量子力学の様々な構成方法 第6部 第1章 §6.1.4 ★★★ 1粒子の波動関数が従う方程式を古典の場の方程式とみなして正準量子化すると、各モードが振動数 εj/ℏ の振動子になる
古典の場としての Schrödinger 方程式
前節では、もともと古典の場(弦)だったものを量子化した。同じ手続きを、1粒子の Schrödinger 方程式
iℏ∂tψ=hψ,h=−2mℏ2∂x2+V(x)
に当てる。ここでは ψ(x,t) を確率振幅として読まず、空間の各点に複素数の値を持つ古典の場として扱う。この方程式は、ラグランジアン
L[ψ,ψ∗]=∫dx[iℏψ∗∂tψ−2mℏ2∣∂xψ∣2−V∣ψ∣2](6.1.16)
の Euler–Lagrange 方程式として出てくる。実際、ψ∗ について変分をとると(ψ と ψ∗ を独立に動かす)、iℏ∂tψ+2mℏ2∂x2ψ−Vψ=0 になる。第1項は実数でないが、実数の形 2iℏ(ψ∗∂tψ−∂tψ∗ψ) とは時間の全微分 2iℏ∂t∣ψ∣2 だけ違うので、運動方程式は変わらない。
∂tψ の係数を読むと、ψ に共役な運動量の密度は πψ=∂L/∂(∂tψ)=iℏψ∗ である。ψ∗ そのものが運動量の役をしており、独立な正準の組は (ψ,iℏψ∗) の1組だけである。ハミルトニアンは ∫πψ∂tψ−L から
H=∫dx[2mℏ2∣∂xψ∣2+V∣ψ∣2]=∫dxψ∗(x)hψ(x)(6.1.17)
になる(2つ目の等号は部分積分)。Poisson 括弧は {ψ(x),iℏψ∗(y)}=δ(x−y)、つまり {ψ(x),ψ∗(y)}=−iδ(x−y)/ℏ である。
正準量子化
規則 {⋅,⋅}→[⋅,⋅]/(iℏ) を当てると
[ψ^(x),ψ^†(y)]=δ(x−y),[ψ^(x),ψ^(y)]=0(6.1.18)
を得る。h の規格直交な固有関数 hφj=εjφj で展開して
ψ^(x)=j∑φj(x)a^j,a^j=∫dxφj∗(x)ψ^(x)(6.1.19)
とおくと、[a^i,a^j†]=∬dxdyφi∗(x)φj(y)δ(x−y)=δij である。ハミルトニアン (6.1.17) のψ∗ψ を ψ^†ψ^ の順に並べて演算子にすると
H^=∫dxψ^†(x)hψ^(x)=j∑εja^j†a^j,N^=∫dxψ^†(x)ψ^(x)=j∑a^j†a^j(6.1.20)
になる。1粒子の固有状態 φj が場のモードで、そのモードに入っている量子の個数を a^j†a^j が数える。ここでは量子が粒子そのもので、N^ は粒子数である。
各モードが振動子であることを、古典の段階で確かめておく。ψ=∑jcj(t)φj(x) を (6.1.16) に入れるとL=∑j(iℏcj∗c˙j−εj∣cj∣2) で、モードごとに分かれる。Ωj=εj/ℏ とおいて実数の qj,pj を
cj=2ℏΩjΩjqj+ipj
で導入すると、εj∣cj∣2=(pj2+Ωj2qj2)/2、運動の項は時間の全微分を除いて pjq˙j になり、L=∑j[pjq˙j−(pj2+Ωj2qj2)/2] を得る。これは質量 1、角振動数 Ωj=εj/ℏ の振動子の集まりで、cj は式 (6.1.5) の複素振幅 a(m=1、ω=Ωj)と同じ形をしている。6.1.1 節の Poisson 括弧 {a,a∗}=−i/ℏ はここでの {cj,cj∗}=−i/ℏ と一致し、量子化すると a^j になる。
振動子の見方では H^=∑jεj(a^j†a^j+21) と書いてもよさそうに見える。21 の分 ∑jεj/2 は状態によらない定数で、エネルギーの差にも運動方程式にも現れない。真空のエネルギーと粒子数をどちらも 0 にそろえるため、ψ^†ψ^ の順(正規順序)を選ぶ。弦の振動子 q は原子のずれという測れる量だったが、Schrödinger 場の qj,pj は複素振幅の実部と虚部で、それ自体を測る装置は無い。この違いのため、Schrödinger 場では零点の項を残す理由が無い。
