\pi 変わり、平方根の偏角は π\pi 変わるので、平方根は −1-1 倍で戻る。ℓs\ell_s を変えても楕円の形が変わるだけで巻き数は変わらない。

図

図 10.5.1 振動子の軌道に沿う半形式の対 (dzs,dH)2(\sqrt{\mathrm{d} z_s},\sqrt{\mathrm{d} H})^2(式 (10.5.8))が複素平面に描く楕円。転回点(p=0p=0)で実軸を、q=0q=0 で虚軸を横切り、時計回りに原点を1回まわる。転回点から次の転回点までに偏角が π\pi 変わるので、半形式の平方根は転回点ごとに −π/2-\pi/2 ずつ位相を持つ。

半形式つきの Bohr–Sommerfeld 条件

半形式つきの切断 s⊗νs\otimes\nu が葉の上で一価であるためには、ss のホロノミーと ν\nu のホロノミーの積が1でなければならない。命題 10.5.4 から ν\nu のホロノミーは −1-1 なので、

exp⁡(iℏ∮p dq)⋅(−1)=1⟺∮p dq=2πℏ(n+12)(10.5.9)\exp\Bigl(\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\oint p\,\mathrm{d} q\Bigr)\cdot(-1)=1\quad\Longleftrightarrow\quad\oint p\,\mathrm{d} q=2\pi\hbar\Bigl(n+\frac12\Bigr)\tag{10.5.9}

となる。振動子では ∮p dq=2πE/ω0\oint p\,\mathrm{d} q=2\pi E/\omega_0(楕円の面積)なので E=ℏω0(n+12)E=\hbar\omega_0(n+\frac12) で、2節の正則偏極の結果と一致する。前量子化だけでは実偏極も正則偏極も ℏω0n\hbar\omega_0n を与え、半形式を入れると両方とも ℏω0(n+12)\hbar\omega_0(n+\frac12) を与える。どちらの段階でも、2つの偏極は同じスペクトルを出す。

一般の閉じた軌道では、平面に描いた曲線の接線が1周で何回まわるかで平方根の符号の変化が決まる。接線の向きの直線(Lagrange 部分空間)が1周で μ/2\mu/2 回まわるとき、μ\mu を軌道の Maslov 指数と呼び、条件は ∮p dq=2πℏ(n+μ/4)\oint p\,\mathrm{d} q=2\pi\hbar(n+\mu/4) となる。凸な閉曲線では μ=2\mu=2 で 12\frac12 が出る。多自由度の不変トーラスへの拡張(独立な閉曲線ごとに Maslov 指数を付ける形)は J. B. Keller が WKB の側から与えた1J. B. Keller (1958), “Corrected Bohr–Sommerfeld quantum conditions for nonseparable systems”, Ann. Phys. (N.Y.) 4, 180–188.下の脚注へ。

WKB の接続公式との対応

半形式つきの Bohr–Sommerfeld の葉の切断を、BKS の対で鉛直の偏極(位置表示)へ移すと、WKB の波動関数が出る。

命題 10.5.5(Bohr–Sommerfeld の葉の切断の位置表示 ★★★)

転回点 q−<q+q_-<q_+ の間で、葉の切断を鉛直の葉に沿って積分したものは

ψ(q)∝1∣p(q)∣cos⁡(1ℏ∫qq+∣p(q′)∣ dq′−π4),∣p(q)∣=2m(E−V(q))(10.5.10)\psi(q)\propto\frac{1}{\sqrt{\lvert p(q)\rvert }}\cos\Bigl(\frac1\hbar\int_q^{q_+}\lvert p(q')\rvert \,\mathrm{d} q'-\frac\pi4\Bigr),\qquad \lvert p(q)\rvert =\sqrt{2m(E-V(q))}\tag{10.5.10}

である。

証明

鉛直の葉 q=q= 一定は軌道と p=±∣p(q)∣p=\pm\lvert p(q)\rvert の2点で交わる。葉の切断は δ(H−E)\delta(H-E) に比例するので、pp について積分すると各交点から 1/∣Hp∣=m/∣p∣1/\lvert H_p\rvert =m/\lvert p\rvert が出る。半形式の対は (dq,dH)2=dq‾∧dH/(−iω)=iHp=ip/m(\sqrt{\mathrm{d} q},\sqrt{\mathrm{d} H})^2=\overline{\mathrm{d} q}\wedge\mathrm{d} H/(-\mathrm{i}\omega)=\mathrm{i} H_p=\mathrm{i} p/m で、その平方根の大きさは ∣p∣/m\sqrt{\lvert p\rvert /m}、位相は p>0p>0 で eiπ/4\mathrm{e}^{\mathrm{i}\pi/4}、p<0p<0 で e−iπ/4\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi/4} である(図 10.5.1 の向きに連続に延長した枝)。大きさを掛け合わせると各交点の重みは ∣p∣−1/2\lvert p\rvert ^{-1/2} に比例する。前量子の切断の位相は軌道に沿って eiℏ∫p dq\mathrm{e}^{\frac{\mathrm{i}}\hbar\int p\,\mathrm{d} q} で増える(∇XHs=0\nabla_{X_H}s=0 と θ(XH)=−p2/m\theta(X_H)=-p^2/m から)。上の枝(p>0p>0)の点 qq では左の転回点からの W(q)=∫q−q∣p∣ dq′W(q)=\int_{q_-}^q\lvert p\rvert \,\mathrm{d} q'、下の枝では右の転回点を回ってきた 2W(q+)−W(q)2W(q_+)-W(q) が位相になる。2つを足すと

eiπ/4eiW(q)/ℏ+e−iπ/4ei(2W(q+)−W(q))/ℏ=2 eiW(q+)/ℏcos⁡(W(q+)−W(q)ℏ−π4)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\pi/4}\mathrm{e}^{\mathrm{i} W(q)/\hbar}+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi/4}\mathrm{e}^{\mathrm{i}(2W(q_+)-W(q))/\hbar}=2\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} W(q_+)/\hbar}\cos\Bigl(\frac{W(q_+)-W(q)}{\hbar}-\frac\pi4\Bigr)

