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確率論から見た準確率

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第4章 負になる準確率
目次
  1. すべての1次結合の分布を同時に持つ確率分布
  2. Bochner の条件と、ねじった条件
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第5部 第4章 §5.4.4 ★★ W は「すべての 1次結合の分布を同時に持つ関数」の唯一の候補。量子の特性関数は Bochner の条件でなく、ねじった条件を満たす

すべての1次結合の分布を同時に持つ確率分布

古典の確率論では、2つの確率変数 (X,P)(X,P) の同時分布 μ\mu があれば、どんな1次結合 aX+bPaX+bP の分布も μ\mu から決まる。量子では、ax^+bp^a\hat x+b\hat p はどの (a,b)(a,b) についても1つの自己共役作用素で、その分布 Pa,bP_{a,b} は基準の公理から決まる(光のホモダイン測定で実際に測れる)。第5部第2章では、Pa,bP_{a,b} が WW を直線 ax+bp=constax+bp=\mathrm{const} に沿って積分したものになることを示した。問いは逆向きで、「すべての (a,b)(a,b) の Pa,bP_{a,b} を周辺分布として同時に持つ(非負の)確率分布 μ\mu はあるか」である。

定理 5.4.4(同時分布があれば WW に限る ★★★)

状態 ρ^\hat\rho について、R2\mathbb{R}^2 上の確率測度 μ\mu で、すべての実数 a,ba,b について aX+bPaX+bP の分布が ax^+bp^a\hat x+b\hat p の分布 Pa,bP_{a,b} に一致するものがあれば、μ\mu は密度 Wρ^W_{\hat\rho} を持つ。とくに Wρ^W_{\hat\rho} がどこかで負なら、そのような μ\mu は存在しない。

証明

μ\mu の特性関数を ϕμ(a,b)=∫ei(ax+bp)/ℏ dμ\phi_\mu(a,b)=\int\mathrm{e}^{\mathrm{i}(ax+bp)/\hbar}\,\mathrm{d}\mu と置く。これは確率変数 aX+bPaX+bP の特性関数の値 ∫eit dPa,b(t)\int\mathrm{e}^{\mathrm{i} t}\,\mathrm{d} P_{a,b}(t) で、aX+bPaX+bP の分布だけで決まる。仮定からその分布は ax^+bp^a\hat x+b\hat p の分布なのでϕμ(a,b)=Tr⁡(ρ^ ei(ax^+bp^)/ℏ)\phi_\mu(a,b)=\operatorname{Tr}\bigl(\hat\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}(a\hat x+b\hat p)/\hbar}\bigr)。右辺は 第5部第2章の量子の特性関数 χ(a,b)\chi(a,b) で、χ(a,b)=∫Wei(ax+bp)/ℏ dx dp\chi(a,b)=\int W\mathrm{e}^{\mathrm{i}(ax+bp)/\hbar}\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} p だった。R2\mathbb{R}^2 上の(符号つきでもよい)有限測度は Fourier 変換で一意に決まるので、μ=W dx dp\mu=W\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} p である。μ\mu は非負の測度なので W≥0W\ge0 でなければならない。

この証明の前半は、H. Cramér と H. Wold の定理(Rn\mathbb{R}^n 上の確率分布は、すべての1次元への射影の分布で決まる。H. Cramér and H. Wold (1936)、J. London Math. Soc. 11、290–294)の証明そのものである。定理 5.4.4 は、Cramér–Wold の一意性の量子版といえる。WW は「すべての直交位相 ax^+bp^a\hat x+b\hat p の分布を周辺に持つ」という条件を満たす関数として一意に決まり、その関数が負になる状態では、全部の直交位相に1つの同時分布を割り当てることができない。これは第9部の Kochen–Specker の定理(第9部第3章)と同じ型の主張で、交換しない物理量の値を1つの確率空間の上にそろえて置けないことを表している。R. W. Spekkens は、適切に一般化した意味での「負の値の必要性」と「文脈依存性」が同値であることを示した(R. W. Spekkens (2008)、Phys. Rev. Lett. 101、020401)。

Bochner の条件と、ねじった条件

確率論では、関数 ϕ(a,b)\phi(a,b) がある確率測度の特性関数であるための必要十分条件が Bochner の定理で与えられる。ϕ\phi が連続で ϕ(0,0)=1\phi(0,0)=1 のとき、それが確率測度の特性関数であることは、任意の点 z1,…,zNz_1,\dots,z_N(zj=(aj,bj)z_j=(a_j,b_j))について行列 (ϕ(zk−zj))jk\bigl(\phi(z_k-z_j)\bigr)_{jk} が半正定値であることと同値である(正定値関数)。

量子の特性関数 χ(a,b)=Tr⁡(ρ^T^(a,b))\chi(a,b)=\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat T(a,b))、T^(a,b)=ei(ax^+bp^)/ℏ\hat T(a,b)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}(a\hat x+b\hat p)/\hbar} は、別の条件を満たす。Baker–Campbell–Hausdorff の公式 eA^eB^=eA^+B^e[A^,B^]/2\mathrm{e}^{\hat A}\mathrm{e}^{\hat B}=\mathrm{e}^{\hat A+\hat B}\mathrm{e}^{[\hat A,\hat B]/2}([A^,B^][\hat A,\hat B] が数のとき)と[a1x^+b1p^, a2x^+b2p^]=iℏ(a1b2−b1a2)[a_1\hat x+b_1\hat p,\,a_2\hat x+b_2\hat p]=\mathrm{i}\hbar(a_1b_2-b_1a_2) から