「第二」量子化と呼ぶ理由と、その名前の不正確さ
歴史的には、粒子の古典力学を量子化して波動関数 ψ を得たのが「第一の量子化」で、その ψ をもう一度演算子 ψ^ に置き換えるので「第二」と呼ばれた。しかし上の手続きでは ψ を古典の場とみなした系を量子化しており、量子化は1回しか行っていない。ℏ が二重に入ったわけでもない。正確には「Schrödinger 方程式を古典の場の方程式とみなし、その場を正準量子化した」と言うべきもので、前節の弦の量子化と同じ手続きである。名前は慣用として残っている。
粒子1個の部分は基準そのもの
Fock 空間のうち粒子数がちょうど1の部分(N^=1 の固有空間)を F1 と書く。これは基準(第1部)の1粒子のヒルベルト空間 L2(R) と同じものである。
命題 6.1.1(粒子1個の部分と1粒子の量子力学 ★★★)
写像 U:L2(R)→F1 を
Uφ=∫dxφ(x)ψ^†(x)∣0⟩(6.1.21)
で定めると、U はユニタリで、H^Uφ=U(hφ) が成り立つ。とくに Uφj=a^j†∣0⟩ であり、位置の固有状態 ∣x⟩ には ψ^†(x)∣0⟩ が対応する。
証明
内積を保つこと:ψ^(x)∣0⟩=0 と交換関係 (6.1.18) から⟨0∣ψ^(x)ψ^†(y)∣0⟩=⟨0∣[ψ^(x),ψ^†(y)]∣0⟩=δ(x−y) なので、⟨Uφ∣Uχ⟩=∬φ∗(x)χ(y)δ(x−y)dxdy=∫φ∗χdx である。
全射であること:(6.1.19) の逆 ψ^†(x)=∑jφj∗(x)a^j† を入れると Uφj=∑l(∫φjφl∗dx)a^l†∣0⟩=a^j†∣0⟩ で、F1 は {a^j†∣0⟩} で張られるので U の像は F1 全体である。
ハミルトニアン:(6.1.20) から [H^,a^j†]=εja^j†、H^∣0⟩=0 なので H^a^j†∣0⟩=εja^j†∣0⟩ である。一方 hφj=εjφj なので U(hφj)=εja^j†∣0⟩ で、両者は基底の上で一致する。線形性から H^U=Uh が F1 の上で成り立つ。
時間発展も e−iH^t/ℏU=Ue−iht/ℏ で対応するので、粒子1個の部分に限れば、第二量子化は基準の1粒子の量子力学とすべての予言が一致する。N≥2 の部分で同じことを示すのが 第6部第2章の仕事である。
例題 6.1.4 箱の中の Schrödinger 場 ★★
オリジナル幅 L の無限に深い井戸(0<x<L)の中の質量 m の粒子を Schrödinger 場で扱う。モードは φn(x)=2/Lsin(nπx/L)、εn=n2ε1(ε1=π2ℏ2/(2mL2))である。状態 ∣Φ⟩=a^1†a^2†∣0⟩ について次を求めよ。
- (1) H^∣Φ⟩ と N^∣Φ⟩。
- (2) 粒子数の密度の期待値 ρ(x)=⟨Φ∣ψ^†(x)ψ^(x)∣Φ⟩。∫0Lρdx と、x=L/2・x=L/4 での値も求めよ。
解答
(1) [a^j†a^j,a^l†]=δjla^l† を2回使うと a^j†a^j∣Φ⟩=(δj1+δj2)∣Φ⟩ である。よって H^∣Φ⟩=(ε1+ε2)∣Φ⟩=5ε1∣Φ⟩、N^∣Φ⟩=2∣Φ⟩ である。
(2) (6.1.19) から ψ^†(x)ψ^(x)=∑j,lφj∗(x)φl(x)a^j†a^l で、⟨Φ∣a^j†a^l∣Φ⟩ は j=l∈{1,2} のときだけ 1、ほかは 0 である(j=l の項は個数の組を変えるので期待値が消える)。したがって
ρ(x)=∣φ1(x)∣2+∣φ2(x)∣2=L2[sin2Lπx+sin2L2πx]
で、各 φn が規格化されているので ∫0Lρdx=2 になり、粒子数と一致する。x=L/2 では sin2(π/2)=1、sin2π=0 から ρ=2/L、x=L/4 では 21+1 から ρ=3/L である。密度は、粒子1個ずつの確率密度を足したものになる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com