となり、W(q+)−W(q)=∫qq+∣p∣ dq′W(q_+)-W(q)=\int_q^{q_+}\lvert p\rvert \,\mathrm{d} q' なので主張を得る。

式 (10.5.10) は、右の転回点での WKB の接続公式が与える形(転回点から測った位相に −π/4-\pi/4)と同じである。第3部第4章で、停留位相の伝播関数が焦点を越えるごとに位相 −π/2-\pi/2 を持つことを示した(第3部第4章)。図 10.5.1 の転回点ごとの −π/2-\pi/2 はそれと同じ量で、半形式の平方根が転回点(偏極 PHP_H が鉛直の偏極と一致する点=焦点)で枝を移ることにあたる。左の転回点から測った形との整合(2つの転回点の両方で接続公式が成り立つこと)が、ちょうど条件 (10.5.9) である。振動子 n=6n=6 で式 (10.5.10) と厳密な固有関数を ∣q∣<0.8 q+\lvert q\rvert <0.8\,q_+ で比べると、形の相関は 0.99990.9999 で、−π/4-\pi/4 を除くと 0.700.70 に下がる(verify_ch10-05.py)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ/∮p dq→0\hbar/\oint p\,\mathrm{d} q\to0(軌道の作用が ℏ\hbar に比べて大きい) | 証明 条件付き(1自由度で転回点が孤立し、ポテンシャルが滑らかなとき。半形式つきの条件は調和振動子で厳密、一般には準位の誤差が ℏ\hbar の高次) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 10.5.4 4次の振動子の Bohr–Sommerfeld ★★★

オリジナルℏ=m=1\hbar=m=1 として H=p2/2+q4H=p^2/2+q^4 を考える。

  1. (1) ∮p dq=42 I E3/4\oint p\,\mathrm{d} q=4\sqrt2\,I\,E^{3/4}、I=∫011−u4 duI=\int_0^1\sqrt{1-u^4}\,\mathrm{d} u を示し、条件 (10.5.9) から EnE_n を求めよ。
  2. (2) I=0.87402I=0.87402 を使って n=0,1,2,3n=0,1,2,3 の値を、12\frac12 を落とした条件の値とあわせて求めよ。厳密な固有値は 0.66800.6680、2.39362.3936、4.69684.6968、7.33577.3357 である。
  3. (3) 相対誤差が nn とともにどう変わるかを述べ、半形式の補正が何を担っているかを説明せよ。
解答

(1) 転回点は q=±E1/4q=\pm E^{1/4}。∮p dq=4∫0E1/42(E−q4) dq\oint p\,\mathrm{d} q=4\int_0^{E^{1/4}}\sqrt{2(E-q^4)}\,\mathrm{d} q で q=E1/4uq=E^{1/4}u と置くと 42E1/2E1/4∫011−u4 du=42IE3/44\sqrt2E^{1/2}E^{1/4}\int_0^1\sqrt{1-u^4}\,\mathrm{d} u=4\sqrt2IE^{3/4}。条件 42IE3/4=2π(n+12)4\sqrt2IE^{3/4}=2\pi(n+\frac12) から

En=(π(n+12)22 I)4/3.E_n=\Bigl(\frac{\pi(n+\frac12)}{2\sqrt2\,I}\Bigr)^{4/3}.

(2) 12\frac12 あり:0.54630.5463、2.36362.3636、4.67054.6705、7.31487.3148。12\frac12 なし(n+12n+\frac12 を nn に替える):00、1.37651.3765、3.46863.4686、5.95585.9558。

(3) 12\frac12 ありの相対誤差は n=0n=0 で −18.2%-18.2\%、n=3n=3 で −0.28%-0.28\% と、nn が大きいほど小さくなる。12\frac12 なしでは基底状態が0になり、n=3n=3 でも −19%-19\% ずれる。半形式の補正は、準位の間隔を局所的な角振動数 ω(E)=2π/T(E)\omega(E)=2\pi/T(E)(TT は周期)で測って準位を ℏω(E)/2\hbar\omega(E)/2 ほど上げるもので、その寄与がなければ nn を大きくしても誤差の比が縮まらない。残りの誤差は ℏ\hbar の高次の補正で、図 10.5.2 のように小さい nn ほど目立つ。

図

図 10.5.2 H=p2/2+q4H=p^2/2+q^4(ℏ=m=1\hbar=m=1)の最初の4準位。点線が厳密な固有値、赤の実線が半形式つきの Bohr–Sommerfeld 条件、青の実線が前量子化だけの条件(12\frac12 なし)。12\frac12 を入れると準位の並びがほぼ重なり、ずれは基底状態で最も大きい。

1 J. B. Keller (1958), “Corrected Bohr–Sommerfeld quantum conditions for nonseparable systems”, Ann. Phys. (N.Y.) 4, 180–188.

木下の勉強ステータス

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