T^(z1)T^(z2)=T^(z1+z2) e−i(a1b2−b1a2)/(2ℏ).(5.4.13)\hat T(z_1)\hat T(z_2)=\hat T(z_1+z_2)\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}(a_1b_2-b_1a_2)/(2\hbar)} .\tag{5.4.13}

任意の複素数 ckc_k で A^=∑kckT^(zk)\hat A=\sum_kc_k\hat T(z_k) と置くと Tr⁡(ρ^A^†A^)≥0\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat A^\dagger\hat A)\ge0 で、T^(z)†=T^(−z)\hat T(z)^\dagger=\hat T(-z) と (5.4.13) を使えば

∑j,kcj∗ck Mjk≥0,Mjk=χ(zk−zj) ei(ajbk−bjak)/(2ℏ)(5.4.14)\sum_{j,k}c_j^*c_k\,M_{jk}\ge0,\qquad M_{jk}=\chi(z_k-z_j)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}(a_jb_k-b_ja_k)/(2\hbar)}\tag{5.4.14}

となる。行列 MM は Bochner の行列に位相をねじって掛けたもので、これが半正定値であることが必要である。逆に、連続で χ(0,0)=1\chi(0,0)=1 の関数がすべての点の組で (5.4.14) を満たせば、それはある状態の特性関数になる。この「量子の Bochner の定理」は D. Kastler と、G. Loupias・S. Miracle-Sole が示した(D. Kastler (1965)、Commun. Math. Phys. 1、14–48。G. Loupias and S. Miracle-Sole (1966)、Commun. Math. Phys. 2、31–48)。

まとめると、WW が確率密度であることは「χ\chi がふつうの意味で正定値」、WW が状態の Wigner 関数であることは「χ\chi がねじった意味で正定値」と言い換えられる。2つの条件は別物で、どちらも満たす関数(非負の Wigner 関数)、片方だけを満たす関数がそれぞれある。第5部第2章の例題で見た「幅の積が ℏ/2\hbar/2 より小さい Gauss 関数」は確率密度だが状態でない例で、W1W_1 は状態だが確率密度でない例である。

例題 5.4.5 狭すぎる Gauss 関数はねじった条件を破る ★★

オリジナルℏ=1\hbar=1 とし、σx=σp=1/2\sigma_x=\sigma_p=1/2(幅の積 1/41/4)の中心0の Gauss 分布の特性関数 χ(a,b)=exp⁡(−(a2σx2+b2σp2)/2)\chi(a,b)=\exp\bigl(-(a^2\sigma_x^2+b^2\sigma_p^2)/2\bigr) を考える。4点 z1=(0,0)z_1=(0,0)、z2=(2,0)z_2=(2,0)、z3=(0,2)z_3=(0,2)、z4=(2,2)z_4=(2,2) について、Bochner の行列とねじった行列 (5.4.14) を書き、最小固有値を比べよ。

解答

差の長さが2の組では χ=e−(4/4)/2=e−1/2\chi=\mathrm{e}^{-(4/4)/2}=\mathrm{e}^{-1/2}、対角線の組では χ=e−1\chi=\mathrm{e}^{-1} である。位相 (ajbk−bjak)/2(a_jb_k-b_ja_k)/2 は z1z_1 を含む組で 00、(j,k)=(2,3)(j,k)=(2,3) と (2,4)(2,4) で 22、(3,4)(3,4) で −2-2 になる。したがって

M=(1e−1/2e−1/2e−1e−1/21e−1e2ie−1/2e2ie−1/2e−1e−2i1e−1/2e−2ie−1e−1/2e−2ie−1/2e2i1).M=\begin{pmatrix} 1&\mathrm{e}^{-1/2}&\mathrm{e}^{-1/2}&\mathrm{e}^{-1}\\ \mathrm{e}^{-1/2}&1&\mathrm{e}^{-1}\mathrm{e}^{2\mathrm{i}}&\mathrm{e}^{-1/2}\mathrm{e}^{2\mathrm{i}}\\ \mathrm{e}^{-1/2}&\mathrm{e}^{-1}\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}}&1&\mathrm{e}^{-1/2}\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}}\\ \mathrm{e}^{-1}&\mathrm{e}^{-1/2}\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}}&\mathrm{e}^{-1/2}\mathrm{e}^{2\mathrm{i}}&1 \end{pmatrix}.

位相を全部 11 にしたものが Bochner の行列である。数値的に対角化すると、Bochner の行列の最小固有値は 0.155>00.155>0 で、Gauss 分布は確率分布だから当然である。ねじった行列の最小固有値は −0.389<0-0.389<0 で、(5.4.14) が破れる。したがってこの χ\chi はどの状態の特性関数でもなく、この Gauss 関数は Wigner 関数でない。同じ計算を幅の積 1/21/2(基底状態)の χ\chi で行うと、無作為に選んだ点の組でねじった行列はつねに半正定値になる(verify で確かめた)。

木下の勉強ステータス

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